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昭和四十九年六月一日提出
質問第三五号

 AF ― 2等ニトロフラン系食品添加物・飼料添加物等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年六月一日

提出者  渡部一郎

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




AF ― 2等ニトロフラン系食品添加物・飼料添加物等に関する質問主意書


 合成殺菌料AF ― 2は、大阪、上野製薬で開発され、昭和四十年七月、厚生省より食品添加物として認可され、豆腐、カマボコ、ハム、ソーセージ等われわれ国民が毎日食べている食品に使用されているが、人体に対する安全性の面において根本的な疑惑を生じている。
 すなわち、国立遺伝学研究所の田島博士らによつて、AF ― 2の突然変異作用及び染色体異常作用が明らかにされ、また、国立予防衛生研究所の俣野景典氏らによつて、AF ― 2の肝臓解毒説の誤りと未知物質への転化が実験上、明確に確認された。更に、AF ― 2の認可の際、食品衛生調査会に提出された実験データの統計解析上の誤りを厚生省が認めるに及んで、AF ― 2の危険性についての疑惑は決定的になつた感がある。
 こうした危険なAF ― 2に対して、田島博士ら多くの学者や国民の中から、AF ― 2の即時使用禁止、食品添加物の指定取消しなどを望む声が次第に大きくなりつつあるが、こうした国民の不安を解消するような具体的措置が今日までなんら政府によつてとられていないことは、極めて遺憾である。
 サリドマイドやキノホルム等により引き起こされた薬品公害は、国の安易な認可行政と怠慢なる対応措置が、どれほど悲惨な結果をもたらすかという顕著な実例である。AF ― 2という食品添加物公害に対する態度が、これと同じであつてはならない。
 すなわち、薬品、食品添加物等の認可に当たつては「疑わしきは使用せず」「使用したものについても、時時刻刻、最新の科学的技術を駆使して検討をつづける」「認可については慎重、取消しについては敏速」との原則が確立されなければならない。
 問題は、日本民族の生物学的生命と運命にかかわる重大事であり、関係機関の調査結果をまつて処理するというゆう長な態度をとることは許されないことを知るべきである。
 ついては、AF ― 2即時使用禁止に対する政府の責任ある措置が、早急にとられることを要求する意味において、次の事項について質問したい。

