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答弁本文情報

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平成十一年六月十一日受領
答弁第三一号

  内閣衆質一四五第三一号
    平成十一年六月十一日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員石垣一夫君提出「国旗・日の丸、国歌・君が代」法制化等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員石垣一夫君提出「国旗・日の丸、国歌・君が代」法制化等に関する質問に対する答弁書



一の1について

 商船規則(明治三年太政官布告第五十七号)のうち、国旗の様式に関する規定は現在も有効である。

一の2及び7について

 商船規則は、船舶に掲げるべき国旗の様式を定めたものであり、国旗一般について定めたものではない。

一の3について

 商船規則は、船舶に掲げるべき国旗の様式を定めたものであり、国旗一般について定めた法律はない。しかしながら、長年の慣行により日の丸が我が国の国旗であるとの認識が確立し、広く国民の間にも定着していると考えられ、その意味で、現在、日の丸が我が国の国旗であるという法的確信が成立しているとみることができる。
自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百二条第一項等に規定する「国旗」も、日の丸が慣習法上国旗の制式となっていることを当然の前提としているものと考える。
このような現状を踏まえ、日の丸が我が国の国旗であるということについて、成文法としてその根拠を明確に規定することが必要であるとの認識の下に、法制化を行うものである。

一の4について

 政府としては、法制化に当たっては、御指摘の点を踏まえ、国旗の制式(寸法の割合及び彩色)を明確に定めることとしている。

一の5について

 日の丸の意味について一義的に特定することは困難であるが、日の丸は太陽を表すとするのが一般的であると承知している。白地については、不詳である。文部省において編さんした「尋常小學國語讀本卷十二」(大正十二年発行)第十三課「國旗」においては、我が国及び主たる諸外国の国旗について述べられているが、その中で、「各國の國旗は、或は其の建國の歴史を暗示し、或は其の國民の理想・信仰を表すものなれば、國民の之に對する尊敬は、即ち其の國家に對する忠愛の情の發露なり。」と記述されている。

一の6について

 国旗の制式については、日の丸が長年の慣行により国民の間に広く定着していることを踏まえるとともに、国内外における国旗の使用実態、国際的な動向等を考慮しながら、寸法の割合及び日章の位置並びに彩色について定めることとしたものである。

一の8について

 政府としては、法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うようなことは、考えていない。したがって、現行の運用に変更が生ずることとはならないと考えている。

一の9について

 日の丸が我が国の国旗であるとの認識は、国民の間に広く定着していると考えている。

一の10について

 一般的には、国旗は国家を象徴する標識であると認識されているものと理解している。

一の11について

 日の丸の由来については、つまびらかではないが、歴史的に見ると、江戸時代以前にも使用されていたという記録が残っているものと承知している。江戸時代に至って、日の丸は、寛永十一年(千六百三十四年)に幕府官章として定められ、その後、日の丸は、安政元年(千八百五十四年)日本総船印に、また、安政六年(千八百五十九年)には御国総標とされたものと承知している。明治時代に入り、明治三年に布告された商船規則で、船舶に掲げるべき国旗として日の丸の様式が定められたところである。

一の12について

 日の丸の意味について一義的に特定することは困難であるが、日の丸は太陽を表すとするのが一般的であると承知している。

一の13について

 国旗及び国歌の法制化は、長年の慣行により、日の丸及び君が代がそれぞれ国旗及び国歌として国民の間に広く定着していることを踏まえて行うものである。なお、御質問との関係であえて申し上げれば、政府の過去の歴史に関する考え方は、村山内閣における平成七年八月十五日の内閣総理大臣談話を基本としており、我が国が過去の一時期に植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受け止め、これらに対する深い反省とお詫びの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていくというものである。

一の14について

 一般的には、国旗は国家を象徴する標識として、また、国歌は国家を代表する歌として認識されており、国旗及び国歌を通じて国民が自国についての帰属意識、一体感等を抱くことにより、国民の気持ちの上での統合の役割を果たしているものと考えている。

