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平成元年十月二十日受領
答弁第一号

  内閣衆質一一六第一号
    平成元年十月二十日
内閣総理大臣 海部俊樹

         衆議院議長 田村 元 殿

衆議院議員新村勝雄君提出船底塗料などに使用されている有機スズ化合物に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員新村勝雄君提出船底塗料などに使用されている有機スズ化合物に関する質問に対する答弁書



一について

 トリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)及びトリフェニルスズ化合物(以下「TPT化合物」という。)について、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号。以下「化審法」という。)第二十三条第一項に規定する届出等により把握している内容は、別表一のとおりである。
 なお、我が国において船底塗料及び漁網防汚剤に使用するTBT化合物及びTPT化合物の出荷については、昭和六十三年八月までに、TBT化合物のうちビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)が停止され、また、平成元年六月までにすべてのTPT化合物が停止されている。

二について

 昭和六十三年度において船底塗料に使用されたTBT化合物は七種類、TPT化合物は五種類であり、漁網防汚剤に使用されたTBT化合物は三種類、TPT化合物は二種類である。これらを用いた船底塗料及び漁網防汚剤は、極めて多種多様であるため、種類数及び種類ごとの量については、把握が困難である。

三について

 TBT化合物の中で現在船底塗料に使用されているものとしては、トリブチルスズ=メタクリラート、ビス(トリブチルスズ)=フマラート、トリブチルスズ=フルオリド、ビス(トリブチルスズ)=二・三 ― ジブロモスクシナート、アルキル(C=八)=アクリラート・メチル=メタクリラート・トリブチルスズ=メタクリラート共重合物、ビス(トリブチルスズ)=マレアート及びトリブチルスズ=一・二・三・四・四a・四b・五・六・十・十a ― デカヒドロ ― 七 ― イソプロピル ― 一・四a ― ジメチル ― 一 ― フェナントレンカルボキシラート及びこの類縁化合物の混合物(別名トリブチルスズ=ロジン塩)があり、その化学的形態は別表二のとおりである。
 現在、TPT化合物については、船底塗料としては使用されていない。

四について

 化審法第二条第四項に規定する指定化学物質に指定されているTBT化合物十三物質及びTPT化合物七物質については、同条第三項第一号に規定する「自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある化学物質」に該当する疑いがあるとの結果を得ている。
 TBTOについては、化審法第二条第二項第一号イに規定する「自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生物の体内に蓄積されやすいものである」との結果を得ている。なお、同号ロに規定する「継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるもの」であるか否かについては、その十分な評価を行うため、現在、調査を行っているところである。
 これらの結果は、新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める命令(昭和四十九年総理府・厚生省・通商産業省令第一号)第二条に規定する試験を実施し、当該試験結果等を厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会において審議して得たものである。

五について

 TBTOが化審法第二条第二項第一号ロに規定する「継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるもの」であるか否かについて十分な評価をするためには、従前行ってきた既存文献の調査に加え、更に慢性毒性等の知見が必要であるので、これらに関する追加調査を行っているところである。現時点で調査等に要する期間を明示することは困難であるが、調査結果がまとまり次第、速やかに、化審法による規制について検討してまいりたい。

六について

 化審法附則第二条に規定する既存化学物質名簿に記載されている既存化学物質については、化審法附則第四条により、化審法第四条第五項に規定する試験を行う必要があるものを、厚生大臣及び通商産業大臣が環境庁長官の意見を聴いて選定することとされており、化審法の運用上、厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会の審議を経てこれを行っている。この際、種々の既存化学物質について製造量、輸入量、使用目的、化学構造、環境中における残留状況等を考慮して選定を行うこととしている。TBTO並びに化審法第二条第四項に規定する指定化学物質に指定されているTBT化合物及びTPT化合物は、すべて既存化学物質であり、このような考え方に基づき選定したものである。
 なお、新規化学物質については、化審法第四条第一項に基づく届出から三月以内(化審法第五条の二第一項に基づく届出の場合には四月以内)に判定を行うこととしている。

七について

 化審法第二十三条第一項に規定する届出等により把握しているところによれば、国内において船底塗料及び漁網防汚剤に使用されるTPT化合物の出荷状況については、昭和六十二年度において三百八トン、昭和六十三年度において二百八十二トン、更に平成元年度において出荷が停止されるまでの間に二十六トンと推移している。このことからも、駆け込み的な出荷が行われた事実があったとは思われない。

八について

 化審法第三十二条第二項の規定に基づく報告の徴収により把握しているところによれば、平成元年度におけるTPT化合物については、既に出荷が停止されている船底塗料原料用及び漁網防汚剤原料用以外では主として輸出用に出荷が行われている。
 平成元年度第一・四半期において、TPT化合物の製造数量は百三十四トンとなっている。同期において、TPT化合物百十四トンが、アメリカ合衆国、台湾、フィリピン等に向けて輸出されている。

