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平成二十八年十月十七日提出
質問第六八号

米国海兵隊のハリアー戦闘攻撃機墜落事故の原因究明と飛行再開に対する日米両政府の対応等に関する質問主意書

提出者  仲里利信




米国海兵隊のハリアー戦闘攻撃機墜落事故の原因究明と飛行再開に対する日米両政府の対応等に関する質問主意書


 去る九月二十二日、沖縄県国頭村辺戸岬沖約百五十三キロメートルの米軍訓練水域「ホテル・ホテル」で、米国海兵隊のハリアー戦闘攻撃機が墜落した。幸い操縦士は三十分後に救助され、操業中の漁船や航行中の船舶、航空機への被害もこれまでのところ報告されておらず、大事には至らなかったとのことである。しかし、一歩間違えば県民の生命や財産を損なう重大な事故に繋がりかねないことから、県民はきわめて深刻に受け止めているが、それにもかかわらず日米両政府は、あたかも何事もなかったかのような対応やお座なりの説明に終始し、県民の不安や憤りを全く理解しようとしないことから、県民は日米両政府に対して不信感を募らせている。
 また、沖縄側が強く求めた事故原因の究明や十分な説明もないままに墜落から僅か十五日後に一方的に事故機と同型機の飛行を再開したことから、さらに県民の不安と憤りを強める結果となっている。
 そこでお尋ねする。

