本案は、近年における離婚の急増等母子家庭等をめぐる諸状況の変化にかんがみ、母子家庭等の自立の促進を図るため所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 母子及び寡婦福祉法の一部改正
1 母子家庭等の児童の親は、扶養義務の履行に努めるとともに、当該児童を監護しない親の扶養義務の履行の確保に努めるものとすること。また、国及び地方公共団体は、扶養義務の履行を確保するための措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
2 厚生労働大臣は、母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本方針を定めるものとし、都道府県等は、母子家庭及び寡婦自立促進計画を策定するものとすること。
3 母子福祉資金の貸付け対象に、母子家庭の児童及び母子家庭の自立の促進を図るための事業を行う母子福祉団体を追加するとともに、特定の貸付金について、所得の状況等により償還未済額の一部の償還を免除できるものとすること。
4 都道府県は、就職を希望する母子家庭の母及び児童並びに寡婦の雇用の促進を図るため、母子家庭就業支援事業及び寡婦就業支援事業を総合的かつ一体的に行うことができるものとすること。また、都道府県等は、母子家庭の母の雇用の安定及び就職の促進を図るため、母子家庭の母又は事業主に対し、母子家庭自立支援給付金を支給することができるものとすること。
5 市町村は、保育所の入所児童の選考において、母子家庭及び父子家庭について特別の配慮をしなければならないものとすること。
二 児童福祉法の一部改正
市町村は、保護者の疾病等により一時的に養育困難となった児童について、児童養護施設等の施設に入所させ、保護を行う子育て短期支援事業を行うことができるものとすること。
三 児童扶養手当法の一部改正
1 児童扶養手当の受給資格の認定の請求期限を5年間とする規定を廃止するものとすること。
2 母である受給資格者の監護する児童が父から当該児童の養育に必要な費用の支払を受けたときは、受給資格者が当該費用の支払を受けたものとみなして、受給資格者の所得の額を計算するものとすること。
3 児童扶養手当について、支給開始から5年間を経過した場合には、3歳未満の児童を監護する者、障害者等に配慮をしつつ、手当額の一部を支給しないこととするとともに、母子家庭の母が正当な理由なく求職活動等をしなかったときに手当額の全部又は一部を支給しないことができるものとすること。
四 この法律は、平成15年4月1日から施行するものとすること。
政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
一 国は、母子家庭が経済的自立を図れるよう、母子家庭の母の職業能力の開発及び母子家庭の母の状況に応じた就業あっせん等の就労支援を就職に結びつくよう効果的に進めるとともに、母子家庭の母に対する雇用の場の創出に努めること。
二 国は、母子家庭等の児童に対する扶養義務の履行を確保するため、養育費支払い等に関する広報・啓発活動の促進や養育費に関するガイドラインの策定等必要な措置を講ずるよう努めるとともに、扶養義務の履行を確保する施策の在り方について引き続き検討すること。また、現在、民事執行制度の見直しが検討されているが、養育費等少額定期債務の問題については、母子家庭の実情を踏まえ、少ない回数の手続きで将来発生する債務の差し押さえが行えるよう配慮すること。
三 国は、児童扶養手当の受給期間が5年を超える場合の手当の一部支給停止に係る政令を定めるに当たっては、改正法施行後における子育て・生活支援策、就労支援策、養育費確保策、経済的支援策等の進展状況及び離婚の状況などを十分踏まえて制定すること。その際には母子福祉団体など幅広く関係者の意見を十分聞くこと。また、児童扶養手当の所得制限については、今後とも社会経済情勢や母子家庭の状況等を勘案しながら、適切に設定すること。
四 国は、地方公共団体と連携を図りつつ母子世帯に対する公営住宅の優先入居を推進するなど、公営住宅の積極的な活用が図られるよう努めること。また、賃貸住宅に入居する場合の家賃保証について、民間の家賃保証サービスの活用を推進するとともに、このような民間事業者による取り組み状況等を踏まえ必要な施策について検討すること。
