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平成十四年七月二十六日提出
質問第一五八号

土地区画整理事業に関する質問主意書

提出者  川田悦子




土地区画整理事業に関する質問主意書


 土地区画整理事業(以下、事業)は、その事業地域においてさまざまな問題を惹起している。その声は当該地域住民から不満として寄せられている。政府は、そうした住民の声に真摯に耳を傾け、過去の事業における問題、そしてその分析・反省を踏まえたうえで、今後の事業のあり方を考えるべきである。土地区画整理法は「健全な市街地の造成を図り、もつて公共の福祉の増進に資すること」を目的として「必要な事項を規定」していながら、その事業は「公共の福祉の増進に資すること」となっているか甚だ疑問である。政府の見解等について以下、質問する。

一 全国における事業の総数および総面積は現在、どのくらい行われているか。また事業の進捗状況をどう把握しているか。事業完了まで過去最長のものは何年かかっているか。さらに二〇年以上、三〇年以上を経ても終了しない事業について都道府県別にそれぞれ明らかにされたい。住民合意が得られず事業が長期化しているケースについて、それはなぜだと考えているか。見解を述べられたい。
二 『土地区画整理事業運用指針』(国土交通省都市・地域整備局市街地整備課/二〇〇一年一二月。以下、指針)は、「今後、各地方公共団体からの意見等を踏まえて、より分かりやすく、使い勝手の良い指針となるよう、適宜追加改訂を行う」(「はじめに」)とし、地域住民の窓口となり実施主体となる地方公共団体からの「意見等」「アンケート調査等」について「今後、各地方整備局や地方公共団体に対するアンケート調査等により、土地区画整理事業制度の運用実態を把握の上、運用上の課題を整理し、必要に応じて本指針の改訂を行う」(「運用指針の構成」)と述べている。
 政府が実施主体の地方公共団体に「意見等」「アンケート調査等」をとって、運用上の課題を整理する意思があるのであれば、地方公共団体が当該住民に対して「意見等」「アンケート等」を実施し、住民の意思を尊重する最小限の歯止めを遵守するよう指針を策定すべきと考えるが、どうか。
三 土地区画整理法の運用にあたり、地方公共団体が裁量を広く解釈して事業を実施することによって当該住民との軋轢が生じているともいわれる。「地域の実情等によっては、本指針で示した原則的な考え方によらない運用が必要となる場合もあり得るが、当該地域の実情等に即して合理的なものであれば、その運用が尊重されるべきである」(「指針の策定の趣旨」)といった国の優柔不断な指針がさらに地方公共団体の無原則的な事業の運用を助長することとなり、ひいては事業の公正さや公平性が形骸化することとなっている。その結果、住民主権が阻害されることが懸念される。見解を述べられたい。
四 『指針』の「土地区画整理事業の活用にあたっての基本的な考え方」について
 (1) 「地方公共団体と住民との両者が一体となって取り組むことが望ましい」とあるが、住民本位の行政の姿勢から考えれば“地方公共団体の責務”として「住民の声を聞いて取り組まなければならない」として義務規定にすべきと考えるが、どうか。
 (2) 「地方公共団体が計画を策定し、住民の理解を得るという形で事業が進められることが多いため、住民は事業に対して受身の姿勢となりやすく、事業に対する合意形成に多大な時間を要すること等の問題が生じやすい」とあるとおり、政府は地方公共団体が主導するかたちで事業を推進することの難しさを認めている。事業を進めるにあたっては「民間や住民が主体となったまちづくりとしての土地区画整理事業の推進」や「民間活力を活かした土地区画整理事業の活用促進」ではなく、あくまでも「住民が主体」となっての「まちづくり」であるべきと考えるが、どうか。
 (3) 「事業の立ち上げの段階から住民との適切な連携を工夫し、住民を主体にしたまちづくりを行うことにより、事業の推進が図られることが望ましい」という場合の「住民との適切な連携」とは、具体的にどういったことを指しているか。住民に対しての各段階における説明責任のあり方も含めて具体的に答えられたい。
