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平成十四年三月二十日提出
質問第五〇号

九州新幹線工事と第三セクター経営に関する質問主意書

 提出者
 小沢和秋    赤嶺政賢




九州新幹線工事と第三セクター経営に関する質問主意書


 現在、九州新幹線は、新八代−西鹿児島間開通に向け沿線全域で工事が進められつつある。そして、並行在来線の第三セクター化の準備も大詰めを迎えている。
 平成八年十二月二十五日の政府与党合意「整備新幹線の取扱いについて」は、「建設着工する区間の並行在来線については、従来どおり、開業時にJRの経営から分離する」として、地域の通勤、通学、貨物輸送の大事な動脈を地元負担の第三セクターで経営させることとした。しかし、今日、自らの財政状況も悪化している地方自治体がこうした負担をすることは無理があり、九州でも深刻な矛盾が生じている。
 また、工事の進捗にともない、沿線周辺の環境に対する影響についても懸念をよんでおり、一部地域では紛争も生じている。
 そこで、次の事項について質問する。

一 南九州で新幹線建設にともなって経営分離・第三セクター化される在来線は、八代−川内間とされ、同じく並行在来線でありながらその南端部分の川内−西鹿児島間については、JRに残される。利用客が多く、利益があがる路線であるからといって、この部分だけを「飛び地」のようにJRに残し、沿線が過疎化している八代−川内間を自治体主体の第三セクターに経営させるというやり方は、鉄道路線の連続性からいっても、政府与党合意の立場から見ても不合理ではないか。また、このようなJRの「いいとこどり」は、第三セクター鉄道の経営に悪影響を及ぼしかねないのではないか。
二 八代−川内間の第三セクター化については、検討経過の中で大幅な赤字試算となったことから経営が危ぶまれたため、鹿児島県ではこれをとりやめ、バスなどによる代替輸送への切替えが検討された。これにあわてた国土交通省は、一転して「今後十年間は黒字にできる」との「支援策」を提示した。この経過は、かえって関係自治体の間に不信を広げた。鹿児島市はこれについて、「十分に信頼するに足りるものではない」と昨年十二月、「市議会だより」で第三セクター不参加を市民にも公表した。そして、鹿児島市をはじめ二市四町が鹿児島県並行在来線鉄道対策協議会から離脱した。こうした経過について、どのように受け止めているか。
三 鹿児島市が第三セクター不参加を決定した要因として、国や県の情報が充分に公開されないため、判断材料が少ないことが指摘されている。自治省の「第三セクターに関する指針」の中でも、「議会への説明・情報の開示をすること」が示されている。国が自ら改善すると共に、県やJRに対して指導すべきではないか。
四 「支援策」で従来大幅赤字だった第三セクターの経営が十年間にわたって黒字になる根拠として、運賃収入が年間一億七千万円も増収になることが示されている。これについて同省は、一般的算出方法から鉄道利用客実態調査による計算に切り替えたためと説明している。それならば、なぜ当初の試算で、実態調査による計算を採用しなかったのか。
五 農産物などの輸送に欠かせないJR貨物路線の維持のためには、電化が不可欠であるため、これがより安価なディーゼル化への選択肢を妨げ、第三セクターの採算性確保のネックとなっていた。しかし、「支援策」に基づく試算では、電気関係の設備を三セクに移すことでJR貨物から新たに使用料として一億五千万円が入り、経営上の負担が軽減されるという。それならば、なぜ当初からこの仕組みにしなかったのか。
六 「支援策」では、第三セクター運営要員の全員をJRからの出向で賄うとしている。これは、人件費の相当部分を十年間にわたりJRが負担することと思われるが、実際にどの程度の負担をする予定か。また、十年たった後には、運営要員はその人材確保、人件費負担ともにどのように賄われるのか。
七 以上のような様々な「支援策」を講じて、ようやく年間一億円の黒字にしかならないなら、第三セクター鉄道の経営は十一年目にしてすぐに赤字転落するのではないか。中、長期的見通しを含めて、具体的に示されたい。
