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平成三年十二月二十七日受領
答弁第五号

  内閣衆質一二二第五号
    平成三年十二月二十七日
内閣総理大臣 宮澤喜一

         衆議院議長 櫻内義雄 殿

衆議院議員渋谷修君提出「不動産業向け貸出しの総量規制の解除」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員渋谷修君提出「不動産業向け貸出しの総量規制の解除」に関する質問に対する答弁書



一について

 大都市圏を中心に地価の水準は依然高水準にあり、現状においては御指摘の地価水準は実現されたものとは認識していない。
 適正な地価水準の実現等の土地政策の目標を達成するため、今後とも、総合的な土地対策の推進に努力してまいりたい。

二について

 不動産業向け貸出しに係るいわゆる総量規制(以下「総量規制」という。)は、平成二年四月、地価の動向等にかんがみ、非常緊急の措置として導入されたものである。
 以後、金融機関の不動産業向け貸出しの伸びは大幅に低下してきており、その効果は着実に浸透してきている。また、各種の土地対策が推進され、これにより、先日、国土庁が取りまとめた最近の地価動向によれば、大都市圏における地価の下落傾向は強まりつつあり、また地方圏においても、沈静化している地域が拡大しつつある。
 このような状況を踏まえ、非常緊急の措置である総量規制を解除することが適当と判断した。
 なお、総合土地政策推進要綱(平成三年一月二十五日閣議決定)においては、「金融経済情勢等を総合的に勘案しつつ、当面、不動産業向け貸出しの総量規制を継続して実施する。」とされたところである。もとより総量規制は、非常緊急の措置として位置付けられており、その所期の目的はおおむね達成されたと考えている。
 今後においては、都市計画・国土計画等のより構造的かつ総合的な土地対策を強力に推進していく必要があると考えている。

三について

 投機的な土地取引等を抑制するため、これまでも、国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)の監視区域制度の創設及びその的確な運用、土地譲渡益に係る超短期重課制度等の土地税制の活用、土地関連融資の適正化を図るための各般の措置等の施策を実施してきているが、今後とも、金融機関に対して投機的な土地取引等に係る融資を厳に排除するよう引き続き指導するなど、各般の施策を強力に推進していくこととしている。

四について

 金融機関の融資は、本来個別金融機関の自主的な経営判断に基づいて行われるべきものであるが、業務の公共性に照らし、融資の実行に当たっては、いやしくも社会的批判を招くようなことがあってはならない。このような観点から、金融機関の土地関連融資については、その適正化を図るため、従来から通達の発出等を通じ厳正に指導してきたところである。
 このような指導は、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)、長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)、信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)等において金融機関の業務の公共性がうたわれていること及び大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)において銀行等金融機関の監督が大蔵省の所掌事務とされていることを背景としたものである。
 具体的には、昭和六十一年四月以降累次にわたる通達を発出し、投機的な土地取引等に係る融資を厳に排除するよう指導するとともに、昭和六十二年七月から土地関連融資に係る特別ヒアリングを開始した。政策の発動に当たっては、特定の地価水準を目安とすることなく、機動的に対処してきたところであるが、ちなみに、昭和六十二年の都道府県地価調査結果によれば、同年七月一日時点における住宅地の全国平均の地価上昇率は、前年比九・二パーセントであった。その後、平成二年四月に総量規制を導入したが、直前の平成二年地価公示結果によれば、同年一月一日時点における住宅地の全国平均の地価上昇率は、前年比十七・〇パーセントであった。

五について

 特別ヒアリング開始時(昭和六十二年七月)以降の全国銀行の不動産業向け貸出残高と地価動向の推移は別表一のとおりである。

六について

 これまで総量規制については、特定の数字のみを目安とすることなく、地価動向、金融機関の融資動向、金融経済情勢等を総合的に勘案しつつ、適時適切に対処してきたところである。

七について

 今後においては、総量規制について、時機を逸することなくこれが効果的に発動される仕組み、いわゆるトリガー(引き金)方式(以下「トリガー方式」という。)を採用することとしている。具体的には、前年同月比でみた金融機関の不動産業向け貸出しの伸びと総貸出しの伸びを比較して、二箇月以上連続して前者が後者を三パーセントポイント以上上回った場合、金融界に対し注意を喚起し、さらに二箇月以上連続して前者が後者を五パーセントポイント以上上回った場合には、金融経済情勢等を総合的に勘案しつつ、総量規制を導入する体制を整えるというものである。
 なお、金融機関の融資は、本来各金融機関の自主的な経営判断に基づいて行われるべきものであるが、金融機関の業務の公共性と土地問題の重要性にかんがみ、行政指導としての総量規制を行っているところである。このような総量規制の性格及び政策の機動性・弾力性の確保の必要性にかんがみ、トリガー方式については、行政指導上の指針として運用してまいる所存である。

八について

 金融機関の土地担保融資について、先般、総量規制を平成三年末をもって解除することとしたことに伴い発出した通達において、担保となる不動産の価格を把握するに際し、時価に偏重することなく価格の妥当性を十分チェックするとともに、適正な掛け目に基づいて担保権を設定する等不動産担保評価の厳正化に努めることを求めたところである。
 また、土地政策の的確な実施のためには、土地情報を総合的に整備することが必要である。現在、学識経験者による検討を踏まえ、土地情報の収集・整備・管理の在り方等について検討しているところであり、今後とも、土地情報の総合的整備に積極的に取り組んでまいりたい。

九について

 今後とも、より構造的かつ総合的な土地対策を強力に推進していく必要があると認識しており、監視区域制度については、引き続き厳正かつ的確な運用を確保するため、関係地方公共団体を指導してまいりたい。

十について

 監視区域において、平成二年中に届出を受理した件数及び同年中に勧告を行った件数については、別表二のとおりであり、このうち、勧告を受けた者が勧告に従わずその旨の公表が行われたものはない。
 また、監視区域においては、平成二年中に届出を処理した件数の約四割について価格の引下げ等の指導が行われており、これを通じて地価の沈静化に大きな効果があったものと考えられる。

十一について

 監視区域の指定等具体的な制度の運用については、地域の実情に精通した都道府県知事等にゆだねられているところであるが、地価の上昇が全国的に波及していく状況を踏まえ、一年間の地価上昇率が一定率になった地域については早急に指定すること等を内容とする「監視区域制度の運用指針について」(平成二年六月十一日国土庁土地局長通達)を発出し、制度のより厳正かつ的確な運用を図ってきたところである。



別表一

 全国銀行の不動産業向け貸出残高と地価の推移(昭和六二年七月〜平成三年九月)

全国銀行の不動産業向け貸出残高と地価の推移(昭和六二年七月〜平成三年九月)
(注)
一.全国銀行とは都市銀行、長期信用銀行、信託銀行、地方銀行、及び第二地方銀行協会加盟行をいう。
二.貸出残高は、各月末時点のものである。
三.都道府県地価調査は、各年の七月一日時点のものである。
四.公示地価は、各年の一月一日時点のものである。



別表二

 平成二年中の都道府県別監視区域における届出件数及び勧告件数

平成二年中の都道府県別監視区域における届出件数及び勧告件数




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