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平成九年一月二十四日受領
答弁第五号

  内閣衆質一三九第五号
    平成九年一月二十四日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員辻元清美君提出ホルマリンによる食品と海洋の汚染に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員辻元清美君提出ホルマリンによる食品と海洋の汚染に関する質問に対する答弁書



一について

 ホルマリンとはホルムアルデヒドの水溶液である。我が国におけるホルマリンの年間製造量は、通商産業省において作成する化学工業統計によれば、平成七年で百三十九万トンであり、ホルムアルデヒドの輸入量は、大蔵省において作成する大蔵省貿易統計によれば、平成七年で二十トンである。ホルマリンの主な使用用途は、製造業者の団体であるメタノール・ホルマリン協会の資料によれば、ポリアセタール樹脂、フェノール樹脂等の樹脂、接着剤、合成ゴム等の原料である。

二について

 ホルマリンについては、医薬品として製造販売されるものを除き、その販売に際し使用目的を把握していないことから、御指摘の水産業において使用されている量を把握することは困難である。ホルマリンを養殖業において薬剤として使用することについては、魚介類が食品となった場合の残留性等が十分解明されていないことから、極力避けるよう従来から水産庁長官通達等により養殖業者等に対し指導しているところである。

三について

 毒物又は劇物の販売を業として行う者については、毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第四条に基づき都道府県知事に登録するとともに、同法第十四条に基づき毒物又は劇物を販売したときは書面を受領し保存することとされている。また、ホルマリンを業務上取り扱う者については、同法第二十二条第五項において準用する同法第十一条に基づき、盗難防止、流出防止等の措置を講ずることとされている。
 これらに基づく取締りを行うため、毒物及び劇物取締法第十七条に基づき毒物劇物監視員による立入検査等を行っているが、平成六年一月から平成八年十月までの間において、御指摘のとらふぐの養殖業者をその対象とした事例がないことから、現在、ホルマリンを業務上取り扱う者に該当するおそれのあるとらふぐの養殖業者及びこれに対するホルマリンの販売元について、同法の違反がなかったかに関して調査を行っているところであり、その結果を踏まえ必要な措置を講じる所存である。

四について

 家庭用品に含まれるホルムアルデヒドはアレルギー性皮膚炎の原因となるおそれがあり、特に、この物質を高濃度に含有する繊維製品を着用した場合には、アレルギー性皮膚炎を起こしやすいことから、これらの健康障害を防止するため、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十二号)第四条第一項に基づき、家庭用品の使用態様に応じて含有量の基準値を設定しているところである。
 基準値の設定に当たっては、特に乳幼児は皮膚が敏感であること等も考慮し、乳幼児用のおしめ、下着等の繊維製品についてはホルムアルデヒドが検出されてはならないものとし、乳幼児用以外の下着等の繊維製品及びかつら等に使用される接着剤については、各種の毒性試験結果から健康障害を起こさない含有量を算定し、それを基に基準値を設定している。

五について

 有毒な又は有害な物質については、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止する観点から、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第四条において、有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるものを販売し、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない旨規定している。ただし、同条第二号の「人の健康を害う虞がない場合として厚生大臣が定める場合」として食品衛生法施行規則(昭和二十三年厚生省令第二十三号)第一条第一項において「有毒な又は有害な物質であつても、自然に食品又は添加物に含まれ又は附着しているものであつて、その程度又は処理により一般に人の健康を害う虞がないと認められる場合」は、この販売等の禁止の例外としている。ホルマリンについては有害性が認められるため、ホルマリンが含まれ、又はその疑いがある食品は、同法第四条による規制の対象となり得るが、自然に食品又は添加物に含まれているホルマリンであって、含有量が微量で、継続して摂取しても人の健康を損なうおそれがないと認められる場合には、同条による販売等の禁止の対象とはならないと考える。

六について

 厚生大臣又は都道府県知事等は、食品衛生法第十七条に基づき、必要があると認めるときは、営業を行う者その他の関係者から必要な報告を求め、当該官吏吏員に営業の場所等に臨検し、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物等を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物等を無償で収去させることができることとされており、有毒な、若しくは有害な化学物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いのある食品等については、この規定に基づき、個々の事例に応じ必要な措置を講じているところである。
 また、食品衛生法第二十二条に基づき、営業者が同法第四条等の規定に違反した場合においては、営業者若しくは当該官吏吏員にその食品、添加物等を廃棄させ、その他営業者に対し食品衛生上の危害を除去するために必要な処置を採ることを命じ、又は営業の許可を取り消し、若しくは営業の全部若しくは一部を禁止し、若しくは期間を定めて停止することができることとされており、この規定に基づき、個々の事例に応じ必要な措置を講じているところである。

七について

 厚生省においては、現在のところ、御指摘のあった養殖されたとらふぐのホルマリンの含有量については把握していないが、今般都道府県に対し、流通しているものについて、ホルマリンの残留実態を調査し及び必要な場合は食品衛生法に基づく検査を実施するよう指示したところである。

