平成16年12月2日(木)(第4回)

◎ 会議に付した案件

日本国憲法に関する件

1.国会・内閣〜二院制及び政党を中心として〜

上記の件について、委員間で自由討議を行った。

2.本年の調査の締め括りとして

上記の件について、委員間で自由討議を行った。

3.会長から挨拶があった。


《国会・内閣〜二院制及び政党を中心として〜》

●各会派一巡目の発言の概要

永岡 洋治君(自民)

  • 二院制のメリットとしては、慎重審議の確保、国民の多様な意見・利益の反映が、一院制のメリットとしては、政策決定の効率性、立法上の行き詰まりの防止がある。
  • 二院制は、議院内閣制の下で首相に権力を集中させる仕組みに対し抑制的要素となる可能性があり、特に我が国のように性格が似た両院がほぼ対等の権限をもって存在すると、首相のリーダーシップが損なわれるおそれがある。また、衆参両院において同様の審議をしている状況も見受けられ、参議院は衆議院のコピーであるとの批判も否定できない。
  • 以上のような問題に対して、一院制への移行を主張する意見もあるが、賛成できない。我が国のように人口の多い国において、一院制では、民意のきめ細かな反映、少数意見の表明の機会の確保、行政監視機能の強化が不十分となるからである。ただし、現在の二院制でよいわけではない。
  • 衆参両院の役割分担の明確化については、参議院の役割として、決算審議を中心とした行政監視機能や長期的視野に立った調査機能の強化が考えられる。参議院の権限については、かつての緑風会のように党派的立場を超越して大所高所から意見表明を行うようなイメージで考えていくべきである。
  • 二院制の下における選挙制度の在り方について、将来の道州制の導入を前提に参議院を道州代表とすることは、参議院に固有の代表機能を付与するものとして、検討の余地がある。
  • 政党は、政治と国民をつなぐ媒介として立憲民主主義に不可欠であり、議院内閣制の中核をなす存在であることから、憲法上位置付けるのが適当である。ただし、規定の仕方によっては、政党結成・活動の自由などを阻害するおそれがあるので、その主義・主張によって政党適格が失われないようにすべきである。政党規定の具体的内容としては、政党の意義に加えて、政党結成・活動の自由、党内民主主義、政党法の制定に関する根拠等が考えられる。

鈴木 克昌君(民主)

  • 憲法改正により道州制を導入し、参議院議員を道州の代表とすることを前提に、二院制を維持すべきである。
  • 二院制を前提とした改革として、衆参の役割分担を明確化することには基本的に賛成であるが、衆議院を予算審議中心、参議院を決算審議中心にすることは慎重に考えるべきである。
  • 行政権が肥大化する中、行政の執行が国民の利益から乖離することがないように、立法、司法等による十分なチェックが必要であり、オンブズマン制度の導入等、行政監視機能の一層の充実・強化が必要である。
  • 衆参両院の権限の在り方について、衆議院が外交・防衛など国政の基本問題を所管し、道州代表からなる参議院が生活環境、住民に密着するものを所管するという考え方も検討に値する。
  • 政党の公約を媒介として国民が政権選択を行う機会が生まれ、政党の地位が飛躍的に高まっていることや、政党は議会制民主主義において重要な役割を持つことから、政党に憲法上の地位を与えるべきである。また、政党の結成・活動の自由等について憲法に規定した上で、政党法などにより公正さと透明性を確保する仕組みを確立すべきである。
  • 議院内閣制の在り方について、野党第一党に対して「影の内閣」の設置を義務付けることにより政策の専門性を高めるとともに、一定の範囲で行政への関与を制限的に容認する仕組みを確立すべきである。
  • 政官関係について、政治家と公務員との接触に関するルールを設け、与党議員は大臣を通じてのみ公務員にアクセスできることとすべきである。
  • 首相公選制について、地方において首長を務めた経験から、また、行政府の長を国民が直接選ぶことは民主主義の観点から重要な意義を有することから、賛成である。
  • 選挙権年齢について、20歳から18歳へ引き下げることは、世界的趨勢であり、若者に「大人としての権利と責任」についての自覚を促すことにもなる。

佐藤 茂樹君(公明)

  • 公明党は、二院制を堅持し、両院の役割を明確にするとともに、参議院を良識の府、再考の府として位置付けるべきとの意見で一致している。
  • 参議院の存在理由は、(a)衆議院の多数派による専断、行き過ぎを抑制すること、(b)民意とのパイプを複数にすることで複雑な民意を多角的に反映させること、(c)議事が複数行われることで、他院を補完するとともに、民意の動向を反映させやすくすること、(d)任期が長く半数改選であることから長期的な視野に立ち、また急激な政治的変革を防ぐこと、(e)緊急集会により衆議院の解散中の緊急事態に対処することにある。
  • 両院の役割分担については、(a)衆議院は予算審議を重視し、参議院は決算審議を重視するとともに、参議院の行政監視機能を強化すること、(b)参議院は政策について評価し審議すること、(c)長期的展望に立ち、いわゆる「基本法」については参議院が審議することなどが考えられる。
  • 参議院の権限の縮小については、衆議院の優越を踏まえた上で、一部に参議院の内閣総理大臣に対する問責決議を認めないといった意見もあるが、参議院の影響力を弱めることには反対である。
  • 両院の構成の差異については、対等型を活かしつつ、選挙制度を異なるものとすべきである。参議院では大選挙区制、衆議院では中選挙区制とすべきとの意見もあるが、選挙制度における衆議院との類似性を排除すべきである。
  • 政党は、議会制民主主義を支え、国民統合における重要な役割を果たし、最高裁判決も、政党の存在と活動について積極的に評価している。憲法は政党について明記していないものの、21条で黙示的に政党を保障し、政党に関して政党助成法等の各種法律も機能していることから、政党について憲法に明記する必要性は低いと考える。

山口 富男君(共産)