一 今回のハリアー戦闘攻撃機の墜落の件に関して、沖縄県内の地元紙によれば、在沖米海兵隊が九月二十二日に出した広報文では「操縦士脱出」を前面に出して「墜落」の文言は使わず、県民に不安を与えたことへの謝罪や説明には言及しなかったとのことである。また、在日米軍のチャールズ・シュローティ副司令官が九月二十四日に稲田朋美防衛大臣と面談した際に、稲田大臣が「事故は国民に大きな不安を与えた」と指摘したのにもかかわらず、チャールズ副司令官は「操縦士を無事救助できた」ことや「健康状態が良く、既に退院した」だけの説明に終始し、県民の不安の払拭や謝罪に全く触れようとしなかったとのことである。これらのやり取りから窺えることは、墜落事故に対する米軍関係者と県民との間の認識の差が極めて大きく、また米軍関係者が県民感情を全く理解していないことである。おそらく米軍関係者は、県民がチャールズ副司令官の言動や海兵隊の広報誌から、米軍兵士の安全さえ確保できれば県民の安心・安全はどうでも良いと感じ取っていることすら理解できないのだろうということである。さらに、政府が米軍関係者に対して一定程度の注意喚起はするものの、それ以上の言及や追及を行わなかったことは、政府が米側に対して及び腰であることと、「自国民のために敢えて火中の栗を拾う」ことは毛頭行う気がないことを明らかにしている。このような日米両政府の対応に対して、沖縄県民は、県民の生命・財産を損なう重大な墜落事故に対する日米両政府の対応や説明が不十分であると感じ憤りを感じているが、政府の認識と見解を答えられたい。
二 質問一に関連して、本職は、稲田防衛大臣がチャールズ副司令官に対してなぜ「県民の不安の払拭や謝罪の言葉」を求めようとしなかったのか、非常に疑問を感じている。日米両国が真の対等なパートナーであれば、耳の痛い話であってもきちんと県民感情を斟酌して注意を促したり、率直に現状を話し合ったりすることこそが同盟国であると思うし、互いに胸襟を開いて率直に話し合う姿勢こそが同盟の深化に貢献すると本職は考えるが、政府の見解を答えられたい。
三 沖縄県内での米軍機墜落は沖縄県の復帰後何件か、その内訳として在日米軍の四軍別・機種別の内訳はどのような状況か、墜落事故の原因は何か、事故原因が究明・公表されない前に飛行や訓練を再開した件数は何件かについて政府の承知するところを明らかにした上で、米軍機の墜落が後を絶たず、県民の生命や財産を脅かし、県民を不安に陥れているという状況が沖縄県内では戦後から続いていることについて政府の見解を答えられたい。
四 日米両政府は墜落事故が起こる度に異口同音に「原因の究明」と「再発防止」を唱える。最早沖縄県民は日米両政府のこのような「お為ごかし」を信用するものではないが、それでは「原因の究明が行われ、再発防止に繋がった事例」について政府の承知するところを明らかにした上で、なぜ米軍機の墜落事故が後を絶たないのかという理由について政府の見解を答えられたい。
五 墜落事故を起こしたハリアー戦闘攻撃機と同機種が事故後の十五日後に当たる十月七日に飛行・訓練を再開した。沖縄県を始め地元が求める原因究明がなされないままの再開であるが、在沖米軍のローレンス・ニコルソン四軍調整官は五日の会見で「安全に飛行できるとの確信を持った」とし、その理由として「日本に駐留する全てのハリアーの徹底的な調査を行い、初期調査を終えた。機体の不備や人為的なミス、整備不良等原因は特定できなかった」ことや、「ハリアーの運用は沖縄以外の世界中で継続しており、航空機の安全性は実証されている」ことを挙げた。このような日米両政府の説明や対応に対して、沖縄県民は「事故原因が究明されずに、どうして安全だと言い切れるのか」とか、「原因がわからなければ、そもそも有効な安全対策はできないはずだ」との疑問を率直に感じるし、「世界中で飛行が継続されているならば、沖縄だけで墜落したのか、その理由は何か、きちんと説明してもらいたい」とする要求はきわめて当然であると思われるが、県民の抱くこれらの疑問や要求について政府の見解を答えられたい。
六 質問五に関連して、ローレンス四軍調整官は「ハリアーの運用は世界中で継続している」と言うが、それではハリアーの墜落事故について政府の承知するところを明らかにした上で、戦闘機に詳しい専門家が「ハリアーの特性上、飛行が不安定になり易く墜落事故に繋がりやすい」と指摘していることや、本職が調査した限りでは近年ハリアーの墜落事故が頻発していることについて政府の見解を答えられたい。
七 質問五及び六に関連して、政府は当初「安全が確認されるまで飛行を停止することは当然だ」としていたが、米軍や米国政府が飛行再開を決定すると、稲田防衛大臣が間髪を入れずに「安全性を確認した上で飛行を再開するのは当たり前だ」とし、さらに「米側から安全確認のために実施した全ての措置を列挙したリストの提供を受け、防衛省で評価した結果、一定の妥当性を確認した」と述べて容認の姿勢に転じた。政府のこのような方針転換とその姿勢は「米国追従」としか言いようがないが、それでは県民・国民の生命と財産の安心と安全を図るべき政府として、具体的にどのような評価を行ったのか、そしてその結果どのような理由でもって妥当と判断したのか、もうこれ以上墜落事故は起こらないとの確信を持ったから飛行再開を認めたのかについて政府の見解を答えられたい。
