質問本文情報
平成三十年七月十七日提出質問第四五八号
放射能被害による損害賠償の考え方に関する質問主意書
提出者 山崎 誠
放射能被害による損害賠償の考え方に関する質問主意書
東京電力福島第一原子力発電所事故の発生から七年が過ぎたが、事故の終息はまったく見えていない。地域住民は、原発事故により、古くから住み継いで来たふるさとを追われ、かけがえのない自らの家庭や地域やコミュニティも分断され、不安な生活が続いている。
住民の、自らの生活や財産などを失った精神的苦痛や生活の立て直しのための苦難は筆舌に尽くしがたい。
かかる状況の中、被災者と東京電力株式会社の間において賠償が進められているが、住民の理解が得られない、被災者の心に寄り添う十分な賠償となっていないという批判を聞く。これらを踏まえ、以下の点につき質問する。
しかし、平穏な生活から一転、地域住民が日常を失い、自らの生活を自らで決める自己決定権をも失い、なお大変な困難に直面している現状を鑑みる時、その損害賠償を巡り、加害者側に被害者側の所得まで明らかにしなければならない住民の精神的苦痛や怒りは十分共感するものである。
また、被害者が自らの損害の発生について、証票などで証明責任を負う現行の方法が、被災者の心に寄り添うものとは言い難いと考えるが、政府の見解は如何か。
あわせて、「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」については、法の専門家である大学教授や弁護士などにより、今なお多くの議論があるところと承知するが、被害者に寄り添うための賠償のあり方として、政府は現行の方法が最も妥当であるという認識なのか、見解を示されたい。
更に、現在の中間指針を改め、新たな指針を策定する考えはないか。見解を明らかにされたい。
二 紛争解決手続きに関しては、東京電力株式会社への直接請求や、原子力損害賠償紛争解決センターの調停、更に訴訟等にわたるが、それぞれにつき、個人法人各々、賠償申し立ての件数、取り下げの件数及び現在まで解決に至らない個別の件数、訴訟件数、確定状況等を明らかにされたい。また折り合いがつかない案件に対して、政府としての認識と今後の対応を明らかにされたい。
三 中間指針において「東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えた上で、迅速、公平かつ適正な賠償を行うことを期待」また「合理的かつ柔軟な対応が求められる」とされている。東京電力株式会社による損害賠償が、住民側に寄り添う姿勢となっているかについて、政府はどのような評価、検証をしているか明らかにされたい。
四 政府は、東京電力株式会社による被災者への損害賠償にあたり、どのような対応を進めているのか。いわゆる「行政指導」にあたっては、誰から誰宛てに行われているのか。また、文書によるものか口頭によるものであるのか。それぞれその指導内容、件数を明らかにされたい。
また原子力損害賠償紛争解決センターが有する紛争の内容、東京電力株式会社の対応などの情報を、どのように共有しているのか。その実態を明らかにされたい。
五 指針中の損害項目において、「当該財物が商品である場合には、これを財物価値(客観的価値)の喪失又は減少等と評価するか、あるいは、営業損害としてその減収分(逸失利益)と評価するかは、個別の事情に応じて判断されるべき」と位置づけられている。
実際には、その個別の態様に明確な差異がないものや、あるいは混然として明確に分類することが困難なものもあると推察される。東京電力株式会社が定める、「賠償金ご請求のご案内」や「解説と記入例」以外に、それぞれ個別の賠償の公平性を担保するため、これらに対応する具体的な判断基準があるのか。東京電力株式会社の個別具体の案件に対する判断基準について誰が把握しているのか。所管する経済産業省におかれては、判断の基準についてどう把握し、どう対応しているのか明らかにされたい。
六 中間指針の追補などにおいて、従前から大きく方針転換したものや、ある時点で検討中とされ、その後に定められた項目も存在する。従前の考え方によって合意がなされ賠償が完了した案件と、その後の賠償の考え方や取り扱いが変わることにより、賠償に格差が生じることは許されない。実際にこうした賠償の格差が生じていると政府は考えているのか。政府の見解を示されたい。
右質問する。