  • 我が国では、両院は全国民を代表する選挙された議員で組織されるとされており、国民の多様な意思を正確に反映することが求められている。また、両院の議員の任期が異なることや、衆議院の解散、参議院の3年ごとの半数改選により、時々の国民の意思が両院の構成に反映することとされるなど、院の構成や機能の面において、国民の多様な民意の正しい反映を前提としている。
  • 両院の議員の選挙については、法律で定めることとされているが、憲法上、選挙権の平等などが規定されており、これを無視して制度設計をすることはできない。
  • 衆議院の小選挙区制は大政党に有利で、得票率と獲得議席数が乖離しており、多様な民意の反映にはほど遠い状況である。
  • 政党は、代表制民主主義に不可欠なものであり、憲法上に政党に関する規定はないが、政党の活動の自由は、結社の自由として保障されている。21条を通じて、私的結社である政党の政治参画という公的性格に期待する憲法の考え方は、今後も重要な原則である。
  • 議会制民主主義や政党活動の発展にとって大事なのは、賄賂性のある企業献金を断ち切ることである。国民の税金である政党助成金を受けつつ企業献金をも受けることに対し、国民の納得は得られない。

土井 たか子君(社民)

  • 憲法調査会が、改憲のための作業を行っていると認識している人たちがいるのは問題であり、これは、憲法調査会の設置と運営の趣旨に反するものである。
  • 政党不信が政治不信につながっていると考える。政党政治の再生のために、政党法を制定し、政党への法的規制を要求する主張や憲法に政党の役割を明記しようとする主張があるが、国民の中には、そのような要求が存在しないことから、疑問である。政党や政治に対する不信の解決に当たっては、99条をどれだけ具体的に行使し、誠実に実行しているかが重要である。
  • 政党法を制定しようとする議論の中には、党内民主主義を求めるという主張があるが、そもそもその概念自体が一義的ではなく、派閥抗争になり得る党首選自体が民主的であると言えるのか。
  • 法案審議の中で、少数者の意見が無視され、採用されることのない現状では、政党法を制定するとしても多数者の欲する法律となり、結社の自由が侵害されかねない。
  • 戦前の無産政党に対する弾圧等の反省の上に立って、21条が規定されたことから、政党活動の自由は、結社の自由に含めて考えていくべきである。

●各会派一巡後の発言の概要

森山 眞弓君(自民)

  • 衆参両院の議席を経験した立場から、両院とも重要であり、国政に貢献していると考えている。
  • 衆参両院の役割分担としては、予算が衆議院中心、決算が参議院中心という考え方もいいが、重要なのは、衆参両院の議員が異なる背景から選出されることである。
  • 憲法制定当初は、衆議院議員は狭い選挙区から、参議院議員は全国区又は都道府県単位の選挙区から出てくるということであったが、政治改革を経て現在のような似通った選挙制度となった。これは、選挙制度審議会等において、衆参の選挙制度を別々に考えたためである。
  • 両院制の是非を含めた国会の在り方を踏まえ、両院の選挙制度をトータルのものとして考えるべきである。

古川 元久君(民主)

  • 道州制を採用するなど地域主権という考え方をとる場合は、地方を代表する院が必要となる。そのため二院制の問題は、国と地方の在り方の問題と同時決着する必要がある。
  • 政治に民意を反映し、国民の政治への信頼を取り戻すには、一票の格差の是正が不可欠である。そのため、選挙制度の中に人口変動に応じて一票の格差を自動的に是正するような仕組みを設けることが必要である。
  • 国会は、唯一の立法機関であると同時に行政(執行権)監視機関である。したがって、国会に行政監視院を設置し、その行政監視機能を強化していくことが必要となる。

中川 正春君(民主)

  • 国のかたちの方向性を考えるとき、地方分権への流れについてはコンセンサスがあるが、二大政党制と多党制に基づく連立政権のいずれを目指すかについては、二大政党制を目指すことにつき、今後コンセンサスを得る必要がある。
  • 参議院は地方分権の流れに沿ったものとすべきであり、地方自治体の首長が参議院議員を兼職するなどの大胆な改革が必要である。
  • 一院制の下においては、法案等の審議がマスコミの報道や国民の理解が不十分なままに終わってしまうおそれがあり、二院制において、議案の審議時間が長いことは評価し得る。
  • 政党を国民と政治の媒介として憲法上位置付け、英国のように「影の内閣」を前提とした制度をつくるべきである。

船田 元君(自民)

  • 二院制は、(a)戦後、今日まで安定して続いた議会制度であること、(b)第一院の行き過ぎを抑える第二院の役割は重要であること、(c)国民の多様な意見を汲み取ることができること、(d)国会の役割は今日ますます大きくなってきていること等から、維持すべきと考える。
  • 衆参の役割分担について、衆議院を予算審議中心、参議院を決算審議中心にするとの考えがあるが、その際、会計検査院を参議院の決算に関する機能の一部を担うものとして位置付けることも検討すべきである。
  • 衆議院の民意の集約に対し、参議院は民意の反映のため比例代表制、各県代表、又は道州制導入を前提に道州代表として直接選挙により選ばれることが望ましく、このように両院の選挙制度を異なるものとすることで、衆参の役割分担も図ることができる。
  • 政党は、21条によりその存在が認められるが、通常の「結社」と政党を同視することは妥当ではないことや、今日、民主主義は、政党政治により支えられていることから、政党の役割や政党結成の自由等の枠組みについて憲法に明記し、禁止事項や要件等については法律に規定すべきである。

葉梨 康弘君(自民)

  • 議員立法について、提案がなされた院とは別の院が審議し、チェックできるという点も二院制のメリットとして挙げられる。
  • 選挙について43、44条及び14条に規定するのみで、両院の選挙制度の差を憲法上設けていないことから、両院の構成が似通ったものとならざるを得ない点は、現行憲法の持つ欠点といえる。衆議院議員の選挙については、一票の価値の平等をより重視する一方、参議院議員の選挙については、地方の利益の反映により努めるなどの差を設けるべきである。
  • 重要法案が参議院で否決され、法律と予算が齟齬した場合に、内閣は参議院に何もいえないなど、参議院に対する抑制機能について全く規定がない点も現行憲法の欠点である。

辻 惠君(民主)

