平成16年10月14日(木)(第1回)

◎会議に付した案件

1.幹事の辞任及び補欠選任

 補欠選任 中川正春君(民主) 鈴木克昌君(民主)幹事辞任に伴いその補欠

2.公聴会開会承認要求に関する件

 (開会日) 平成16年11月11日(木)、11月18日(木)及び11月25日(木)

3.日本国憲法に関する件

EU憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団の調査の概要を中山団長から聴取し、調査に参加した委員からの発言がなされた後、委員から自由な発言がなされた。


◎「衆議院EU憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団」の調査の概要

一 調査議員団の構成

団長     中山太郎君

           船田元君、枝野幸男君、中谷元君、仙谷由人君、保岡興治君、近藤基彦君

二 期間

平成16年9月5日(日)から9月17日(金)まで  13日間

三 訪問先

スウェーデン

SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)、国会、元国会オンブズマン、法務省等
フィンランド

国会行政委員会、国会雇用・男女平等委員会、国会憲法委員会等
ベルギー

EU理事会、欧州委員会、デハーネ コンベンション副議長
フランス

欧州人権裁判所、欧州議会、欧州オンブズマン、ヴィトリーノ欧州委員会委員(司法・内務問題担当)

四 調査の概要

1 スウェーデンにおける調査の概要

(1)ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)におけるベイルズ所長らとの懇談の概要

  • 1966年にスウェーデン政府が世界平和のために設立した独立の研究機関であるSIPRIの組織及び活動の概要について説明を受けた。
  • 中谷議員からはテロや少数民族に対する国家の態度について、船田議員からはEUへのトルコの加盟問題とイスラム世界に対する理解について、保岡議員からは日本国憲法9条について国際安全保障と平和構築の観点からどのように考えるかについて、問題提起がなされ、これに対する説明がなされた。

(2)ヴァイデリッヒEU諮問委員長との懇談の概要

  • 1990年前後のワルシャワ条約機構の崩壊とベルリンの壁の崩壊による安全保障の状況の変化が、中立政策を堅持してきたスウェーデンのEU加盟の理由であるが、国民は、スウェーデン国会の権限があまりに急速にEUに移譲されることに懸念を持っている。
  • EU憲法条約については、従来のさまざまなEU・EC条約を整理したものである等の理由から、国民投票に付することなく、国会の議決のみで批准する予定である。

(3)ヴェステルベリ国会第一副議長及びペンレヴ元国会オンブズマンとの懇談の概要

  • ヴェステルベリ国会第一副議長から、(a)民主主義を徹底し、民意の変化がすぐに議会の構成に反映するような制度にするため、1971年に二院制から一院制に移行したこと、(b)一院制にしたことで議案審査の時間が特に短縮したということはないが、二院制下での多数派形成の複雑さがなくなったことから議案の議決は容易になったこと等について、説明がなされた。
  • ペンレヴ元国会オンブズマンから、国会オンブズマンの権限と機能等について、(a)行政に対する監視は、国会オンブズマンと国会の憲法委員会が担当しているが、憲法委員会はもっぱら内閣や大臣に対する監視を行うのに対し、国会オンブズマンは地方自治体を含むあらゆる行政機関等の職員への監視を行うこと、(b)4人の国会オンブズマンは、分担を決めつつそれぞれに独立して職務を執行し、一般国民からの不服申立てを契機とした調査のほか、自ら地方に出向いて、地方自治体の職務の適正さの監査も行うこと、(c)監視の結果、不当な業務執行を発見したときは、是正勧告をするほか、検察官と同様の起訴権限も認められていることについて、説明がなされた。

(4)ケンベリ元保健・社会保障大臣及びヴァルストローム議員との懇談の概要

  • 年金制度を中心とするスウェーデンの社会保障制度の具体的な仕組み及び移民に対する教育や犯罪率などを含めた移民政策について説明を受けた。
  • 中山団長が平均寿命や出生率の変遷、国民負担率の問題などに関する具体的なデータを掲げながら、我が国の社会保障を取り巻く諸問題について説明を行い、両国に共通する諸問題について意見交換を行った。