八 質問七に関連して、沖縄県内の地元紙は、日米両政府は墜落事故発生の九月二十二日以降、連日情報交換に努めていたことや、防衛省が米側に整備状況などの確認や安全面を沖縄県民に説明するよう求め、最終的に沖縄県への説明前に飛行再開に同意したことを明らかにしている。またこれらのやり取りなどについて、ローレンス四軍調整官が「再開までに日本政府と様々な話し合いを持った」ことを認めたことも明らかにしている。さらに稲田防衛大臣も質問七で明らかにしたように十月七日の記者会見でそのことを明らかにしている。しかし、十月六日に沖縄県庁を訪れた外務省の川田司沖縄担当特命全権大使と中嶋浩一郎沖縄防衛局長は「米の事前情報を否定」し、あくまでも飛行再開は「沖縄県と同じ日に聞いた」としている。当事者である米軍及び防衛大臣というそれぞれのトップが認めている隠しようのない事実を政府関係者が頑なに否定し続けることに対して県民はより一層不信感を募らせている。よって、ローレンス四軍調整官及び稲田防衛大臣が言うように「日米両政府・関係者が緊密に連絡を取り合い」、「政府は沖縄県への説明前に飛行再開に同意した」のかということについて政府の承知するところを明らかにした上で、なぜ政府関係者がひたすら事実を隠そうとしているかについて政府の見解を答えられたい。
九 沖縄県内の地元紙によれば、ローレンス四軍調整官が十月五日に行った会見に対して、川田大使は「透明性を確保し、説明責任を果たしたいとの努力の表れだ」とし、中嶋沖縄防衛局長も「会見は今までにないことだ」としていずれも評価する姿勢を示したとのことである。しかし、墜落事故により甚大な被害を受ける沖縄県民にとっては、これまで会見すら行わなかったことが極めて異常であり、米軍の「県民への驕りや蔑視」以外の何物でもないとしか感じられないのである。さらに会見自体も「一方的な説明に終始」し、事故原因を追究されると「現在も調査中だ」として言及を避けるなど極めて不透明さが残る内容であった。これらのことを考えるととても政府が言うように「評価できる」ものではないと本職は考えるが、政府の認識と見解を答えられたい。
十 沖縄県民が日米両政府に求めていることは、「墜落の原因が究明されるまでの間、飛行や訓練を停止してもらいたい」とのささやかで、しかし切実な願いである。また、沖縄県の漁業者が求めていることも「好漁場を返してもらいたい」ということや、米軍の一方的な都合でもって「本来自由であるべき操業を制限しないでもらいたい」との願いに過ぎない。沖縄県民及び漁業者のこのような最低限度の要望や思いに対して政府はどのように対応する考えか、見解を答えられたい。
十一 沖縄への過重な基地負担を表す表現として国内外で普遍的に認識されていることは「国土面積の僅か〇.六%の面積しか有していない狭隘な島に在日米軍専用施設の約七十四%が集中している」ことである。しかし、その他にも過重な基地負担としか言いようがない状況が沖縄県内にある。例えば、那覇空港に近接する嘉手納飛行場の「嘉手納ラブコン管制空域」として嘉手納を中心に半径五十海里、高度二万フィートと、久米島を中心に半径三十海里、高度五千フィートという二つの空域が広大な範囲で設置されているため、那覇空港を離発着する民間航空機はこの「嘉手納ラブコン管制空域」を避け、低空での離発着や沖縄本島南側から大回りでの侵入を余儀なくされている。また、沖縄本島周辺では、沖縄本島を取り巻くように米軍訓練水域として二十八水域、約五万五千km2設定されており、そこでは周年、水陸両用艇の上陸訓練や、艦船及び航空機の射爆撃訓練が行われているため漁船の操業や一般船舶の航行等が厳しく制限されている。さらには、米軍訓練空域として二十区域、九万五千km2設定されており、そこでも周年、航空機の射爆撃訓練や空対空の射撃訓練等が行われているため、民間航空機や漁船、一般船舶の航行等が厳しく制限されている。これら三つの空域や水域を合わせると十八万七千km2に及び、沖縄本島の面積千二百六km2の百五十五倍、沖縄県全体の面積二千二百八十一km2の八十二倍に当たる広大な面積が米軍の訓練等のために提供されているのである。このように沖縄県内では陸だけではなく、海でも空でも広大な水域・空域が米軍に独占的に提供され、国内法や環境基準等が全く適用されない中で米軍が自由に使用している。このため、沖縄県民は日常生活や経済活動、産業振興等あらゆる面で弊害を被っているのが実態である。このような過酷な実態について政府の認識と見解を答えられたい。
十二 今回の墜落事故も本を正せば、米軍が超法規的に自由に沖縄の陸や海、空を使用しているがための結果であり、そのつけを何の落ち度もない沖縄県民に一方的に押し付けているものである。沖縄県民は今回の墜落事故はいわば起こるべくして起こったものとして受けとめている。よって、本職はこのような沖縄の現状を憂い改善するためには、在沖米軍を速やかに撤退させ、全ての米軍基地を返還すべきであると考えるが、政府の見解を答えられたい。

 右質問する。



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