質問本文情報
平成三十年一月二十二日提出質問第八号
東京電力原子力事故後に行われている甲状腺検査に関する質問主意書
東京電力原子力事故後に行われている甲状腺検査に関する質問主意書
東京電力原子力事故後、福島県は一部国費も投じながら、事故当時十八歳以下を対象に、甲状腺検査を実施している。しかし、現時点までに、適正な検査結果を得ることを困難にさせる二つの課題が判明している。
第一は、二〇一七年十二月二十五日に開催された福島県の「県民健康調査」検討委員会(以下、委員会)で明らかになった。検査一巡目の受診率八十一.七%、二巡目の七十一%と比べると、三巡目はさらなる減少傾向にあることだ。
二〇一六年度から二〇一七年度までの三巡目では、二〇一七年九月三十日時点で、事故当時十八歳以下だった対象者三十三万六千六百四十人のうち、未だ十六万千八百八十一人しか受診しておらず、受診率は四十八.一%と低迷している。また、対象者に対して福島県立医科大学から送られる検査通知のうち、一万九千通が届かず、返送されていることが委員会の中で報告された。以下、「受診率低下問題」とする。
第二は、一巡目から三巡目の一次検査後に「経過観察」とされた対象者については、二次検査を受けずに保険診療に移るが、その場合は、甲状腺がんの摘出手術を行っても、検査結果に反映されていないことが、四歳児の一例をきっかけに、二〇一七年十月二十三日の委員会で明らかにされたことだ。
また、同年十二月二十五日の委員会でも、二巡目以降の検査を受けていない対象者が、福島県立医科大学以外の病院で甲状腺がんの摘出手術を受け、それが福島県に報告されても、福島県立医科大学の検査結果には反映されていないことが、明らかにされた。
二〇一七年九月三十日時点までで甲状腺がんまたは疑いとされた対象者は百九十三人、手術により甲状腺がんと確定したのは百六十人だが、実際はそれ以上にいて、全体把握ができておらず、検査の精度が低いために、適正な検査結果を得られない状態である。以下、「経過観察等問題」とする。
二〇一八年度から四巡目の甲状腺検査が開始されるにあたり、以下、質問する。
しかし、二〇一七年十一月三十日に開催された委員会「甲状腺検査評価部会」では、委員の祖父江友孝・大阪大学大学院教授が、目的について、「子どもたちの健康を長期に見守るために」ということだが、「甲状腺にかかわる被害を最小限に食い止める」ことと「放射線と小児甲状腺がんの関係の正しい評価を行う」ことの二点を具体的に記述した方が、今後の方針を検討する際に、議論が明確化すると提案をしていた。
国が国費を投じる目的もまた、甲状腺にかかわる被害を最小限に食い止めることと共に、放射線と小児甲状腺がんの関係を早期に評価することだと考えるが、政府の見解をわかりやすく明らかにされたい。
二 委員会には環境省から環境保健部長が参加しているが、「受診率低下問題」と「経過観察等問題」の解決のために、環境保健部長はこれまでにどのような役割を果たしてきたのか。
三 福島県の甲状腺検査に投じられた国費および東京電力の拠出額は、初年から二〇一七年度まで予算額ベースでいくらか。政府が把握する各年のそれぞれの額を明らかにされたい。福島県から福島県立医科大学への検査委託の総額がそれらの総額と異なる場合は、その旨も明らかにされたい。
四 福島県の県民健康調査課によれば、検査通知に使う住所は、基本的には県が毎年度初めに把握した住民票の情報を福島県立医科大学に提供し、それに加えて福島県立医科大学の放射線医学県民健康管理センターが、ウェブサイトで「住所変更のご連絡をお願い致します」と呼びかけて把握したものである。一万九千通がこうした把握から漏れていることになるが、この「受診率低下問題」について、今後、国としてできることにはどのような手法が考えられるか。
「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下、子ども被災者支援法)第三条は、「国は、原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護すべき責任並びにこれまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っている」としていることから、可能な限りの手法を真摯に検討して明らかにされたい。
五 「経過観察等問題」は、厚生労働省が推し進めてきた国民皆保険およびレセプト電算化政策を鑑みれば、その情報を活用し、国として検査対象の三十三万六千六百四十人の全員について、甲状腺がんの摘出手術数が把握できると考える。できないとすれば何故かを明らかにされたい。
六 福島県は、「子どもたちの健康を長期に見守るために甲状腺検査を実施している」のであり、この検査の実効性を高めるためには、検査対象を長期にわたって追跡する仕組みが必要である。
子ども被災者支援法は、東京電力原子力事故により放出された放射性物質が広く拡散していること、当該放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないことを前提にしており、この前提を踏まえて、国が、東京電力原子力事故により放出された放射性物質が広く拡散した地域に事故時に居住等していた住民の健康管理に資する手帳の発行または保険証への記載などの仕組みを創設し、長期にわたる悉皆調査を可能とすべきではないか。できないとすれば何故かを明らかにされたい。
右質問する。