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平成三十年七月十七日提出
質問第四五七号

米軍属の範囲に関する質問主意書

提出者  篠原 豪




米軍属の範囲に関する質問主意書


 沖縄県うるま市で二〇一六年四月、会社員の女性が殺害された事件では、那覇地裁が元米軍属の被告に二〇一七年十二月、無期懲役の判決を下し、次いで、二〇一八年一月に遺族への損害賠償を命じたにもかかわらず、米側は、元米軍属の被告が米軍と直接の雇用関係にないことを理由に、日米地位協定で補償対象となる「被用者」には当たらないとして支払いを拒否した。
 最終的には、米側による「自発的、人道的な支払い」により、日本側は一九九五年の少女乱暴事件をきっかけに創設された「SACO見舞金」による不足分の支払いが可能となったが、米側は、被告を日米地位協定第十八条六項の「被用者」と見なしておらず、協定上の補償対象としていないので、今後も、軍属が関係する事件事故において、軍属が持つ地位協定上の免責特権を享受しながら、他方で、補償義務には応じないという問題が生じる懸念がある。
 しかし、こうした事態は、地位協定上の問題が起こっても、これまで一度も地位協定の改定による解決を米側に提起して来なかった日本政府にあると考えるので、以下、質問する。

一 日米地位協定上の定義の問題
 日米地位協定第一条(b)は、「『軍属』とは、合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国に居住する者及び第十四条1に掲げる者を除く。)をいう。(後略)」とされているが、この定義では、いかなるものが日米地位協定上の軍属に該当するのか、あらかじめ一般的基準を設けることが難しい。特に「勤務」、「随伴」の判定が難しいので、結果的に、具体的ケースに当たって合理的に判断していくほかない。
 この軍属の範囲に関する規定に明らかなように、日米地位協定の大きな特徴は、非常にあいまいに書かれているという点にあり、その解釈や運用の詳細については、日米地位協定第二十五条に定める「日米合同委員会」という機関の合意内容を待たなければ、何も分からないという仕組みになっている。
 1 米軍が他の主要な同盟国と締結している地位協定で、日米地位協定のように規定が曖昧で、その正確な意味が、問題のあるたびに開かれる合同委員会等の機関の協議に委ねられている事例は存在するのか。存在するならば、そうした事例について政府の承知する該当国名を全て挙げられたい。
 2 二〇一七年一月十六日、軍属の範囲を明確化するとした補足協定が締結されたが、補足協定本文に軍属の定義はなく、結局、補足協定が締結されたのと同じ日に日米合同委員会が開かれ、八つの「カテゴリー」の者を軍属と認定することが合意された。その一つが、「合衆国軍隊の任務にとって不可欠であり、かつ、任務の遂行のために必要な高度な技能又は知識を有しているコントラクターの被用者」である。
  日本と同じく連合国と戦ったドイツやイタリアに米軍が駐留する根拠となっている北大西洋条約機構(NATO)の地位協定では、軍属を「締約国の軍隊に随伴する文民で、その締約国の軍隊に雇用されている者」(第一条)と明確に定義している。
  つまり、軍隊に「雇用される」者とは、米軍と個人が直接的な契約関係にあり、米軍がその個人に対して懲罰等の監督責任を負うことを意味し、「コントラクターの被用者」は含まない。
  しかし、日米地位協定では、雇用関係がなく、米軍が業務上の監督責任を完全に負えない個人まで軍属に含むことが可能な規定となっている。このように他の主要同盟国との米軍の地位協定で、「コントラクターの被用者」まで軍属に含んでいる事例は存在するのか。存在するならば、そうした事例について政府の承知する該当国名を全て挙げられたい。
二 軍属補足協定について
 1 二〇一七年一月十六日に締結された軍属補足協定は、軍属に関わる犯罪の抑止、特に、コントラクターの被用者が軍属として特権を享受している現状を改めることに主眼があったと考えるが、今回の米軍属による女性暴行殺害事件について、どのように役立ったのか、具体的に説明願いたい。
 2 軍属補足協定を受けて日米合同委員会が発表した合意により、軍属の具体的な範囲が明確になったことで、二〇一六年末時点で約七三〇〇人と約二三〇〇人だった軍属とコントラクターの被用者が二〇一七年十月末には、それぞれ七〇四八人、二三四一人になっているとされるが、この数字は個人名まで特定した数字であるのか。前者は、単なる推計値ではないのか。
  また、後者の数字は、個人を特定して積み上げた数字であるとしても、実際に事件事故が起こると、今回のケースのように、米軍が軍属として事後的に認めない事態はあり得るのか。あり得るとすれば、補足協定があっても、結局、米軍が最終的な決定権を持つという体制に全く変わりがないということで、その点では、補足協定に協定としての法的意味はないのではないか。

 右質問する。



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