衆議院

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昭和四十二年三月十七日受領
答弁第一号
(質問の 一)

  内閣衆質五五第一号
    昭和四十二年三月十七日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員春日一幸君提出政府関係機関の抵当権設定のあり方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員春日一幸君提出政府関係機関の抵当権設定のあり方に関する質問に対する答弁書



一 住宅金融公庫、雇用促進事業団(以下「公庫、事業団」という。)の抵当権の設定については、公庫、事業団は主務大臣の認可を受けてその原則を業務方法書に定め(住宅金融公庫 ― 産業労働者住宅資金融通業務方法書第一〇条、雇用促進事業団―雇用促進事業団一般業務方法書第一〇四条の八)、この業務方法書に基づき、相手方の個別の財産状態に応じ金融的判断により、実際の運用を行なつている。
  公庫、事業団の実際の運用としては、融資物件たる建物の担保価値が、十分である場合には、更に当該敷地を担保に徴することはないが、担保価値が十分でないと認められる場合においては、必要と認める限度において増担保を徴することとしている。
  公庫、事業団が、当該敷地についても抵当権を設定させる場合があることについては、一般的に、担保物件については取得価額と処分価額の間に相当の開きがある場合が通例であり、融資物件たる建物の担保価値も建物価額に比して相当低い場合が多いうえに、公庫、事業団の融資に係る産業労働者住宅等は、立地条件、建物の形態等からして処分価額がかなり低くなる場合が多く融資物件たる建物の担保価値が建築価額よりかなり低くならざるを得ないことから、融資物件たる建物の担保価値が十分でない場合がでてくることになり、融資物件たる建物に加えて増担保として他の物件を徴することが必要となる。これは必らずしも当該敷地である必要はないが、建物が当該敷地と切り離されると建物の担保価値に大きく影響する場合が多いので、増担保として当該敷地について抵当権を設定することが適当な方法と考える、としている。

二 融資物件たる建物の敷地にすでに先順位の抵当権が設定されている場合には、公庫、事業団は、土地のみの競売が行なわれる公算が大であり、競売が行なわれると、法定地上権は生じないことから、建物はこれを当然に存続させる根拠を失う結果、無価値となる場合が生ずることとなり、債権の確保上支障をきたすので貸付をしていないが、公庫、事業団とも次のような条件を充足すれば貸付けることとしている。

 イ 当該敷地が分筆可能な場合には、建物の建ぺい率等を考慮して融資物件たる建物に必要と認められる部分のみを分筆して、これに第一順位の抵当権を設定すれば足りる。

 ロ 当該敷地について既に第一順位の抵当権が設定されていても、なお当該敷地だけで融資債権を担保するに十分な余力があると認められる場合には、当該敷地に第二順位の抵当権を設定することとすればよい。

 ハ 当該敷地に担保余力がない場合でも、他の十分なる代担保の提供があれば、貸付けることになる。

三 民法第三八八条の規定により法定地上権が成立するための要件として、土地に抵当権を設定する当時、右地上に建物が存在していたことを要するかという問題については、裁判所は、大正四年七月一日の大審院判決が、「民法第三八八条の規定は抵当権設定当時既に建物が土地上に存する場合の規定であつて、抵当権設定後建物が建築された場合には適用がないことは、同条の明文上からも、また同法第三八九条の規定との対照考察からも疑の余地がない」として、抵当権設定後に建築された建物についての法定地上権の成立を否定して以来、繰り返えし同趣旨の判決を行つており、学説の多数も判例の見解を支持している。
  これに対して一部の学説が判例に反対し、抵当権設定後に建築された建物についても、抵当権者が土地のみの競売をした場合には、法定地上権の成立を認めるべきであり、抵当権者がこれを欲しないならば、同法第三八九条により土地と建物を一括競売すれば足りるとしているが、極く一部の少数説にとどまつている。
  判例及び通説が法定地上権を否定する根拠は、土地がさら地であるか地上権の制限を受けるかはその担保価値としての評価に甚だしい差を生じるのが普通であつて、さら地として評価して抵当権を設定したにかかわらず、後にその地上に建物が建築され、法定地上権の負担を負う土地としてしか競売することができないこととなれば、抵当権者は予期しない損失を蒙むるというところにある。
  右の判例、通説に反対する少数説をとることは、民法の明文の規定の解釈上困難であるし、抵当権設定後他人のために設定した用益権については、民法第三九五条により例外的に保護される短期賃貸借以外は、抵当権の実行によりすべて消滅するものとする民法の建前上、抵当権設定者が自ら建物を建設した場合のみ法定地上権を認めることは権衡を失することとなるであろう。しかも近年に至つて、昭和三十六年二月一〇日の最高裁判所判決も、従来の判例、通説の立場に立つて抵当権設定当時に一部建築に着工していた事案につき、完成後の建物に対する法定地上権の成立を否定している。この裁判所の態度は今後も維持されるであろうことが予測されるから、現行民法の下において今、にわかに前記少数説の見解を採ることは相当でないと考えられる。
  なお、抵当権設定後に建物が建築された場合には、民法第三八九条により一括競売をするのが通例である結果、土地と建物を同一人が競落し、建物の維持存続を図り得るのであるから、建物の存続という公益的要求は達せられることになる。
  次に、立法論であるが、問題は、土地と建物とを各別の不動産として法律上も取引上も各別に取り扱われるわが国の法律制度の下において担保権と用益権をどのように調整するかという問題の一つであつて、かかる調整は、担保権者及び用益権者の利害の衡平、不動産に関する公示制度の在り方、不動産取引の実体等を総合的に検討考慮してなされるべきものであるから、現行の一般的な法秩序の下において右の少数説に即応するような部分的立法のみを行なうことは、慎重に検討を要するものと考えられる。

四 民法第三八八条が前記学説のように解されない場合には、公庫、事業団は、二のイで述べたように、敷地の競売により建物の担保価値がなくなる恐れがあるので、他に十分な代担保がない限り当該敷地だけで十分な担保余力があることが必要であるが、この場合には必ずしも第一順位の抵当権であることは必要でないとしている。

五 公庫、事業団が融資物件たる建物のほかに当該敷地についても第一順位の抵当権を設定している場合の理由は、一で述べたとおりであり、開発銀行、中小企業金融公庫等においても建物を担保に徴する場合には、同様の理由から当該敷地についても第一順位の抵当権を設定する必要がでてくる場合があると考えられる。
  また、公庫、事業団は、融資物件を第一順位の抵当権として徴している場合が大部分であるが、これは開発銀行、中小企業金融公庫等においては、公庫、事業団に比して融資対象の範囲が広く、抵当権設定の対象物件も広範囲にわたり、従つて、不動産に抵当権を設定する場合においても、他の不動産以外の物件について広く担保価値を均てんさせうるので、必ずしも第一順位の抵当権の設定を必要としない場合が多いのに対し、公庫、事業団の貸付対象者は、他に十分な代担保を有しない場合が多いことから、融資物件たる建物に第一順位の抵当権を設定せざるを得ないという事情があることを考慮する必要があると考える。

六 公庫、事業団においても、抵当権を設定させる場合には、借手の資格、信用、能力等を総合的に勘案して行なつているところであり、当該敷地の上に既に第一順位の抵当権が設定されている場合でも、二のような条件を充足すれば貸付けをすることにしている等弾力的な取扱をしていると考えるが、今後とも政策目的を達成するため、できる限り実態に即した弾力的な取扱をするよう努力していきたいと考えている。

 右答弁する。


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