八及び九について

 出荷用とらふぐの切り身から含有率(当該物質の重量をその物質が含まれる試料の重量で除した数をいう。以下同じ。)百万分の一・三のホルマリンが検出されたという新聞報道については承知しているが、具体的な事実関係については承知していないところである。仮に報道のとおりホルマリンが検出されたとしても、従来食用としている魚介類のうち、まえそ(含有率百万分の二百二十二)、ぐち(含有率百万分の九・四)、こち(含有率百万分の四・六)、まだら(含有率百万分の一以上百万分の三百五十以下)、すけとうだら(含有率百万分の二以上百万分の百九十以下)、いか(含有率百万分の一・八)、えび(含有率〇以上百万分の二・四以下)については、天然成分としてホルムアルデヒドを含有することが国立衛生試験所等の研究結果として報告されていることから、検出されたホルマリンが天然由来のものか、養殖のために使用され残留したものなのかを判断することは困難である。
 厚生省においては、都道府県に対し、流通している養殖とらふぐのホルマリンの残留実態調査を行うよう指示したところであり、その結果を踏まえ、必要に応じて所要の措置を講じてまいりたい。

十について

 ホルマリンを養殖業において薬剤として使用することについては、魚介類が食品となった場合の残留性等が十分解明されていないことから、極力避けるよう従来から水産庁長官通達等により養殖業者等に対し指導しているところであり、今後とも指導の徹底を図ってまいりたい。

十一について

 御指摘のあこやがいの大量へい死については、現在水産庁を中心に実態調査及び原因の究明を行っているところであり、あこやがいの大量へい死ととらふぐ養殖に使用されるホルマリンとの因果関係は不明である。

十二について

 御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数は、以下のとおりである。

御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数


御指摘の県におけるとらふぐ養殖及び真珠養殖の漁業協同組合別経営体数
備考
一 経営体数は、平成八年度における各県による調査。
二 一の経営体が二以上の組合に所属している場合は、それぞれの組合に計上。

十三について

 平成八年のあこやがいの大量へい死の原因については、被害県の水産試験場等において調査が行われており、同年夏期における高水温並びに小雨及び黒潮の潮流の変化によるえさ不足、過密養殖による環境の悪化、不適切な飼育管理等によるものと推察されるとの報告もあるが、現在水産庁においても調査を進めているところであり、現時点において主たる原因は特定されていない。

十四について

 総務庁においては、今回御指摘があった問題についての関係省庁の検討状況を見守りつつ、今後、行政監察の実施の必要性について検討してまいりたい。

十五について

 労働省においては、現在のところ、とらふぐ養殖業を行う事業場においてホルマリンの使用により労働者に職業性疾病が発生したとは承知していないが、これらの事業場において、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第二十二条に違反することのないよう、指導に努めてまいりたい。

十六について

 環境基本法(平成五年法律第九十一号)は、基本理念、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務並びに施策の基本となる事項等を規定している法律であり、ホルマリンを養殖施設から海洋に流出させる行為等の個別の行為を規制するものではない。
 水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)では、第二条第二項において、一定の要件を備える汚水又は廃液を排出する施設を特定施設として定め、同法第十二条において、特定施設を設置する工場又は事業場から排出水を排出する者は、当該工場又は事業場の排水口において排水基準に適合しない排出水を排出してはならないとされているが、御指摘の養殖施設は特定施設に定めていない。また、排水基準は政令で定める有害物質等に関して設定されているが、ホルマリンは有害物質等に定めていない。このため、ホルマリンを養殖施設から海洋に流出させる行為が同法に違反しているとはいえない。
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条において、廃棄物は、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」と規定されているが、その具体的な適用については、個別の事例に即して判断されるものである。御指摘のとらふぐ養殖の事例は、養殖用筏の中の海水をビニールシート等で一時的に区画し、有用物としてホルマリンを含有した海水を散布してとらふぐの寄生虫駆除を行い、ホルムアルデヒドを気化させるため、使用後の海水を一定期間筏に留め置いた後、当該ビニールシート等を除去して海水の流出入に従ってこれを自然環境中に拡散させているものと承知しているが、このような場合における筏から流出する海水に関しては、現在のところ、生活環境及び公衆衛生上悪影響が生ずるという科学的知見は得られていないことから、当該海水を廃棄物として取り扱うことは社会通念上適当でなく、このような事例については同法違反とはならないと考えている。
 環境庁においては、御指摘の内容について新聞報道があること及び関係機関において調査等が行われていることは承知しており、環境に影響が生じないよう関係機関と連携を図ってまいりたい。

十七について

 海上保安庁において平成八年秋に実施した調査によれば、ホルマリンを含有した海水を使用したとらふぐの寄生虫駆除の実態としては、船内水槽において行う場合とホルマリンを含有した海水が海洋に流出しないよう措置した筏において行う場合の二通りがあり、前者の場合には、使用後の海水を船内水槽の洗浄排水とあわせて陸揚げしていることから、当該海水が船舶から海洋に排出されることはなく、また、後者の場合には、ホルマリンを含有した海水を船舶から筏に散布しており、その後、ホルムアルデヒドを気化させるため、使用後の海水を一定期間筏に留め置いた後に海洋に流出させていたものと承知している。
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)は、第十条において船舶からの廃棄物の排出を禁止しているが、前者の場合には、船舶からの排出行為がなく、後者の場合には、とらふぐの寄生虫駆除のために散布するホルマリンを含有する海水は有用物であり、同法第三条第六号に規定する廃棄物に該当せず、また、筏から使用後の海水を流出させる行為は、船舶からの排出に該当しないことから、いずれの場合においても同法第十条に違反するものではない。

十八について

 御指摘の問題については、この答弁書においてこれまで述べた各般の対策を通じて、ホルマリンを使用することによる国民生活及び海洋環境への影響が生じないよう、関係省庁の連携を図りながら、適切な措置を講じてまいりたい。





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