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平成三十年六月六日提出
質問第三五七号

福島県の「県民健康調査」委託事業に関する質問主意書

提出者  阿部知子




福島県の「県民健康調査」委託事業に関する質問主意書


 今年一月二十二日に提出した「東京電力原子力事故後に行われている甲状腺検査に関する質問主意書」への政府答弁(以後、答弁)によれば、福島県民健康管理基金には、政府から九百六十一億六千四百四十万千円が交付、東京電力株式会社(当時)から二百五十億円が拠出され、この基金から県民健康調査事業への支出額は、平成二十三年度から二十八年度までで計約百九十一億円に上る。
 その県民健康調査事業の一つである甲状腺検査は、事故当時十八歳以下の福島県民を対象に、福島県が福島県立医科大学に委託して行っているが、答弁によれば、国は委託費を把握していない。また、二次検査で「経過観察」とされた子どもたちの現状は、甲状腺検査四巡目の現在なおベールに包まれている。
 答弁は、放射線が人の健康に及ぼす危険について未解明であることを踏まえて、長期にわたる悉皆調査を可能とすべきではないかとの問いには、「福島県においては、委員会の意見を踏まえて県民健康調査が実施されており、政府としては、委員会の議論を注視してまいりたい」との政府見解を明らかにしている。
 しかし、委託によって得た甲状腺検査の結果は、福島県が主催する「県民健康調査」検討委員会(以下、検討委員会)に対して、小出しにしか提供されていない。
 一部の情報しか提供されない「委員会の意見を踏まえて」も、政府が支出する交付金が有効かつ適正に使われていることを確認できない。政府は責任を持って、甲状腺検査の結果を適正に把握する必要がある。
 そこで、政府として主体的に情報を把握し、政府の見解や答えを示されたい。

