答弁本文情報
平成三十年二月九日受領答弁第四六号
内閣衆質一九六第四六号
平成三十年二月九日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員山井和則君提出裁量労働制で働く労働者と一般の労働者の労働時間の長さに対する認識等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員山井和則君提出裁量労働制で働く労働者と一般の労働者の労働時間の長さに対する認識等に関する質問に対する答弁書
一及び七について
お尋ねの観点からは、統計をとっておらず、お答えすることは困難である。
現在、厚生労働省において労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十八条の三及び第三十八条の四の規定によるみなし労働時間制度(以下「裁量労働制」という。)に係る監督指導を実施した件数や送検した件数の集計方法等について検討を行っているところである。
御指摘の平成三十年一月二十九日の衆議院予算委員会における安倍内閣総理大臣の答弁及び同月三十一日の参議院予算委員会における加藤厚生労働大臣の答弁は、平成二十五年十月三十日の第百四回労働政策審議会労働条件分科会における配付資料のうち、平成二十五年度労働時間等総合実態調査結果(以下「平成二十五年度調査結果」という。)の第五十二表において、労働基準法第三十八条の四の規定によるみなし労働時間制度(以下「企画業務型裁量労働制」という。)の対象労働者のうち、事業場ごとの労働時間が「平均的な者」については、一日の実労働時間が平均九時間十六分となっていることと、一般労働者(労働基準法第三十二条の四に規定する一年単位の変形労働時間制の対象労働者及び労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成十年労働省告示第百五十四号)第五条に規定する事業等に従事する労働者以外の労働者をいう。以下同じ。)のうち、事業場ごとの労働時間が「平均的な者」については、一日の法定時間外労働時間が平均一時間三十七分となっていることを比較して述べたものである。
なお、平成二十五年度調査結果においては、一般労働者の「平均的な者」とは、「調査対象月において最も多くの労働者が属すると思われる時間外労働時間数の層に属する労働者」であり、その法定時間外労働時間を集計しているところである。
また、労働基準法第三十八条の三の規定によるみなし労働時間制度(以下「専門業務型裁量労働制」という。)の対象労働者又は企画業務型裁量労働制の対象労働者の「平均的な者」とは、「労働基準法第三十八条の三第一項第四号又は第三十八条の四第一項第四号に規定する労働時間の状況として把握した時間」が平均的な者であり、その労働時間を集計しているところである。
なお、平成二十七年七月三十一日の衆議院厚生労働委員会において、塩崎厚生労働大臣(当時)が「労働時間の長さは、平均的な方については、実は、今ある専門業務型の裁量労働制、それから企画業務型の裁量労働制、それと一般の方々との比較であるわけでありますけれども、これは言ってみれば、長い時間働いていらっしゃる方々、・・・平均的な方を見てみると、実はこの三つを比べてみるとそう変わらないわけです。例えば平均時間でいきますと、専門業務型の裁量労働制だと九時間二十分、企画業務型の裁量労働制だと九時間十六分、むしろちょっと専門業務型よりも少ない。一般労働者でいきますと九時間三十七分ということで、若干、むしろ一般労働者の方が平均でいくと長い。」と答弁しているところである。
平成二十五年度調査結果において、一般労働者のうち事業場ごとの労働時間が「平均的な者」で、一日の法定時間外労働時間は平均一時間三十七分、一週間の法定時間外労働時間は平均二時間四十七分、一か月の法定時間外労働時間は平均八時間五分となっている。
また、専門業務型裁量労働制の対象労働者のうち事業場ごとの労働時間が「平均的な者」で、一日の実労働時間は平均九時間二十分、企画業務型裁量労働制の対象労働者のうち事業場ごとの労働時間が「平均的な者」で、一日の実労働時間は平均九時間十六分となっている。専門業務型裁量労働制の対象労働者及び企画業務型裁量労働制の対象労働者にあっては、一週間及び一か月については調査していない。
当該調査は、平成二十五年四月から六月に全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問する方法により実施したものである。
裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果(労働者調査結果)(以下「機構調査結果」という。)における一か月の労働時間の平均は、厚生労働省が無作為に抽出した事業場で働く労働者については、通常の労働時間制(労働基準法第三十二条に規定する労働時間制度をいう。以下同じ。)では百八十六・七時間、専門業務型裁量労働制では二百三・八時間、企画業務型裁量労働制では百九十四・四時間となっている。また、民間の調査会社の事業所データベースに登録されている事業場について無作為抽出した事業場で働く労働者については、通常の労働時間制では百八十五・〇時間、専門業務型裁量労働制では二百六・五時間、企画業務型裁量労働制では百九十七・二時間となっている。
機構調査結果は、平成二十五年度調査結果とは調査対象、調査方法等が異なることから、単純に比較することは困難である。
お尋ねの「報告」については、裁量労働制を導入している事業場の事業主に対し、平成三十年二月中に報告をするよう求めているところである。現在、厚生労働省において、当該報告の結果を取りまとめる時期や方法について検討を行っているところであり、お尋ねについてお答えすることは困難である。
