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平成十三年八月十日提出
質問第一五号

「大東亜戦争」と靖国神社に関する質問主意書

提出者  保坂展人




「大東亜戦争」と靖国神社に関する質問主意書


 日本政府がかつて「大東亜戦争」と命名した戦争や日中戦争について、現在の歴史認識などを問う。その中で、扶桑社の「新しい歴史教科書」(以下「扶桑社本」とする)についてもただす。さらに、小泉純一郎総理が公式参拝しようとしている宗教法人靖国神社のあり方なども質問する。

一 戦争

 (1) 一九二八年に中国で蒋介石が国民党政権を樹立した後、満州などで起こった中国人による排日運動について、政府が確認している事実を具体的に示されたい。
 (2) 扶桑社本は、五・一五事件の後「世論の支持のもと、軍人や役人を中心とした内閣が任命されるようになった。」と記述しているが、日本政府の歴史認識も同じか。
 (3) 国際連盟が派遣したリットン調査団の報告書に「満州における不法行為によって日本の安全がおびやかされていたこと」や「満州における日本の権益」を認める記述はあるか。
 (4) 扶桑社本は二・二六事件後、「政治家は絶えずテロによる生命の危険にさらされることになり、陸軍が支持しない内閣の成立も困難となった。言論の自由も、しだいにせばめられていった。」と記述しているが、日本政府の歴史認識も同じか。
 (5) 盧溝橋事件について、政府の歴史認識を明らかにされたい。
 (6) 一九三七年十二月の南京大虐殺について、政府の歴史認識を示されたい。
 (7) 扶桑社本は日米開戦について「日本の海軍機動部隊が、ハワイの真珠湾に停泊する米太平洋艦隊を空襲した。艦は次々に沈没し、飛行機も片端から炎上して大戦果をあげた。このことが報道されると、日本国民の気分は一気に高まり、長い日中戦争の陰うつな気分が一変した。第一次世界大戦以降、力をつけてきた日本とアメリカがついに対決することになったのである」と記述しているが、政府の歴史認識も同じか。
 (8) 扶桑社本は日米開戦と同じ日に「日本の陸軍部隊はマレー半島に上陸し、イギリス軍との戦いを開始した。自転車に乗った銀輪部隊を先頭に、日本軍は、ジャングルとゴムの林の間をぬって英軍を撃退しながら、五五日間でマレー半島約一〇〇〇キロを縦断し、翌年二月には、わずか七〇日でシンガポールを陥落させ、ついに日本はイギリスの東南アジア支配を崩した。フィリピン・ジャワ・ビルマなどでも、日本は米・蘭・英軍を破り、結局一〇〇日ほどで、大勝利のうちに緒戦を制した。これは、数百年にわたる白人の植民地支配にあえいでいた、現地の人々の協力があってこその勝利だった。この日本の緒戦の勝利は、東南アジアやインドの多くの人々に独立への夢と勇気を育んだ」と記述しているが、政府も同じ歴史認識か。自発的な「現地の人々の協力」について、政府が把握している事実を具体的に示されたい。同様に「東南アジアやインドの多くの人々に独立への夢と勇気を育んだ」とされる具体的な事実は確認しているか。自発的な行動などを明らかにされたい。
 (9) 扶桑社本は「大東亜戦争」について、カッコ書きで「戦後、アメリカ側がこの名称を禁止したので太平洋戦争という用語が一般的になった。」と記述しているが、政府の歴史認識は同じか。一般的でない名称が主に記載され、一般的な名称がカッコ書きされているのは適当と考えるか。
 (10) 扶桑社本は「緒戦の勝利に日本国民は酔っていた」と記述しているが、日本政府の歴史認識も同じか。同じとすれば、どの程度の国民が「酔っていた」と考えるか。
 (11) 扶桑社本は「アリューシャン列島のアッツ島では、わずか二〇〇〇名の日本軍守備隊が二万の米軍を相手に一歩も引かず、弾丸や米の補給が途絶えても抵抗を続け、玉砕していった。こうして、南太平洋からニューギニアをへて中部太平洋のマリアナ諸島の島々で、日本軍は降伏することなく、次々と玉砕していったのである。」と記述しているが、政府は降伏せずに玉砕したことについて、正しかったと考えるか。
 (12) 「神風特別攻撃隊」(特攻隊)はどのような経緯で、だれが発案し、実行されたのか。特攻で亡くなった人は何人か。出撃した飛行機は何機で、迎撃されずに敵艦に命中した飛行機は何機か。政府は特攻隊について、どのように考えるか。
 (13) 扶桑社本は「沖縄では、鉄血勤皇隊の少年やひめゆり部隊の少女たちまでが勇敢に戦って、一般住民約九万四〇〇〇人が生命を失い、一〇万人近い兵士が戦死した。」と記述しているが、政府は沖縄戦について、どのように考えるか。
 (14) 政府は(7)(8)(11)で引用した戦争の記述は、中学生の教科書として適当と考えるか。
 (15) 一九四三年十一月の「大東亜会議」について、開催の経緯、出席者とその戦後各国での地位、共同宣言の内容などを示されたい。
 (16) 扶桑社本は前述のように「東南アジアやインドの多くの人々に独立への夢と勇気を育んだ」などと記述する一方で「しかし、大東亜共栄圏のもとでは、日本語教育や神社参拝が強要されたので、現地の人の反発が強まった。また、戦局が悪化し、日本軍によって現地の人々が苛酷な労働に従事させられる場合もしばしばおきた。そして、フィリピンやマレーなどのように、連合軍と結んだ抗日ゲリラ活動がさかんになる地域も出てきた。日本はこれにきびしく対処し、また日本軍によって死傷する人々の数も多数にのぼった」と書いている。政府は日本語教育や神社参拝の強要について、どのように考えるか。日本軍によって死傷した人々は何人か。国別で示されたい。
 (17) 扶桑社本は「戦時中、日本によって訓練されたインドネシアの軍隊が中心となって独立戦争を開始し、一九四九年独立を達成した。」「インドでは、日本軍と協力したインド国民軍の兵士をイギリスが裁判にかけたことに対して、はげしい民衆の抗議運動などもおきた」「日本軍の南方進出は、アジア諸国の独立を早める一つのきっかけ」と記述しているが、政府の歴史認識も同じか。
 (18) 学徒出陣、女子挺身隊の規模について、具体的に明らかにされたい。また政府は、こうした制度をどのように考えるか。
 (19) 朝鮮や台湾での徴兵、徴用の規模を具体的に明らかにされたい。政府は朝鮮、台湾での徴兵や徴用について、どのように考えるか。
 (20) 朝鮮人や中国人の「強制連行」について、その経緯、規模、政府の現在の見解を示されたい。
 (21) 朝鮮や台湾で進められた「皇民化政策」について、具体的な内容を詳述するとともに、現在どのように考えているかを明らかにされたい。
 (22) 扶桑社本は「困難の中、多くの国民はよく働き、よく戦った。それは戦争の勝利を願っての行動であった」と記述しているが、政府の歴史認識も同じか。
 (23) 第二次世界大戦の戦死者は何人か。日本も含め国別で示されたい。
 (24) 原爆投下について、政府の見解を明らかにされたい。
 (25) ポツダム宣言受諾の経緯について、明らかにされたい。
 (26) 過去の戦争で、各国が非武装の民間人や捕虜の虐殺に及んだケースについて、政府が把握している事実を明らかにされたい。
 (27) 東京裁判について、政府の見解を示されたい。
 (28) サンフランシスコ講和条約による日本の独立に際して、東京裁判はどのように位置づけられたか。また旧ソ連や中国との国交回復に際して、東京裁判はどのように位置づけられたか。
 (29) 中国が国交回復に際して、賠償を求めなかったのはなぜか。
 (30) 扶桑社本は「GHQは、新聞、雑誌、ラジオ、映画を通じて、日本の戦争がいかに不当なものであったかを宣伝した。こうした宣伝は、東京裁判とならんで、日本人の自国の戦争に対する罪悪感をつちかい、戦後日本人の歴史の見方に影響を与えた」と記述しているが、政府も同じ認識か。
 (31) 政府は「大東亜戦争」や日中戦争について、どのように考えるか。その責任の所在についての見解も示されたい。またアジア諸国に対する侵略の反省はあるか。アジア諸国との外交で、戦争の歴史について留意しなければならない点はあるか。