  • 行政国家化現象の下、国会が十分に機能を果たしていくために、会計検査院は、内閣ではなく国会に対して直接に決算に関する検査報告の義務を負うこととすべきである。
  • 二院制は、一院のみの審議による拙速を避け、また、国民の多様な意見を反映するためにも重要であり、存置すべきである。
  • 政党の憲法への明記には慎重な立場である。国民から信頼され、民意を反映した議会の実現のためには、憲法や法律に規定がなくとも、政党が道義的に説明責任を果たすという倫理観を育んでいくべきである。
  • 一度選挙が済むと、次の選挙までチェックがなされないことから、国会議員に対するリコール制も、検討すべきである。

中谷 元君(自民)

  • 二院制を維持するとしても、衆議院は、より直接民意を反映している機関として、大きな責任と権限を与えられる必要がある。特に外交分野においては、衆議院がその監督を行い、民意を反映させる必要がある。大使等の人選については、民間人からの登用も含め、衆議院にその権限を付与すべきである。

大出 彰君(民主)

  • 政党は「国民と国政の架け橋」として憲法に位置付ける必要があると考えていた。その一方で、憲法上規定すると党議拘束が強化されるおそれがあることや、政党の自由を重視する観点から、慎重であるべきとの意見も理解でき、精査する必要がある。
  • 第二院が同じ結論なら不要、別の結論なら有害とする法格言は、二院制の効率性を問題としているが、効率性の観点からのみ議論し、一院制とするのは危険である。
  • 連邦制や道州制が議論されている中で、第二院のチェック機能を活かし、州代表としての性格を持たせた二院制を維持すべきである。

山口 富男君(共産)

  • 両院制は、多様な民意を議会に反映させることに基本があり、その制度設計ではなく、運用の仕方に問題がある。両院制の運用の在り方をトータルに考える必要がある。

<船田委員の発言に関連して>

  • 憲法が求めているのは、民意の集約よりも民意の反映である。この点、衆議院の小選挙区制は、民意の集約はできるが、民意の反映が十分ではない。両院制においては、民意をいかに反映させるかを考えるべきである。

<発言>

  • 発達障害者支援法については、提案された衆議院の委員会においても事実上審議されている。このような議員立法の扱いを含め、民意を反映させる方策を検討する必要がある。
  • 政党といえどもその出発点は私的な結社であり、結社の自由としてその活動が保障され、政治への参画を果たしてきたことを踏まえると、政党に関して新たに憲法上規定する必要はない。

赤松 正雄君(公明)

  • 国民は、二院制に対して、立法が速やかになされないことや議員数が多いことについて、不満を持っているのではないか。
  • 民意の反映のために議員自身がなし得ることとして、議員立法が挙げられる。唯一の立法機関である国会を構成する国会議員が、議員立法を通じて立法行為に積極的に参画すべきである。

柴山 昌彦君(自民)

  • 参議院に、最高裁判所の裁判官の国民審査に替わる裁判官の指名機能を付与すべきである。
  • 政権を安定化させ、また政権交代を可能にするために、民意を集約できる小選挙区制を重視すべきである。他方、参議院は政党色を薄めた選挙がふさわしいとの意見があることも踏まえると、現在の制度が適当である。
  • 参議院議員を道州代表と位置付けることは検討に値する。参議院議員選挙を間接選挙とすることや、参議院議員を推薦制により選出することについては、直接選挙によるメリットを勘案すると慎重であるべきである。

<葉梨委員の発言に関連して>

  • 予算と法律の齟齬を解決するためには、参議院に対する解散権、衆議院による法律の再議決要件の緩和などの方法を検討すべきである。再議決要件を緩和する場合には、任意的となっている両院協議会を必要的なものとすることにより、参議院の軽視を防止できる。

<発言>

  • 憲法に政党に関する条文を設けてもよいのではないか。その際、ドイツ基本法の違憲政党の禁止規定のような条項は、21条の結社の自由にそぐわない。

土井 たか子君(社民)

  • 立法権を持つ議会が十分に機能しないと立憲主義は成り立たない。議院内閣制の下では国会が内閣の生みの親であることから、政党政治が機能しないと内閣への国民の支持は失われる。
  • 自衛隊の多国籍軍への参加などが閣議決定だけで行われ、重要な条約が国会の審議の対象外とされるなど、内閣に対する国会の行政統制が働いていない。このような状況を正すために、唯一の立法機関に属する議員の自覚や責任感が必要である。

三原 朝彦君(自民)

  • 時代の流れを反映した二院制を目指していかなくてはいけない。地方分権を念頭に、参議院の選挙制度は、米国の上院を範とし、地方自治体の財政格差について意見を述べる機会を与えるため、地方代表を選出する制度とするのがよい。
  • 現在の選挙制度には民意が反映されていないという意見があるが、衆議院の小選挙区比例代表並立制においては、比例代表制の部分において民意の反映は実現されている。
  • 二院制は存続すべきだが、参議院の改革は必要である。例えば、参議院議員が人口ではなく、地域を基礎として選ばれる等、地方の考え方が反映されるようにすべきである。

山花 郁夫君(民主)

<三原委員の発言に関連して>

  • 43条の「全国民の代表」という規定が存在する以上、まずは一票の格差が問題となる。
  • 選挙制度は、短期的には、14条と43条の関係から一票の格差が問題となり、長期的には、道州制の導入と43条の関係が問題となる。

枝野 幸男君(民主)

  • 二院制の議論のうち、衆参それぞれの役割を整理する必要があるという点では意見が一致していると考えるが、憲法の改正には、参議院の賛成が必要であることから、衆議院がどの権限を手放すかについても検討すべきである。
  • 二大政党制の下で、衆参それぞれで多数党が異なるという複雑な状況が予想されるなか、法律については衆議院の優位性を高める必要がある。一方、外交案件などの中には、参議院に任せることが可能なものがあるのではないか。
  • 政権交代の可能性の高い制度の下では、時の政権による恣意的な7条解散が行われていることを再考しなければいけない。すなわち、選挙により政権を託された以上、選挙公約に基づき4年間は政権を担当することとし、政権選択への国民の関与の度合いを高めることが必要ではないか。
  • 衆参の選挙時期が異なることにより、衆議院の政権与党と参議院の多数党にずれが生じることについても再考すべきである。

永岡 洋治君(自民)