御指摘については、第百四十回労働政策審議会労働条件分科会において、労働者代表委員より、企画業務型裁量労働制の対象となる業務(以下「対象業務」という。)について、業務の進め方等に裁量がない法人営業全体に拡大しかねないといった趣旨の懸念が示され、また、労働政策審議会が昨年九月に答申した働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱(以下「法案要綱」という。)において、企画業務型裁量労働制の対象に追加することとされた業務(以下「新対象業務」という。)について、「対象業務に従事する労働者は、対象業務を適切に遂行するために必要なものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する知識、経験等を有するものに限るものとすること」とされるとともに、「既製品やその汎用的な組み合わせの営業は対象業務になり得ないこと及び商品又は役務の営業活動に業務の重点がある業務は該当しないことを指針に定めること」とされており、対象業務及び新対象業務に係る企画業務型裁量労働制について、当該要件を満たすことを必要とすること等を検討中である。
企画業務型裁量労働制の対象労働者についての収入に関する要件はない。労働基準法第三十八条の四第一項の規定において、「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」であること等が必要とされており、これらの要件を満たす場合は、企画業務型裁量労働制を適用することができる。労働基準監督署においては、これらの要件を満たしているか否か等を確認し、不適切な状況があれば、指導を行っているところである。
また、これらの要件を満たさず、労働基準法第四章の労働時間に関する規定の適用に当たっての労働時間のみなしの効果が生じないことにより、同法第三十二条又は第三十七条第一項の違反となる場合には、同法第百十九条により、六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金の対象となる。
なお、法案要綱においては、「対象業務に従事する労働者は、対象業務を適切に遂行するために必要なものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する知識、経験等を有するものに限るものとすること」とされており、これを企画業務型裁量労働制の対象労働者の要件として定めることを検討中である。さらに、新対象業務に係る裁量労働制についても、当該要件を満たすことを必要とすることを検討中であり、罰則についても検討中である。
公共職業安定所が新規大学卒業予定者等を対象として受理した求人であって、裁量労働制を適用することを記載しているものはある。
お尋ねの「新卒」及び「プログラマー」については、具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、労働基準法第三十八条の三に規定する要件を満たす場合には専門業務型裁量労働制を適用することが可能である。
また、「営業」については、具体的に何を指すのか必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難である。
なお、企画業務型裁量労働制について、法案要綱においては「対象業務に従事する労働者は、対象業務を適切に遂行するために必要なものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する知識、経験等を有するものに限るものとすること」とされており、これを企画業務型裁量労働制の対象労働者の要件として定めることを検討中である。さらに、新対象業務に係る企画業務型裁量労働制についても、当該要件を満たすことを必要とすることを検討中である。
個々の労働者の業務が対象業務又は新対象業務に該当するか否かについては、個別具体的に判断する必要があるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、対象業務については、その要件を労働基準法第三十八条の四第一項第一号において「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」と規定しており、この要件に該当するものに限り対象業務となる。
また、法案要綱においては、企画業務型裁量労働制について、「(一)事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該事業の運営に関する事項の実施状況の把握及び評価を行う業務」及び「(二)法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該顧客に対して販売又は提供する商品又は役務を専ら当該顧客のために開発し、当該顧客に提案する業務(主として商品の販売又は役務の提供を行う事業場において当該業務を行う場合を除く。)」を新たに対象業務となる業務として追加することとされており、この要件に該当するものに限り新対象業務とすることを検討中である。
なお、これに関し、法案要綱においては、(一)については「事業の運営に関する事項の実施方法の改善を行うものであることを指針に定めること」、(二)については「法人である顧客の事業の運営に関する事項を改善するために行うものであることを指針に定めること」並びに(一)及び(二)については「既製品やその汎用的な組み合わせの営業は対象業務になり得ないこと及び商品又は役務の営業活動に業務の重点がある業務は該当しないことを指針に定めること」とされており、厚生労働大臣が労働基準法第三十八条の四第一項に規定する委員会が決議する事項について定める同条第三項に規定する指針においてその旨を定めることを検討中である。