伊藤法制次長にこれまでのキャリアを振り返ってもらい、女性として働くということ、法制局で働くということについて聞いてみました。
世の中の役に立つ法律のお手伝いができたと思ったのは、最終的には参議院提出となりましたが、被災者生活再建支援法ですね。阪神淡路大震災では住宅が全半壊した被災者が数多く出ました。それまでの被災者支援は仮設住宅や救援物資などの現物支給が基本で、公費での個人財産の補償はまかりならん、というのが財政当局のスタンスでした。それを何とか資金援助する道はないかということで、様々なアイデアが出され、最終的には生活再建のための立ち上がりの資金援助だという理屈で、熱意ある先生方による粘り強い交渉の末に支援金の実現にこぎつけたのです。当初は金額も少なかったのですが、その後金額が拡大し使い勝手も良くなり、今では、災害の際の御守りのような存在になっています。まさに小さく産んで大きく育てる形になりました。
困難というわけではないですが、立案に当たっては、私たちは先生方に、こういう問題がありますと壁を示すことも多い。それもよりよい法律にするためのお手伝いの一環であると先生にご理解いただけるような信頼関係を築けるか、というのが大事になりますね。
私の場合は、幸い、子どもが小さい頃は母がいましたし、主人も私が仕事で主人が休みの日には一日中面倒を見てくれて、本人は元祖イクメンだと吹聴しています(笑)。当局でも、男性を含め育休等をとられる人が増えてきましたが、すばらしいことだと思います。赤ん坊という、全面的にこちらに依存している一方で全く意のままにならない存在を相手にして格闘するという経験は得難いものです。
料理は自分で作るようにしていたのですが、仕事で煮詰まっているときに料理をしていると、ふとアイデアを思いつくこともあって、オンとオフの切り替えになっていたのかなと思います。閉会の時は時間休を取って映画や芝居を見に行くとか、メリハリをつけて、自分だけの時間も適度に作るようにしてきました。
色々なことに興味を持ってどこでも飛び込んでいける好奇心とパワーがあること。あとは…少々のことではへこたれないことが大事ですね!
うちは小さい組織なので、けっこう風通しはいいと思うんです。だから、遠慮せず、どんどん自分の意見を言って、仕事の質や職場環境を向上させることに積極的になってもらいたいかな。それを受け止める懐の深さはあると思います。私にも法制局長にも(笑)。