衆議院

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昭和四十四年四月八日受領
答弁第二号
(質問の 二)

  内閣衆質六一第二号
    昭和四十四年四月八日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員松本善明君提出安保条約と防衛問題等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員松本善明君提出安保条約と防衛問題等に関する質問に対する答弁書



一1 安保条約と第六条の実施に関する交換公文は、一体として国会の承認を得ているので、同交換公文を沖繩に適用するにあたつて、これを修正するような特別の取極が行なわれれば、かかる取極の締結については国会の承認を求めるべきものと解され、その限りにおいて、前記の一体をなしたものの実質的な改訂ということとなるが、未だ沖繩に関して特別な取極をするか否かなんら決定をみていない。

 2 総理大臣が安保条約をいかなる形で堅持するかきめていないと述べたのは、一九七〇年六月以降安保条約をいかなる形式で継続させるかについて決定を下していないとの趣旨を述べたものである。

 3 現行安保条約第十条を法律的に変更するためには締結について、国会の承認を経るべき条約によることが必要である。

二1 御指摘の総理大臣の答弁は、安保条約及び第六条の実施に関する交換公文が、仮に特別の定めがなくそのまま沖繩に適用になつた場合には、事前協議に関する政府の今までの解釈には変りはないということを述べたものである。ちなみに、本土への核兵器の持込みにつき事前協議があつても、これに応諾を与えないというのが従来から政府が明らかにしているところである。

 2 事前協議にあたつての政府の基本的態度は、わが国の国益すなわち、日本の安全を確保する見地から自主的に判断して諾否をきめるということである。なお、御指摘の三木外務大臣の答弁は、わが国からの戦闘作戦行動を認めるときは、日本の防衛に対する、すなわち日本の安全に対する重大な脅威が生じた場合であることを述べたものであり、前述の政府の基本的態度とその趣旨において変るところはない。

 3 安保条約第五条は、わが国に対する武力攻撃が発生した場合であるから、この場合の米軍の出動は、2項における場合とは明確に異る。

三1 政府は、従来、わが国には固有の自衛権があり、その限界内で自衛行動をとることは憲法上許されるとの見解のもとに、いわゆる「海外派兵」は、自衛権の限界をこえるが故に、憲法上許されないとの立場を堅持しており、御指摘の、三月一〇日の参議院予算委員会における高(注)内閣法制局長官の答弁は、重ねてこのような見解を明らかにしたものである。
   かりに、海外における武力行動で、自衛権発動の三要件(わが国に対する急迫不正な侵害があること、この場合に他に適当な手段がないこと及び必要最少限度の実力行使にとどまるべきこと)に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと考える。この趣旨は、昭和三一年二月二九日の衆議院内閣委員会で示された政府の統一見解によつてすでに明らかにされているところである。

 2 昭和二七年一一月二五日に、(内閣)法制局が御指摘のような「戦力に関する統一見解」を発表したことはない。自衛のための必要最少限度の実力組織が、同項が保持を禁止している「戦力」に当たらないことは、政府の見解としてすでに明らかにしてきたところである。

 3 性能上純粋に国土を守ることのみに用いられる兵器の保持が憲法上禁止されていないことは、明らかであるし、また、性能上相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器の保持は、憲法上許されないものといわなければならない。
   このような、それ自体の性能からみて憲法上の保持の可否が明らかな兵器以外の兵器は、自衛権の限界をこえる行動の用に供することはむろんのこと、将来自衛権の限界をこえる行動の用に供する意図のもとに保持することも憲法上許されないことは、いうまでもないが、他面、自衛権の限界内の行動の用にのみ供する意図でありさえすれば、無限に保持することが許されるというものでもない。けだし、本来わが国が保持し得る防衛力には、自衛のため
   必要最小限度という憲法上の制約があるので、当該兵器を含むわが国の防衛力の全体がこの制約の範囲内にとどまることを要するからである。
   御指摘の、三月一〇日の参議院予算委員会における高(注)内閣法制局長官の答弁が、この問題を使用するものの意思との関係で論じたのは、右に述べたような趣旨を明らかにしたものであつて、自衛のために使用する意思をもつてさえいれば、憲法上右に述べた兵器を無制限に保持し得ることを述べたわけでは、もとよりない。

