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答弁本文情報

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平成十年二月十三日受領
答弁第一号

  内閣衆質一四二第一号
    平成十年二月十三日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出死刑の必要性、情報公開などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出死刑の必要性、情報公開などに関する質問に対する答弁書



一の1について

 死刑制度の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であるところ、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えている。

一の2について

 死刑制度の存廃の問題は、基本的に各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものと考えているが、国際的には、様々な考え方があり、また、諸外国において死刑を廃止した背景にも、死刑が乱用された経験がある場合や、特定の罪について死刑のみが定められていて科刑における柔軟性が十分でなかった場合など様々なものがあり、我が国と単純に比較することには困難がある。

一の3について

 被害者の遺族の感情は、各遺族それぞれに異なるものと考えている。

一の4について

 事件被害者の遺族に対する救済措置は、不法行為責任に基づく損害賠償制度によりなされるところであるが、加害者に資力が無いために満足な救済がなされない場合が多いことから、実質的に救済を図る必要があると考えられる。
 こうしたことから、社会連帯共助の精神に基づき昭和五十五年に犯罪被害者等給付金支給法(昭和五十五年法律第三十六号)が制定され、平成八年度には、二百一人の遺族に対して総額約五億円の給付金が支給されたところである。

二の1について

 事柄によっては、それを開示することにより、個人の生活の平穏等の私的な権利利益を害し、又は公務の適正な遂行等の公共の利益を損なうおそれも認められるのであり、これらの利益を保護するためには、事柄によっては開示しないことも必要である。このような観点から、かつて開示されていた事柄が開示されなくなる場合も生じ得るものと考える。

二の2について

 御質問の国連加盟各国の状況については、その詳細は把握していないが、情報公開の程度については、各国の刑事法制等の違いを反映し、おのずからその程度に差があるものと考えられる。

二の3及び4について

 御指摘の答弁及び回答を行ったことは事実であるが、これらは、当時においても、個々具体的な死刑執行の事実が推測されるおそれがないと判断される場合において、年度途中の一定の日における死刑確定の未執行者数について回答するにとどめていたものである。現在は、毎年末の死刑確定の未執行者数について答弁等を行っているが、その理由は、死刑の執行などに関する質問に対する答弁書(平成十年一月十三日内閣衆質一四一第二一号)一の6についてで詳細にお答えしたとおり、個々具体的な死刑執行の事実を推測させないことにあり、死刑確定の未執行者数の答弁等に関する基本的姿勢は従来と変わりない。
 なお、死刑確定の未執行者数につき、年度途中の一定の日における未執行者数で回答していたのを十二月末日現在の未執行者数で回答することとしたのは、各種質問等に対し統一的に対応するためであり、十二月末日現在の未執行者数で回答することとした以上、それ以上に年度途中における未執行者数について不規則に答弁することは、個々具体的な死刑執行の事実を推測させることになりかねず、その必要はないと考えている。

二の5について

 法務統計月報については、他の統計業務と同様、業務の必要性に応じた合理化という観点から常に見直しを行っているところである。平成三年分の法務統計月報の変更に関しても、死刑をめぐる状況及びこれに関する政府の姿勢という観点ではなく、平成二年末に経常の業務の見直しの検討を行った結果、死刑執行数については、月ごとの傾向を速報する業務上の要請が無くなっていると考え、登載を取りやめたものである。

三の1について

 死刑確定者は、来るべき自己の死を待つという極限的な状況に置かれており、ささいなことでも大きい精神的動揺と苦悩に陥りやすいことが十分推測されるところ、心情の安定とはそのような精神的動揺等の少ない心理状態のことをいう。死刑確定者の心情の状態については、具体的な状況に基づき、死刑確定者を拘置している各施設の所長において判断しており、監獄法(明治四十一年法律第二十八号)上の面会及び信書の発受の許否に当たっては、心情の安定ということも、当然、配慮されなければならないと考えている。

三の2について

 死刑確定者を拘置している各施設では、日ごろから、死刑確定者の動静及び心情の的確な把握に努めるとともに、死刑確定者の心情の安定を図るため、希望者には教誨師による宗教教誨の機会の付与、請願作業の奨励、短歌などの趣味面での余暇活動の援助、ビデオ視聴、菓子類の購入許可等の種々の措置を講じている。