本案は、中央省庁等改革の一環として、国の医療政策として国立病院・療養所が担うべき医療を全国において確実に実施し、かつ効率的・効果的に業務を行うため、独立行政法人国立病院機構を設置し、その名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 法人の名称を独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)とし、国民の健康に重大な影響のある疾病に関する医療その他の医療であって、国の医療政策として機構が担うべきものの向上を目的として、医療の提供、調査及び研究等の業務を行うものとすること。また、機構の役職員には国家公務員の身分を付与するものとすること。
二 機構に役員として、理事長及び監事を置くとともに、副理事長、常勤及び非常勤の理事を置くことができるものとし、その定数等を定めるものとすること。
三 機構は毎事業年度、施設ごとの財務に関する書類を作成し、厚生労働大臣に提出するとともに、独立行政法人評価委員会の意見聴取を経て、一般の閲覧に供しなければならないものとすること。
四 機構は、施設の設置等に必要な費用に充てるため、厚生労働大臣の認可を受けて、長期借入金をし、又は債券を発行することができるものとするとともに、政府は、国会の議決を経た金額の範囲内において、これらの債務について保証できるものとすること。
五 厚生労働大臣は、災害の発生や公衆衛生上の重大な危害の発生等の緊急の事態に対処するため、機構に対し、必要な業務の実施を求めることができるものとすること。
六 国立病院特別会計の資産及び負債については、機構に移行しない国立高度専門医療センターに係るもの等を除いて機構が承継するものとすること。また、国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律を廃止し、従来の計画による施設の再編成は、機構が引き継いで行うものとすること。
七 機構の設立は平成16年4月1日を予定しており、その準備等に要する期間を考慮して、この法律は、一部の事項を除き、平成15年10月1日から施行すること。
政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
一 国立病院の営繕部門に関して、次の措置を講ずること。
1 営繕関係職員の利害関係企業への再就職の斡旋を行わないとともに、利害関係企業に再就職している元の営繕関係職員の営業活動への対応を行わないこと。
2 談合通報の受付窓口の設置、利害関係企業職員等の利害関係者との接触の限定、入札前の事業者との接触に関するルール化(事前届出、オープンな場所での実施、応接記録作成)、工事予定情報の閲覧窓口の設置(営繕関係以外の部署、及びウェブサイトでの公開)、営繕関係職員の幅広い人事交流の検討。
二 各独立行政法人病院の中に拠点的な政策医療を付加し、それを中心とする 政策医療ネットワークを整備すること。
三 小児救急など必要な医療を政策医療に位置づけることを検討すること。
四 運営費交付金の基準設定に当たっては、政策医療が円滑に実施できるよう配慮すること。また、国の期間に係る退職手当の財源については、運営費交付金の中で措置されるよう検討すること。
五 職務の困難性に鑑み、新たに設立される独立行政法人の役員は適材適所で起用し、既得権化しないようにすること。
六 医師採用の全国公募等も考慮し、独立行政法人の医師の人事については、独立行政法人本部が責任を持って行うこと。
七 独立行政法人への移行に当たっては、健全な労使関係の確立に努めること。
八 独立行政法人移行後においても、政策医療を的確に行うとともに、地域と協調し、地域の実情に応じた医療を提供してゆくこと。
九 独立行政法人が担う政策医療並びに独立行政法人の経営状況について、年次毎に速やかに公表すること。
十 中期計画終了後に、業績評価を踏まえ、個別施設のあり方についても必要な検討を行なうこと。
十一 地域医療のあり方を考える中で、公的病院のあり方について検討すること。
本案は、ヒト動物由来製品の感染作用による健康被害の迅速な救済を図るため、医薬品等被害救済・研究振興調査機構は、ヒト動物由来製品の感染作用による健康被害につき、医薬品の副作用による健康被害の場合と同様に、医療費、障害年金、遺族年金等の給付を行おうとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 法律の題名を「医薬品等被害救済・研究振興調査機構法」とし、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の名称を「医薬品等被害救済・研究振興調査機構」(以下「機構」という。)とすること。
