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平成三十年一月二十五日提出
質問第二二号

東京電力柏崎刈羽原子力発電所再稼働申請に伴う適合審査に係る意見照会に関する質問主意書

提出者  阿部知子




東京電力柏崎刈羽原子力発電所再稼働申請に伴う適合審査に係る意見照会に関する質問主意書


 東京電力柏崎刈羽原子力発電所六号機および七号機の再稼働申請に伴い、原子力規制委員会により適合審査が行われた。昨年十月四日に適合性審査を経て決定された、「申請者の原子炉設置者としての適格性についての確認結果(案)」(以下、「適合性の確認結果(案)」という。)では、「判断の前提が成立しない場合には変わり得る」としながらも、「原子力規制委員会は、本件申請の申請者である東京電力については、柏崎刈羽原子力発電所の運転主体としての適格性の観点から、原子炉を設置し、その運転を適確に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はないと判断した。」とされた。この判断の前提として、電気事業を所管し原子力損害賠償・廃炉支援機構法を所管する立場にある経済産業大臣が監督・指導する意向であることを確認することが必要とされている。
 東京電力福島第一原子力発電所事故以降、「原子力規制委員会の組織理念」(平成二十五年一月、原子力規制委員会決定)、「原子力安全文化に関する宣言」(平成二十七年五月、原子力規制委員会決定)にあるように「安全文化の醸成」は重要な考え方であるが、それとともに「規制と利用の分離」は原子力規制委員会の設置のもととなった「原子力安全規制に関する組織等の改革の基本方針」(平成二十三年八月十五日閣議決定)以来、原子力規制行政における政府方針となっている。そこで、原子力安全規制における原子力規制委員会および経済産業省の姿勢や関係性に問題はないかということについて、政府の認識を問う。

