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答弁本文情報

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昭和四十七年六月二十二日受領
答弁第一五号
(質問の 一五)

  内閣衆質六八第一五号
    昭和四十七年六月二十二日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員西中清君提出事前協議制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員西中清君提出事前協議制度に関する質問に対する答弁書



一について

 政府は、第六十八回国会において、事前協議制度の運用について検討するとともに米側とも適当な機会に話し合う考えであることを明らかにしたが、これは、現行安保条約締結以来すでに十二年を経過し、また、沖繩が復帰したという事情もあり、さらに、本制度に関してはしばしば国会でも問題が提起されることを念頭に置き、このような問題を整理してみたいと考えたからである。
 右の検討及び米側との話し合いに際し、政府としては、事前協議制度そのもの(すなわち、安保条約第六条の実施に関する交換公文に定められている事前協議の主題となるべき三つの項目)に手を触れるつもりはなく、主としてこの制度の運用面について、日米間でその理解の内容を改めて確認することとしたいと考えている。
 なお、米側との話し合いの結果については、しかるべくこれを明らかにする所存である。

二及び三について

 事前協議の主題となる「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」にいう「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、したがつて、名目のいかんを問わず、米軍がわが国の施設・区域から発進する際の任務・態様がかかる行動のための施設・区域の使用に該当する場合には、事前協議の主題とされるのである。
 右のような「戦闘作戦行動」の典型的なものとして考えられるのは航空部隊による爆撃等であり、通常の補給等のための施設・区域の使用は事前協議の対象とならないが、このような補給等の行動であつても、それらの行動の任務・態様上当該行動が「戦闘作戦行動」と密接不可分な関係にあり、客観的に「戦闘作戦行動」と一体と観念されるべきものである場台(従来から例示されている空挺部隊に戦場において空中から武器、弾薬を投下するようなケース)には、かかる行動を日本国から行なうための基地の使用は、事前協議の主題となる。
 政府が従来から「戦闘作戦行動」と密接不可分な行動は事前協議の主題となるとの趣旨を述べているのは、前述のような考え方に立つものであるから、質問の二(ロ)で例示されたようなものは、これに該当しない。

四について

 引用のあつた昭和四十四年三月十三日の政府答弁は、他国の基地を戦闘作戦行動のため発進した米軍機がわが国の施設・区域に立ち寄つて給油を受けたのち発進する行為を念頭に置き、このような施設・区域の使用の態様は事前協議の対象となる旨を述べたものであり、KC一三五型給油機による空中給油に関する最近の政府答弁とは、別の問題を論じたものである。
 なお、右の空中給油については、当該給油機がわが国の施設・区域から飛び立つ行為自体は、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての施設・区域の使用」に該当せず、また、前述のとおり、「戦闘作戦行動」と密接不可分な関係にあつて客観的に「戦闘作戦行動」と一体と観念されるべきものではないから、事前協議の対象とはならない。

五について

 米国が日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地として日本国内の施設及び区域を使用する際には事前協議を行なわなくてはならないことは、米国がわが国に対して負つている明確な条約上の義務であるから、米国がかかる義務を履行しないというようなことはありえず、このことは、特定の戦闘作戦行動が軍事上いかなる機密性を持つかということとは全く関係がない。

六について

 引用のあつた昭和三十五年四月二十八日の政府答弁は、事前協議に対処する場合の日米双方の最終的な責任者について論じたものであることは、その内容から見て明らかである。
 他方、政府としては、本年五月二十四日の引用のあつた政府答弁にもあるように、事前協議が行なわれる場合の具体的な形式は必ずしも固定しているわけではないと考えるものであるが、このことは、前述の責任の問題とは全く別の問題であり、事前協議の諾否を決定する最終的責任者が内閣総理大臣であるとの政府の考えには、従来ともなんら変わりがない。

七について

 (イ)及び(ロ)について

 事前協議制度の運用に際しての政府の基本的態度は、わが国益確保の見地から具体的要素に即して自主的に判断して諾否を決定するということであるが、「戦闘作戦行動のための基地としての施設・区域の使用」にかかる事前協議に対処する際の「国益」とは、いうまでもなく日本国の安全を確保するということであり、その際、極東の安全なくしては、わが国の安全を十分に確保しえないとの認識の下に、極東の安全に関係する事態を常にわが国自身の安全との関連において判断し、わが国の安全に直接、また、きわめて密接な関係を有するかどうかという見地から対処することとなる。
 政府は、現下のヴィエトナム紛争との関係で「戦闘作戦行動のための基地としての施設・区域の使用」について、仮りに米側から事前協議があつたとしても、これに許諾を与えない考えであるが、これは右に述べたがごとき見地に立つての判断にほかならない。

 (ハ)及び(ニ)について

 国際連合の集団措置に基づく場合か自衛権の行使の場合以外の武力行使が禁じられている国際連合憲章下においては、米軍の行動は、そもそも相手国からの侵略行為があつた場合にのみ行なわれるものであり、かかる侵略を排除するための米軍の行動がわが国の施設・区域の使用を伴うことがあつても、米軍の行動の相手国がわが国に対し報復攻撃を行なうことはわが国に対する侵略であり、国際法上認められない。

 右答弁する。




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