八 「支援策」では、軌道や路盤敷その他のJR資産の取得経費を六十三億円から一挙に十億円まで引き下げ、鹿児島県の初期投資額を約半分の三十一億円まで圧縮するとしている。しかし、この試算ではこの分の償却まで見込むことはできないのではないか。
九 昨年十一月二十一日、沿線四県からなる九州新幹線建設促進期成会は「第三セクターによる経営が成り立つよう、事業用資産無償譲渡、税制上の優遇措置」を要望した。新幹線建設にともなって並行在来線が経営分離されるのは、「このままでは経営が成り立たない」とのJR側の都合も背景となっているのだから、促進期成会の要求は当然のものと考える。また、旧国鉄時代には事業用資産を第三セクターに移譲する場合、無償譲渡してきた実績もある。新幹線建設にともなって並行在来線を第三セクターに移行するなら、旧国鉄時代と同様に事業用資産は無償譲渡させるべきではないか。
十 新幹線建設に付随した駅やその周辺整備の財政負担も、自治体にとって大問題である。出水市と川内市では、新幹線駅の建設にともなう駅前広場や周辺の道路整備などの負担区分がJR、国、県、市のそれぞれの間で未だにはっきりしていない。地元自治体は負担が大きくなるのではないかとの不安をかかえているが、具体的な検討状況はどうなっているのか。自治体の負担軽減のために、どのような措置が考えられるのか。
十一 熊本県における新幹線トンネル工事では、各地の地下水脈が分断され、その補償工事やその後の維持運営費が問題になっている。国の補償基準では、こうした場合補償措置に要する経費十五年分を先渡しし、それを基金運用して得た利子で対策を講ずるとされているが、今日の低金利状況では必要な運用経費の確保がおぼつかないのではないか。また関係自治体は、新幹線工事にともなう渇水対策のための交付税措置をもとめているが、これに応ずるべきではないか。
十二 過去の新幹線建設では、路線の両側に広く側道や環境施設帯を兼ねた緑地・公園が建設され、騒音・振動被害の軽減につとめてきた。しかし、南九州地域で建設中の工区では、何らこうした措置がとられず水俣市などでは、住居にすぐ隣接して高架が建設され沿線住民の抗議をよんでいる。また、新幹線建設にともなって実施される熊本駅南口区画整理事業では、住宅の換地をわざわざ新幹線高架の際にもってきて対象住民の反対を受けるなど、住民に対する配慮が著しく欠けた事業が進められようとしている。新幹線建設について従来行われてきた環境対策が、九州新幹線建設事業で実施されないのは、明らかに不公平である。博多−熊本間の新幹線工事においては、環境施設帯等の建設はどのように図られるのか。熊本県以南の路線建設でも環境施設帯の建設などが実施されるよう、国として支援策を含めて検討すべきではないか。
十三 長崎新幹線の建設にともない、肥前山口−諌早間の並行在来線を第三セクター化することになっている。ここも現状では赤字確実といわれており、計画を再検討すべきではないか。
十四 長崎新幹線建設の総工事費は、スーパー特急方式で約四千億円といわれている。しかし、長崎県の新幹線推進室によれば「現在の博多−長崎間で最速の特急は『かもめ』で、所要一時間四十七分。新幹線は、これを若干短縮する程度」という。これでは、巨額の工事費をかけて新幹線を建設しても、沿線住民にとっては第三セクター化など新たな負担が増えこそすれ、利便性はほとんど向上しないのではないか。在来線の複線化を図り、輸送力の増強と特急の増便の方が地域経済の活性化にも好影響を与えると思われるので、計画を再検討すべきではないか。
十五 長崎県の広報紙「ながさき情報通信」三月一日号は、「長崎新幹線には一日一万五千人以上が乗車すると予測」と述べている。しかし、平成七年度の在来線の利用実績が一日八千八百人であることを考えるなら、新幹線だけでこの倍以上の利用予測はあまりに過大ではないか。過大な利用予測に基づく事業推進は、将来の莫大な赤字の要因になると考えるが、どうか。この予測の根拠について、政府はどう考えるか。具体的に示されたい。

 右質問する。



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