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答弁本文情報

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昭和五十三年六月九日受領
答弁第三七号
(質問の 三七)

  内閣衆質八四第三七号
    昭和五十三年六月九日
内閣総理大臣 福田赳夫

         衆議院議長 保利 茂 殿

衆議院議員馬場昇君提出水俣病及び水俣病に関連する諸施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員馬場昇君提出水俣病及び水俣病に関連する諸施策に関する質問に対する答弁書



一について

 チッソ株式会社水俣工場の排出した有機水銀に起因する健康被害及び生活環境に係る被害は、我が国において他に類例を見ないほど大きい水質汚濁による公害であると認識している。

二について

(1) 有機水銀により汚染された魚介類を摂取したことによる健康被害は、水俣病としてとらえられるが、その認定は、本人の申請に基づき、認定審査会の意見を聴いて行われることから、今後の水俣病認定患者数の見通しを立てることは困難である。

(2) 水俣病に関する医学的調査及び研究を総合的に推進するため、環境庁に附属機関として国立水俣病研究センターを設置することとし、現在準備を進めているところである。
    同センターについては、逐次研究体制の整備充実を図つてまいりたい。

(3) 水銀汚染の実態調査については、昭和四十六年から昭和四十九年にかけて実施された水俣湾周辺地区住民健康調査、昭和四十八年に実施された有明海八代海環境総合調査等があるが、今後、更に調査を行う必要があるかどうかも含めて関係地方公共団体等と十分協議しつつ研究してまいりたい。

三について

 水俣病は、人類未曾有の経験であり、原因の究明に日時を要したことは事実であるが、政府は、これまで一貫して被害の拡大防止、被害者の救済等の対策を講じてきたところである。
 また、水俣病をめぐる刑事事件については、捜査当局において所要の措置を講じてきたところである。
 なお、御質問において引用されている判決は、検察官において上告中のものであつて未確定である。

四について

(1)から(3)まで 御質問の判決は、熊本県知事が国の機関として処理する水俣病の認定業務に係るものであり、当該業務の促進については政府としても努力を払つてきた。すなわち、水俣病に関する関係閣僚会議の申合せの趣旨に沿つて、昭和五十二年七月には後天性水俣病の判断条件を明らかにし、熊本県における月間百五十人検診、百二十人審査体制の整備に努め同年十月から実現させる等、各般の施策を積極的に講じてきたところである。
    認定申請の処理期間については、公害健康被害補償法上具体的な定めはなされていないが、被害者の迅速かつ公正な保護を図るという同法の目的に沿うよう、今後とも事態の進展に即応しつつ、引き続き最大限の努力を払つてまいりたい。

(4) 水俣病の認定に関する指針については、これまでの医学的知見の進展を踏まえ、医学の関係各分野の専門家による検討の結果を取りまとめ昭和五十二年七月「後天性水俣病の判断条件について」として明らかにしたところである。

(5) 認定を受けないで死亡した認定申請者については、「後天性水俣病の判断条件について」に掲げる資料により審査がなされることとなる。

(6) 認定業務を更に促進するための現実的かつ実効ある対応策について、現在、熊本県と鋭意協議を重ねているところである。

五について

(1) PPPは、もともとOECDが昭和四十七年五月及び昭和四十九年十一月に行つた理事会勧告の中で提唱された経済政策上の原則であり、その趣旨は、汚染防除費用は原則として汚染者が負担すべきであり、国はこのために援助すべきではないというものである。
    我が国では、公害に係る費用の負担について、従来から、汚染防除費用のほか環境復元費用及び被害救済費用についても汚染者に負担させるという考え方が提唱されており、この考え方に即した立法上の措置もなされている。

(2) 一般に国又は地方公共団体が不法行為につき損害賠償の責めに任ずる場合においては、国家賠償法、民法その他の実定法の定めるところによるのであつて、御質問のような政策上の原則としてのPPPに反するかどうかの問題は生じない。

(3)及び(5) チッソ株式会社に対する援助救済問題については、昭和五十三年一月二十四日の関係閣僚会議において決定された方針に従い、現在、関係省庁間で救済の具体策について鋭意検討を進めており、可及的速やかに成案を得たいと考えている。

(4) チッソ株式会社は塩化ビニール、化学肥料、ポリプロピレンを主力製品としているが、塩化ビニール及び化学肥料は、構造的な不況に陥つているのに加えて、ポリプロピレンも最近では市況が振るわず、経営は不振を続けている。
    政府としては、これら製品全般の市況を回復させるため、需給バランスの改善のための種々の行政指導を行つてきているが、チッソ株式会社としても経営の健全化を実現するため、水俣工場のみならず他工場においても、収益改善のための努力を続けていくことが肝要であると考える。
    今後同社が業績改善のため新製品の開発等について具体的計画を立てる場合等においては、できる限りの支援を行つていく所存である。

六について

 現行制度は、有機水銀に汚染された魚介類を摂取したことにより健康被害を受けた者を対象とするものであり、それ以外の者を対象とする制度を設けることは考えていない。

七について

(1) 除去基準値二十五ppmは、各分野の専門家によつて構成される中央公害対策審議会において総合的に検討された答申を受けて環境庁が定めた「水銀を含む底質の暫定除去基準」に基づいて熊本県が算定したものである。

(2) 熊本県に設置されていた技術委員会及び計画委員会においては、水俣湾の堆積汚泥処理についてそれぞれの見地から検討が行われ、その検討に基づき昭和五十年六月に堆積汚泥処理計画案及び監視基本計画案がまとめられ、既に公表されていると承知している。

(3) 水俣湾堆積汚泥処理事業の実施に当たつては、二次公害の発生を防止することが、是非とも必要である。
    このため、既に本工事の事業主体である熊本県により、工事水域と一般水域との境界に魚介類の入出を極力防止するための仕切網等の設置がなされており、今後、これに引き続き、工事受託者である第四港湾建設局において北側湾口部に湾内潮流を減ずる効果をもたらすための仮締切堤を設置することとしている。
    また、しゆんせつ埋立工事については、@カッターレスポンプ船等の採用、A埋立地の余水吐きから排出される余水については、排出前の十分な余水処理の実施、B試験工事の実施など、二次公害を防止するため最善の努力を払うこととしている。
    更に、これら工事中の環境監視については、熊本県が、監視委員会に諮り策定した監視計画に基づき、監視を行うこととなつており、同計画の基準に適合しない場合には工事を中断して原因を調査した上で必要な措置を講ずることとしている。
    事業に関しての地元住民に対する説明は、従来より事業主体として熊本県が鋭意行つてきたところであるが、今後とも地元住民の理解と協力が得られるよう同県を指導するとともに、同工事の受託者である第四港湾建設局に対しても慎重に対処するよう指示することとしている。

八について

 水俣・芦北地域の振興を図るため、現在、熊本県において、地元関係市町の協力を得て、振興計画の策定を進めていると承知している。
 政府としては、特別法の制定は考えていないが、熊本県の策定する計画に沿つて、当該地域の振興が図られるよう、できる限り協力していく考えである。

 右答弁する。




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