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平成十年三月十日受領
答弁第一三号

  内閣衆質一四二第一三号
    平成十年三月十日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員青山丘君提出国鉄清算事業団債務処理法案におけるJRの新たな負担に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員青山丘君提出国鉄清算事業団債務処理法案におけるJRの新たな負担に関する質問に対する答弁書



一について

 昭和六十二年四月に行われた日本国有鉄道の経営形態の抜本的改革(以下「国鉄改革」という。)においては、日本国有鉄道改革法(昭和六十一年法律第八十七号)第十三条第一項の規定に基づき、国は、承継法人(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社(以下「JR」という。)、新幹線鉄道保有機構(以下「機構」という。)並びに運輸大臣が指定する法人をいう。以下同じ。)が日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)から事業等を引き継ぐに際し、その引き継いだ事業等の健全かつ円滑な運営を阻害しない範囲において、当該承継法人に対し、国鉄の長期借入金及び鉄道債券に係る債務その他の債務を承継させる等の措置を講ずることとされた。こうしたことから、国鉄改革時における総額約三十七兆一千億円の国鉄の債務等のうち、約十一兆六千億円の国鉄の債務等については右規定等に基づき承継法人が負担し、残る約二十五兆五千億円の国鉄の債務等については国鉄に残され、国鉄は日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)に移行した。
 なお、承継法人が負担することとなった約十一兆六千億円の国鉄の債務等のうち、約五兆九千億円についてはJR等(JR及び運輸大臣が指定する法人をいう。以下同じ。)が負担することとされたが、新幹線鉄道に係る鉄道施設(以下「新幹線施設」という。)の帳簿価額に相当する約五兆七千億円の債務については機構が承継し、JRが、機構に対して新幹線施設の貸付料を支払うことにより実質的に負担することとされたものである。さらに、機構は、自らが承継した約五兆七千億円の右債務のほか、新幹線施設の再調達価額(当該施設を国鉄から承継する際に新たに取得するものとした場合における価額をいう。以下同じ。)から当該施設の帳簿価額を減じた額に相当する約二兆九千億円の債務を事業団に対して負うこととされたが、当該債務についても、JRが、右の機構に対する新幹線施設の貸付料の支払により実質的に負担することとされた。このため、国鉄改革に際しJR等が実質的に負担した国鉄の債務等の額は、先に述べたように承継法人が負担することとされた国鉄の債務等約十一兆六千億円に、機構が事業団に対して負うこととされた債務約二兆九千億円を加えた約十四兆五千億円である。
 また、国鉄改革時に事業団に残された債務等については、昭和六十三年一月の閣議決定において「土地処分収入等の自主財源を充ててもなお残る事業団の債務等については最終的には国において処理するものとするが、その本格的な処理のために必要な「新たな財源・措置」については、雇用対策、土地の処分等の見通しのおおよそつくと考えられる段階で、歳入・歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定する」とされた。