(5)ボードストローム法務大臣との懇談の概要

  • スウェーデンの憲法に当たる四つの基本法を所管するボードストローム法務大臣と、女性の王位継承問題やインターネット犯罪等について意見交換を行った。
  • 現国王の第一子が女子であったという事情や両性の平等等の観点から、1979年に王位継承法が改正され、欧州の王制諸国で初めて男性・女性を問わず第一子優先の王位継承が定められている。

2 フィンランドにおける調査の概要

(1)ヴァイスト国会行政委員長及びポフヨ副委員長らとの懇談の概要

  • 2000年に全面改定された憲法における、(a)公共機関の有する情報に対するアクセス権、(b)青少年の健全育成のために必要な映像番組の規制に関する規定について説明を聴取した。
  • 情報公開の基本的な制度の概要、凶悪犯罪等の捜査のための通信傍受など、フィンランドにおける情報公開・個人情報の保護に関連する諸問題について意見交換を行った。

(2)グスタフソン国会雇用・男女平等委員会委員長らとの懇談の概要

  • 少子高齢化の問題及び男女共同参画社会の実情についての説明を聴取し、意見交換を行った。
  • フィンランドが学力の国際比較において優秀であることの背景には、教育については、あらゆる事項に優先して努力していくという、与野党を超えた国民的コンセンサスがある。

(3)サトネン国会憲法委員会委員らとの懇談の概要

  • 憲法委員会は、法律が憲法に適合するかどうかを議会内で審査する機関であると同時に、行政府の行為に対する監視、また、同じく行政監視機関である司法長官や議会オンブズマンに対するチェックも行っている。
  • 司法長官は閣議にも出席して内閣の内部から行政執行の合法性等を独立して監視監督する機関であるのに対して、議会オンブズマンは議会の側から行政執行の合法性や人権の遵守状況を監視する機関である。両者の権限は重なり合うところもあるが、長い歴史の中でうまく機能している。

(4)EU憲法条約草案を作成したコンベンションのフィンランド国会代表であるキルユネン議員との懇談の概要

  • フィンランドは、東の大国であるロシアの存在等を念頭に、EUを経済的な機関であると同時に安全保障の機関としても重視しており、今回の旧東欧へのEU拡大の意義は大きい。
  • EU憲法条約の意義について、その政策決定過程の透明化・強化によってEUの民主化が進むものと積極的に評価した上で、米国のような「連邦国家」を目指そうとするものではないとの説明がなされた。

3 ブリュッセル及びストラスブールにおけるEU憲法条約等に関する調査の概要

(1)調査日程

  • 「EU憲法条約の憲法的・政治的意味」というテーマに絞り、以下の関係者からヒアリングを行った。
  • (a)コンベンション関係:デハーネ副議長(元ベルギー首相)
  • (b)EU理事会関係:ピーリス法律顧問
  • (c)欧州委員会関係:ヴィトリーノ欧州委員会委員(司法内務担当)、バレンズエラ対外関係総局次長、ファン・ヌッフェル「欧州の将来」タスクフォース課長
  • (d)欧州議会関係:コンベンションに欧州議会代表団として参加したメンデス団長及びヘンシュ、ダフの両副団長、欧州議会のライネン憲法問題委員会委員長、ブローク外交委員会委員長、ヤルツェンボウスキー対日交流議員団団長
  • (e)欧州オンブズマン:ディアマンドロス氏
  • (f)欧州人権裁判所(EUとは別個の機関):ヴィルトハーバー長官

(2)EU憲法条約の内容的特徴とその制定の理由

  • EU憲法条約は、主権国家によって締結される国際条約であるが、その内容は、(a)EUの専管的領域とされる分野等においてはEUの特定多数決による決定が各国政府の政策を拘束し、(b)一国の憲法の人権宣言に当たる「基本権憲章」が盛り込まれ、法的拘束力を持つなど、通常の国際条約とは異なる特徴を有する。
  • EU統合の将来像が、連邦制国家か、主権国家の連合体かという点に関して、多くの関係者がEUは国家ではないと述べたが、EU内部には、できるだけ早く連邦制的枠組みをつくるべきであるとするフェデラリストと、政府間の関係の枠内で連携を密接にしていくべきであるとするインター・ガバメンタリストの二つの思想がある。EU憲法条約を積極的に推進してきたのは、前者である。
  • EU憲法条約によって、EUは独立した法人格を有することとなり、また、常設の「EU大統領」と「EU外相」を持つこととなる。
  • いまEU憲法条約を制定する理由は、EU拡大に伴って今後生ずるであろうEU内の政策決定過程の困難性を事前に回避するためのほか、憲法を欧州市民にとって分かりやすいものとするためである。