一の15について

 刑法(明治四十年法律第四十五号)第九十二条第一項は、外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する旨規定しているが、同条は、刑法第二編第四章の「国交に関する罪」の中に置かれているとおり、我が国の外交作用の円滑、安全等を考慮して、かかる行為を処罰することとしたものと考えられる。
 これに対し、我が国の国旗等に対する同様の行為については、これを処罰する規定がなく、刑法制定当時における具体的な論議は必ずしも明らかではないが、これは、国家の威信の保護の在り方として刑罰をもって強制することが適当かという根本的な問題があることのほか、他人の所有する国旗等の損壊等については刑法第二百六十一条(器物損壊罪)が適用されることなども考慮されているものと考えられ、御指摘のような認識によるものではないと考えられる。
 また、政府としては法制化に当たり、国旗の損壊等を新たに刑罰の対象とすることは考えていない。

一の16について

 自衛隊法施行令(昭和二十九年政令第百七十九号)第一条の二に規定されている自衛隊旗は、部隊の所在を示すとともに、組織の団結の強化、士気の向上に資するとの観点から、また、同条に規定されている自衛艦旗は、自衛艦の所在を示すとともに、組織の団結の強化、士気の向上に資するとの観点から、それぞれ定められており、それぞれ日章及び光線により構成される意匠の旗としている。

一の17及び18について

 自衛隊において使用されている旗の意匠は、既にそれぞれ自衛隊において定着していることから、これらを「統一」又は「簡素化・整理」することは考えていない。

一の19について

 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第四条第一項第一号に規定する「国旗」とは、「日の丸の旗」を指すものであり、同法第二条第一項に規定しているところの図形たる商標に関するものである。また、「国歌」については、商標法上、不登録事由とする規定がないところである。したがって、「日の丸」及び「君が代」の文字商標については登録の対象となり得、事実、これらに係る商標について登録されている事例は存在しているところである。なお、今回の法制化により、商標法における取扱いを変更するようなことは考えていない。

一の20について

 大日本帝国国旗法案は、昭和六年二月十九日、石原善三郎議員により第五十九回帝国議会に提出され、衆議院において審議の上同年三月二十六日に可決され貴族院に送付されたが、同月二十八日が同議会の会期の最終日であったことから、貴族院では審議が行われず廃案になったものと承知している。

一の21について

 昭和六十三年三月十五日の参議院予算委員会において、内閣法制局長官は、商船規則は船舶に掲げるべき国旗の様式を定めたものであり国旗一般についての規定はない旨の答弁を行っている。

一の22について

 文部省が所管する法律において、「国旗・日の丸」の掲揚について規定するものはない。

一の23から27までについて

 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)において、教科に関する事項は文部大臣が定めることとされ(同法第二十条、第三十八条、第四十三条及び第百六条)、同法の委任を受けて定められた学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)において、教育課程については、教育課程の基準として文部大臣が公示する学習指導要領によるものとしている(同規則第二十五条、第五十四条の二及び第五十七条の二)ことから、小学校、中学校及び高等学校の学習指導要領は、これらの規定に基づき文部大臣が定め、告示しているものである。
 日の丸が国旗、君が代が国歌であることについては、一般的な法令の規定はないが、長年の慣行により、国民の間に広く定着していると認められ、政府においても、国会においてその旨答弁しているところである。これを踏まえ、学校教育における国旗及び国歌の指導については、学習指導要領において、日の丸を国旗、君が代を国歌として取り扱い、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」としているところである。
 なお、学習指導要領は、学校教育法及び同法施行規則の規定の委任に基づいて、文部大臣が告示として定めるものであり、法規としての性質を有している。このことは、伝習館高校事件最高裁判決(平成二年一月十六日)においても明確にされているところである。

