質問本文情報
平成十三年十二月七日提出質問第四五号
国内狂牛病三頭発生における問題と中間報告に対する肉骨粉などの狂牛病対策に関する質問主意書
国内狂牛病三頭発生における問題と中間報告に対する肉骨粉などの狂牛病対策に関する質問主意書
十一月三十日にBSEの感染源及び感染経路の調査の中間報告(以下、中間報告)が農水省から出された。ところがその夜、三頭目の狂牛病発生が発表された。感染源が特定されないまま、感染が広がっていくありさまに、多くの人々はますます不安になっている。以下、質問する。
さらに三頭目発生での調査によれば、肉骨粉を原料に使う豚・鶏用の飼料の製造ラインが牛の飼料用と重なっていたことも判明した。
この問題については、国会の委員会審議でも国内百六十四の肉骨粉のレンダリング工場のうち牛専用は三十一工場のみで他は豚も牛も一緒のラインになっていると危険性が指摘されていた。
アメリカにおいては混入防止ガイドラインが九十七年に設けられていたにもかかわらず、我が国においては本年六月になってという遅れた対応である。なぜこのように遅れたのかその理由を明らかにされたい。
今年一月に谷津義男農林水産大臣に面会した折、大臣は、日本においては飼料が混合するようなことは絶対あり得ないことであり、日本の飼料は安全であると豪語されていた。しかし、狂牛病発生後の調査では、農家において豚・鶏用の飼料が牛に与えられていたことが判明し、さらに工場においても混入する可能性が否定できないことなどが判明した。
中間報告では、「調査にあたって留意した事項」(1)イBに「わずかな汚染肉骨粉が飼料に混入しても感染源になり得るとの見解があること」と記されている。その認識からすれば、配合飼料、補助飼料等についての全国的な精密な調査は不可欠であったと思うが、なぜそのようなことがおこなわれなかったのか、その理由も明らかにされたい。
三 肉骨粉の輸入はOIE基準に則って処理したものが九十六年三月以降も続いていたが、EU全体からの輸入禁止は今年一月からであり、狂牛病感染牛の国内第一号発生直後(十月四日)になってようやく輸入、製造、出荷の禁止をおこなった。この対応もEUやアメリカに比べるとあまりにも遅い。なぜなのか。その理由を明らかにされたい。
四 三頭目発生発表直後、武部勤農林水産大臣は「まだまだ出るから驚かないで下さい」と発言し、さらに小泉純一郎総理大臣は「検査がなされているので、狂牛病が出ても市場に出回らないという自信の表れじゃないですか」と発言された。国内第一号の狂牛病発生後、肉骨粉の全面禁止や全頭検査を開始したことを、すばやい対策と評する向きもあるが、検査要請や肉骨粉禁止要請は発生以前からあったにもかかわらず、対策をとらなかったのである。薬害エイズの際も、血友病患者から第1号患者が出ると、すぐに加熱製剤の認可をしたが、実際は患者の認定を故意に遅らせ、製薬企業の加熱認可を一斉におこなうまでの間に非加熱製剤の在庫処分がおこなわれたのである。
今回の小泉首相、農水大臣の発言は、国内での狂牛病発生は、行政が今まで十分な対策をとってこなかったために起きたのであり、狂牛病発生後も十分な対応がなされていないという認識に欠けていると思える。ドイツにおいては担当大臣の責任が問われて辞職させられているが、わが国ではどのように考えているのか、見解を示されたい。
さらに中間報告では、輸入業者の販売先・用途の調査はまだすべてが明らかにされていないが、養魚用飼料の原料として使用されている報告がある。肉骨粉を食した魚の粉がまた牛への飼料となって給与されるということになれば、感染が広がるということはないのかと危惧する。英国リーズ大学のリチャード・レイシー名誉教授によれば、狂牛病発生に至った場合、牛に動物性飼料の給与を禁止すべきと指摘しているが、どのように考えているのか見解を示されたい。