(3)EU憲法条約作成の手続的特徴

  • デハーネ コンベンション副議長から、コンベンションのメンバーが各国の政府代表だけではなく、各国の議会、欧州議会及び欧州委員会の代表からなるほか、オブザーバーとして、NPOやNGOも参加したことにより、この新しいコンベンションが欧州全体の健全な基盤に基づくものとなり、その結果、様々な課題に直面して活動することが可能となったとの説明がなされた。

(4)EU憲法条約の批准に向けての課題

  • 各国のEU憲法条約の批准手続において、国民投票に付する国が英国、フランスを含め多数あるが、国民投票となると、EU憲法条約の是非だけではなく、その時々の内政的な問題も含めて、国民はその国の政府に対する賛成・反対を表明することになるため、結果については予断を許さない。
  • ヤルツェンボウスキー議員からは、国民投票では、EU憲法条約の特徴やその目標を、政府が国民に分かりやすく説明する努力が重要であるとの説明がなされた。

(5)欧州オンブズマンと欧州人権裁判所における懇談の概要

  • ディアマンドロス欧州オンブズマンからは、オンブズマン制度について、(a)国民の遵法精神と独立した強力な司法制度の下、それを補完するものとして設置されること、(b)多様化する紛争や不服申立てに対して、解決策を多様化し、市民の選択権を広げるものであること、(c)その職務の独立性は名目上も実質上も不可欠であること、(d)憲法への明文化が望ましいことについて説明がなされた。
  • ヴィルトハーバー長官から、各国の裁判所と欧州人権裁判所との関係、欧州人権裁判所の下した判決の実効性及びEU司法裁判所と欧州人権裁判所との関係等について説明を聴取し、意見交換を行った。

4まとめ

  • 訪問国等においては、いずれも、「憲法のありよう」が「国のありよう」に直結して国民的な論議がなされており、そのような広範な議論は、EUにおいては国を超えた「欧州市民」の立場、全欧州的な立場からなされていることを改めて認識した。

◎調査に参加した委員からの発言の概要(発言順)

仙谷 由人君(民主)

  • EUは、既に緊急展開部隊を発足させ、EU憲法条約に軍備の強化を規定しているが、関係者は異口同音に、EUは軍事大国ではなく平和大国を志向し、国連憲章に従うことを前提とすると述べており、大規模な紛争はNATOが処理し、緊急展開部隊は地域的な平和構築を担うこととされている。第二次世界大戦の戦勝国と敗戦国が共同の部隊を編成・展開しており、歴史的な和解を果たしていることに感動を覚えた。
  • EU憲法条約の目的・機能について、多くのEU関係者は、法の支配の重要性を踏まえたものであると述べていた。行政機関が対応していない苦情処理や職務裁量、入札・公共調達、一般市民からの情報公開等に関する苦情処理を扱う欧州オンブズマンが設置されており、我が国においても民主主義や人権保障を担保する仕組みが必要であると考える。

船田 元君(自民)

  • EU憲法条約に盛り込まれたEU大統領・EU外相の設置や共通外交・安保政策の強化などは、主権の一部移譲、あるいは、部分的な連邦制への移行とも評価でき、民主主義の新たな挑戦として注視したい。また、スウェーデンやフィンランドは、EU憲法条約についての国民投票を行わない方向であり、NATOには加盟せず適度な間合いをとる一方、緊急展開部隊には参加するという独特の立場をとっている。
  • 相対的に経済水準の低い国も含むEUの更なる拡大については、EUそのものが変質することを懸念する声もあったが、これをいかに克服するか注視したい。トルコの加盟問題については、否定的意見が多かったが、多様性・柔軟性を実現するために、加盟基準を下げてでも加盟を認めるべきではないかと考えている。