二 目的規定に、ヒト動物由来製品の感染作用による健康被害の迅速な救済を図ることを加えるとともに、「ヒト動物由来製品」等の定義規定を置くこと。
三 機構の業務に、次の業務を加えること。
1 ヒト動物由来製品の感染作用による疾病、障害又は死亡につき、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の給付を行うこと。
2 1の給付(以下「感染作用救済給付」という。)の支給に係る者について保健福祉事業を行うこと。
3 感染作用救済給付に係る拠出金を徴収すること。
4 1から3までに掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
四 感染作用救済給付業務は、他の業務と区分して経理するものとすること。
五 機構は、当分の間、この法律による改正後の医薬品等被害救済・研究振興調査機構法に規定する業務を行うほか、この法律の施行の日前に使用されたヒト乾燥硬膜に混入したクロイツフェルト・ヤコブ病の病原体による健康被害の迅速かつ円滑な救済を図るため、厚生労働大臣の認可を受けて、当該健康被害の救済のために必要な事業を行う者の委託を受けてその救済のための感染作用救済給付に準ずる給付の事業を行うことができるものとすること。
六 この法律は平成14年4月1日から施行するものとすること。
要旨は第153回国会参照。
本案は、医療を受ける者の理解と選択に基づいた良質かつ適切な医療の提供を促進するとともに、医療の透明性と安全性の確保等を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 医療は医療を受ける者と医療従事者との信頼関係の下に医療を受ける者の理解と選択に基づいて行われること等の基本的理念を定めるとともに、医療機関、医療を受ける者並びに国及び地方公共団体の責務を規定すること。
二 医療機関は、当該医療機関の医療従事者数、医療の提供の実績等に関する事項を記載した書類を備え置き、医療を受ける者の求めに応じ閲覧させるものとするとともに、この法律に定める権利等について医療機関内に掲示するものとすること。
三 医師及び歯科医師は、診療に際し、患者等に対しその心身の状況に応じつつ診療に関し適切な説明を行うとともに、患者等の求めに応じてその概要を記載した書面を交付するほか、説明等と異なる診療等が行われた場合には、できる限り速やかに患者等に対しその概要等を報告しなければならないものとすること。
四 患者、遺族等は、医療機関の管理者に対し診療記録の開示を請求することができ、医療機関の管理者は、一定の場合を除き、請求者に対し診療記録を開示しなければならないものとすること。また、患者は、診療記録の情報の内容に誤りがあるときは、医療機関の管理者に対しその訂正等を請求することができ、医療機関の管理者は、誤りがあると認めるときは、訂正等を行い、その内容を請求者に通知しなければならないものとすること。
五 医療機関は、医療事故防止の具体的な指針の策定など安全かつ適正な医療を確保するために必要な体制の整備に努めるとともに、一定規模以上の医療機関は医療事故の防止対策等について調査審議等を行う医療適正化委員会を設置するものとすること。さらに、医療機関の開設者等は、重大な被害が生じた事故が発生した場合、都道府県知事等に報告しなければならないものとすること。
六 医療適正化委員会は、患者等からの医療又はその医療情報の提供に関する苦情の申出に対し、事情調査を行い、開設者等に意見を述べ、その結果を苦情の申出者に通知するものとすること。また、都道府県等は医療に関する苦情があったときは、その相談に応じ、あっせん等の必要な処理を行うものとすること。
七 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
本案は、現下の厳しい雇用情勢にかんがみ、非自発的に離職した被用者の医療保険に係る経済的負担の軽減を図るため、当分の間の措置として、健康保険等の任意継続被保険者に係る保険料及び国民健康保険の被保険者に係る国民健康保険税の課税額を算定する場合において、これらの者の報酬月額又は給与所得の金額について、1年を限度として減額する特例を設けようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 健康保険法の一部改正