五 自治体施行による事業では法律上、住民の賛同を要しないことがトラブルを生む原因になっている。自治体が事業計画を提起することができ、計画段階から終了時まで当該住民の意見を反映させることはきわめてむずかしい。東京都羽村市における羽村駅西口の事業でも、区域住民の半数以上の人たちが反対するなか、事業の行政手続きが一方的に進められている。同市では一九九六(平成八)年、事業区域内住民二七四二名中一四〇二名の「行政手続き中止」署名、そして九八(平成一〇)年二月には一四〇七名の「事業の中止を求める」署名を提出しているにもかかわらず、ひと月後の同年三月には都市計画決定がなされている。このように住民の賛同を必要としないことが、法律上の欠陥という人もいる。どう考えるか。
六 旧建設省都市局区画整理課は七八(昭和五三)年三月、「『まちづくり』をすすめるにあたり、地域住民との対応関係に関し配意すべきことについて」と題する「区画整理計画標準・追録2」(以下、「追録2」)を作成し、「合意を形成していくための活動」や「まちづくりと住民参加」等について述べている。追録2は「はじめに」で「地域住民の理解と協力が十分に得られない地区の存在は、我々に、対応関係が十分であったかどうかについて省みることの必要性を示唆しているのではないか」「留意しなければならないことは、区画整理のための区画整理に陥ってはならない」としているが、その後の各地における区画整理事業についてみると七八年以降、旧建設省の理念に基づいて対応がなされているとは到底、考えられない。見解を述べられたい。
七 旧建設省が九九(平成一一)年二月に作成した「公共事業の説明責任(アカウンタビリティ)向上行動指針」には「情報の共有化とコミュニケーションの推進」として、「公共事業に関する情報についても、質と量を向上させ、積極的にオープンにし、国民と共有していく」「双方向のやりとり」「コミュニケーションを推進」の部分を、下線を引いて強調している。二〇〇二年に入っては埼玉県志木市における「寄せられた意見を尊重して意思決定を行う」「公共事業市民選択権保有条例」制定といった地方公共団体の動きもある。新たに国土交通省にあっても旧建設省「行動指針」に基づいて各地方公共団体が事業をおこなっていると考えているか。
八 土地区画整理法は、第八七条で換地計画を、第九八条で仮換地指定を規定している。「土地区画整理法逐条討議」((社)日本土地区画整理協会)でも「換地計画に基づく仮換地指定こそ原則」「住民の意向を十分に反映するために、換地計画を先行することが望ましい」「現在のように換地計画に基づかない仮換地指定が一般的だと、工事のための仮換地だと言っても、その仮換地が換地となる蓋然性が高い」と明記している。
 しかし実際は事業実施にあたり換地計画に先だって仮換地を指定することが多い。法理論からしても、換地計画を縦覧した後、仮換地指定をおこなうことになっており地権者が全体計画である換地計画を周知することが前提である。にもかかわらず、換地計画に先立って仮換地を指定することが多い現実をどう考えるか。法の趣旨に基づいて執行されるべきと考えるが、どうか。
九 地価上昇を前提とし保留地を売却することで事業費を捻出する事業は現在、各地で破綻している。埼玉県飯能市笠縫地区の事業では、資金計画は八八(昭和六三)年九八億円、九五(平成七)年二四〇億円、二〇〇一(平成一三)年二六六億円と資金投入に歯止めがない。また事業計画決定が八八(昭和六三)年になされてから一四年を経過した今なお、仮換地指定九〇%、家屋移転五三%といった状況にあり、いつ事業が完了するのか目処すらたっていない。財政破綻の認識があるか、はなはだ疑わしい。
 埼玉県がおこなった公共事業再評価監視委員会では、笠縫案件を審議リストに載せたものの、何ら審議せず事業継続を決めている。旧建設省の九八(平成一〇)年三月発行「建設省所管公共事業の再評価実施要領及び新規事業採択時評価実施要領について」と題する文書には「実施要領概要」の「目的」に「事業の継続に当たり、必要に応じてその見直しを行うほか、事業の継続が適当と認められない場合には事業を中止又は休止する」とある。笠縫案件に見られる現状について公共事業再評価の視点からどう考えるか。見解を述べられたい。

 右質問する。



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