  • 二院制の維持に賛成するが、歴史的経緯からすると、二院制は身分制や州制の国においてとられており、単一国家の我が国においては、参議院は、その正当性が問われている。
  • 憲法制定の際の附帯決議においても、衆参両院の選挙制度の重複は参議院の意義を没却すると述べられており、衆議院と似通った参議院の選挙制度は問題である。
  • 参議院は、衆議院のカーボンコピーであれば意味がなく、行き過ぎた権限を持てば有害である。
  • 議院内閣制は、国民が衆議院に、衆議院が内閣総理大臣に正当性を付与するものであり、本来、政権交代は衆議院議員の総選挙においてなされるべきであるが、現実にはむしろ参議院議員の選挙の際になされている。
  • 参議院の権限は抑制的であるべきであり、再議決要件が3分の2以上とされているのは厳格すぎる。

渡海 紀三朗君(自民)

  • 議院内閣制をとる以上、チェック・アンド・バランスの観点から、二院制を維持すべきである。

<山花委員の発言に対して>

  • 二院制の問題は、両院の機能・選挙制度の両面から考えるべきであるが、まずどのような制度を目指すべきかを考えて、そのために43条が問題となるかどうかという順序で考えるべきである。

<発言>

  • 一院制は政治にスピード感を持たせることができ、二院制はチェック機能が優れている。小選挙区制は民意を集約し、政権交代を可能とする一方、比例代表制はより民意を反映するものである。現行制度は、この二つの選挙制度をバランスよく組み合わせている。

土井 たか子君(社民)

  • 小選挙区制は死票が多く、本当に民意を反映できるのか。そもそも小選挙区制が導入されたのは、政治と金の問題をめぐる政治改革が契機であったにもかかわらず、与党は政治と金の問題の解決には大変不熱心である。
  • 解散に関しては、時の政権が不利な時期に解散するわけがないとされるが、その時こそ、まさに国民が解散を望む瞬間であり、野党も解散に追い込むべく努力していく必要がある。
  • 政権を目指す党は、政策まで政権与党と似通ったものとなってきていることに危惧を持つ。立候補者を与党化してしまう現在の小選挙区制は変えるべきである。

坂本 剛二君(自民)

  • 二院制の維持に賛成であるが、時代の流れを俊敏に汲み取り、反映するには、現在の参議院の任期6年は長すぎることから、全国区のみで任期2年とすべきである。
  • 参議院は良識の府であるべきであるが、現在はそうではない。衆議院議員を25年以上務めた者を各党が推薦するなど、新しい基準を設けるべきと考える。
  • 衆参両院の役割分担については、衆議院が予算審議、参議院が決算審議というように、衆参両院を表裏の関係で考えるべきである。

佐藤 茂樹君(公明)

<山花委員の発言に関連して>

  • 参議院の改革に当たっては、議員は全国民を代表するとする43条1項にこだわるのか否かが問題となっているが、同項に沿って考えることが適当である。参議院議員を、都道府県の代表や職能代表とする意見もあるが、同項との整合性は疑問である。

<発言>

  • 参議院が独自性を発揮するには、選挙制度と運営の両面の独自性を組み合わせるべきである。衆議院との役割分担と権限の拡大・縮小が必要であり、衆議院の再議決要件の緩和などは、一考の余地がある。

鹿野 道彦君(民主)

  • 二院制を維持した上で、議員は全国民を代表するとする両院の役割分担を明確にすべきである。衆議院は予算審議中心に、参議院は決算審議中心にすることも一つの考えである。
  • 参議院議員が入閣すると、参議院のチェック機能を弱め、良識の府としての役割を果たせない。参議院議員は閣僚にならないことを参議院自らが明確にすべきである。

<枝野委員の発言に関連して>

  • 地方分権型社会においては、外交・安保問題が国政における最大のテーマとなることから、外交に関する権限は衆議院が持つべきである。

<発言>

  • 衆参両院の選挙の在り方について、異なる選出方法とすべきである。
  • 選挙公約が議員のものか政党のものか曖昧であり、政党を国民に理解してもらうためにも、憲法に政党について明記すべきである。

保岡 興治君(自民)

  • 自民党憲法調査会の憲法改正案起草委員会の案は、議論のスタート台としての素材であり、衆参両院で議論されたテーマを網羅的に取り上げたものとなっている。現在、参議院でも、二院制について議論がなされている。二院制の在り方については、国民的な関心があり、衆参の憲法調査会における議論などを参考に、今後、党内で議論を進めることに努力したい。

枝野 幸男君(民主)

<土井委員の発言に関連して>

  • 民意の集約が、選挙前に行われるか、選挙後に行われるかがポイントではないか。選挙前の民意の集約は、国民の目に見える形での政権の選択につながり、選挙後の民意の集約は、時として議会内における談合・密室政治につながる。
  • 中選挙区制に比べて、小選挙区制と二大政党制によって、むしろ与野党対決は激しくなっているのではないか。
  • 民意の集約とともに民意の反映は重要であり、衆議院の役割を民意の集約による政権選択として位置付け、参議院の役割を民意の幅広い反映として位置付けることも可能である。
  • 現在の小選挙区制による二大政党制の現象は、厳密には、「二大政治勢力制」と呼ぶべきものであり、多数の政党が二つの政治勢力として、それぞれ共通の公約を掲げて選挙に臨むことも考えられる。

《本年の調査の締め括りとして》

●各会派一巡目の発言の概要

船田 元君(自民)

  • 将来の私たちの生活をより良くするためには憲法の見直しが必要であり、我々は、国際情勢の変化等により、現実に合わなくなってきた部分を直していこうという「憲法古着論」を進めてきた。
  • 平和憲法の根幹は維持しつつ、個別的自衛や集団安全保障の下での実力行使はこれを明記し、集団的自衛権は極めて限定的に認めるのが望ましい。
  • 天皇制については、その象徴としての機能を高めるとともに、女性天皇の実現に道を開くことが望ましい。
  • 国民の権利及び義務については、権利の行使には義務が伴うことや、公共の福祉との調整が必要であることを強調すべきであり、また、新しい人権及び義務、景観を保全する権利及び義務を付け加えるべきである。
  • 二院制は存続の上、両院の明確な役割分担を行うべきである。内閣総理大臣の権限を強化し、政治にスピード感を与えるべきである。また、司法については、憲法裁判所の創設も検討に値する。財政については、国家財政を健全に保つためのプログラム規定を明記することも可能ではないか。
  • 地方自治については、「地方自治の本旨」の内容を明らかにするなどその規定を整備するとともに、道州制の導入や地方財源の確立を明記する必要がある。
  • 本院の北欧及びEUへの海外調査を通じて、我が国でも議会型オンブズマンを導入すべきであり、また、主権を一部移譲してのEU 統合の経験が、将来のアジアを中心とした地域的統合を考える際の参考になると考えた。
  • 憲法改正手続については、国民投票の実施手続を定める一連の法制度の整備を早急に行う必要がある。


