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平成十二年五月十二日受領
答弁第一四号

  内閣衆質一四七第一四号
  平成十二年五月十二日
内閣総理大臣 森 喜朗

       衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員辻元清美君提出バイオ施設の安全性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員辻元清美君提出バイオ施設の安全性に関する質問に対する答弁書



一及び二について

 組換えDNA技術又は病原体を用いて実験又は研究を行う施設(以下「実験研究施設」という。)については、そのすべての立地や安全性の確保の状況を把握する体制になっていない。これらの施設の全国調査については、今後、関係省庁の間で必要性の有無を含めて検討してまいりたい。
 また、現在把握している情報の公表の在り方については、関係実験研究施設の権利、競争上の地位その他正当な利益を損なうおそれがないかどうか等の観点から検討いたしたい。

三について

 国立感染症研究所病原体等安全管理規程(昭和五十六年十一月五日国立予防衛生研究所部長会議決定)は、世界保健機関が公表した実験室バイオセーフティ指針に準拠して同研究所が定めたものであり、病原体を取り扱う他の実験研究施設においても同規程を参考にする例があると聞いている。また、同規程の外にも、大学等における研究用微生物安全管理マニュアル(案)が学術審議会特定研究領域推進分科会バイオサイエンス部会において作成されるとともに大学に示され、農林水産省において家畜衛生試験場微生物等取扱規程(平成五年十二月一日5家衛C第七百八十七号家畜衛生試験場内部規程)が定められるなど、各実験研究施設の自主的な規制の下で病原体を用いた実験又は研究が行われてきている。
 世界保健機関においては、現在、実験室バイオセーフティ指針の改訂を検討中であると聞いており、その動向及び各実験研究施設の規程等を踏まえつつ、病原体の取扱いに関する法令を定める必要性等について検討してまいりたい。

四について

 実験研究施設から病原体や組換え体(組換えDNA分子が移入された生細胞をいう。以下同じ。)が漏出することのないように、組換えDNA実験指針(昭和五十四年八月二十七日内閣総理大臣決定)や各実験研究施設の規程等においては、病原体等の取扱いを含めた安全管理の基準が定められており、実験装置から病原体等が漏出したとしても、施設内に封じ込められるように設備及び施設が設計され、運用されていることから、施設外に病原体等が漏出することは想定し難く、お尋ねのような調査等の手法を検討することは考えていない。

五について

 お尋ねの「Safety in health - care laboratories」は、世界保健機関の公式文書ではなく、内容についてはその著者が責任を持つとされていると承知している。また、同文書の十六ページにおいては、高度封じ込め実験検査室あるいは感染リスクの高い実験検査室は、患者のいる場所や公共部分あるいは人の行き来の多い通路から離れて設置すべきである旨が記載されているが、これは、病院等の施設内においてどこに実験検査室を配置するかを論じているものであり、実験検査室が住宅地及び公衆の集まる地域に立地することの是非を論じているものではないと承知している。
 なお、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号に規定する用途地域内の建築物については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)により、その用途に応じてその建築が制限されている。

六について

 実験研究施設については、それぞれの施設ごとに設備の内容、取り扱われる物質等が多岐にわたり、一律に工場に該当するとしたり、住居の環境を保護する上で支障があると判断することはできないことから、建築基準法別表第二(と)項第三号(十六)の規定に基づく政令により、住居の環境を保護する上で支障がある事業として定めることは適当ではないと考えている。

七について

 実験研究施設が建築基準法別表第二(は)項第二号に掲げる建築物に該当するか否かについては、名称等による形式的な判断ではなく、個々の施設ごとに建築計画等を勘案して実質的に判断すべきものと考えている。

八について

 建築基準法第二十七条第二項第二号に規定する危険物は、防火上の安全性を確保する観点から定められているものであり、病原菌類を当該危険物の対象とすることは適当ではないと考えている。
 病原菌類を取り扱う施設においては物理的封じ込め、生物学的封じ込め等の措置を適切に講ずることが重要であり、現時点において、建築物の構造について特段の規制を行うことは考えていない。

九について

 実験研究施設においては、組換えDNA実験指針等に基づき、病原体等の物理的封じ込め、生物学的封じ込め等の措置を適切に講ずることにより安全性を確保することが重要であり、現時点において、建築物の耐震性について特段の規制を行うことは考えていない。
 なお、地震によって病原体等の漏出による重大な事故が起こった例も報告されていない。

十について

 組換えDNA実験は、組換えDNA実験指針等に基づいて実施されており、同指針においては、実験終了後、お尋ねの有効に機能しなかったベクターを含め、実験に係る生物に由来するすべての廃棄物等を廃棄の前に不活化すること、試料及び廃棄物を一定の基準に従って保管すること並びに試料及び廃棄物の記録を作成し、保存することが定められている。
 なお、国公立及び民間の実験研究施設が実施する組換えDNA実験については、その実施件数が科学技術庁に報告されるとともに、安全性評価等のために国の指導の下に行ったものについては、組換え体の保存及び処分の状況を含めた実験結果の概要も報告されている。

十一について

 病原体や組換え体の輸送は、郵便、民間運送事業等として行われている。
 郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第十四条により、生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が附着していると認められる物は、官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものを除き、郵便物として差し出すことができないとされている。生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が附着すると認められる物のうち、官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものについては、郵便規則(昭和二十二年逓信省令第三十四号)第八条第一項第三号等により、びん、かん等に入れ、これを内容品が漏出しないよう密封した上、外部の圧力に耐える堅固な箱に納め、箱には、万一容器は破損しても完全に漏出物を吸収するよう綿その他の柔軟な物を詰め、郵便物の表面の見やすいところに品名及び「危険物」の文字を朱記することとされている。
 なお、組換えDNA実験指針においては、組換え体の運搬について、同様の取扱いをするよう定めている。
 さらに、国際連合危険物輸送専門家委員会等は、輸送にかかわる者及び一般公衆の安全を確保すること等を目的としたガイドラインを示しており、これに沿って航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)等により所要の規制が行われている。
 これらの法令、ガイドライン等の適切な実施によって、輸送中の病原体等の漏出の防止に努めているところである。

十二について

 バイオテクノロジーは、実用化段階では食品産業、化学工業、医薬品産業、農林水産業等の幅広い分野で用いられており、現在、関係省庁が連携を図りつつ、それぞれの所掌分野において安全性の確保に努めている。中央省庁等改革後も、関係省が連携して安全性の確保に取り組んでまいりたい。
 また、組換えDNA実験の安全性評価については、現在、科学技術庁又は文部省において、専門家で構成される科学技術会議ライフサイエンス部会組換えDNA技術分科会又は学術審議会バイオサイエンス部会組換えDNA専門委員会の審議を経て行っているが、中央省庁等改革後も、文部科学省において、これまでと同様に専門家による審議を経た上で、適切に行うこととしたいと考えている。





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