九について

 昭和六十二年度から、船底塗料中のTBT化合物の溶出量の測定方法等について調査研究を進めているところである。

十について

 昭和六十三年度、東京湾の港内及び航路内の五箇所についてTBT化合物による汚染状況の調査を実施したところ、水質については、十検体中すべての検体から検出され、検出濃度は〇・〇〇〇〇〇五ppmから〇・〇〇〇〇四一ppmの範囲であった。また、底質については、五検体中すべての検体から検出され、検出濃度は〇・〇〇二四ppmから一・五五ppmの範囲であった。
 なお、水質、底質ともに、航路内に比べ、より閉鎖性の高い港内の方がTBT化合物の濃度が高いという傾向を示している。

十一について

 TBT化合物やTPT化合物を含有する船底塗料等については、その製造、使用等の面で、環境の汚染を防止するためのマニュアルの作成及びその普及、製品中のTBT化合物等の含有率の低減、可能な限りの使用の自粛等を指導しているところである。
 さらに、化審法第二条第二項に規定する第一種特定化学物質については、製造及び輸入の許可、使用の制限等の規制を受けることとなるが、TBTOについては、当該第一種特定化学物質に該当するか否かにつき、調査を行っているところである。
 なお、TBTO以外のTBT化合物及びTPT化合物については十九についてにおいて述べたとおりである。

十二について

 TBT化合物又はTPT化合物を使用する船底塗料及び漁網防汚剤の代替品としては、船底塗料については従来の銅系の製品を改良した製品、漁網防汚剤については有機窒素系、有機窒素硫黄系の製品等の開発が行われているところである。現在、一部に使用されている製品もあるが、効果の持続期間等がTBT化合物又はTPT化合物を使用する船底塗料又は漁網防汚剤に比べて劣っているため、引き続き各々の業界において鋭意代替品開発を進めているところである。

十三及び十四について

 我が国に入港する外国船籍の船舶も含め、外航船に係る規制は国際的に統一されたものであることが望ましく、既に、国際連合の専門機関である国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会において、船底塗料における有機スズ化合物の使用に関する問題について検討を行っているところであり、我が国としては、同委員会における検討結果を踏まえ、今後適切に対処してまいりたい。

十五について

 現在の化審法においては、化学物質の審査を、それが環境中に放出された後の化学変化等も考慮して行い、その結果等に基づき第一種特定化学物質、第二種特定化学物質等を指定して所要の規制措置を講ずることとしている。

十六について

(一) 船底塗料を実際に使用する事業者の団体である社団法人日本造船工業会等に対し、TBT化合物及びTPT化合物を含有する船底塗料の使用、管理方法等に関するマニュアルを作成の上、関係者に対し周知徹底を図るよう指導し、これらの団体においては、これを受けてマニュアルを作成の上、周知徹底を図っているところである。

(二) TBT化合物及びTPT化合物に係る労働災害については、昭和五十七年に、TPT化合物を含有した塗料を用いた船体外板の吹付塗装作業において、塗料の飛沫により労働者が角膜腐食の災害を受けた事例が報告されている。

(三) 有機スズ化合物取扱者を対象とした特別の健康診断については、現在、法令上その実施を義務付けていない。これは、有機スズ化合物による健康障害の報告例が極めて少ないことによるものである。
    なお、有機スズ化合物取扱者を含め労働者一般について、事業者は、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)に基づき、一年以内ごとに一回、定期に健康診断を実施しなければならないこととされている。

十七について

 TBT化合物、TPT化合物を含む廃棄物の処理マニュアルは作成していない。
 これらの処理実態に関する調査を昭和六十三年度及び平成元年度の二年間で実施しているところであり、結果の取扱いについては、今後、検討することとしている。

十八について

 TBT化合物及びTPT化合物についての人体組織中濃度の測定例については、現在のところ承知していない。

十九について

 TPT化合物七物質については、その環境汚染状況にかんがみ、化審法第二十四条に基づき、平成元年七月に厚生大臣及び通商産業大臣が製造事業者及び輸入事業者に対して有害性の調査の実施及びその結果の報告を指示したところであり、今後その調査結果を踏まえて所要の措置を実施していくこととしている。
 TBT化合物十三物質については、平成元年九月に環境庁が中央公害対策審議会の審議を経て発表した「昭和六十三年度生物モニタリング(トリブチルスズ化合物)結果の概要」において、その一般環境における環境汚染状況は、「直ちに危険な状況にあるとは考えられない」とされているものの、同時に「現在のTBT化合物の使用状況を勘案すれば、本化合物に関する調査を継続することにより、今後とも環境汚染の状況を監視していくことが必要である」とされている。政府としては、今後とも必要に応じて化審法に基づく規制を強化する等の環境汚染対策を推進していくこととしている。

二十について

 水質汚濁に係る環境基準の項目にTBT化合物及びTPT化合物を追加することについては、現在、行われている毒性、水質等に関する諸調査の結果を得て、検討していくこととしている。



別表一
  昭和63年度トリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物の製造、輸入、出荷
(単位:トン)
昭和63年度トリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物の製造、輸入、出荷


別表二

別表二


別表二




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