一 二次検査の「診察」欄に記載され、検討委員会では公表されない情報について。
 検討委員会での公表情報は、診察で得られている情報よりも限定的である。二次検査で医師が実際に検査結果を記入する用紙「県民健康調査 甲状腺検査(二次検査)受付票」を見ると、「初診」に続いて「診察2」から「診察6」までの記入欄がある。
 1 検討委員会で公表されてきた「細胞診受診者数」は、「初診」で細胞診を受診し、その数が検討委員会で公表されている数だと考えられるが、政府の見解はどうか。
 2 「診察2」から「診察6」までは、検討委員会で「診察(予定)」または「経過観察」と説明されてきた数に入ると考えられるが、政府の見解はどうか。
二 二次検査の「診断」欄に記載され、検討委員会では公表されない情報について。
 検討委員会では現在、二次検査の診断結果として、@結節やのう胞を認めなかった場合の「A1相当」、A五・〇ミリメートル以下の結節や二十・〇ミリメートル以下ののう胞を認めた場合の「A2相当」、B五・一ミリメートル以上の結節や二十・一ミリメートル以上ののう胞を認めた場合の「A1、A2相当以外」に三分類して人数を報告している。
 しかし、「県民健康調査 甲状腺検査(二次検査)受付票」を見ると、「二次検査診断」の欄には、検討委員会で公表されている三分類より詳しく、「診断名」も含めて医師が記入する形式となっている。甲状腺検査の一巡目から三巡目それぞれの、以下1〜5について政府の承知するところを明らかにされたい。
 1 「二次検査診断」の欄で、「診断名」の欄が記入されている数。
 2 1のうち「結節性病変」「甲状腺がん疑い」などと診断された人数。
 3 「次回の一次検査」にチェックが入った人数。
 4 「保険診療」(甲状腺結節およびのう胞に関するもの)にチェックが入った人数。
 5 「その他の保険診療」にチェックが入った人数。
三 二次検査で「経過観察」がどれほどの期間に及んでいるかが検討委員会では明らかではない点について。
 1 二次検査の「初診」から「最終診断日」まで、一巡目から三巡目までで、最も診察回数が多かったケースの一次検査の受診年度と、二次検査診察の回数とその期間について、政府の承知するところを示されたい。
 2 二次検査の「初診」から「最終診断日」までが最も長期化したケースの期間について政府の承知するところを示されたい。
 3 1や2の情報は、本来、県が公表すべきものと考えるがどうか。
四 環境省の梅田珠実環境保健部長は、二〇一七年六月五日に開催された第二十七回検討委員会で、「保険診療の方に行ってしまうと、何かあたかも別ルートのようで、がんを発症しても全く把握されないというような、何か漏れがあるかのように思われる」「ブラックボックスに行ってしまうんではないかという誤解が世の中にある」と発言されている。誤解を解くには、二次検査の超音波検査で「結節性病変」や「甲状腺がん疑い」などと診断された場合は、「診察(予定)」または「経過観察」にしない扱いが必要ではないか。
五 二次検査における血液試料の扱いについて。
 1 県民健康調査甲状腺検査の二次検査で収集し、冷凍保存されている血液試料があることを政府は承知しているか。二〇一八年三月三十一日現在でその血液試料は何人分何本となっているか、政府の承知するところを示されたい。
 2 厚生労働省は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を定め、試料を収集・保存する場合、研究計画書に「試料・情報の収集・分譲の目的及び意義」を記載することを求めている。しかし、同検査の計画書に目的の記載がないことを承知しているか。また患者への同意書にも具体的な使途を示さずに大量の血液を収集している。厚生労働省は、指針が遵守されない場合は補助金の返還などの厳しい措置も講ずる場合がある。県民健康調査甲状腺検査の二次検査においても、指針を遵守し、試料収集および保存の目的と意義は何かを明らかにするよう指導を行うべきではないか。
六 甲状腺検査予算の使途に不明な点があることについて。
 1 福島県議会の質疑等により、平成二十六年度以降、福島県立医科大学は、甲状腺検査の予算で、三億円に上る生体保存システムや卓上遠心機など、総額十億円を上回る機器を購入していることが明らかになっている。環境省は総額十億円を超える機器の種類とその目的を明らかにしたうえで、甲状腺検査の予算の使途として適正なのかどうか、理由と共に明らかにされたい。
 2 県民健康調査の検査費用は受診者数の低下や検査の縮小に伴い、年々減額しているが、その一方で、人件費は、二〇一六年度九億円、二〇一七年度十億円、二〇一八年度十一億円と毎年一億円ずつ増えている。どのような検査や専門家が増えているのか、検査の種類や職種について、政府の承知するところを明確にされたい。
 3 報道では、県民健康調査の委託費には、福島県立医科大学の副学長や元理事ら一人あたり千四百三十七万七千七百円の年収の三人分も含まれているとされる。これは事実なのか。事実であるとすれば、これは適正な使途と政府は考えているのか、明らかにされたい。
 4 検査には関与せず、一般の保険診療に携わる病院の臨床医や検討委員会には公表されていないようなゲノム研究に関与している研究者などの給与も県民健康調査の委託費から支出されているとされる。これは事実なのか。事実であるとすれば、県民調査の委託費から支払う医師給与について、誰が、どのような権限で、決定しているか、政府の承知するところを明確にされたい。また、これは適正な使途であると政府は考えているのか、明らかにされたい。
七 県民健康調査甲状腺検査サポート事業について。
 福島県は「県民健康調査甲状腺検査サポート事業」(以下、サポート事業)を二〇一五年から行っている。同県は、サポート事業を、県民健康調査甲状腺検査が「将来にわたり県民の健康を見守っていくために実施している」にもかかわらず、「二次検査までが県民健康調査として位置付けられていたことから、それ以降の診療情報の収集に支障が生じている」とし、その状況を解消するために、「検査により甲状腺がんが疑われ、その後、保険診療の対象となったケースの診療情報を収集し県民健康調査データへ集約、その後の分析等に活用すると共に、診療により生じた経済的な負担を解消するため」実施すると説明している。
 1 サポート事業の目的を達成するために、県は「収集した情報を集計・分析し、公表する」としているが、これまでにどのような集計・分析を公表したのか、政府の承知するところを明らかにされたい。
 2 サポート事業の当初の実施要綱には、診療情報の活用(第五条)に「収集した情報は県民健康調査検討委員会等で公表するとともに、将来の甲状腺がんの増加の有無に関する科学的知見を得るためのデータとして保存および管理する」と記載されていたが、「収集した情報は県民健康調査検討委員会等で公表するとともに」は削除された。それは事実か。事実であるとすれば、それが何故か、政府の承知するところを明らかにされたい。
 3 サポート事業による協力金の支給対象は、福島県の甲状腺検査を受け、指定医療機関で二次検査を受けた人のみとなっている。そのために、中には、一次検査でがんを見落とされた患者や、受験などで指定された医療機関を受診できなかった患者などが対象外となっていると聞く。それは事実か。事実であるとすれば、このような理由で、申請を希望しているにも関わらず支給対象外と判断された患者は何人いるのか、政府の承知するところを明らかにされたい。
 4 サポート事業の当初の実施要綱(案)には、協力金支給の対象者について、「特別な事情がある場合はこの限りではない」と記載され、弾力的な運用を規定していたが、それが削除されたと聞くが、本来は、患者の事情を優先して、弾力的な運用がなされるべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。
 5 サポート事業の対象となる指定医療機関には、伊藤病院を始め、甲状腺悪性腫瘍の治療実績の高い病院が含まれていない。また、新潟県や山形県、千葉県など、福島県からの避難者や学生の多い県に指定医療機関がないままである。患者の事情に配慮して指定医療機関の範囲を広げるべきだと考えるが政府の見解を明らかにされたい。また、なぜ、福島県は広げようとしないのか、政府の知るところを明らかにされたい。

 右質問する。



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