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平成三十年二月二十六日提出質問第九九号
いわゆる「送電線空き容量ゼロ」問題に関する質問主意書
提出者 柿沢未途
いわゆる「送電線空き容量ゼロ」問題に関する質問主意書
送電線の空き容量があるにもかかわらず、「空き容量ゼロ」であるとして再生可能エネルギー事業者などの新規接続を拒否したり、新規接続のための送電線増強費用に相当するとされる多額の金額を「特定負担」として再生可能エネルギー事業者に転嫁する運用が行われていると指摘されている。このため既設電源と新規電源との間でイコールフッティングが実現しておらず、再生可能エネルギーの導入量拡大の妨げになっているとの批判が高まっている。わが国の再生可能エネルギーの導入率は先進諸国と比べていまだ低位で、世界的な導入量拡大の加速度的なスピードに遅れをとっているとの指摘も多く、上記のような再生可能エネルギー導入の妨げを放置するのは看過できない。そこで以下、質問する。
2 具体的には、未稼働の東京電力東通原発一号機、および着工前の電源開発大間原発一号機の容量についてはどのように計算されているか。
3 稼働停止中の原発の定格出力分を「空き容量」として数年間の長きにわたって空けておく、これまでの運用方法について、政府はどのように考えているのか。新規の再生可能エネルギー事業者等の接続の妨げになっているとは考えていないのか。
4 そもそも世界的には送電線の利用についてはその時その時の実潮流ベースで計算し、系統運用を行う手法が一般的になりつつある。実潮流を正確に把握して制御する技術も確立しているところであるが、わが国において、実潮流ベースでの系統運用を採用できない理由は何か。系統運用における技術水準でわが国が先進諸国に比べて遅れているのか。
二 1 送電系統の運用手法について、資源エネルギー庁は、自らのホームページのスペシャルコンテンツ「送電線「空き容量ゼロ」は本当に「ゼロ」なのか?」において、送電線の二回線のうち一回線が故障した場合でも運用に支障のないようにする、いわゆるN−一基準について説明し、「原則的には一回線分の容量である「五十%」という利用率が、平常時に電気を流すことができる最大の容量となるのです」としている。
ところが、実際には、全国の送電線において、二回線あわせて五十%を超える容量の電力を送電している事例が少なからず存在している。「五十%が平常時に電気を流すことができる最大の容量」は日本全国の全ての送電線(一般送配電事業者・送電事業者が保有および運用するもの)においてあてはまるのか。
2 最大容量が五十%以上流せる送電線は全体の何割あるのか。
3 全ての送電線に対して各電力会社は厳密な潮流計算を行っているのか。計算結果を経済産業省は把握しているか。
4 全国の主要幹線送電系統において、「五十%超え」を記録した事例が過去一年間にあるものはどれだけか。「五十%超え」を過去一年で一度でも記録したのは主要送電系統の中の何割にあたるか。
三 1 電力広域的運営推進機関は、送電線への新規接続にあたり必要とされる送電線の増強費用について、電力会社が電力消費者からの電気料金で薄く広く回収できる「一般負担」の上限額を定めている。上限額を超える費用については、いわゆる「原因者負担」として、新規接続事業者が負担する「特定負担」により回収される。太陽光、風力に対して設定された「一般負担」の上限額は、他の電源種別と比べて低くなっており、結果として、太陽光や風力の新規事業者に多額の「特定負担」が請求される事態となっている。
この「一般負担」の上限額を廃止し、全ての「特定負担」を「一般負担」に切り替えた場合、送電線の託送料金の上昇はkWhあたり何円になる計算か。
2 欧州では、二千三十年までに二百件の送電線の新増設が計画されているが、全費用を「一般負担」で回収した場合でも託送料金の上昇はkWhあたり〇・二〜〇・三円程度にしかならないと試算されている。そのような送電線増強とそれに伴う電気料金への影響のシミュレーションを政府で行ったことがあるか。
3 電力広域的運営推進機関は、「電源の設備利用率ごとに「一般負担」の上限額を設定する」としているが、それが妥当と考える理論的根拠は何か。太陽光や風力といった変動型の再生可能エネルギー(VRE)を可能な限り導入していく考え方や実潮流ベースの運用など、世界の主流となりつつある考え方に反しており、経済産業省が導入を検討している「コネクト&マネージ」の基本的考え方にも反しているのではないか。
四 1 電力広域的運営推進機関は、「想定潮流の合理化等の取組の方向性」として、「想定潮流が空容量の範囲内となるよう新規電源連系量を管理」としているが(第二十三回広域系統整備委員会配布資料)、既設電源の連系量の管理の可能性については書かれていない。送電系統への連系量の管理において既設電源と新規電源を区別するのはイコールフッティングを欠いており、電力広域的運営推進機関が自ら掲げている「中立・公平な業務運営」の理念に反するのではないか。
2 上記の既設電源と新規電源の区別について、電力・ガス取引監視等委員会、公正取引委員会はどのように考えるか。
3 この場合の「既設電源」には、いまだ稼働を見るに至っていない東京電力東通原発一号機、ならびに着工すら前である電源開発大間原発一号機は、カウントされるのかカウントされないのか。
五 EUにおいては、再生可能エネルギーの導入量の拡大をはかる目的で、再生可能エネルギーの優先給電を義務的に要求するEU指令が加盟国に対して発出されている(再生可能エネルギー指令=RES指令)。このため、出力抑制が必要な場合は、優先給電の再生可能エネルギーに先がけて、石炭火力や原発といった他の電源の出力抑制を行うべきものとされている。
その上で、ドイツにおいては、再生可能エネルギーの出力抑制をやむをえず行った場合、それにともない生じた事業者の損失は補償され、FIT賦課金とともに電力ユーザーに転嫁される仕組みが用意されている。
しかるに、わが国においては、平成二十九年施行の改正FIT法において、再生可能エネルギーの優先接続・優先給電どころか、むしろ電力会社の接続義務の規定が削除され、むしろ後退が見られる。EU指令と同等の、再生可能エネルギーの優先接続・優先給電を電力会社に義務付ける規定が必要ではないか。経済産業省及び環境省はこのことについてどう考えるか。
右質問する。