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平成十二年三月十四日受領
答弁第二二号

  内閣衆質一四六第二二号
    平成十二年三月十四日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員山本孝史君提出「たばこと健康に関するWHO国際会議」神戸宣言に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山本孝史君提出「たばこと健康に関するWHO国際会議」神戸宣言に関する質問に対する答弁書



一について

1 お尋ねの神戸宣言(仮訳)1.の@からDまで及び2.のAについては、ここに記載されている全世界におけるたばこ会社が行っている広告宣伝活動及びたばこに関連した原因で死亡した者の推計数は、それぞれ、世界保健機関が取りまとめた「女性とたばこ」(平成四年)及び「世界保健報告」(平成十一年)に同趣旨の記載があると承知している。たばこがそれを喫煙した者に与える影響としては、ニコチンにより依存性が生ずるほか、たばこの煙がニコチン、一酸化炭素等の有害物質を含んでいることから、がん、循環器疾患、呼吸器疾患等に罹患する危険性を増大させると認識しており、たばこが健康に及ぼす影響に関する対策(以下「たばこ対策」という。)は、世界的にも重要な課題となっていると認識している。また、近年、我が国においては、特に若年女性の喫煙率が上昇していること及び少女を含む未成年者が喫煙している実態があることから、その健康に及ぼす影響が懸念されるところであり、女性や子供を対象とする様々なたばこ対策を推進していくことが必要であると考えている。

2 お尋ねの神戸宣言(仮訳)2.の@及びBについては、煙の出るたばこが健康に及ぼす影響は、先に述べたとおりであるが、煙の出ないたばこが健康に及ぼす影響については、口腔がんに罹患する危険性が高まることが知られており、煙の出るたばこ及び煙の出ないたばこのいずれも健康への影響があると認識している。また、喫煙している妊婦から生まれた乳児は喫煙していない妊婦から生まれた乳児に比べて平均体重が小さく、低出生体重児として生まれる頻度も約二倍であること、喫煙している妊婦は喫煙していない妊婦と比べて早産、自然流産、周産期死亡及び妊娠合併症の危険性が高いこと並びに自ら喫煙していない妊婦についても受動喫煙(自分の意思とは無関係に環境中のたばこの煙にさらされ、それを吸わされることをいう。)により低出生体重児の出産の危険性が増大することが知られている。このように、たばこが健康に及ぼす影響については、女性に特有の危険性があると認識しており、女性の喫煙の防止や受動喫煙の防止のための対策を含め、様々なたばこ対策を推進していくことが必要であると考えている。

3 お尋ねの神戸宣言(仮訳)3.の@からBまでについては、ここに記載されているような全世界におけるたばこ関連疾患を原因とする死亡者数の増加及びたばこが世界経済に及ぼす影響は、それぞれ、世界保健機関の「世界保健報告」及び国際復興開発銀行の報告書において、同趣旨の記載があると承知しており、今後とも、たばこが世界に与える人的、社会的及び経済的な影響について注意を払っていくことが必要であると認識している。

4 お尋ねの神戸宣言(仮訳)4.の@からBまでについては、「多国籍たばこ会社」の開発途上国等における販売展開の実態は把握していないが、世界保健機関が報告した「女性とたばこ」に、たばこ会社が販売促進のために女性を標的としたたばこの広告を様々な方法で行っている旨の記載があると承知している。

5 お尋ねの神戸宣言(仮訳)5.の@及びAについては、各国政府が生産者、輸出者又は補助金供与者としてたばこ産業と直接の関係を有しているかどうかは把握していないが、たばこの広告の禁止等が実施されている国があることは承知している。我が国においては、平成七年の「たばこ行動計画検討会」の報告書を踏まえ、たばこ対策として、喫煙の経験のない未成年者等が喫煙を開始することを防ぐための防煙対策、受動喫煙の影響を防ぐための分煙対策、喫煙が健康に与える影響に関する情報の提供、禁煙希望者に対する禁煙の支援等を実施しているところであるが、近年、若年女性の喫煙率が上昇していることから、諸外国における施策も参考にしながら、女性を対象に含めたたばこ対策を推進していくことが重要であると考えている。

二について

 日本たばこ産業株式会社が昨年九月十六日までに米国のRJRナビスコ社の米国以外のたばこ事業を取得したことは承知している。
 お尋ねの神戸宣言(仮訳)にいう「多国籍たばこ会社」については、その定義が明らかにされておらず、日本たばこ産業株式会社が「多国籍たばこ会社」に該当するかどうかについて判断できないことから、政府としての見解を示すことは差し控えたい。

三について

1 お尋ねの神戸宣言(仮訳)6.については、世界保健機関において、昨年五月の総会で、平成十五年五月の総会での採択を目標にしてたばこ対策枠組条約の作成作業を開始する旨の決議が採択され、昨年十月には当該条約作成の第一歩となる作業部会第一回会合が開催された。たばこ対策枠組条約及び当該条約に付随する議定書の作成についての実質的な検討は、本年五月以降に開始される見込みの正式交渉において行われる予定である。政府としては、神戸宣言(仮訳)6.に記載されている点も含め、たばこと健康に関する国民の様々な意見に留意しつつ、また、他の加盟国とも協調して、条約作成作業に参画していきたいと考えている。

