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平成十二年十月十九日提出
質問第一七号

初等中等教育におけるものづくり教育の振興に関する質問主意書

提出者  鍵田節哉




初等中等教育におけるものづくり教育の振興に関する質問主意書


 ものづくり基盤技術が我が国経済において果たしている重要な役割に鑑み、ものづくり基盤技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、昨年三月にものづくり基盤技術振興基本法が超党派の議員立法により成立し、その第十六条には基本法の重要な柱の一つとして、ものづくり教育の振興が規定された。また、基本法第九条第三項の規定に基づき、本年九月にはものづくり基盤技術基本計画が策定され、第五章にものづくり基盤技術に係る学習の振興に関する事項も定められており、今後の取り組みに期待を持つものではある。
 しかし、ものづくり教育の現状は、中心的な役割を担うべき中学校の技術・家庭科においても、近年特にものづくり軽視の風潮が指摘されるなど、問題が多く存するものと認識している。ものづくり基盤技術の継承が困難になりつつある現下の状況は、我が国に蔓延する知識偏重の偏差値あるいは学歴による一元的な価値観によるところが大きく、その意味で、ものづくり基盤技術に関する能力を尊重し、熟練技能者の地位を高める社会的気運を醸成するためには、小学校段階からの初等中等教育におけるものづくり教育の充実が最も効果的と考える。
 こうした状況に鑑み、ものづくり教育の振興を我が国の喫緊の重要課題と位置づけ、効果的な施策を速やかに行う必要があるとの立場から、以下の質問を行う。

1 ものづくり基盤技術振興基本法の意義と法施行後一年四ヶ月を経過した現時点における法運用の評価について政府の見解を問う。
2 現行文部省における義務教育段階のものづくり教育の所管部課並びに来年一月の省庁再編後の文部科学省における同様の所管部課を明らかにされたい。
3 基本計画には、初等中等教育におけるものづくり教育の充実として、「関係教科の中にものづくりなどの体験学習を積極的に取り入れる」との文言が存するが、具体的に関係教科の名称と、それぞれの教科でどのような内容を考えているのかを明らかにされたい。
4 同様に基本計画中には、「地域の製造現場等における職場見学の実施などの取組を図る」との文言がある。この具体的な実施計画を明らかにされたい。
5 ものづくり教育の入り口として重要な役割を果たすべき小学校の図画工作科において、近年は教員が怪我等を恐れ図画偏重になっており、その結果、本来この段階での発達が著しい巧緻性が低下するとともに、その後の技術・技能に対する軽視の風潮を生じさせる原因になっているとの指摘が度々される。こうした実態について、政府はどのように把握し、今後の対応を講じようとしているのか。
6 中学校の技術・家庭科における今日までの学習指導要領の変更に伴う技術科の授業時間数と総授業時間数に占める比率の変遷を明らかにされたい。また、その比率が低下しているならば、その主たる理由は何か。
7 同様にサミット各国における中学校段階の技術教育の総授業時間の中に占める割合について明らかにされたい。
8 本来、中学校は教科担任制であり、免許を持った専任教員が指導に当たるべきであるが、一部には教育委員会が発行する臨時免許証で済ませているケースもあると聞いている。こうした教科外担任の許可件数の昭和四五年度から五年ごとの教科ごとの数字を明らかにされたい。また、技術科における教員の充足率が低いとするならば、そのような現状は、ものづくり教育軽視の一つの現れではないかと考えるが、政府の見解を求める。
9 高等学校においても普通科科目に技術的問題解決能力を高める科目の設置が不可欠と考えるが政府の見解を問う。
10 主として技術教育によって育成される能力や資質は多岐に渡る。暗記力とは異質の創造・工夫をする力、技術の利用方法や製作品に対する技術的な評価力、生産・消費・廃棄に対する技術的な倫理観、一般的には器用さと云われる巧緻性、勤労や仕事に対する理解力および職業に対する適切な判断力など、人間形成上の技術教育の役割は極めて大なるものがある。今日の技術教育の衰退は、偏差値・学歴による一元的な価値観の押しつけと期を一にしているものと考えるが、技術教育の重要性についての政府の見解を問う。
11 小学校から高等学校まで新たに創設された総合的な学習の時間の趣旨と、その中でものづくり教育が積極的に取り入れられることの意義についての政府の見解を問う。
12 昭和六三年の免許法改正により導入された特別非常勤講師制度におけるものづくり教育に関する小・中・高それぞれの現在の採用許可状況(ものづくり教育関連の講師数と全講師数に占める比率)と授業の実施状況(授業時間数と教授内容)及び過去五年間の予算措置について明らかにされたい。また、こうしたものづくり教育に関する特別非常勤講師の現在の採用許可状況は、ものづくり基盤技術振興基本法の趣旨に鑑みて満足のいく状況と考えているか、それとも更に拡充する必要があると考えるか。
13 民間団体の調査によると、十代後半の若者で「努力や訓練が必要なこと」はやりたくないとの答が年々増加している。こうした風潮はものづくりを尊重する気運の醸成に大きな障害となるものと考えるが、政府はどのような対策を講じているか。
14 総理府調査によると、学校の問題点として、「進学中心の指導となっている」を挙げた者が、昭和五八年には二七・四%であったが、平成十年には三五・五%に増加している。近年の新卒者の離職率の増加やフリーターの急増なども、こうした中・高における職業適性についての指導・支援が不適切であったことに一因があるものと考えるが、今後の政府の対応策を明らかにされたい。
15 現在、文部省の国立教育研究所には、理科教育に関わる研究部門は充実しているが、技術・技能教育に関わる研究部門は残念ながら存しない。ものづくり基盤技術振興基本法の趣旨を具現化し、ものづくり教育が疎かにされているとの批判を払拭するためには、省庁再編により改組される国立教育政策研究所に、技術・技能に関わる研究部門を設置することが不可欠と考えるが政府の見解を問う。

 右質問する。



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