二について

 国鉄改革に際しJR等が実質的に負担した国鉄の債務等の額は、一についてで述べたとおり、約十四兆五千億円であるが、このうち、運輸大臣が指定した法人である鉄道通信株式会社及び鉄道情報システム株式会社が負担した額を除くと、JRが実質的に負担した国鉄の債務等の額は、約十四兆四千億円である。
 JRのうち、北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社については、いずれも営業損益で赤字が生じることが見込まれたため、発足時において国鉄の債務等を承継しないこととされた。したがって、この約十四兆四千億円の国鉄の債務等は、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社(以下「JR四社」という。)が負担した。これに対して、この約十四兆四千億円を負担したJR四社の直近の貸借対照表(平成八年度末)における長期借入金等の残高は、約十一兆六千億円となっている。
 しかしながら、国鉄改革に際しJR四社が負担した国鉄の債務等約十四兆四千億円には、国鉄改革以降にJR四社が日本鉄道建設公団から貸付けを受けた鉄道施設についてJR四社が同公団に対して貸付料を支払うことにより負担することとされた約一兆二千億円が含まれており、また、国鉄改革後の平成三年に東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社が新幹線施設を機構から譲り受けた際に再評価差額(新幹線施設を機構から譲り受けた際に新たに取得するものとした場合における当該施設の価額から、当該譲受けの時において機構が負っている当該施設に係る債務の額を減じた額をいう。以下同じ。)として新たに負担した約一兆一千億円が含まれていない。
 したがって、JR四社が負担した国鉄の債務等約十四兆四千億円と、JR四社の直近の貸借対照表(平成八年度末)における長期借入金等の残高約十一兆六千億円に、このような経緯を考慮して、国鉄改革以降にJR四社が日本鉄道建設公団から貸付けを受けた鉄道施設に係る貸付料の支払による負担の平成八年度末における残高約一兆円を加え、かつ、新幹線施設に係る再評価差額約一兆一千億円を減じて得られた額約十一兆五千億円とを比較すると、後者は約二兆九千億円少なくなっている。

三について

 一についてで述べたとおり、国鉄改革時に事業団に残された債務等の額は、約二十五兆五千億円であった。
 これに対し、事業団は、国鉄改革の実施後において、平成二年度から平成八年度までの間に日本鉄道共済組合に対して新たに総額約七千億円を支払うとともに、平成八年の厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成八年法律第八十二号)に基づき日本鉄道共済組合の長期給付事業が平成九年四月に厚生年金保険に統合されることに伴い、平成九年度に約八千億円のいわゆる厚生年金移換金を負担することとされた。このような国鉄改革後に事業団が負った債務等を加えると、事業団の債務等は、平成十年度首においては、約二十七兆八千億円に達する見込みである。

四について

 事業団の債務等の額が国鉄改革時と比較して増加している要因としては、主に次のようなものが考えられる。
1 事業団の収入面における要因
 事業団が保有する土地の処分については、地価高騰問題に対処するための昭和六十二年十月の閣議決定「緊急土地対策要綱」に基づき、現に地価が異常に高騰しつつある地域内の土地の売却を、現に公用、公共用の用途に供することが確実と認められる場合等を除き、その地域の地価の異常な高騰が沈静化するまで見合わせることとされた上に、その後の土地需要の低迷により土地の売却が順調に進まず、かつ、地価の下落により土地の売却に係る収入が減少したこと、また、事業団の保有するJRの株式の処分については、株式市況の低迷、阪神・淡路大震災の影響等によりJRの株式の売却が順調に進まなかったこと等が挙げられる。
2 事業団の支出面における要因
 国鉄改革時に事業団に残された債務等に関して毎年度発生する利子及び年金等の支払に要する費用の負担に加え、国鉄改革の実施後、新たに、三についてで述べた負担を負うこととなったこと等が挙げられる。
 こうした事情により、事業団においては、単年度の収入が当該年度の支出を下回ったことから、日本国有鉄道改革法第十六条の規定に基づき、昭和六十三年一月の閣議決定を踏まえ、事業団の債務等について本格的な処理を行うまでの間、当面、その不足分の資金を政府保証を付した上で財政投融資や民間金融機関から調達することとなったものである。

五について

 事業団の債務等については、四についてで述べたように、事業団の資産の処分が順調に進まなかったこと、事業団が国鉄改革後に新たに負担を負うこととなったこと等により、その債務等が増加することとなったものであるが、政府としては、このような事業団を取り巻く厳しい状況を踏まえて、事業団に対し昭和六十二年度から平成九年度までに総額約一兆六千億円の補助金を交付するとともに、平成二年度には、日本国有鉄道清算事業団の債務の負担の軽減を図るために平成二年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律(平成二年法律第四十五号)に基づき、帝都高速度交通営団に対する事業団の出資持分の譲受に対する支払に代えて当該持分の評価額に相当する約九千億円の有利子債務を一般会計において承継し、さらに、平成九年度には、日本国有鉄道清算事業団の債務の負担の軽減を図るために平成九年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律(平成九年法律第七十三号)に基づき、事業団の約三兆円の有利子債務を一般会計において承継する等その時々の情勢の中で最善と考えられる措置を講じてきたところである。