2 お尋ねの神戸宣言(仮訳)7.については、我が国において政府はたばこ産業に対する支援を行っていない。たばこの輸出については、基本的に個々の企業の経営判断にゆだねられるべき性格のものであると考える。また、我が国においては、たばこについて、他の物品と異なる特殊なし好品としての性格に着目して、伝統的にいわゆる財政物資として、他の物品に比し重い税負担が課せられてきている。現在、最も主要な価格帯である小売定価二百五十円(二十本入り)のたばこの小売定価に占める消費税込みの税負担割合は、六十一・三パーセントとなっているが、いわゆるたばこ税の課税方式は本数を課税標準として課される従量税であるため、小売価格の上昇とともに税負担水準が低下することとなることから、随時負担の見直しを行い、適正な税負担水準の確保に努めることが必要であると考えている。たばこに対する税負担の在り方については、今後とも、たばこの小売価格に占める税負担割合の状況やたばこの消費動向、更には財政事情等を総合的に勘案して検討していくべきものと考えている。たばこ産業の転換については、政府がそのプログラムを提供している国を承知しておらず、基本的には個々の企業の経営判断にゆだねられるべき性格のものであると考えており、政府として検討は行っていない。

3 お尋ねの神戸宣言(仮訳)8.については、たばこ産業による広告、販売促進、後援活動等について、たばこ事業法(昭和五十九年法律第六十八号)第四十条第二項の規定に基づき、たばこ事業等審議会の答申を踏まえ、平成元年十月に大蔵大臣の指針を策定し、業界の自主規制の強化を図っているところである。社団法人日本たばこ協会は、未成年者の喫煙防止等の観点から策定している広告の自主規準について、未成年者の喫煙防止等に一層配慮するため、平成十年四月一日からテレビ、ラジオ等による製品広告を中止する等の改訂を行っており、日本たばこ産業株式会社等は当該自主規準を遵守していると承知している。たばこの自動販売機については、未成年者の喫煙防止に資するため、たばこ事業法第二十三条第三号及び同法施行規則(昭和六十年大蔵省令第五号)第二十条第三号の規定に基づき、自動販売機の設置場所が店舗に併設されていない場所等製造たばこの販売について未成年者喫煙防止の観点から十分な管理、監督が期し難いと認められる場所である場合には、製造たばこの小売販売業の許可を行わないこととしている。また、全国たばこ販売協同組合連合会は、午後十一時から午前五時までの間、屋外のたばこ自動販売機の稼働を自主的に停止することとしていると承知している。政府としては、これらの施策を徹底してまいりたい。

4 お尋ねの神戸宣言(仮訳)9.及び10.については、たばこ対策を推進していく上で、女性の果たすべき役割は重要であると認識しており、今後のたばこ対策の検討及び実施に当たっては、女性の参画を得てその推進を図ってまいりたい。また、近年、我が国においては若年女性の喫煙率が上昇していることも踏まえ、分煙の推進や普及啓発等、女性を対象に含めたたばこ対策に積極的に取り組んでまいりたい。

5 お尋ねの神戸宣言(仮訳)11.については、たばこ対策の推進に当たって、国民に対し、喫煙が健康に及ぼす影響に関する情報の提供、禁煙希望者に対する禁煙の支援等を実施することが重要であると認識しており、ここで記載されているような非政府組織等の団体や組織等に対して、たばこと女性の健康問題に関する情報の提供を行うとともに、正確な情報の提供が行われるように監視することを検討してまいりたい。

6 お尋ねの神戸宣言(仮訳)12.については、学校教育における喫煙防止対策に関し、学習指導要領に基づき、中学校及び高等学校の保健体育科等において喫煙と健康との関連について指導している。さらに、小学校においては、従来喫煙防止について指導するよう努めることとしていたが、平成十年十二月の学習指導要領の改訂により、体育科において喫煙と健康について指導するよう明記し、一層の指導の充実を図ったところである。また、厚生省においては、医師、保健婦等を対象として、禁煙希望者等に対し健康指導を行う専門家を育成するための研修会の開催を検討しているところである。

7 お尋ねの神戸宣言(仮訳)13.については、たばこの女性の健康に及ぼす影響等に関する研究として、厚生科学研究費補助金により、「喫煙構造の解明に関する総合的研究」、「喫煙者の問題行動の解明に関する研究」等を実施してきている。また、研究成果の提供や啓発活動については、「喫煙と健康問題に関する報告書」等による研究成果の公表、世界禁煙デー及び禁煙週間の実施、インターネット等を通じた広報等を行っているところである。

8 お尋ねの神戸宣言(仮訳)14.については、世界保健機関、国連機関等が進めているたばこ対策に対しても、必要に応じ、支援を行ってまいりたい。

9 お尋ねの神戸宣言(仮訳)15.については、国際連合の女性二千年会議(女性特別総会)等においてたばこ対策について検討が行われることは、有意義なことであると認識している。

10 お尋ねの神戸宣言(仮訳)16.については、女性や子供の健康に配慮することは極めて重要であると認識しているところであり、今後ともたばこ対策を含め、女性や子供の健康増進対策に取り組んでまいりたい。

四について

 お尋ねの神戸宣言は、世界保健機関の主導の下、世界各国の専門家が一堂に会し、議論した上で採択されたものであり、今後のたばこ対策に関する議論の進展に寄与するものと認識している。政府としては、同宣言で提起された提言の趣旨も踏まえ、たばこと健康に関する国民の様々な意見に留意しつつ、引き続きたばこ対策に積極的に取り組んでまいりたい。





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