二の1について

 君が代は、長年の慣行により、国歌として国民の間に広く定着しているものと考えている。

二の2について

 大日本帝国憲法は明治二十二年二月に公布され、教育勅語は明治二十三年十月に発せられたものであるが、君が代についての記述は特に見られないところである。

二の3について

 昭和二十年以前に文部省において編さんした教科書中、「尋常小學修身書巻四」(昭和十二年発行)には、「『君が代』は、日本の國歌です。」と記載されている。
 なお、昭和五十五年度以降に使用されている小学校音楽科教科書及び昭和五十六年度以降に使用されている中学校音楽科教科書並びに平成四年度以降に使用されている小学校社会科教科書においては、「君が代」が「国歌」であると記載されているところである。

二の4について

 学習指導要領は教育課程の基準として文部大臣が告示するものであるが、その内容については、文部大臣の諮問に応じて教育課程に関する事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を文部大臣に建議するために設置されている教育課程審議会における審議、答申を踏まえて決定している。
 平成元年に告示した現行の学習指導要領については、昭和六十二年十二月の教育課程審議会の「入学式や卒業式などの儀式等においては、日本人としての自覚を養い国を愛する心を育てるとともにすべての国の国旗及び国歌に対し等しく敬意を表する態度を育てる観点から、国旗を掲揚し国歌を斉唱することを明確にする。」との答申を踏まえている。なお、学習指導要領の告示に当たって閣議決定は行われていない。

二の5について

 御指摘の明治政府が明治二十一年に大日本礼式を発布し、諸官庁及び外国に君が代の楽譜を公式に通知したということについては、現時点において、そのような事実の有無について確認できないところである。
 また、明治二十六年八月十二日の文部省告示第三号では、「小學校ニ於テ祝日大祭日ノ儀式ヲ行フノ際唱歌用ニ供スル歌詞竝樂譜別冊ノ通撰定ス」として、「君が代」の歌詞及び楽曲が告示されているが、これは、祝日及び大祭日における学校儀式用の唱歌を定めたものである。

二の6について

 政府としては、法制化に当たり、国歌の斉唱等に関し義務付けを行うようなことは考えていない。したがって、現行の運用に変更が生ずるようなこととはならないと考えている。

二の7について

 君が代の現在の旋律は、明治十三年十月に宮内省一等伶人の林広守によって付けられたものと承知している。また、君が代は、明治十三年十一月三日の天長節に際し、宮中で演奏されたものと承知している。

二の8及び11について

 君が代の「君」とは、大日本帝国憲法下では主権者である天皇を指していたと言われているが、日本国憲法の下では、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇と解釈するのが適当であると考える。

二の9について

 日本国憲法の下では、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国の末永い繁栄と平和を祈念したものと理解することが適当であると考える。

二の10について

 学習指導要領を解説した小学校指導書社会編(平成元年)においては、国歌「君が代」は、我が国が繁栄するようにとの願いを込めた歌であることを理解させるよう配慮する必要があるとしており、これを踏まえて、各学校において児童生徒の発達段階に即した指導が行われているところである。

二の12について

 明治二十六年八月十二日の文部省告示第三号において、「君が代」は、林広守が作曲したものとして公衆に提供又は提示されてきたことから、著作者は林広守であると考えられる。しかし、林広守は明治二十九年に死亡しており、現在、同人の「君が代」に係る著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)に基づく著作者人格権及び著作権は消滅しているものと考えられる。ただし、同法第六十条には、著作者が存しなくなった後における人格的利益の保護が規定されており、この規定により、現在においても、著作者が存しているとしたならば著作者人格権の侵害となるべき行為をすることは禁じられている。

二の13について

 君が代の楽譜は、長い歴史の中で、様々な演奏形式等のものが用いられてきたと推測される。長野オリンピック冬季競技大会等の国際的なスポーツ大会や大相撲においても、その大会等を運営する団体の判断により、様々な演奏形式等の楽譜が使用されているところである。