また農水省は豚・鶏を原料とする肉骨粉の肥料・ペットフード用の使用、さらに豚・鶏用飼料としての使用も検討中であるとのことだが、それは事実か。もしそうだとすれば、牛の飼料に転用される抜け穴となる危険性があると思える。どのように考えているのかお答えいただきたい。
七 狂牛病発生後の対策としてリチャード・レイシー名誉教授は、「症例が一頭でも発生した家畜の群れは一頭残らず処分し、以前とは別の土壌及び建築物において新しい群れを生育すべき」としているが、日本においては、狂牛病発生畜産農家はただちに廃業に追い込まれる可能性がある。そのことへの不安から、畜産農家の間には廃用牛を市場に出すことにためらいが生じている。それは当然の心理であるが、このような状態が続けば、生産者にとっても、消費者にとってもますます不安は増大し、真の解決に向かわないことは明らかである。いま、畜産農家への畜産・生活の保障とともに消費者の安全が両立できるよう思いきった政策をおこなわなければならないと思うが、政府はどのように考えているか、お答えいただきたい。
八 九十一年六月に国内研究者が狂牛病について警告する講演をした翌日、農水省・横浜動物検疫所所長が「この問題には触れないでもらいたい」と研究者に釘を刺していたということが、十一月十九日「BSE問題に関する調査検討委員会」第一回会合で同委員会委員長である高橋正郎・日大教授から明らかにされた。
事実関係について農水省の永村武美・畜産部長は十一月二十一日、衆院決算行政監視委員会で「高橋委員の同僚という方がどういう方であるか、また、どういうふうな形で当時の検疫所長と連絡をとられたのか、事実関係を今鋭意調査中」であるとし「わかり次第、ご報告」するとしているが、その事実を明らかにされたい。
十 EU統計にあるイギリスから日本への肉骨粉輸出量三百三十三トンというデータに対し農水省は担当官を派遣して調査した結果、その量は百六十六トンであり中身はフェザーミール(羽毛粉)等鳥由来の製品である可能性が高いとのことであった。データの食い違いはイギリス政府担当部局による輸出国名や品目名の入力ミス等の原因によるものである可能性が高いと述べているが、イギリス政府のそうした杜撰な統計管理に対して日本政府はどういった対応をおこなったのか。そうしたイギリス政府の行政ミスが世界に狂牛病を蔓延させたともいえるし、日本政府が主体的にしっかりとした抗議の姿勢を示さない限り、再び同じ過ちが繰り返される危惧を抱かざるをえない。また「可能性が高い」というのは、まだ事実が確認されたわけではないものと思われるが、現段階において明らかになった事実関係についてお答えいただきたい。
十一 農水省は十一月二十二日、これまでの調査で肉骨粉を食べたことが判明し、現在も飼育されている五千百二十九頭(十五世帯百六十五戸)の牛すべてを実質的に国が買い上げて感染の有無を調べた上で全頭を焼却処分にすることを決めた。この肉骨粉摂取が判明した頭数はどのようにして割り出された数字か。
国内第二頭、第三頭の患畜は、ともにこの五千百二十九頭の中に入っていない。第二、第三と狂牛病が発生した酪農家では飼料を「いずれも農協から買っていたし、肉骨粉は使っていない」と言っている。ところで十二月五日になって肉骨粉入りの飼料魚粉「調整魚粉」が国内に広く流通していたことが明らかになった。今まで調整魚粉を食べた牛は調査対象から外れていたが、これで肉骨粉を口にした牛は一気に増えることになるのではないか。農水省では、こうした調整魚粉の肉骨粉混入の危険性についてどう考えているか。
国内で肉骨粉をどのくらい生産し、どのくらいの量を輸入し、飼料メーカーは用途別にどれくらい販売したのかを把握する必要があるのではないか。現段階で把握しているその数量を示されたい。牛が肉骨粉を摂取する場合、必要以上摂取すると下痢を起こすと言われている。飼料としてどのくらいの総量が出回っていたか判明すれば肉骨粉給与牛のおおまかな頭数が判明すると思われるがどう考えておられるか、お答えいただきたい。
右質問する。