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平成二十四年三月七日提出
質問第一二〇号

ホームレスの公民権保障等に関する質問主意書

提出者  服部良一




ホームレスの公民権保障等に関する質問主意書


 厚生労働省「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)」の平成二三年調査結果(平成二三年一月実施、同年四月一五日公表)によれば、全国のホームレス数は平成二二年調査比二、二三四人減の一〇、八九〇人であった。ただし、この調査はホームレスの定義が限定的であり、目視調査である等の限界があり、ここで把握された人数は最小限のものであると受け止めるべきである。
 特に、「派遣村」等を通じて、非正規労働者やいわゆる「ワーキングプア」の状況に注目が集まり、格差・貧困への取り組みが重要な政策課題と認識されてきたにも関わらず、リーマンショック以降の経済状況の中で、非正規労働者比率はむしろ増加している。狭義の意味でのホームレスには当たらずとも、就労や居住の状況が極めて不安定な人々がおり、また、一定の施策が講じられているとはいえ、依然としてセーフティネットからこぼれ落ちる人々が存在している。よって、必ずしもホームレスが減少しているとは言い難く、ホームレスの状況は、その態様が多様化しつつも、依然として深刻であると考えなければならない。
 このような状況に対して、当然ながら、自立支援、就労支援、生活保護、あるいはパーソナルサポート等、各種の仕組みを動員し、見直し、拡充することで、一人一人のホームレスの背景、ニーズに適切に対応し、何よりその権利と尊厳を守りつつ、支援を行うことが求められる。この点、現在展開されている自立支援施策や生活保護制度の運用等が、時にホームレスのニーズや尊厳を無視し、一方的に制度への適応を押し付けるものとなっていたり、少なくとも当事者にそう受け止められる場合があったりすること、あるいは、アウトリーチが十分でないことについては、真摯に反省し、不断の見直しと改善を図る必要がある。
 ところで、公民権は日本国憲法の保障する基本的人権であるが、公職選挙法には住所要件があるために、住民登録ができず住所を有していないホームレスは選挙権を行使できない状況におかれている。この点につき、関係裁判等において明らかにされている政府の立場は、住所要件はやむを得ない合理的制限であり、経済的・社会的支援を通じてホームレスが安定した住居を得て、住所認定が可能となるようにすることが、ホームレスの公民権保障のための方策であるというものであるようである。しかしながら、公民権は独立して保障されるべき基本的人権である。各種法制度を立案し、審議し又は決定する議員や首長を選ぶ権利を得るために、当の制度に適応することが条件となるということは公民権の合理的な制限とは言えないのではないか。例えば、ホームレス当事者がホームレス対策に異議を申し立て又はより望ましい提案を実現する手段として選挙権を行使しようとしても、まず現行の対策を受け入れなければならないというのは矛盾である。民主主義社会日本において、住民基本台帳法に基づく住所を有することができない者が民主主義に参画することができず、存在しないに等しい扱いを受けていることは決して看過できる事態ではない。
 以上の問題意識により、ホームレスの公民権につき、政府の見解を質問する。

一 政府は、二〇歳以上の日本国民であり、日本国内に居住していながら、住所を有していないがために、選挙権を有していない者の人数を把握又は推計しているか。
二 「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」は第二五条(参政権)において、「すべての市民は、第二条に規定するいかなる差別もなく、かつ、不合理な制限なしに」、「直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与」する「権利及び機会を有する」としている。また、自由権規約委員会が一九九六年七月一二日に採択した一般的意見二五は、「締約国は、投票権を有するすべての人がこの権利を行使することができるように実効的な措置を講じなければならない。選挙人の登録が必要な場合は、登録を促進し、これを妨げてはならない。選挙人名簿への登録に居住要件が適用される場合、当該要件は合理的なものでなければならず、住居を有しない者から投票権を排除するような方法で制限を課してはならない」(その一一)としている。これらの国際人権基準及び選挙権、法の下の平等等を保障する日本国憲法に照らして、以下の点につき政府の所見を明らかにされたい。
 1 住所を有していないが故に選挙権を有することができない日本国民がいることは、合理的な制限として許容されるものであるのか。
 2 そもそも、選挙権の住所要件は実務上の要請であるのか、公民権に係る理念的、理論的要請であるのか。
 3 公職選挙法の住所要件を撤廃し又はその特例を設け、直接的、個別的に選挙権を確保すべきでないか。
 4 仮に、選挙権の住所要件を撤廃することに伴う実務上の混乱や悪意の利用が懸念されるとしても、現状維持を正当化できる程度の検討が尽くされたと言えるのか。
三 公職選挙法上の住所要件の是非に関わらず、政府は以下の点につきどのように考えるか。
 1 住民基本台帳法に基づく住民登録につき、例えば、ホームレスが寝食する公園、支援団体・施設等、ホームレスが実質的に生活の本拠とし又はその拠り所としている場所を柔軟にかつ積極的に住所として認定すべきではないか。
 2 住所や選挙権の行使に関して、学生、単身赴任者、国会議員等については柔軟に運用がなされている。これらの者の住所が「生活の本拠」であるか否かで判定されるのであれば、ホームレスについても「生活の本拠」性によって住所認定が可能ではないか。必ずしも前者の「生活の本拠」性が一義的に決定される訳ではなく、多分に便宜性に拠っていることに鑑みれば、ホームレスの住所認定にのみ厳格性、否、漠然とした「社会通念」への適合が求められるのは二重基準ではないか。

 右質問する。



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