枝野 幸男君(民主)

  • 憲法論議は、長い間、抽象的かつ感情的なものであったが、本調査会の設置が一つの要因となり、特に今年に入ってからは、具体的かつ論理的なものへという変化の兆しが見られる。
  • 今年の本院の海外派遣で欧州を訪問し、EU憲法の制定に至る各国間及びEU議会における合意形成のプロセスは、我が国の憲法論議にとって十分参考になるとの印象を受けた。
  • 新しい人権や道州制等について憲法に明記すべきとの意見については、現憲法下で法整備などの努力をするのと平行してそのような主張が行われているのであれば否定はしないが、法律での対応といった具体的な努力を怠ったまま憲法に明記することだけを目的とした議論には懸念を抱かざるを得ない。
  • 小泉首相の「自衛隊がいるところが非戦闘地域である」という発言は、法律の要件と効果が逆転しており、法の支配の軽視の傾向を示すものである。法の支配に基づいて政治が運営されていない現状では、憲法を変えても意味がない。
  • 本来、政府解釈では認められないはずであった自衛隊の多国籍軍への参加が、十分な議論や説明を欠いたまま認められてしまった。このようなことが認められるようでは、憲法にどのような条文をつくっても空洞化してしまい無意味になる。

太田 昭宏君(公明)

  • 制定経緯に関する調査では、現憲法は国民が選び取ったものであるとの認識が確認された上で、現憲法の背後には、「日本思想」があるのか、欧米的憲法観があるのかといった精神思想に関する議論が行われたが、こうした議論は今後も掘り下げていく必要がある。また、21世紀はアイデンティティを争う「文明・文化の衝突」の時代になると考えており、地域的文化を反映させるためにも、各地域の意見を聞くことで国民的論議を行っていく必要がある。
  • いまの日本人は、公に対する意識が欠け、利己主義になり果てているとの議論がある。しかし、人は、「我」と「我々」の二つの世界を生き、人と人の間、つまり「人間(じんかん)」に生きているとの人間観に立ち、また、自然との関わりの中で生きているとの視点に立った場合、生命の尊厳及び人間の尊厳に立脚した個人の尊厳という概念を前面に押し出すことが大切である。個人の尊厳なくして、公が成り立つことはあり得ない。
  • 憲法は、個人の尊重を原則として国家権力を縛るものであり、権利が多く義務が少ないのは当然である。私は、権利、義務に次ぐ「責任」という第三の概念を導入し、国民の利益を実現する国家の責任として明確にする方向で論議すべきである。

山口 富男君(共産)

  • 今国会は公聴会を中心として行われたが、(a)どのようなことがあっても海外での武力行使を是認すべきではなく、また(b)立憲主義の本質を曖昧にしてはならない、という二つの重要な論点が提示された。我々は、9条を守るべきであるという国民世論が多数であること、立憲主義の立場からの現実政治の点検が極めて重要であることを改めて確認しなければならない。
  • 憲法の「平和主義」と「立憲主義」の立場を守るという意見は、年間の調査会を通じたある種の通奏低音であったと感じた。
  • 本調査会は調査機関であって、憲法改定を前提とした機関ではない。議案提出権を持たないことを確認して発足している以上、調査機関としての立場を貫くことが立憲主義の立場からは当然の要請である。
  • 今、必要なのは憲法改定ではなく、憲法を土台にして現実政治を改革していくことである。21世紀の日本の国づくりに「平和」「人権」「民主主義」の憲法原則を活かし具体化していくことこそが大切である。

土井 たか子君(社民)

  • 今国会における公聴会は大変有意義であった。公募に応じた方のレジュメを拝見し、過去の経験や現在の国際情勢を通じて9条をしっかり活かしていくことこそが日本のとるべき道であるという多くの意見に大変感動した。
  • 本調査会は、世間で憲法改正起草案を審議する委員会であると思われているようだが、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査」を行うために設置された組織であり、そのことを本調査会は伝えていくべきである。
  • 憲法問題の生じる原因がいかなるところにあるのかを明らかにしたり、国民の日常生活の中で憲法がどのように扱われているかを検証する努力が大切である。
  • 環境権・知る権利等の新しい権利が現憲法には存在しないとの意見もあるが、それは憲法に文言が存在しないことに問題があるのではなく、官僚による抵抗等の消極的な姿勢に問題があり、憲法の精神を具体的に活かすために基本法等の法制度を充実させていくべきである。
  • 憲法は国民を縛るものではなく、国家権力を縛るものである。総理大臣等を含めた公務員には99条により憲法尊重擁護義務が課せられており、それにより多数意見によっても奪うことのできない価値の実現が図られている。
  • 本調査会は、来年最終報告書をまとめる予定であるが、明確な目安やスケジュールを示した上で、なるべく早い段階に委員全員の意見を出す機会を設けるべきである。

●各会派一巡後の発言の概要

野田 毅君(自民)

  • 憲法草案作成の際、GHQには、日本は封建的・非民主的・好戦的な国であるという先入観があり、このような先入観に基づいて日本を改造しようという視点があったと考える。しかし、我が国には、古来より民主主義的な考えは根付いているのであり、戦後60年を迎えようとしている今日、そのような誤ったバイアスから逃れて、本調査会から国民にしっかりした方向性を提示して、国民の議論を巻き起こしていってもらいたい。

坂本 剛二君(自民)

  • 現憲法には、GHQが占領政策を円滑に行うのに都合が良いようにという意図が含まれていた。今こそ、歴史と伝統といった民族の誇りを全面的に掲げ、国際社会で中心的な役割を果たすと宣言していくことが必要であり、本調査会では、ぜひ改憲の方向で議論をまとめてもらいたい。

