答弁本文情報
昭和二十八年七月十七日受領答弁第二六号
内閣衆質第三二号
昭和二十八年七月十七日
衆議院議長 堤 康次※(注) 殿
衆議院議員並木芳雄君提出駐留軍に勤務する警備員に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員並木芳雄君提出駐留軍に勤務する警備員に関する質問に対する答弁書
一 芦屋米軍射撃場日本人警備員の発砲傷害事件の事実
国警本部の調査によれば、五月二十五日午後六時頃、福岡県遠賀郡岡垣村芦屋米軍射撃場内において、同村居住人夫畠中辰己(二〇年)等約二十名が許可なく立ち入り、薬きようしゆう集中、米軍警備員山路薫(三九年)に発見され、他の者とともに逃走したが畠中のみ逃げおくれ、施設内の凹地に潜伏しておるところを再び発見せられ、再三停止を命ぜられたるにかかわらず、逃走を企てたので、山路警備員はこれを追跡し、後方約六米のところから所持せるカービン銃を二弾発射し、一弾が畠中の右足首を貫通し、全治一箇月下腿部切断を要する傷害を与えた。
加害者山路は、米軍より日本側警察に引き渡され、同月三十一日殺人未遂容疑をもつて福岡地検小倉支部に身柄とともに送致せられた。
一方、被害者畠中は、退院後刑事特別法違反並びに窃盗未遂容疑で送検せられる予定である。
当初米軍側は、本事故は職務執行中の過失傷害であろうと弁護していたが、検察当局は実地検証等により誤射とは認め難いとの見解をとつている。
なお、調達庁の調査によれば、被害者より行政協定第十八条三項による損害賠償の請求はいまだ提起せられていない趣である。
国警本部の調査によれば、昭和二十七年十月十九日午前三時三十分頃、東京都西多摩郡福生町横田米軍宿舎附近において、日本人警備員沖倉義広(二七年)が右宿舎を覗見していた同町居住半田友幸(二〇年)を誰何尋問したところ逃走したのでこれを追跡発砲して射殺した。
所轄警察署で沖倉警備員を緊急逮捕して取り調べようとしたところ、米軍側から同人の行為は正当であるとて釈放方を要求したが、十一月九日沖倉は東京地検八王子支部に傷害致死容疑で起訴せられ、引き続き公判係属中である。
なお、調達庁の調査によれば、被害者の遺族から行政協定第十八条による損害賠償の請求がなされたが、二十八年一月二十八日米軍側より別途に見舞金二十万円が支払われ示談解決した。
前述の二事例においては警備員が何れも正当防衛、緊急避難の範囲を逸脱して発砲したと認められたので、日本側警察により逮捕せられたものである。
右答弁する。