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平成三十年四月二十三日提出
質問第二四七号

豚肉の差額関税制度に関する質問主意書

提出者  森山浩行




豚肉の差額関税制度に関する質問主意書


 豚肉の差額関税制度について、次の通り質問する。

一 関連する用語について、次の通り質問する。
 (一) WTO(世界貿易機関)農業協定第四条二における通常の関税、同項の(注)における可変輸入課徴金、最低輸入価格とは、それぞれどのようなものか説明ありたい。
 (二) 最低輸入価格とは、WTO紛争解決手続きに付された「チリ−農産物に関する価格帯システム(CHILE−PRICE BAND SYSTEM AND SAFEGUARD MEASURES RELATING TO CERTAIN AGRICULTURAL PRODUCTS)」において、パネル及び上級委員会報告が示した「本質的に、通常、ある閾値と輸入産品の取引価値との差に基づいて査定される輸入関税を賦課することによって、当該輸入産品が当該閾値を下回って国内市場に入る事のないようにする措置(In essence, a minimum import price is a measure which ensures that certain imported products will not enter a domestic market at a price lower than a certain threshold, normally by imposing an import duty assessed on the basis of the difference between such threshold and the transaction value of the imported goods.)」という事で差し支えないか。
 (三) 財務省ホームページによれば、関税率の形態として、従価税、従量税、混合税の他に、特殊な形態の関税として差額関税、スライド関税、季節関税、関税割当制度、更には特殊関税等が挙げられている。これらの関税はすべてWTO農業協定第四条二における「通常の関税」か。
 (四) 従価税、従量税に関し次の定義で差し支えないか。
  従価税とは、輸入価格に対し、一定の割合で課す租税(輸入価格×〇パーセント)であり、従量税とは、輸入貨物の重量等に対し、一定の金額で課す租税(例えば、重量を課税標準とする場合、重量×〇円/sである。)である。なお、従価税の場合には、輸入価格に対する関税額の割合を従価税の「税率」といい、重量を課税標準とする従量税の場合には、一キログラム当たりの関税額を従量税の「税率」という。
二 現行の豚肉の差額関税制度の位置付けについて、次のような答弁がある。
 平成二十八年十一月二十一日参議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会
 〇国務大臣(山本有二君) (略)鮮度の高さや消費者の嗜好から国産豚肉が競争力を持つ高価格部位に適用されている従価税、これはなるほど四・三%でございましたが、これを十年後に撤廃するということになりました。しかし、四・三%でございますから、比較的他の関税よりも低いということが言えようかと思います。国産豚肉に価格競争力がない低価格部位に適用される従量税、これにつきましては関税削減にとどめた上で十年という長期の関税削減期間を交渉で獲得しておりまして、なお、従量税は維持することができました。そして、その間、体質強化対策を活用するなどしまして、更に国産豚肉の競争力の向上を努力をしているところでございます。(略)
 (一) WTO農業協定の譲許表においては、豚肉の関税は従価税と従量税との組み合わせで譲許しているが、現在の関税暫定措置法によって定められている豚肉の差額関税制度は、どのように従価税と従量税を組み合わせて構成されているのか。
 (二) 枝肉ベースで、輸入価格がゼロから四十八・九円/キロまでの価格帯は従量税であり、三百九十三円/キロ以上の価格帯は従価税であると理解しているが、四十八・九円/キロから三百九十三円/キロまでの価格帯も従量税なのか。
 (三) 従量税を自主的に引き下げた部分についても、その課税の実質が従量税であることには変わりがないと政府は考えているか。
 (四) 財務省の「関税政策参考資料一−二」(平成二十年六月十六日)では、従量税と差額関税を区別しているが、財務省関税局ならびに関税・外国為替等審議会関税分科会企画部会は、差額関税を従量税とは異なる国境措置として捉えているということで差し支えないか。