古屋 圭司君(自民)

  • 本調査会に議案提出権はないが、議論を通じて、いずれは憲法改正が避けて通れないと思っている委員が大半であったと感じた。
  • 諸外国は、時代の変化に応じて柔軟に憲法を改正している。我が国もさまざまなところで憲法の議論・検討がなされ、それを実行する段階に来ている。
  • 最終報告書には、将来の憲法改正を視野に入れた内容を盛り込んでもらいたい。
  • 憲法改正は、96条で定める国民投票の手続法がなくては実現できず、立法府は国民投票法を早急に制定すべきである。

渡海 紀三朗君(自民)

  • 本調査会では大変中身の濃い議論がなされてきた。ただ、本調査会には議案提出権がないため、そろそろ議案提出権を有する組織をつくるべきであり、その旨を最終報告書に盛り込むべきである。
  • 国民投票の権利が96条で保障されているにもかかわらず、その制度が整備されていないのは立法府の怠慢である。
  • まず国家像を検証し、それが現憲法において実現できるのかという順序で議論を進めるべきである。

中川 正春君(民主)

  • 本調査会の議論は、ある種「言い放し委員会」の感もあったが、現実の問題に即した議論も行うことができたという点で、意義があったと考える。
  • 憲法論議は、縦軸としての「歴史」と横軸としての「国際環境」とを踏まえてなされるべきと考える。
  • 憲法は、今や見直しの段階に入っており、国家の意思をどのような方向へ向けていくのかについての幅広いコンセンサスを醸成する必要がある。
  • 今後は、そのような機能を有する機関の設置が必要である。

柴山 昌彦君(自民)

  • 平和主義や教育の問題について、人間の完全性を前提に議論されている点を改めていく必要がある。また、個人ばかりでなく、公の概念を大切にすべきである。
  • 憲法改正は、その改正について、(a)国民的コンセンサスの得られる条項と、(b)そこまでは無理でも最大限の同意が得られる条項とに分けて行う必要があると考えるが、いずれも、大幅な改正は難しいと考える。

田中 眞紀子君(民主)

  • 15条が国民主権を定めているにもかかわらず、政官関係が曖昧なままとなっていること、また、41条が国会の排他的な立法権を認めているにもかかわらず、法案審議の実態は内閣提出の法律案優先となっていること等をかんがみると、我々国会議員の質が問われていると思わざるを得ない。
  • 自衛隊の多国籍軍への参加の決定過程が不透明であることや先日の政治倫理審査会が非公開で開会された事例などは、民主主義の基本を揺るがすものであり、このようなことが国民に閉塞感を与えている。
  • 一般的な国民投票制度については、さまざまなマイナス面があることも承知しているが、議会制度を補完する側面があることを重視し、実現を図るべきである。

赤松 正雄君(公明)

  • 私は、本調査会での議論が始まった当初、調査会での議論を5年間行った後、更に5年間程度をかけて憲法改正の議論を行うべきと考えていた。
  • 今や、委員の大半は憲法改正をすべしとの意見であるが、一方で、改正の必要はないとする意見も存在しており、そうした立場から、憲法の各条項がどの程度実現されているのか検証すべきであるという主張がなされている。
  • 個人的には、こうした主張は重要であり、避けて通るべきではないと考えており、残余の調査期間をそのために充てるべきである。

葉梨 康弘君(自民)

  • かつての憲法論議は、護憲派も改憲派も、戦前の桎梏から逃れることができなかったのではないかと考えるが、今や、それを払拭すべきときである。
  • 16条及び17条を実質化するためには、オンブズマン制度は必要である。また、9条については、自衛隊の存在を明記した上で、その活動に一定の歯止めをかけるべきである。その他「公共の福祉」についての解釈、内閣法制局があたかも憲法の有権解釈権を独占しているかのような観を呈していること、国会議員の選出方法等、見直すべき点は多々存在する。
  • 憲法を改正しようと考える政党は、その具体案を提示すべきであり、そうした提案に基づいて改正がなされれば、よりよい憲法となるはずである。

二田 孝治君(自民)

  • 憲法は、衆議院の参議院に対する優越を規定しているが、実際の運用は、決してそのようになっていない。
  • その原因としては、衆議院のみならず参議院についても、議院を構成する会派が政党化してしまっていることが考えられ、しかも、公職選挙法が比例代表制を採用していることに見られるように、このことを法律が認容してしまっている。これでは、ますます参議院の政党化は進むばかりである。
  • また、参議院議員には6年間の長い任期が保障されていながら、長期的視野に立った公平な判断を下すことができていないようにも思われることから、参議院の在り方については、この際、改革が必要である。ただし、憲法改正によってそれを行うことは、参議院側の理解が得られない場合も考えられるので、法律レベルや運用面での改革についても研究していく必要がある。

松野 博一君(自民)

  • ここ10年間で、国民の憲法に対する意識は大きく変わった。特に、若い世代の改憲に対する意識が変わったことに注目する必要がある。
  • 若い世代の憲法論議を促進するものとして(a)彼らが現在の日本に閉塞感を抱いており、閉塞感から脱却するために国のかたちを論ずることが憲法論に直結すること、(b)ITやバイオテクノロジーをはじめとする科学技術の猛烈な進歩により人権等の憲法価値が影響を受けていることの2点を挙げることができる。
  • 我々は、このような国民の意識変化を受けとめて憲法論議をしなければならないし、単に議論をするだけでなく、具体的な作業をする段階に入っている。
  • 少なくとも、憲法改正国民投票制度の実現は、国民の意識変化に答える第一歩である。

三原 朝彦君(自民)

  • 我が国は、国際社会において一人前になりたいと思い続け、敗戦の灰燼の中から立ち直った。しかし、もはや我が国は、他の国から見本とされるような国になることを目指すべきであり、そのような視点から憲法を見直す時期にあると感じる。
  • したがって、そのような視点からの最終報告書の起草が必要であり、また、報告書提出後は、議案提出権を持つ機関の設置も検討されるべきである。

松宮 勲君(自民)