一 AF ― 2に対する具体的措置及びニトロフラン系食品添加物について
 1 AF ― 2の取扱いについては、安全性について国際的な評価と完全な研究調査の結論がでるまでの間、AF ― 2及び類似ニトロフラン系食品添加物を即時使用禁止にすべきであると思うがどうか。もし、できないとすれば、その理由について明らかにされたい。すでに、サッカリンについては疑惑発生とともに、即時使用禁止した上で、その毒性等を研究解明した前例がある。
 2 東京大学講師高橋晄正氏らによつて、AF ―2の安全許容量〇・〇一二五パーセントについては、危険であり、その二百分の一前後にすべきだとの意見が提起されているが、これについてどう考えるか。
 3 AF ― 2を使用している豆腐業者等に、神経性障害、皮膚炎等が多発している事実があるが、このことについて政府は、早急にAF ― 2との因果関係及び被害の実態を究明するための関係者らの健康調査などを行うべきであると考えるがどうか。
 4 AF ― 2が使用されている食品の種類、名称及び種類別生産量とそれに含有されているAF ― 2の使用量(推定)について明らかにされたい。
 5 上野製薬のZフラン及びAF ― 2の年度別、種類別生産量について明らかにされたい。また、何ゆえ四十年にZフランからAF ― 2に切り替えたのか。
 6 農林省は五月十七日、AF ― 2を食品に添加しないよう行政指導を行うことを確約しているが、その時期と方法について伺いたい。また、使用が禁止された場合の対応措置についてどのように行うのか。通産省は、農林省の方針と異なり、あくまでAF ― 2使用を続行させるつもりかどうか明らかにされたい。
 7 AF ― 2以外のニトロフラン系食品添加物及び飼料添加物の種類と生産量並びにその毒性について明らかにされたい。
二 AF ― 2を認可した厚生省及び食品衛生調査会の審議上の問題並びにその他の問題について
 1 食品衛生調査会が「AF ― 2の安全許容量(無作用量)を〇・〇一二五パーセント飼料添加とする」と決議した三十九年九月まで〇・〇一二五パーセント飼料添加の実験データの資料(宮地大阪大学医学部教授)が同調査会に提出されていなかつたのはなぜか。また、そのような状況の下でAF ― 2の安全許容量が決定されているとすれば、現行の安全許容量は科学的根拠を失つたものであると判断せざるを得ないと思うがどうか。
 2 AF ― 2の審議及び認可に当たつて、AF ― 2の毒性その他についてのいくつかの疑点(注1)が出され、かつ認可に当たつても、五つの附帯事項(注2)が附帯条件として課せられていたが、これらの疑点や附帯事項が実質的に配慮されないまま認可された理由とその経過について明らかにされたい。
 注1
  @ このようなニトロフラン化合物は認めがたいのではないか。
  A シス・トランス(立体構造の違う二つの型)の別など化学的本質のはつきりしたものについて毒性試験を行うこと。
  B 途中で死んだ動物の観察を行つていない。
  C 生体代謝と病理組織所見との間がデータ的に何かが欠けている。
  D AF ― 2を与えたうさぎの尿のペーパークロマトグラフィー上に現われる不明の物質の正体を明らかにすること。
  E AF ― 2の効果のデータが不足であるので権威ある研究機関で作つた資料の提出を要求すること。
 注2
  @ AF ― 2の生体内変化(代謝)を追究すること。
  A AF ― 2の食品中における化学変化を追究すること。
  B 腸内細菌叢に及ぼす影響を追究すること。
  C ダイコクネズミの雌についての慢性毒性試験を行うこと。
  D 二世代に及ぼす影響を追究すること。
 3 厚生省は、前項に述べられている疑点や附帯事項を解明するために上野製薬に対してどのような要請を行い、どのような確認がされたのか。また、食品衛生調査会に対して、いつ、どのような形でそれらについて報告を行つたか明らかにされたい。
 4 AF ― 2に関する毒性試験のうち、大阪大学の宮地教授によつて行われたものには、その実験材料となつた動物の飼育管理(飼料へのAF ― 2の添加を含めて)が上野製薬の手によつて行われたものがあることが明らかにされているが、どの実験が上野製薬によつて行われたものか。更に、その実験のどの過程までが(例えば、顕微鏡標本の作成までを含むか否か)上野製薬によつて行われたものであるか明らかにされたい。また、そうした実験データの妥当性すなわち「権威ある試験研究機関において作成されたもの」として認めることが妥当であるかどうか、もし認められないとすれば、この実験データをもとにして認可されたAF ― 2は、認可を取消すべきであると考えるがどうか。
 5 厚生省は宮地データにおける統計解析上の問題点を認めたが、それならばAF ― 2の安全許容量は誤りであり、取り消すべきではないか。
三 食品衛生調査会の審議方法その他について
 1 今後、AF ― 2の安全性についての調査を行う場合、急性・慢性毒性のテストのみならず、染色体異常、催奇形性、発ガン性等多角的なテストを行うべきと考えるがどうか。
 2 食品衛生調査会において、AF ― 2に関する審議を行う場合、統計解析の専門家・AF ― 2の危険性を指摘する前述の俣野氏、田島氏、高橋氏らを参考人として十分意見をきくべきであると思うがどうか。
 3 AF ― 2の審議を含めて食品衛生調査会で行われるすべての審議を公開制にし、企業の提出した資料、データも公表し、それに対する異議申し立てを認めることは、食品の安全性を確保する上において必要ではないか。これについて今後どう処置されるのか。
 4 AF ― 2など突然変異性に関する研究班が発足しているが、宮地教授をはじめ、宮地データの誤りを見過ごした食品衛生調査会の委員、更に、AF ― 2の安全性を主張する学者等によつて研究班のメンバーが占められているのは、いかなる意図に基づくものか。AF ― 2の危険性を警告している前述の田島氏、俣野氏、高橋氏などAF ― 2問題関係者を研究班に加えるべきであると思うがどうか。
四 AF ― 2問題をめぐる厚生省の態度について
 1 前述の田島博士らの警告、要請に対して政府はいかなる回答をしたか。また、政府はこれを科学的に研究調査をすすめることなく明確な根拠もなしに誤つた、いわゆる安全通達を「食品化学課」の名で各都道府県に出したことは不当である。科学行政の非科学性についてどう考えるか。
 2 食品問題評論家郡司篤孝氏を被告とする東京地方裁判所のトフロン裁判において厚生省の担当幹部が積極的に上野製薬側に加担する行為すなわち、数名の学者に郡司氏の著書の欠点について書かせ、裁判の参考資料として提出するなど上野製薬側を有利に導びこうとする言動をとつてきたが、これは公正中立を課せられている国家公務員の任務をこえた越権行為と考えられるがどうか。
五 食品衛生行政の基本に関して
 1 今回のAF ― 2の認可及びAF ― 2問題に対応する政府の態度は「疑わしきは使用せず」という原則に反していると考えるがどうか。また、今後食品添加物の認可に当たつて、この原則を確立すべきと思うがどうか。
 2 科学の進歩その他の理由によつて、一度国が認可した食品添加物等の安全性に根拠のある疑惑が生じた場合の政府のとるべき態度について(医薬品も含めて)政府の見解を伺いたい。
 3 日本学術会議人類遺伝学将来計画小委員会は、我が国で毎年一万八千人の遺伝病児、九千人の染色体異常児が出生していることを明らかにし、これ以上、突然変異作用をもつた放射線や化学合成物質を無防備に摂取すると遺伝病児や染色体異常児が更に増加すると警告している。
   食品添加物など化学合成物質が大量に生産、消費されている今日、これらによる前述の危険性ははかり知れないものがあるといわなければならない。このことについて政府はどのように考え、どのような対策を講じているのか明らかにされたい。
 4 戦後の我が国における死産、早産、流産及び奇形児の発生状況の統計(種類別、年度別)を明らかにされたい。

 右質問する。





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