枝野 幸男君(民主)

  • 国家主権のEUへの移譲やEU憲法条約の批准という画期的な出来事に対し、EUは肩に力が入っておらず、歴史の流れに確信を持っているとの印象を受けた。その背景として、テロ等への対処は一国では困難であるとの認識や米国の一国主義へのフラストレーションが統合前進のエネルギーとなっていると感じた。
  • 我が国だけではテロに立ち向かうことができないことや、米国や中国の存在を考慮すると、我が国は、米ロに挟まれているEU諸国と類似の状況下にあり、EU諸国を参考にして、アジア諸国との連携を重視しながら、国の将来のビジョンを描くべきである。
  • スウェーデンでは、オンブズマンは国会において全会一致で選任されることから権威が高い。また、フィンランドでは、国会に設置された憲法委員会が法律の合憲性について審査するが、そこでは論理的であることが重視されている。国会の権威を背景に権限を行使するオンブズマンの導入や、内閣法制局とは異なる観点から憲法にコミットする憲法委員会の導入を、多数決原理や二大政党の対決とは違う視点から検討することが、法の支配の観点から重要である。

保岡 興治君(自民)

  • 欧州から見た我が国の安全保障政策に対するSIPRIのベイルズ所長の意見が強く印象に残った。同所長は、我が国の平和主義を基本とする抑制的な安全保障政策や最近の平和維持活動を高く評価していた。将来このような平和主義を充実発展させる方向で憲法改正を考えるべきであると感じた。
  • 米国が他国の領土を守ることよりも機動的な軍事展開を重視するようになったことから、我が国も欧州と同様に米国に頼ることはできなくなり、安全保障政策を再構築しなければならなくなったという同所長の意見には同感である。我が国は、地域の安全保障システムを作るために、防衛体制の整備を図るべきである。さらに、アジアや世界の平和構築のための実力行使について、大いに議論すべきである。

◎委員からの自由発言の概要(発言順)

柴山 昌彦君(自民)

  • オンブズマンは、欧州では機能しているようだが、我が国で憲法上明文化するためには、相当な議論が必要である。北欧では、高福祉・高負担の福祉国家の行政に対する統制を強めることが要請されている。また、オンブズマンが全会一致で選ばれるという基盤もあり、選ばれる人の意識も高い。これに対して、我が国では、その質の確保に疑念があり、既存の制度との関係にも難しい問題がある。また、憲法に明記することが、私的オンブズマンへの規制となるおそれもある。
  • 我が国が自国や世界の平和をリスクを負って維持していくという共通認識を持つことは重要である。平和維持のための兵力の整備についてコンセンサスを作ることが必要であるが、当面は、自衛権の明記、平和的な分野での国際貢献など最大公約数的な改正にとどめ、それ以上の国際貢献については、さらに議論をしていくことが必要である。

辻 惠君(民主)

  • 米国の民主主義が浅さを露呈しているのに対して、欧州の民主主義は歴史と文化が根付いており、憲法を論ずるに当たって、欧州の知恵を踏まえる必要がある。
  • 東アジア地域の安全保障も我が国の軍事力の強化だけで解決する問題ではなく、国民国家の枠組みを超えて地域の安全保障を考えていく必要がある。
  • 憲法問題を考える上では、立法・行政・司法に憲法の理念を行き渡らせるという法の支配の貫徹が重要である。行政権が肥大化している現状では、そのチェックが不可欠であり、そのためには、オンブズマンと司法権が機能することが重要である。
  • 我が国の問題を考えるに当たっては、集団的自衛権の行使についての判断など国際司法裁判所の判断の積重ねやEU憲法条約の理念に現れた国際的基準を踏まえるべきである。

山口 富男君(共産)