 4 3に述べたところによつて、承知されたい(なお、2参照)。

四1 国連憲章第五十一条にいう武力攻撃とは、一国に対する他国の組織的・計画的な武力行使と解される。内乱発生の場合でも、かかる武力行使があれば、当然憲章上の武力攻撃の範疇に入る。

 2 要請国と被要請国との間に外部からの武力攻撃に対し共通の危険として対処しようとする
   共通の関心があるからこそ要請が行なわれ、被要請国はこれに応ずるのであつて、このような場合集団的自衛権を行使することができる。

 3 当該条約の規定によることとなるが、「武力攻撃の発生」という明確な事態に備えて、集団的自衛権を行使するとの約束をとりつけておくというのが、かかる条約の趣旨であるので、別段の定めがない限り、具体的な武力攻撃発生時にあらためて一方の国が要請を行なわなくとも、他方の国は集団的自衛権を行使できる。

 4 武力攻撃の発生した国の要請又は同意なしに、集団的自衛権を行使できる場合は考えられない。

 5 米国のヴィエトナムにおける軍事行動は、ヴィエトナム政府の要請に基づく集団的自衛権の行使であり、その法的根拠は、国連憲章第五十一条に求められる。かかる集団的自衛権の行使はSEATO条約において約束されている。すなわち、SEATO条約第四条1項は、
   「各締約国は、いずれかの締約国又は締約国が全員一致の合意によつて将来指定するいずれかの国若しくは領域に対する条約地域における武力攻撃による侵略が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、その場合において自国の憲法上の手続に従つて共通の危険に対処するため行動することに同意する。」と定めているところ、ヴィエトナムは、同条約の議定書において、前記第四条の適用を受けるべきことが全締約国間に合意されており、SEATO理事会の共同声明でも、北ヴィエトナムのヴィエトナム共和国に対する武力行使が第四条にいう「武力攻撃による侵略」であり、米国等の援助は、SEATO条約に基づく義務の履行であると述べられている。

五1 御指摘の内閣法制局長官の答弁は政府の見解であり、二月二十六日の衆議院予算委員会第二分科会における外務大臣及び条約局長の答弁もこれを確認したものである。

 2 事前協議の主題とされるのは、米軍の戦闘作戦行動にかかる施設・区域の使用であつて、
   これに応諾を与えることがあるとしても、それは、あくまでも施設・区域の使用についての応諾にほかならず、わが国自体が武力の行使をするのとは明らかに違うが、この点については、さらに、米軍に対する基地の提供と憲法との関係について判断を下した最高裁判決(昭和三四・一二・一六日)が参考とされよう。
   この判決は、いわゆる旧安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約)に関して、同条約に基づく米軍の駐留の「目的は、専らわが国およびわが国を含めた極東の平和と安全を維持し、再び戦争の惨禍が起らないようにすることに存し」、したがつて、その駐留は、「憲法九条、九八条二項および前文の趣旨に適合こそすれ、」云々と述べて、米軍の駐留が憲法第九条、第九八条第二項及び前文に違反するとは断じ得ないとしている。
   同条約は、いわゆる現安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)のような事前協議条項を欠いており、わが国は、同条約によつて、すなわち同条約の
   締結という政府の行為によつて,駐留米軍による戦闘作戦行動のための基地としての施設及び区域の使用が、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するためのものである限り、その態様のいかんにかかわりなく、これを包括的に承認していたのであるが、最高裁は、このような実体をもつていた同条約による米軍の駐留をむしろ「憲法九条、九八条二項および前文の趣旨に適合こそすれ………」と判断したのである。
   右の理は、現安保条約についても、変わるところがあろうはずはなく、現条約に基づく米軍の基地(施設及び区域)の使用について、応諾を与えることが憲法第九条、第九八条第二項及び前文に違反することは、あり得ないことである。

 3 事前協議における諾否の決定にあたつては、米国が国連憲章に合致した行動をとるとの前提の下で、わが国の国益、すなわち日本の安全を確保する見地から自主的に判断することになる。

 4 前項にかんがみ事前協議における諾否の決定は、政策上の問題であつて、憲法違反となるような問題ではない。

 右答弁する。


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