質問本文情報
平成十五年一月二十二日提出質問第六号
福岡県苅田町苅田港で発見された旧軍の毒ガス弾の無害化処理と調査に関する質問主意書
提出者
赤嶺政賢 小沢和秋
福岡県苅田町苅田港で発見された旧軍の毒ガス弾の無害化処理と調査に関する質問主意書
旧軍の毒ガス弾は、九六年五月、北海道釧路支庁弟子屈町の屈斜路湖で二十六発が発見され、二〇〇〇年十一月、福岡県苅田町苅田港の航路帯の浚渫工事予定水域で五十七発の毒ガス弾が見つかり、また、昨年の九月には旧海軍工廠跡地に当たる神奈川県寒川町の相模縦貫道路工事現場でビール瓶等の中に入っていた有毒ガスが洩れて、八名の方が被害に遭われるという事案が発生している。こうした事態は、旧軍が全国各地で、毒ガス弾の焼却、土中及び海中投棄等を行っていたという事実を一層裏づけるものに他ならない。
発見された毒ガス弾の早期無害化と被害者の補償、そして今回の事案を契機に、七三年三月の「大久野毒ガス問題関係各省連絡会議」の「旧軍毒ガス弾等の全国調査の結果について」で、すでに明らかになっている毒ガスの製造工場跡地、保有されていた地域、海中投棄された海域を中心に、再度全国調査を実施し毒ガス弾の投棄等の実態把握にできる限り努めるべきであると考える。ここでは特に苅田港で発見された毒ガス弾の無害化処理と磁気探査による再調査の実施について質問する。
政府は、現在改めて毒ガス弾等の廃棄状況について全国調査しても、七三年三月に実施しまとめた旧軍の毒ガス弾等の全国調査以上の情報を入手することは困難であるとしている。しかし、今回の事案は、被害者もでており、しかも七三年調査では報告されていない海域等で発見されていることの重大性を考慮して、再度、七三年調査を基にして全国調査を行い毒ガス弾等の実態把握にできる限り努力すべきであると考えるがどうか。
政府は、全国の都道府県に対して毒ガス弾等の情報提供を求めたと聞いているがその結果がまとまっていれば明らかにされたい。
二 発見された毒ガス弾等の無害化処理状況について
1 九六年五月、北海道弟子屈町の屈斜路湖で発見された二十六発の毒ガス弾の種類、発見場所、発見に至る経緯及び化学兵器禁止条約に基づきどういう体制で無害化処理がなされたのかその経過について明らかにされたい。さらに昨年九月に神奈川県寒川町で発見されたビール瓶等から流れ出た有毒ガスの種類、個数、発見場所、発見に至る経緯及び同条約に基づく処理についても同様に明らかにされたい。また、汚染された場所の地下水、周辺の田畑への汚染の影響はなかったのか、残土の処理はどのようになされたのか。
2 神奈川県寒川町の場合には、八人の被害者がでているが補償はどのようになされたのか、また今後、不幸にして被害者がでた場合の補償措置はどのようにとられるのか。
3 国内において毒ガス弾等が発見された場合、迅速かつ的確な対応が求められるが、そのために、どのような方針の下に対策と体制整備を図るつもりなのか。
三 福岡県苅田町苅田港の毒ガス弾の無害化処理と磁気探査による再調査について
1 二〇〇〇年十一月、国土交通省が、苅田港を拡張し大型船を入港させるために、航路帯を拡幅し、水深をさらに深くするための浚渫工事に伴う磁気探査を実施したところ五十七発の毒ガス弾が発見された。そのうちの十八発は、海上自衛隊が引き上げ、残りの三十九発は海底の二カ所に集積されたままになっているために、その後は、磁気探査は中断し、浚渫工事が開始できない状態が続いている。
そこで苅田港内で発見された毒ガス弾の磁気探査、引き上げ及び無害化処理についてのスキーム、政府部内の体制と連携はどのようになっているのか。また、毒ガスの無害化処理等に係る経費は国の責任においてなされるのか、二〇〇三年度予算額はいくら計上しているのか。
2 五十七発の毒ガス弾が発見された水域及びその周辺海域について、船舶の航行の安全を確保するために禁止区域の設定などの安全対策を講じているというが具体的に説明されたい。
3 毒ガス弾が発見された水域は、浚渫工事計画で予定している水域全体の面積のどのぐらいの部分を占めていたのか、また発見された水域面積と分布状況はどのようなものであったのか。
4 海上自衛隊が引き上げた十八発の毒ガス弾の種類、化学兵器禁止条約に基づく無害化処理をどのように実施しようとしているのか。
5 今なお海底に集積されている三十九発の毒ガス弾(未確認だが可能性は大きい)の引き上げと処理についてはどのような方針を持っているのか。漁業等への被害などは大丈夫なのか、何か対策を講じているのか。
6 現在、毒ガス弾を無害化処理するための仮の処理施設、化学プラントの建設と処理方法について、福岡県、苅田町をはじめ民間の研究所とも調整しつつ検討がなされていると聞いているが、その検討内容と進捗状況はどのようになっているのか。いつ頃までにその結論がでるのか。
7 毒ガス弾の無害化処理は、動かさずに発見場所近くで処理するのが適切だとされているが、引き上げた十八発は、現在、海上自衛隊佐世保警備隊が保管しているのは何故なのか。
8 化学プラントの建設については、福岡県、苅田町とも調整の上、苅田港の港湾施設などは安全上問題があるとして、陸上ではなく海上におけるメガフロート案が検討されることになったのか。海上案の場合、安全上の問題、環境、漁業資源などへの影響についてはどのように考えているのか。
9 毒ガス弾の弾頭、種類によって無害化の処理方法が異なるのではないかと考えるが、一括処理できる最良の方法があるのか。
10 毒ガス弾を無害化するための最良の処理方法が決定し、化学プラントの建設が稼動するに至るまでは、十八発の毒ガス弾の処理、さらに海底に残されている三十九発の引き上げと処理はできないということになるのか。
11 浚渫工事計画が予定されている海域及び周辺地域(陸上部も含む)には、まだ毒ガス弾が埋もれている可能性は極めて高いと思うが、どのような認識をされているのか。
12 磁気探査による調査の再開は、海底の残された三十九発が引き上げられるまでは、できないということになるのか。また、浚渫工事計画が予定されている水域以外の周辺の海域にも毒ガス弾が投棄されていることが十分に想定されるが、こうした海域についても磁気探査による調査をする用意はあるのか。
13 浚渫工事計画予定海域については、磁気探査による調査により完全に毒ガス弾が無いと確認できるまで、浚渫工事を開始することはできないとの判断に立っているのか。
四 その他、関連する事項について
1 苅田港の場合をはじめ旧軍の毒ガス弾等が発見された場合に、関係地方公共団体はもとより、関係住民に対する説明は適切になされているのか。
2 毒ガス弾等の処理については、発見場所、状況が異なるとの理由から、その都度内閣官房を中心に関係省庁連絡会議を開き対応するとしているが、あらかじめ内閣官房を軸として、責任官庁、実施官庁を決め省庁間の連絡、協力体制を確立して、統一的、機動的に対応すべきだと考えるがどうか。
3 毒ガス弾等については、化学兵器禁止条約の規定により処理されることになると思うが、処理作業の進行計画を明らかにすべきではないのか。
右質問する。