  • 海外調査は、世界の動向を冷静に把握し、日本国憲法の値打ちをとらえ直す絶好の機会である。
  • 米国によるイラク戦争について、アナン国連事務総長が国際法や国連憲章に反する違法な戦争だと述べたが、こうした米国単独行動主義に対し、EUは、国連を中心とする国際秩序を維持・強化することを志向している。欧州だけでなくアジアやラテンアメリカにおいてもこうした傾向が見られ、テロも無法な戦争も許さないという世界の平和秩序を求める流れが21世紀の世界に広がっている。
  • 国連憲章は、加盟国による戦争を禁止し、各国の自主協同によって平和と安定を構築しようとするものである。日本国憲法は我が国においてこれを具体化するものであり、戦力不保持、交戦権の否認を定める9条2項は、世界の平和の流れの先端を行くものである。9条の掲げる方向が、21世紀の世界の平和確立という点で新しい意義と力を持つ。

田中 眞紀子君(民主)

  • 欧州が平和や国際秩序を構築するために大きな努力をしてきたことについて、中山会長の報告からよく理解できた。日本が北東アジアにおいて、平和の維持、紛争予防、人間の安全保障を確保するため、何ができるのかということについて、EUの経験は示唆に富む。
  • 我が国でも国民投票を制度化すべきである。EU加盟国によるEU憲法条約の批准に当たって、国民投票を行う見通しがあるのは、25カ国のうち8、9カ国ということであったが、国民投票の位置付けや議会の役割に対する各国の考え方について、派遣議員の印象を伺いたい。

>中山太郎会長

  • 国民投票は、国民の権利を重視することの現れである。EU憲法条約に対する態度など、国の在り方に対して国民投票を行うということに、民主主義の一つの原点がある。
  • 国民投票についての調査を10月28日の憲法調査会で行うことが幹事会で合意された。

保岡 興治君(自民)

  • フィンランドには、議会内に法律の憲法適合性等を審査する憲法委員会や国家の将来について考える未来委員会があり、スウェーデンや欧州議会にも憲法を論ずる類似の機関がある。EU憲法条約の制定時に欧州の将来像が議論され、その後に条約の調整に入った経緯などを踏まえると、我が国においても、憲法調査会が調査を終えた後、両院に憲法を論ずる常設の機関を設置し、日本の将来や国の在り方を議論すべきである。
  • 現在、与党内で、憲法の改正手続のための国民投票法案と当調査会の後継組織を設置するための国会法の一部改正法案を議論しており、最終報告書の提出までには具体化したいと考える。民主党にも常設の憲法委員会が必要であるとの意見があったと受け止めており、当調査会においても議論したい。

<田中委員の発言に関連して>

  • 海外調査において、EU憲法条約の批准のための国民投票に際して、「国民に条文そのものではなく理念や趣旨を分かりやすく提示することが大切である」との意見があった。これは、国民投票法を制定するに際しての参考になる。

葉梨 康弘君(自民)

  • EUは、統一的な文明の中で成立したものであり、EUの多国間主義と米国の一国主義を対比するのは、妥当ではない。
  • 東アジア諸国では一国が一文明を有することを踏まえると、EUの英知は参考にすべきだが、我が国独自の文化や安全保障を疎かにしないことが大切である。

枝野 幸男君(民主)

<保岡委員の発言に関連して>

  • 行政ではなく、議会に憲法の一次的な解釈権があるフィンランドやEUの制度は参考にすべきである。行政内部の一機関である内閣法制局の解釈が、金科玉条のような扱いを受ける我が国の現状は歪んでいる。常設の憲法委員会を設置するのであれば、主たる目的は、憲法についての一次的な解釈権を内閣法制局から国会に移すことに置くべきである。

<田中委員の発言に関連して>

  • EU憲法条約の批准の是非を問う国民投票を実施するか否かの判断は、各国における法制度とEU憲法条約の位置付けに関係している。
  • EU憲法条約の批准の是非を問う国民投票が他の内政問題の影響を受け、否決される危惧がある国もあると聞いた。国民投票について、対象となる議題の賛否と政権への信任の問題が混在しないような仕組みをつくる必要があるとの印象を受けた。

山口 富男君(共産)