二 靖国神社

 (1) 中国や韓国が総理の宗教法人靖国神社への公式参拝に反対している理由について、政府はどのように考えているか。
 (2) 宗教法人靖国神社に合祀されているのは、どんな人で、何柱と承知しているか。その内訳(維新前後殉難者から大東亜戦争までの各戦争毎の柱数と、軍人軍属、準軍属及びその他、朝鮮・台湾出身者の各柱数)も明らかにされたい。
 (3) 一九四五年八月までに現在の宗教法人靖国神社に支出された国の予算は合計いくらか。また戦後、宗教法人靖国神社に支出された国の予算、譲渡した国有地の価格を明らかにされたい。
 (4) 靖国神社が宗教法人となった理由、経緯について、政府が把握している事実を明らかにされたい。宗教法人となった靖国神社に国有境内地が譲渡された理由、経緯、憲法との整合性を説明されたい。
 (5) 宗教法人靖国神社がA級戦犯を合祀した理由、経緯について、政府が確認している事実を明らかにされたい。
 (6) 公式参拝を目指す小泉総理は合祀されているA級戦犯について、参院選前の党首討論会などで「死ねば仏様」などと発言しているが、その真意を説明されたい。
 (7) 戦前の「修身」教科書などは、靖国神社について「君のため国のために死んだ人々をまつつてあります」「わたくしどもは陛下の御めぐみの深いことを思ひ、ここにまつつてある人々にならつて、君のため国のためにつくさなければなりません」と教えていたが、政府は現在も、国民は「靖国神社にまつつてある人々にならつて、君のため国のためにつくさなければなりません」と考えているか。
 (8) 朝日新聞八月九日付け夕刊四面の記事によると、特攻隊の兵士は「やらせてくれるなら、体当たりしなくても、五百キロの爆弾を敵の空母に命中させて帰ってきてみせるのだが。…ぼくは明日、天皇陛下のためとか、大日本帝国のために征くのではない、最愛のKA(妻を意味する海軍隠語)のために往くよ」「野砲兵と馬、それは切っても切れぬ関係があり、人間よりも馬の方が遙かに大切である」「もし、貴様が生き残ったら、戦闘機が爆弾を抱えて体当たりしなければならなかった事実を、きっと後世に伝えてくれ」と遺書を残しているが、政府はこうした特攻隊員の気持ちをどのように考えるか。
 (9) 国際的に戦争責任者とされたA級戦犯に加えて、逆らうことのできない国の命令で(8)のような無念の遺書を残して亡くなった特攻隊員らも本人の遺志、遺族の意向にかかわらず、宗教法人靖国神社にはまつられている。現在の国の責任者である総理の公式参拝は適当か。
 (10) 総理の宗教法人靖国神社参拝は、憲法の定める「政教分離」に反しないのか。

 右質問する。



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