当分の間、倒産又は自己の責任によらない解雇により離職したため任意継続被保険者となった者の保険 料を算定するときは、当該任意継続被保険者となった日から起算して1年を経過した日の属する月の前月の末日までの間に限り、離職の日における報酬月額の100分の60を報酬月額とみなして計算するものとすること。
二 地方税法の一部改正
当分の間、倒産又は自己の責任によらない解雇により離職したため失業している国民健康保険の被保険者の国民健康保険税の課税額を算定するときは、当該離職の日から起算して1年を経過する日までの間に限り、給与所得の金額の100分の30を給与所得の金額として計算するものとすること。
三 施行期日等
この法律は、平成14年10月1日から施行すること。
本案は、近年の社会経済情勢の著しい変化と労働者の働き方や就業意識の多様化の進展等に伴い、社会保険労務士の行う業務の公共性、専門性及び重要性が増大していることにかんがみ、国民の利便性の向上に資するとともに信頼される社会保険労務士制度を確立するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 社会保険労務士は共同して社会保険労務士法人を設立することができるものとし、社会保険労務士法人に関する規定を整備すること。
二 個別労働関係紛争に関して、紛争調整委員会におけるあっせんについて、紛争の当事者を代理することを社会保険労務士の業務に加えるものとすること。
三 社会保険労務士が業務を行い得ない事件について規定を整備するとともに、非社会保険労務士との提携を行うことを禁止するものとすること。
四 社会保険労務士会及び全国社会保険労務士会連合会の会則の記載事項から、開業社会保険労務士の受ける報酬に関する規定を削除するものとすること。
五 この法律は、平成15年4月1日から施行するものとすること。ただし、報酬規定の削除に関する部分については、公布の日から施行するものとすること。
要旨は第154回国会参照。
本案は、北朝鮮当局による未曾有の国家的犯罪行為によって拉致された被害者が、本邦に帰国することができずに北朝鮮に居住することを余儀なくされるとともに、本邦における生活基盤を失ったこと等その置かれている特殊な諸事情にかんがみ、被害者及び被害者の家族の支援に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、帰国した被害者及び帰国し、又は入国した被害者の配偶者等の自立を促進し、被害者の拉致によって失われた生活基盤の再建等に資するため、拉致被害者等給付金の支給その他の必要な施策を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 この法律において、「被害者」とは、北朝鮮当局によって拉致された日本国民として内閣総理大臣が認定した者をいい、「被害者の配偶者等」とは、被害者の配偶者、子及び孫であって被害者でないものをいい、「被害者の家族」とは、被害者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹をいうものとすること。
二 国は、安否が確認されていない被害者及び被害者の配偶者等の安否の確認並びに被害者及び被害者の配偶者等の帰国又は入国のため、最大限の努力をするものとすること。
三 国及び地方公共団体は、被害者及び被害者の配偶者等の安否等に関する情報を把握し、速やかに被害者及び被害者の家族に伝えること、被害者及び被害者の家族からの相談に応じること等きめ細かな対応に努めるものとすること。
四 国は、帰国被害者等が本邦に永住する場合には、その自立を促進し、生活基盤の再建又は構築に資するため、拉致被害者等給付金を、5年を限度として、毎月、支給するものとすること。また、帰国した被害者が永住の意思を決定することにつき困難な事情があると認められる間は、本邦に滞在している間の生活を援助するため、滞在援助金を、毎月、支給するものとすること。
五 国及び地方公共団体は、公営住宅等の供給の促進、職業訓練の実施及び就職のあっせん並びに就学の円滑化及び教育の充実等の必要な施策を講ずるものとすること。
六 帰国した被害者が拉致されていた期間については、国民年金の被保険者期間とみなし、国は、その期間の保険料に相当する費用を負担するものとすること。
七 この法律は、平成15年1月1日から施行することとし、この法律の規定について施行後3年を目途として検討し、必要な措置を講ずるものとすること。