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平成十三年六月二十六日提出
質問第一一〇号

核燃料輸送問題に関する質問主意書

提出者  首藤信彦




核燃料輸送問題に関する質問主意書


 原子力発電所等で使用される核燃料物質は日本全国を日常的に輸送されている。横須賀市に全国の半分を製造する日本ニユクリア・フユエルの核燃料工場があり、神奈川県は全国一核輸送が多いことで知られる。核を積んだ車は3日に一度は神奈川県内を走っていると言われている。
 原子力資料情報室のシミュレーションによると、もし核燃料輸送車が交通事故により横転して核燃料物質が漏洩し、放射性物質が気化し大気中に放出されれば、安定した大気の状態では巾二キロメートル、長さ十キロメートルの範囲はほぼ一時間で放射性物質に汚染されるとされている。
 一九九九年九月に茨城県東海村で起きた国内初の臨界事故を受けて、神奈川県は本年五月二八日、県内の原子力関連施設で事故が起きた場合を想定した原子力災害対策計画案をまとめた。対象は川崎、横須賀両市にある民間の四事業所である。核燃料の運搬について事前に県に情報提供をするなど、従来より一歩踏み込んだものになっている。これは、原子力災害対策特別措置法に基づくもので、今後は国との協議をへて正式な計画になるとされている。
 一九七二年以降九九年末までの間、放射線物資および核燃料物質の日本国内における輸送事故は九件発生している。いずれも死者を伴う大災害には至らなかったが、一歩間違えるとそうなっていた可能性も高い。さらに、今後はバスジャックなど、核輸送車が攻撃されたりハイジャックされる可能性も否定できない。
 事故が発生した場合、即刻事故処理に出動したり、高速道路沿線の汚染予想地域に避難通報を出すことは重要な任務になる。しかし、核燃料輸送は核燃料処理施設のある自治体には通過の情報公開がされているが、施設のない自治体には輸送について事前の通知は全くなされておらず対応が遅れる可能性が高い。従って、その間地域住民は何も知らないまま放射性物質を吸収してしまう危険性が高い。
 住民への避難通報も非常に重要だが、広報車やテレビ、ラジオ放送により緊急に確実に伝達されるか不明である。また放射性物質からの被曝を防止するためのヨウソ剤等を事故発生情報入手後直ちに服用しなければならないが、直ちに住民の手に渡す方法も確立されていない。
 このように、核輸送事故が実際に起きた時、状況は混乱を極めると考えられる。従って、どのように対応するべきか、国がイニシアティブを取ってあらかじめ対策を講ずる必要があるとの認識に立ち、以下質問する。

一 地方自治体と国の協力体制について
 県や市など地方自治体の対応には限界があり、事故が起きた時の国の対応は非常に重要である。事故情報の収集、分析、さらに事故処理から住民などへの指示など、事故直後の対応において関係省庁はどのような権限を持って対応すべきなのか。また自治体とはどのような協力体制を取るのか。政府の見解を示されたい。
二 事故後の通報の方法について
 地域防災計画の「放射性物質災害対応計画」を有している自治体はまだ少ない。横浜市の「放射性物質対応計画」によれば核燃料輸送車が事故を発生させると、核燃料輸送事業者が事故発生を神奈川県警・科学技術庁・横浜市消防局に連絡をすることになっている。しかし核燃料輸送車の運転員・同乗者が死亡或いは大怪我をすれば通報は遅延せざるを得ない。このような場合、どのような方法で連絡すべきなのか。マニュアル等はあるのか。詳細な説明を伺いたい。
三 事前通報の必要性について
 核輸送事故の被害を最小限に留めるためには、輸送の際に車両が通過する全ての自治体が事前に情報を把握しておくことが必要である。しかし現在、情報が提供されているのは一部の自治体のみであり、核燃料処理施設のない自治体には輸送について事前通知が全くなされていないため、事故が起こった時の対応が遅れる可能性が高い。
 政府として、事前通報の在り方について今後どのように指導していく予定なのか。具体的に示されたい。
四 核物質の処理責任の所在について
 実際に事故が起こり核物質による被害の恐れがある時、実際に核物質に近づき、放射能漏れを止めたり処理を行う専門家が必要である。それは輸送隊なのか、消防なのか、監督省庁なのか。政府の見解を具体的に示されたい。また、そのような指示を行う権限を持った政府における責任者は誰と認識するべきなのか。
五 緊急対応のためのシステム作り
 核燃料輸送事故に備え、現在のところ一部の自治体が個々の対応をしており、独自にマニュアル作りなどを行っている。しかしながら核燃料の被害は自治体を超えて広がる可能性が高く、一地方自治体だけでは有効な対応ができない可能性が高い。したがって国がイニシアティブを取って緊急対応の方法をシステム化し、権限を持って対応する専門家組織の存在が必要であると思われる。この点についてはどのように考えるのか。また今後どのような対応を予定しているのか。詳細な説明を示されたい。また、大学研究所や民間企業が保持している放射性同位元素保有施設での災害についてはどのような対応を行うのか。
六 米軍原子力艦船などへの対応
 核輸送問題への対応を実効性のあるものにするためには、日本国内を航行・停泊している米軍の原子力潜水艦・空母等の事故への対応も検討する必要がある。横須賀市は昨年七月「原子力軍艦事故防災マニュアル」を独自で作成した。しかし、県の原子力災害対策計画に米国側への拘束力はなく、米軍からの情報提供が十分に行われていない。従って米海軍横須賀基地に出入港する米軍原子力潜水艦などへの対応は四事業に「準ずる」としただけで具体策は先送りされた。
 この問題解決については、日本政府として米軍に情報公開を求める必要があると思われるが、この点について、今後具体的にどのような対応を考えているのか。詳細に示されたい。

 右質問する。



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