  • 各国は、諸情勢に対応し、その時点での最良の選択を行うために、常に憲法を見直す努力を怠っていない。
  • 我が国においても、憲法を見直す努力を怠るべきではなく、5年間の本調査会の議論はその努力を果たしたものであって、さらに、具体的な作業を行うべく次のステップに進むべきである。
  • 憲法改正国民投票制度がいまだ制定されていないことは国会がその責務を果たしていないものであって、次のステップにおいて具体的な作業を行うことが望まれる。

加藤 勝信君(自民)

  • 私は、いわゆる「押し付け憲法論」には違和感を持っていた。一方、憲法を改正することが戦前への逆行に直結するようなイメージも、また誤りであり、このような両極端な議論が克服され、現在、冷静な議論を行う環境が整ってきたと感じる。
  • 憲法の理念が実社会に反映されているかということを検証しなければならないことはもちろんであるが、同時に、内外の諸問題に憲法が対応できているか、国民の求めに応えられているかどうかの検証も必要である。その結果、必要であれば憲法を改正するということが、憲法の持つ理念を守るということにつながる。
  • 憲法論議は、次のステップに進むべき時期に来ており、日本の新しい憲法を作るための具体的なロードマップを示すことが国民の憲法に対する期待に応えることにつながる。

山口 富男君(共産)

  • 本調査会は議案提出権を持たないため、拘束力ある結論を出すことはできず、最終報告書に何らかの方向性を盛り込むということは、そもそもできないはずである。
  • 憲法改正国民投票制度については、現実に憲法改定を求める国民の声がなく、政治的な流れにもなっていないのであるから、現時点では、これを具体化する必要はない。
  • 本来、憲法問題は各常任委員会において扱うべきであって、常設の憲法委員会の設置については、反対である。
  • 憲法問題に関しては、国会における少数意見が国民の少数意見ではなく、国民の多数意見は、憲法価値を守り、9条を守ることを求めており、国会における議論と国民の意識との間に乖離がある。
  • 5年間の調査を通じて、日本国憲法が21世紀においても十分に力を発揮できることが明らかになった。しばしば改憲を主張する意見は、89条からすると私学助成が違憲になってしまうと指摘するが、これについては、違憲ではないという解釈が確立しており、問題はない。

平井 卓也君(自民)

  • 5年間の調査は非常に有意義であったが、憲法論議が国民に分かりやすいものであったかについては、疑問である。今後、もう少し分かりやすい生活に身近な憲法論議が必要になる。
  • 近年、ITの発展等に伴い社会意識が加速度的に変化する中で、憲法は、我々のアイデンティティとなり得るものである。憲法を語るとき、歴史や文化の継承はアイデンティティの中核であり、国民の責務ともいうべきものである。
  • 日本は、近代化の際、先進諸国の理念や制度の輸入の過程において、我が国の固有性を発見はしたが、広く共有することをしなかった。そのようなものの中に、次の時代の運営のヒントがある。
  • 96条に規定する憲法改正のハードルの高さは、次の世代の選択を狭めるものであり、憲法改正手続を再検討する必要がある。

大村 秀章君(自民)

  • 国民との議論を通じて感じた印象では、時代の流れに合わせて憲法も改正していくべきであるとの意見の方が多かった。
  • これからは、国際社会において日本の平和と安全をどのように守るべきかを主体的に考えていかなければならず、そのような観点から、自衛隊、自衛権及び国際平和と安全に貢献していく旨を憲法に明確に位置付けるべきである。
  • 環境権やプライバシー権などの新しい人権について議論していくべきである。
  • 急速に社会が変化していく時代にあって、国会には決断のスピードが求められており、一院制を採るべきである。
  • 憲法改正の国民投票法について、憲法調査会及びその後継組織において、具体化していくべきである。

伊藤 公介君(自民)

  • 現憲法は「生い立ち」に問題があることから、憲法改正ではなく、21世紀の我々の誇り、自信、決意を込めた新憲法を制定すべきである。
  • 現在の参議院は、衆議院と活動内容が酷似しており、その存在意義は薄いため、衆議院と参議院を一緒にして一院とすべきである。もし、存続させるのであれば、少なくとも閣僚を出すべきではなく、政党化せずに活動すべきである。
  • 新憲法の制定に当たっては、憲法の基本原理として、現行の三つの原理に加えて、環境先進国を目指すという意味での「環境」を位置付けるべきである。

河野 太郎君(自民)

  • 21世紀の日本を考えたとき、世界の平和と安寧に寄与する憲法をつくらなければならないと考える。そのためにも、憲法改正の発議に向けた機関を国会に設けるべきである。
  • 9条を改正し、自衛権及び国際貢献を明記すべきである。
  • 昨今の政治不信の原因は、党議拘束等による国会審議の形骸化にあることから、憲法改正論議を行うに当たっては、大統領制の採用も視野に入れた議院内閣制に関する議論もしっかりと行う必要がある。
  • 現在の二院制が政治あるいは行政の停滞につながっていることは明白であり、一院制を採るべきである。

土井 たか子君(社民)

  • 憲法改正手続には、(a)改正手続をしっかり守る、(b)現憲法から発展する方向で改正されなければならない、という二つの基本的な命題がある。後者においては、現憲法から発展する「改正」は無限界であるが、現憲法に逆行する「改悪」は許されないという法理が存在することを認識すべきである。
  • 今国会において、内閣による憲法改正案の原案の提出権限の有無を問う質問主意書を出したところ、72条により可能であるとの回答を得た。私は、72条の「議案」に法案ですら含まれるべきではないと考えており、ましてや憲法改正案を含むことは許されない。また、内閣が99条の憲法尊重擁護義務を負っていることからも、内閣に憲法改正案の原案の提出権を認めるべきではない。
  • 憲法改正のハードルが高いとの意見もあるが、改正手続の要件を満たせないのであれば、そのような憲法改正は国民が望んでいないと理解すべきである。
  • 憲法改正を唱える理由として、占領軍による押し付けという「出自」を挙げるものもあるが、現在、9条改正を望んでいるのは米国であり、そういう点では、現在の憲法改正論も押し付けではないか。

永岡 洋治君(自民)

