衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十一年四月十六日受領
答弁第一七号

  内閣衆質一四五第一七号
    平成十一年四月十六日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員大野由利子君提出重債務低所得国への援助のあり方と累積債務削減問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員大野由利子君提出重債務低所得国への援助のあり方と累積債務削減問題に関する質問に対する答弁書



一について

 開発途上国における貧困緩和は、我が国の政府開発援助の重点課題であると認識している。円借款も、途上国の経済社会開発を推進し、貧困緩和を図ることを目的として供与されるものであり、その返済のために借入国の基礎生活分野における公共支出が削減され、貧困層の厚生が一層低下するような事態は本末転倒であり、生じてはならない事態であると考えている。
 そのため、我が国の円借款は、貸付けという形態ではあるが、借入国の負担を増やさないよう市中金利に比べ極めて低利かつ長期の譲許的な条件のもとで供与するとともに、供与に際しては、借入国のマクロ経済状況や公共投資計画を十分見極めた上で、将来において借入国にとって返済が財政に対し過度な負担とならないよう慎重な検討を行う等の配慮を行っている。
 このような配慮にもかかわらず、借入国を取り巻く国際経済環境の変化等により開発途上国の債務返済が困難となった場合には、政府は、債務返済が開発の足かせとならぬよう国際的な枠組みの下で債務救済措置を実施し、借入国の債務負担を軽減してきている。
 なお、政府は借入能力が相対的に低い後発開発途上国に対しては、被援助国に借入負担が生じない無償資金協力によって貧困層を直接の受益者とする基礎生活分野の案件等を実施し、開発資金が不足している開発途上国を支援してきている。

二について

 開発途上国における初期条件は、個々の国々でそれぞれ異なることは御指摘のとおりであるが、円借款は、途上国に対し低利かつ長期の条件で開発資金を貸し付けることにより当該国の経済社会開発を支援することを目的としており、同時に、返済義務を課すことにより開発資金の効率的な活用や事業の管理に対する主体性を持たせることを期待している。これは、我が国が経済協力を行う上で重視している途上国の自助努力を促すとの観点から効果的であると考える。同時に、円借款の供与に際しては、借入国のマクロ経済状況や公共投資計画を十分見極めた上で、将来において借入国にとって返済が財政に対し過度な負担とならないよう慎重な検討を行う等の配慮を行っている。
 現在、我が国の重債務貧困国(低所得国で、構造調整を行っているにもかかわらず、従来の債務救済措置によっては、債務の持続的な支払いが可能な状態に到達することが困難である国)に対する二国間政府開発援助は、そのほとんどの国に対して無償資金協力及び技術協力からなる贈与が中心となっているが、無償資金協力のみで重債務貧困国を支援する場合、当該国の持続的経済発展のために必要となる資金が十分確保されない可能性もあることを念頭に置く必要がある。
 なお、実際問題として、パリクラブ(債務国と国際通貨基金との間の融資取決めの成立を前提として、公的債務についての繰延交渉を行う債権国会議)の枠組みにおいて重債務貧困国に対し債務救済措置が採られた場合には、我が国の二国間政府開発援助は無償資金協力が原則となるべきものと考える。

三について

 政府開発援助において、社会開発や住民参加をも視野に入れつつ、きめの細かい援助を実施していくことの重要性が高まっている。こうした観点から、我が国の政府開発援助は、無償資金協力、技術協力及び円借款のすべてにおいて、こうした点に配慮を行いつつ援助の実施に努めてきている。事実、円借款は、人材育成、住民参加型案件、経済悪化により影響を受ける社会的弱者支援等の小規模な案件にも供与されてきている。その一方で、インフラストラクチャーの整備に関する支援は、電力供給、上下水道整備、貧困地域へのアクセス強化等の開発途上国国民の生活に密着した支援でもあり、また、開発途上国においても、かかる支援につき引き続き強いニーズがあることから、政府としては、社会開発等のための支援とともに引き続き重視していく必要があると考えている。このようなインフラストラクチャー整備は必要な資金の規模が大きく、円借款供与による支援が適当な場合が多い。
 円借款の供与に当たっては、その必要性を政府部内で検討するとともに、要請案件の詳細については海外経済協力基金において審査を行っており、政府としては、被供与国のニーズを踏まえた最適な供与内容となるよう今後とも努めていく考えである。さらに、円借款の供与に際して、被供与国のマクロ経済状況等をベースに債務返済能力の分析を行っており、また、返済能力が十分でないと判断される場合には供与を行わないこととしている。
 なお、平成九年夏に発生したアジア通貨危機の後も、中国、タイ、インドネシア等の主要供与国からの返済は順調に行われており、延滞は発生していない。

四について

 政府は、昭和五十三年度から、深刻な債務返済困難に直面している開発途上国に対し、債務救済無償資金協力を実施してきている。これは、特に後発開発途上国に対して、これらの国から債務の返済がなされたことを確認後、その返済額と同額の無償資金を供与するものであり、実質的に債務帳消しと同等の効果をもたらすことにより被援助国の債務返済困難を緩和することを念頭に置いている。
 政府としては、債務救済無償資金協力は、債務帳消しを行うことにより生ずる当該債務国の国際金融における信用力の低下の防止に配慮しつつ、当該国の返済努力及び経済再建への自助努力を促す意味からも有効と考えている。
 なお、重債務貧困国については、政府は、平成十年度から、HIPCsイニシアティヴ(国際通貨基金及び世界銀行の主導の下、重債務貧困国(HIPCs)の債務を持続可能な水準にまで低減しようとする債務救済のための仕組み)が適用され、パリクラブにおいて追加的な債務救済措置を採ることが合意され、さらに、同イニシアティヴの完了段階において円借款が繰延べされる場合に、当該国からの返済額の一定額の無償資金を供与する制度を導入しており、重債務貧困国の債務問題にも積極的に取り組んでいる。

五について

 政府は、開発途上国の債務問題に対し、これまでも開発と自立に配慮した形で包括的に取り組んできている。
 具体的には、パリクラブの枠組みにおいて諸外国と協調しつつ債務繰延を行っている。また、深刻な債務返済困難に直面している後発開発途上国に対しては、実質的に債務帳消しと同等の効果をもたらす債務救済無償資金協力を実施している。さらに、国際通貨基金及び世界銀行が設ける債務救済のための各基金への資金拠出を含む各種の協力を行っているとともに、アフリカ諸国の債務管理能力を向上させるための技術協力による研修事業や我が国の資金を利用しての国連開発計画等を通ずる人材の研修を行うこととしている。
 サミットにおいても、このような点を踏まえ、各国と協調の下、開発途上国の開発と自立に真に役立つような債務問題の解決に向けて取り組んでまいりたい。





経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.