一 「原子力安全規制に関する組織等の改革の基本方針」にもある「規制と利用の分離」は、現在においても原子力規制行政の基本的な方針であることを改めて確認したい。
二 「適合性の確認結果(案)」では、「判断の前提が成立しない場合には変わり得る」と記されている。この判断の前提の一つについて、「適合性の確認結果(案)」で「電気事業を所管する立場、また原子力損害賠償・廃炉支援機構法を所管する立場にある経済産業大臣から、東京電力の回答文書等の内容に異論はなく、東京電力が回答文書等の趣旨を遵守するよう監督・指導する意向であることが明確に示されること」と記されている。
 1 原子力規制委員会設置の経緯として、「規制と利用の分離」の観点から、原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離し、原子力安全委員会の機能をも統合して、環境省の外局として独立性の高い三条委員会として設置された。しかし、今回の「適合性の確認結果(案)」では電気事業を所管する立場および原子力損害賠償・廃炉支援機構法を所管する立場にある経済産業大臣の確認が前提である。これは原子力規制委員会設置の経緯から考えて、利用側の代表である経済産業大臣の了承を求めることは、「規制と利用の分離」の考え方に反するのではないか。政府の見解を伺う。
 2 「規制と利用の分離」の考え方に反する可能性があるにも関わらず、原子力規制委員会が電気事業を所管する立場および原子力損害賠償・廃炉支援機構法を所管する立場にあり、利用側の代表ともいえる経済産業大臣に対して意見照会を行ったのはなぜか。
三 更田豊志原子力規制委員会委員長が昨年十月二十五日の記者会見で「昨日の経済産業大臣から頂いた回答に関して、これの基本となるところは、東京電力の経営陣が規制当局に対する回答として寄せた文書、この文書がきちんと履行されるように、この取組方針がきちんと守られるように、これを遵守されるように適切に監督・指導していくと。これが回答の中で明記されたことに意味があると思っています。経済産業省の裏書きがなされたのだというふうに受けとめています。」(原子力規制委員会速記録による)と述べた。
 1 「経済産業省の裏書き」とはどういった意味か。明確に答えられたい。
 2 原子力規制委員会による経済産業大臣への意見照会を巡る一連の経緯において、独立した三条委員会の原子力規制委員会が、適合性を認める最終判断の段階で、利用側の代表ともいえる経済産業大臣の了承を前提にするというのは、原子力規制行政を担う行政庁としての主体性を欠く行為なのではないか。政府の見解を求める。
 3 今回の東京電力柏崎刈羽原子力発電所六号機および七号機の適合性審査において、原子力規制委員会と経済産業省のどちらが最終責任を負っているのか。明確に答えられたい。
四 平成二十九年十二月二十七日に原子力規制委員会より提示された「東京電力ホールディングス株式会社柏崎刈羽原子力発電所六号炉及び七号炉の発電用原子炉設置変更許可について(案)」の別紙四の二では、原子炉等規制法第四十三条の三の六第一項第二号の経理的基礎に係る部分の適合審査について、「本件申請に係る重大事故等対処設備他設置工事に要する資金については、自己資金等により調達する計画」であるとしており、その調達について「その調達に係る自己資金及び外部資金の状況、調達計画を確認し、これまでの増資、内部留保等による資金の確保がなされていること等から、工事に要する資金の調達は可能と判断した。このことから、申請者には本件申請に係る発電用原子炉施設を設置変更するために必要な経理的基礎があると認められる。」としている。
 1 設置許可基準における申請者の「経理的基礎」の適合審査とは、申請工事費用を一時的に資金調達可能であるとすれば、経理的基礎があるとして認められるのか。投資した資金の費用対効果、いつ回収されるのかという事業計画及びキャッシュフローの適合確認がされなければ、経理的基礎があるとは言えないのではないか。政府の見解を求める。
 2 福島第一原子力発電所事故により東京電力は二十二兆円の負債を抱えて実質債務超過に陥ったという現実と、また政府は電力システム改革による事業環境の変化に伴い、原子力事業者の破たんもあり得るとしている。こうした変化に鑑み、それまで使用済核燃料の再処理費用を積み立てていた「再処理積立金制度」から、原子力事業者の破たんを前提として再処理費用を確保できる「再処理拠出金制度」に変更した。これまでの「経理的基礎」の適合審査における原子力事業者の破たんはあり得ないとの前提から、再処理費用の制度変更の経緯に倣い、原子力事業者の破たんもあり得るとの前提で財務状況と事業計画等の適合審査を行って「経理的基礎」の判定をするべきではないのか。
 3 平成二十九年八月二十五日に東京電力が原子力規制委員会宛に提出した「本年七月十日の原子力規制委員会との意見交換に関する回答」の各論点に対するご回答のAにおいて、「今後要する資金の手当てについては、当社において策定し、主務大臣の認定を受けた新々総合特別事業計画でお示しした計画に基づき、着実に実行してまいります。」としている。つまり、東京電力の資金調達は新々総合特別事業計画(以下、「新々総特」という。)に基づいて行われるとのことであり、新々総特の実行性と進捗状況、財務状況に左右されることだと言える。では東京電力の経理的基礎の適合審査において、東京電力の新々総特及び財務状況の具体的に何を審査したのか。もし、審査していないとすれば、その理由は何か。明確に答えられたい。
 4 東京電力の新々総特によれば、東京電力は二十二兆円の負債を抱え、毎年利益以外に事故炉費用、損害賠償費用を年間五千億円ねん出する計画になっている。また、この計画は、柏崎刈羽原子力発電所の六・七号炉だけではなく、稼働の見込みの乏しい一から五号炉の再稼働を前提としたものである。前任の數土文夫会長は株主総会の場で、「十六兆円とか二十二兆円という数字は驚天動地。できない数字だとしても最後まで責任を貫徹しなければならない。経営陣は自分を捨ててでも挑戦するしかない」と発言し、この新々総特は実現不可能だと明言している。この様な新々総特の適合審査を行わずに、なぜ東京電力に経理的基礎があると言えるのか。
 5 法令に基づく「経理的基礎」の適合審査案をパブリックコメントに諮らず、法令にない適格性審査案のみをパブリックコメントの対象としたのは何故か。また「経理的基礎」の適合審査案の審査内容を公表せず、パブリックコメント募集しなかった理由は何か。

 右質問する。



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