  • 本調査会は、憲法改正問題だけではなく憲法的問題を多く扱うことにより、憲法的問題が多数存在することを国民に知らしめたという点で、その存在意義は大きかったと考える。
  • 内閣の一機関である内閣法制局が、憲法の有権解釈を独占していることは問題であり、国会が主体的に判断していくべきである。
  • 国民の憲法改正の意識は高まっていると感じるが、改正手続が硬性であるために実現に結びつかない。憲法改正の国民投票法の整備と同時に改正手続の緩和について、議論していくべきである。

近藤 基彦君(自民)

  • 現憲法の制定時に国民の承認を得ていたのかという議論について、(a)明治憲法の改正規定に基づく正当な改正である、あるいは(b)昭和21年の総選挙により一種の国民承認の形をとっているなど、何ら問題ないとする意見もあるが、いずれも説得力に欠ける。現憲法に憲法改正の国民投票の規定が設けられている以上、改めて、何らかの形で国民の信を問うべきではないか。
  • 改憲の有無にかかわらず、憲法改正の国民投票法を整備することは立法府の責務である。

園田 康博君(民主)

  • 日本国憲法よりも硬性度が高いと言われる米国憲法が過去に何度も改正されていることから、一概に日本国憲法が硬性であるとは言えない。
  • これまで憲法改正論議が国民へと波及しなかったのは、憲法改正の必要性・内容を具体的な形で示してこなかったからである。そのような意味では、来年出される予定の自民党及び民主党の憲法改正のための草案は、憲法改正に向けての一歩前進となるのではないか。
  • 憲法改正論議を行うに当たっては、自由で豊かな国民生活を目指すという憲法の目的を念頭に置いた上で、どのような国づくりを目指すかという原点に立ち返った議論を進めていくべきである。
  • 国民の政治不信を払拭するためには、国民の政治・行政への参加を喚起する必要があり、そのためにも、国民が行政情報等に自由にアクセスできるよう「知る権利」を憲法に盛り込むべきである。

和田 隆志君(民主)

  • 私は、本調査会に臨むに当たり、国民の意見を聴くことを心がけてきた。そこでは、憲法に対する関心が高まってきたことは事実であるが、改正すべきか否かの具体論に関して基本的な情報の提供がなされていないと感じた。
  • 形式的には、日本国憲法を国民の総意をもってつくり直す手続を提供することが考えられてよい。
  • 内容的には、自分が公務員として働いた経験から、現在の内閣と行政の関係が最善だとは思われない。本来は、内閣と国会は緊張関係に立つべきである。憲法改正案の提出に当たっても、立法活動の在り方を改善し、論議を尽くした上での改正案提出でなければならない。

中根 康浩君(民主)

  • 本調査会の活動を通して議員活動の在り方について考えさせられた。
  • 憲法論議の中心は、9条であり、9条を抜きにした改正は意味がないと考える。自衛隊を明記し、国際貢献をどこまでなすべきか明確にするという観点からの9条改正が必要である。
  • 憲法改正は、必要であればなすべきだが、その前に、国の在り方について再考をし、また、憲法理念の実現の努力がどこまでされているか個別論点について検証すべきである。同様に、法律についても、立法後、十分に機能しているか検証をなすべきである。

青木 愛君(民主)

  • 本来、憲法は、よりよい生活を営むための共同生活のルールであるにもかかわらず、国民にとって憲法を意識する場面は少なく、国民の憲法に対する意識を高めなければならない。憲法は、もっと身近で、分かりやすいものであるべきであり、憲法を改正する場合も、それにより、どのように生活が変わるのか、具体的に分かりやすい言葉で伝える努力が必要である。

山花 郁夫君(民主)

  • 憲法が翻訳調であるとの意見については、私の世代ではよく理解できなかったが、宮澤公述人の「最初はバタ臭く感じたが、時代とともになじんできた」との公述を聞いて、そのような意見と私の世代の理解の差は、憲法が時代の変化により受け入れられ、定着してきたという流れを表すものであるということを理解することができた。
  • 国民の間に我々の憲法であるとの規範意識がなければ、法律や憲法は機能しないため、国民に憲法の信を問う機会があってもよいと思われる。本調査会の意義には、国民に憲法を考える機会の提供という点もあり、国民を置き去りにしない憲法論議が必要である。

渡辺 博道君(自民)

  • 国会において憲法論議をする場としての本調査会の役割は大きく、報道を通じて国民の憲法に対する意識を喚起し、また、憲法に対するさまざまな意見の集約もなされた。
  • 憲法改正を考える際には、憲法と現実の乖離及び日本の将来への連続性という観点からの考察が必要である。情報化の進展や環境保全の必要性という時代の変遷に対応するため、プライバシー権や環境権を憲法に明確に位置付けるべきと考える。
  • 国会法を改正して憲法調査会を法案審議が可能な委員会へと衣替えし、憲法改正国民投票制度の具体化をその中で審議すべきである。

笠 浩史君(民主)

  • 本調査会の設置自体が議論されていた5年前を思い起こしたとき、調査会においてタブーなくさまざまな憲法論議ができたのは、評価されるべきである。
  • 本調査会の活動を振り返ると、大体すべてのテーマについて議論は出尽くしていると思うが、国民の間で憲法改正の機運が高まったとは言えず、国民意識は、改正の必要があればしてもよいという程度ではないか。憲法改正は最終的には国民が判断するのであるから、憲法改正の必要性が国民にも理解されるよう、調査会も、争点を具体的に示し、国民世論を喚起すべく次のステップに進むべきではないか。
  • 総議員の3分の2という憲法改正発議要件は、憲法改正の重大性に照らし、このままでよいと考える。96条が厳格すぎて非現実的であるとの意見もあるが、逐条ごとに政党間の対立がある事項は、選挙で争点を明確にし、国民世論を喚起すれば、3分の2という要件を超える部分もあると思われる。

佐藤 茂樹君(公明)

  • 本調査会の自由討議という議論の在り方は評価している。
  • 本調査会を振り返って、憲法観の違いは、そのまま国家観の違いであること及び憲法観は個人により異なることが明らかになった。しかし、衆議院の意思として、国民に意見集約を提示するためにも、憲法の三原則の維持など会派を超えて一致できる部分と一致できない部分、歩み寄れる部分等を明らかにする必要がある。