六について

 今般の事業団の債務等の抜本的な処理においては、平成八年の厚生年金保険法等の一部を改正する法律に基づき日本鉄道共済組合の長期給付事業が平成九年四月に厚生年金保険に統合されたことに伴い日本鉄道共済組合が厚生年金保険の管掌者たる政府に対して納付するものとされた移換金(以下「厚生年金移換金」という。)に係る事業団の負担分のうち、国鉄改革時にJRの社員となった者に係る昭和六十二年三月以前の国鉄共済組合の組合員期間を計算の基礎として算定される額についてJRに負担を求めることとしている。
 当該負担を日本鉄道共済組合の関係事業主そのものであるJRに求めることは、次のような理由から公共の福祉の実現のために合理性があると考えられ、このような合理性のある負担を課することは、国鉄改革により民営化されたJRの経営の主体性を侵害するものではないと考える。
1 厚生年金移換金に係る事業団の負担分のうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係る国鉄共済組合の組合員期間を計算の基礎として算定される額については、これらの者の退職後の年金給付の原資となるものであることから、当該額の負担は年金給付というこれらの者の福利厚生のために必要なものであり、ひいてはこれらの者の雇用主であるJRにとっても経営上有益なものであること。
2 仮に当該額をJRが負担しないこととすると、当該額について最終的には一般国民に対して負担を求めることとならざるを得ないが、1で述べたとおりJRの社員ひいてはこれらの社員の雇用主であるJRにとって有益なものと考えられる当該額の負担については、一般国民に負担を求めるよりも、関係事業主として利害関係を有するJRに負担を求めることとするのが公平の観点からより適当であると考えられること。
3 厚生年金保険への統合前においては、JRが関係事業主として事業主負担をしていた日本鉄道共済組合の年金の給付財源の不足について他の被用者年金制度から支援が行われており、厚生年金保険への統合後も、統合前の期間に係る年金の給付財源の不足について他の被用者年金制度からの支援が継続されることが予定されているが、今般JRに求めることとしている負担の額は、これらの支援により関係事業主としてJRが受ける利益と比較して少額の範囲にとどまるものであり、この点において過重な負担とは言えないこと。

七について

 御指摘のように、仮に「国鉄改革当初のフレームを安易に変更し、いつもJRに新たな負担を課す」というようなことがあるとすれば、政府として適当でないと考えている。
 しかしながら、厚生年金移換金に係る負担は、国鉄改革の実施後の平成八年の厚生年金保険法の一部を改正する法律により新たに生じたものであり、国鉄改革においては予定されていなかったものである。今般の事業団の債務等の抜本的な処理を国において行うに当たっては、この厚生年金移換金に係る負担のうち事業団の負担分について、事業団の解散後に最終的に誰が負担することが一般国民との関係で最も合理的であるかを判断することが必要であると考えたものである。
 このため、厚生年金移換金に係る事業団の負担分のうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係るものについては、六についての1から3までの理由により、一般国民に負担を求めることと比較してJRに負担を求めることに公平の観点から合理性があり、さらに、このような合理性のある負担を課することは、国鉄改革により民営化されたJRの経営の主体性を侵害するものではないことから、当該負担を一般国民に求めるのではなく、JRに求めることとしたところである。
 他方、昭和六十二年四月の国鉄改革時に事業団に残された債務等はすべて国及び日本鉄道建設公団の負担により処理することとしており、JRには一切負担を求めていないところである。したがって、一についてで述べた国鉄改革時における国鉄の債務等の負担割合を何ら変更するものではないと考える。





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