<保岡委員の発言に関連して>

  • 保岡委員は、憲法委員会の設置とヨーロッパの動向とを結びつけて意見を述べられたが、海外調査の成果を直接的に日本に当てはめることには、抑制的であるべきである。
  • 海外調査の間に、自民党と民主党の委員で憲法委員会を常設する方向で話があったということだが、海外調査の本来の目的とは異なる事項を憲法調査会に持ち込むことは間違っている。
  • 私どもは、憲法の原則を各分野にすみずみまで行き渡らせるという立場をとっており、そのために国会の各委員会が憲法の観点から法案審査や行政監視を行うべきで、憲法委員会の設置は必要ない。また、これは憲法改定に絡むものであり、院の構成の問題でもあることから、本調査会とは別の場で議論すべきであり、最終報告書にも関係ない。

土井 たか子君(社民)

<保岡委員の発言に関連して>

  • 山口委員と同意見である。海外調査は有意義なものであったと思うが、本来海外調査は改憲のために行うのではなく、憲法を活かすためのものである。
  • 憲法委員会の常設については、設置の必要性がはっきりせず、理解できない。内閣提出法律案は行政府の憲法解釈を前提にしているが、唯一の立法機関である国会こそが判断すべきである。憲法に合致して物事が行われているかについて、条約が憲法に合致するかも含めて、現在ある委員会の中でしっかりと審議すべきである。こうしたことが実現できていない中で、憲法委員会の設置を提案する趣旨について、お尋ねしたい。

>保岡興治君(自民)

  • 戦後すぐに作られた憲法は、優れた原理を有し、日本の発展や世界の平和にも貢献してきたが、その解釈をすべて政府に委ねて60年間の変化を糊塗してきたという我が国の在り方は疑問である。
  • 憲法問題に特化して議論するためには、常設の憲法委員会を置いてしかるべきである。
  • 我々はもともと憲法を見直すという立場に立っており、その立場から視察し、意見を言うのは当然のことと受け止めていただきたい。

赤松 正雄君(公明)

<保岡委員の発言に関連して>

  • 公明党としては、常任委員会としての憲法委員会の設置については、今の時点ではもっと慎重でなければならないと考えている。まず、憲法調査会でのこれまでの議論の吟味が重要であり、もう少し足取りをゆっくりしていただきたい。

<発言>

  • テロについては、9・11以前と以後では同一には論じられないと考えるが、SIPRIのベイルズ所長が力による解決より社会的状況等の改善を主張されたのは、9・11の前後を通じてのテロを想定しているのか、その前後を区別しているのかについて、伺いたい。
  • EUが日本やアジアの参考になるかどうかについては、日韓中ともいわば「中華思想」的傾向が強いことから、容易にアジアという地域で結束できないのではないかと悲観的に考えている。

枝野 幸男君(民主)

<保岡委員の発言に関連して>

  • 憲法委員会の設置について述べたことはあくまで私見であり、民主党として、この問題について公式の見解を決定したり、他党と協議している状況ではない。
  • 仮に憲法委員会を常任委員会として設置するとしても、先に憲法問題だけ議論して他の委員会に法案をおろすという形式では意味がない。憲法適合性の問題について、内閣法制局を始めとする行政府を外して議員だけで議論するという委員会であれば、意味が出てくるのではないか。

山花 郁夫君(民主)

  • 本来、委員会において法律の合憲性を判断する際に内閣法制局に答弁させるのはおかしいのであり、国会が判断すべきである。
  • 合憲性の判定の在り方、内閣法制局の在り方をテーマとする調査会を持ってもよいのではないか。

船田 元君(自民)

<赤松委員の発言に関連して>

  • SIPRIのベイルズ所長の意見は、テロについて普遍的に述べたものであり、9・11テロの前後による区別を意識していたわけではない。ただ、9・11以降のテロは国際化、先鋭化しており、国際テロへの対応は一国だけではなく、各国間の協力が必要であるという意見であった。

渡海 紀三朗君(自民)

<保岡委員の発言に関連して>

  • 国会に憲法問題について発議をする場がないことは、国民から憲法に関する意見を述べる機会を奪っていることになる。また、同じ観点から、憲法改正のための国民投票法の制定に抵抗があることはおかしいと感じる。常設の憲法委員会を設置することは立法府として当然である。