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答弁本文情報

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昭和二十五年四月二十五日受領
答弁第一二八号
(質問の 一二八)

  内閣衆質第一一五号
     昭和二十五年四月二十五日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員滿尾君亮君提出陸運行政の民主化の徹底に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員滿尾君亮君提出陸運行政の民主化の徹底に関する再質問に対する答弁書



一 トラツク事業が経営者側のみの利益から見れば、小企業であることは経営は握を容易ならしめるが、その反面利用者側から見れば、トラツク一両の荷物でもその価格が相当の額に上る貴重な財物を安心して委託できるだけの資力信用が企業体自身に持たれることが必要である。
  又ほとんど消耗品にも等しい車両とばくだいな燃料、資材に依存していることは小業濫立による交錯輸送や不当競争による資材濫費を避ける上において、むしろなるべく小規模であることを避けるべきであると思う。まして経営者側の労務管理の都合から小規模企業とすべしとする貴見には賛同できない。
  以上要するにトラツク事業の小企業化は国民経済上及び公益上利益となるとは考えない。
  現在のトラツク事業者は戰時中、当時の輸送事情に即応して形成されたものであるが、終戰後輸送事業に適合しないと認められるにいたつたものは業態の改編を認めており、その件数も既に百件以上に上つておるのでトラツク事業の再編成は前述の趣旨の下に漸進的に実施されているものと考える。

二 政府がトラツク事業の現状維持にきゆうきゆうたるものでないことは、道路運送法施行以来既存事業者の反対もあつたが、一般、特定、小型等の各種の多数の免許をしたことから充分立証せられるが、このことによつて、既存の事業者が公正な競争を通じて相当の刺激を受け自主的に事業の改善に努力しつつあるものと考える。
  なお、トラツク事業者の経営上の自主性は認めらるべきものと考えるが、公正な競争維持と公益に適合する営業を行わせるため、増減車、営業所の設置は許認可事項とすることは必要と考える。

三 トラツク運賃は現在原価主義を主体として認めることとしているが、その原価要素が公定価格によるものが多くやや固定的であつたが、経済状勢の変動に応じての運賃の改訂を行うよう当局としても努めている。
  現行運賃は物価統制令に基く統制額として最高額であり、実際はその範囲内で運賃競争は行われており、その幅は二割乃至三割程度である。しかしながら輸送費の安定は商取引の安定上必要であるから余り変動の激しいことは好ましいことではない。
  なお、適正運賃が維持せられ、且つ、その改訂を敏速にするため常設の審議機関の必要の有無については充分研究したい。

四 現行の免許基準にいう免許の必要性、合理性及び緊急性の三者は、いずれの免許にも不可欠のものであると考える。   これらは同基準に示されるように、自動車輸送についての社会的経済的見地から検討される三要点である。しかして、緊急性の理論的根拠は自動車輸送資材が不足して、配給制度が存する以上は当該輸送需要の重要度が社会的経済的に見て免許すべき順位に在ることを要件とするものと考えるからである。従つて、若し将来自動車輸送に関する資材が自由販売され輸送に関する社会的経済的事情が緩和されるようになれば緊急性は免許の要件とならなくなるものと考える。

五 免許基準第五号にいう輸送需給の均衡とは、同基準第三号にいう供給輸送力が需要に対して著しく供給過剩とならない旨の要件と総合し、公正な競争の維持を図るために定められている基準であるから需要と供給が相等しいというような嚴密なものではなく、実際の運用もその趣旨で行つている。しかしながら輸送需要は変動のあるものであり、その時期、地城により増加する見込のある場合と逓減する見込のある場合とがあるので供給輸送力として認めることのできる余裕もさして大きいものとは考えられない。

六 免許基準が道路運送法第十二條の規定に基いて、運輸大臣の告示に委任されているのは、本法制定の時期において、経済上の変動の相当激しいことが予想され、これを法律に規定して固定的にすることが実情に適せず、かえつて国民の利益を侵害するおそれがあるものと考えたからであり、この見地に立つて国会においても現行の法律を承認されたものと思う。
  わが国の経済事情も漸次安定の方向に向つているので、この安定の状況をにらみ合せの上で、免許基準は法律に規定することにする方がよいと考える。

七 自動車輸送事業に対する免許申請については、これを敏速に処理するために政府は常に至大な努力を拂つているが、免許については運輸審議会、道路運送審議会に諮問しその意見を徴する等民主的方法により決定することになつているので簡單な事案でも相当の期間を要するのが実情である。自動車運送事業の免許申請は、事案の複雑なもの、簡單なもの、緊急を要するもの等その内容が千差万別で審査の日時を一律に決定することは困難であり申請後一定期間経過により当然免許されたこととすることは適当と思われないので、これについて立法を準備する意思はない。

八 道路運送法の終局的目的は、同法第一條に明示されている通り、道路運送における公共の福祉を確保することにあるのはいうまでもない。
  道路運送に関する秩序が確立し、事業の健全な発達並びに車両の整備及び使用の適正が図られることによつてその終局的目的は達成されるのである。

九 政府としては、自家用、営業用の別を問わず自動車輸送全般の秩序ある健全な発達を所期していることはもちろんであるが、道路運送法の法規制の対象としては、公益的立場から必要なもののみに局限されるべきであると考えるから、目下のところ同條を改正する意思はない。

十 輸送秩序の確立が極めて重要であることは、貴見のとおりで秩序を乱す行為をする者を嚴重に取締ることは当然である。
  自動車運送事業の免許申請に対しては、すべて法規に照して正式に審議され免許基準に合致するものには、免許されるのである。
  道路運送法上、右二点が各々最も重要な事項であつて、秩序を乱す行為の発生原因については、別個の観点から考究されなければならない。

 右答弁する。




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