 (五) 現行の豚肉の差額関税制度において、従量税の価格帯(枝肉ベースで四十八・九円/キロ以下、部分肉ベースで六十四・五三円/キロ以下の輸入価格帯)で輸入された実績はあるのか。
三 差額関税制度の「維持」に関し、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意時、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)時において、それぞれ表現が異なっている。
 平成七年三月二十八日衆議院農林水産委員会
 〇福島説明員 (略)また、豚肉につきましては、現行の差額関税制度の機能を維持するとともに、基準輸入価格等の引き下げに対応しまして今回の農業協定の特別セーフガード措置、また輸入急増時に基準輸入価格を引き上げる緊急調整措置を確保しているところでございまして、これらの措置を適切に運用してまいりたいというふうに考えております。
 平成二十八年十月十四日衆議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会
 〇山本(有)国務大臣 (略)特に、重要五品目を中心に、米の国家貿易制度、あるいは豚肉の差額関税制度などの基本的な制度を維持するとともに、関税割り当てやセーフガードの創設、長期の関税削減期間を確保したところでございます。
 (一) ウルグアイ・ラウンド合意で維持された差額関税制度の「機能」とは何か。
 (二) TPPにおいて維持された差額関税制度の「基本的な制度」とは何か。
四 過去に次のような答弁がある。
 平成二十七年十二月三日衆議院内閣委員会農林水産委員会連合審査会
 〇山田大臣政務官 御質問は、実質的には第四条二の注に列挙された禁止措置に該当するのではないかという問いかと思いますが、WTO農業協定第四条二は、従来さまざまな非関税措置によって農業貿易が阻害されてきた状況を踏まえて、国内農業の保護のためには専ら関税による保護のみが認められるとして、貿易障壁をより透明なものとし、農産品についての市場アクセスを改善することを目的とした規定でございます。
 その上で、第四条二の注は、第四条二の規定を踏まえ、関税化することとされた非関税措置にかわって、同様の輸入制限効果を有する措置をとることも禁止するという趣旨でございます。
 豚肉差額関税制度は、我が国に輸入される豚肉に対し、関税暫定措置法の関係規定によってあらかじめ定められた暫定税率で課される関税の組み合わせの制度でございますので、したがって、この注を含む農業協定第四条二の規定により禁止される、非関税措置に相当するような不透明で輸入制限的な措置には当たらないということでございます。
 (一) 「関税暫定措置法の関係規定によってあらかじめ定められた暫定税率で課される関税の組み合わせの制度」であれば、WTO農業協定第四条二における「通常の関税に転換することが要求された措置その他これに類するいかなる措置」には当たらないという事か。
 (二) 「不透明で輸入制限的な措置」とは、具体的にどのような措置を指すのか。
五 纏めとして次の通り質問する。
 (一) 豚肉の差額関税制度は、ウルグアイ・ラウンド交渉を経て、従量税と従価税との組み合わせによる関税とされ、平成七年四月から施行されている現行の差額関税となったと理解して良いか。
 (二) WTO農業協定発効以前の旧差額関税は、WTO農業協定第四条二の規定すなわち関税化・包括的関税化(農産品に関する通常の関税以外の国境措置を原則として全て関税に置き換える)によって関税に置き換えられた。すなわち我が国は、コメ以外の輸入制限品目等(小麦、大麦、乳製品の一部、でん粉、雑豆、落花生、こんにゃくいも、まゆ、生糸、豚肉)について、従来取られていた輸入制限措置等を関税化したということの解釈でよいか。この中の豚肉についての輸入制限措置は何だったのか。差額関税制度を輸入制限措置と解釈したのではないか。
 (三) WTO農業協定第四条二を確実に順守して制定された国内法は、関税定率法を修正し、「差額関税制度」を具体的に規定した関税暫定措置法ということで差し支えないか。
 (四) とすると、関税暫定措置法は、WTO農業協定を順守した通常の関税である従量税と従価税の組み合わせであるという事だが、従量税と従価税の間にある差額関税部分は、従量税の定義でも従価税の定義とも異なるが、これは何なのか。まさしく最低輸入価格の定義と同じではないのか。
 (五) 養豚生産者向けの雑誌であるピッグジャーナル二千十四年三月号に、千九百九十四年から二千十三年一月までの間で米国産豚肉の輸入にまつわる脱税総額が七千八百七十六億円にのぼると指摘されているが、政府はこの事をどの様に認識しているのか。

 右質問する。



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