三の3について

 御指摘の実例については、把握していない。

三の4について

 監獄法第四十五条及び第四十六条は、在監者の面会及び信書の発受については、所長による許可制度を採用しているところである。死刑確定者の面会及び信書の発受については、従前から、これらの規定に基づき、一般的には、例えば、親族との間では原則として自由としているところであり、また、弁護士等その他の者で必要があると認められる者との間でもこれを原則として認める取扱いとしているなど、死刑確定者の心情の安定に配慮しつつその身柄を確保するという収容の目的等に照らし、個々具体的な事案ごとにその許否を決しているところである。
 また、物の授受については、同法第五十二条及び第五十三条並びに同法施行規則(明治四十一年司法省令第十八号)第百四十二条から第百四十七条までの規定に基づき、その許否を決しているところである。
 なお、十四歳未満の者には在監者との面会を許さないとしていた同規則第百二十条は、平成三年八月七日削除された。

四について

 恩赦の出願は、代理人による出願を認めている。
 恩赦の決定の通知に関しては、まず、中央更生保護審査会で恩赦相当の議決がなされたときは、同審査会の法務大臣に対する申出に基づき、内閣が閣議により恩赦の決定をし、天皇の認証後、恩赦法(昭和二十二年法律第二十号)第十三条及び第十四条並びに同法施行規則(昭和二十二年司法省令第七十八号)第十一条第一項及び第二項並びに第十三条の規定により、法務大臣名で恩赦状を作成し、有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁の検察官において恩赦があった旨を判決原本に付記した後、上申をした者を通じて恩赦状が本人に交付され通知がなされる。
 次に、中央更生保護審査会で恩赦不相当の議決がなされたときは、同規則第十条の規定により、上申をした者にその通知がなされ、その後上申をした者から出願者本人に通知がなされることになっている。本人に対する不相当議決の通知の方法については具体的規定はないが、一般的に、本人が在監中の場合は、口頭で直接本人に通知されている。
 代理人に対する通知については特に規定されておらず、代理人による出願の場合も、通知は本人に対して行われている。

五の1について

 国際連合加盟国における死刑に関する世論の動向については、十分に把握しているわけではない。

五の2について

 平成六年の第四十九回国連総会における死刑決議案については、我が国としては、死刑制度の存廃の問題は、基本的に各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、国際機関の場で死刑制度の是非を決するになじまないとの理由から、右国連総会第三委員会における投票の際に反対票を投じており、右決議案は、反対多数により否決されたものと承知している。なお、右第三委員会における審議の場において、我が国代表は右の我が国の立場を表明している。
 第四十九回国連総会における右決議案に関しては、これまで国会への報告は行っていないが、死刑制度の存廃についての我が国政府の考え方については、累次国会において答弁してきている。

五の3について

 イラン国籍の男性が日本人女性を刺殺した被疑事件について、警察庁から国際刑事警察機構を通じ関係国に被疑者の所在発見を求めたところ、スウェーデン王国において同人が身柄拘束されたため、外交ルートを通じ同国政府に対し同人の引渡請求を行ったが、平成六年四月、同人に死刑が適用されない保証がないとして引渡しを拒否された事例がある。
 なお、同人については、平成七年六月、スウェーデン王国においてスウェーデン刑法に基づき本件殺人事件により十年の拘禁刑が確定したところである。

六の1について

 個々具体的な死刑執行の決定に関する事項については、答弁は差し控えさせていただきたい。
 法務大臣が死刑執行命令を発する手続について一般的に申し上げると、死刑の判決確定後、関係検察庁の長からの死刑執行に関する上申を待って確定記録を取り寄せ、省内関係部局をして判決及び確定記録の内容を十分精査せしめ、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、初めて死刑執行命令を発することとしている。

六の2について

 法務大臣は、適宜御指摘の報告を受けている。

六の3について

 死刑執行については、施設長が、死刑執行前に、施設全体の職員の配置状況を見ながら、死刑執行を円滑に遂行できるように必要な人数の職員を指名して指示しているところである。この指示は、職務命令であり、これまでも職員は同指示に基づいて当該職務の執行に従事してきたところである。

六の4について

 監獄法第七十一条第一項は、「死刑ノ執行ハ監獄内ノ刑場ニ於テ之ヲ為ス」と定めている。
 また、御指摘の刑具については、絞罪器械図式(明治六年太政官布告第六十五号)に定められている。

六の5について

 東京拘置所の刑場については、全体改築に併せて建て替える予定であるが、その配置計画、規模、予算等については、検討中である。

七について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁は差し控えさせていただきたい。





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