二の14について

 君が代の歌詞及び楽曲は、長年の慣行により、国民の間に広く定着しているものと考えている。

二の15について

 君が代は、長年の慣行により、国歌として国民の間に広く定着しているものと考えている。

二の16について

 国旗一般について規定した法律はないことから、国旗についても、長年の慣行により、日の丸が国旗として国民の間に広く定着していることを踏まえてその法制化を行うものである。

三の1について

 一般的には、国旗は国家を象徴する標識として、また、国歌は国家を代表する歌として認識されているものと承知している。

三の2について

 日の丸及び君が代が、長年の慣行により、それぞれ国旗及び国歌として国民の間に広く定着していることを踏まえ、二十一世紀を迎えることを一つの契機として、成文法にその根拠を明確に規定することが必要であるとの認識の下に、法制化を行うものである。

三の3及び8について

 政府としては、法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うようなことは、考えていない。したがって、現行の運用に変更が生ずることとはならないと考えている。

三の4について

 児童の権利に関する条約(平成六年条約第二号)第十四条の思想、良心の自由とは、一般に内心(すなわちものの考え方ないし見方)について、国家はそれを制限したり、禁止したりすることは許されないという意味であると解される。学校における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導は、日の丸及び君が代が、長年の慣行により、それぞれ国旗及び国歌として国民の間に広く定着していることを踏まえ、児童生徒が国旗及び国歌の意義を理解し、それを尊重する心情と態度を育てるとともに、すべての国の国旗及び国歌に対して等しく敬意を表する態度を育てるために行うこととしているものである。このような指導は、児童生徒が将来広い視野に立って物事を考えられるようにとの観点から、国民として必要な基礎的、基本的な内容を身につけることを目的として行われているもので、児童生徒の思想、良心を制約しようというものではなく、同条には反しないと考えられる。

三の5及び6について

 長年の慣行により、日の丸及び君が代がそれぞれ国旗及び国歌として国民の間に広く定着していることを踏まえて、国旗及び国歌の法制化を行うものである。

三の7について

 主要国における国旗及び国歌の法制化や取扱いの状況について、現時点で承知しているものは別表一のとおりである。

三の9について

 学習指導要領における、国旗及び国歌に係る改訂の内容については、別表二のとおりである。

三の10について

 国旗については、昭和六十年九月の政務次官会議において、各省庁とも毎日自主的に国旗を掲揚することが申し合わされた昭和三十七年の政務次官会議の趣旨の徹底を図るとともに、地方公共団体及び国所管の団体等に対して祝日に国旗を掲揚することの協力方をお願いしてきたところである。

三の11について

 国旗及び国歌に関する世論調査は、昭和四十九年十二月に実施した「年号制度・国旗・国歌に関する世論調査」(昭和五十年三月公表)以降、実施していない。政府としては、長年の慣行により、日の丸及び君が代がそれぞれ国旗及び国歌として、国民の間に広く定着しているものと考えており、現在、国旗及び国歌に関する世論調査を改めて実施する予定はない。



別表一
諸外国の国旗について

別表一 諸外国の国旗について

諸外国の国歌について
諸外国の国歌について


別表二
  小学校学習指導要領における国旗及び国歌に関する取扱いの経緯

別表二 小学校学習指導要領における国旗及び国歌に関する取扱いの経緯
なお、昭和三十三年における「特別活動」は、「特別教育活動および学校行事等」であった。


  中学校学習指導要領における国旗及び国歌に関する取扱いの経緯

なお、昭和二十三年における「特別活動」は、「特別教育活動および学校行事等」であった。


  高等学校学習指導要領における国旗及び国歌に関する取扱いの経緯


なお、昭和三十五年における「特別活動」は、「特別教育活動および学校行事等」であり、昭和四十五年における「特別活動」は、「各教科以外の教育活動」であった。




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