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平成十五年三月十八日受領
答弁第六号

  内閣衆質一五六第六号
  平成十五年三月十八日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員赤嶺政賢君外一名提出福岡県苅田町苅田港で発見された旧軍の毒ガス弾の無害化処理と調査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員赤嶺政賢君外一名提出福岡県苅田町苅田港で発見された旧軍の毒ガス弾の無害化処理と調査に関する質問に対する答弁書



一について

 御指摘の昭和四十八年三月に大久野島毒ガス問題関係各省庁連絡会議により取りまとめられた「旧軍毒ガス弾等の全国調査の結果について」においては、旧日本軍(以下「旧軍」という。)の化学兵器等の保有及び廃棄の状況に関する資料のほとんどが終戦時に処分されてしまっていたこと、また、旧軍の機密に属していたと考えられる化学兵器等に関する情報に関与し得た人々の多くが故人となっていたこと等により、終戦後の旧軍の化学兵器等の廃棄の状況を把握することが困難な中で、可能な限り情報を収集して調査が行われたものである。その当時から更に三十年近く経過した現在、改めて旧軍の化学兵器等の廃棄状況について全国的に調査を実施しても、当時以上の情報を入手することは困難であると考える。なお、二の3についてで述べるとおり、旧軍の化学兵器等が新たに発見された場合には、関係省庁間で連携して適切な対応を行ってまいりたい。
 「政府は、全国の都道府県に対して毒ガス弾等の情報提供を求めた」との御指摘は、平成七年に実施した国内における化学兵器の調査を指すものと解されるが、同調査は、化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約(平成九年条約第三号。以下「化学兵器禁止条約」という。)の締結のための準備の一環として、各都道府県における化学兵器の存在及び処理状況について、主として、各都道府県が保有する関係資料の点検及び関係者等からの事情聴取による調査を各都道府県に依頼したものである。その結果、四十七都道府県中四十三都府県から、該当する情報はない旨の回答があった。残りの四道県については、北海道から、屈斜路湖に投棄された毒ガス弾と思われる物体(二の1についてで述べるとおり、後に旧軍の化学弾であることが判明した。)に係る一連の情報について、福井県から、敦賀市内の小学校倉庫で発見された毒ガスの疑いのある液体が入った小容器(後に教育用見本品として水を着色したものであることが判明した。)について、広島県から、終戦時における大久野島で製造された毒ガス弾等の処分状況並びに戦後における毒ガス弾等の発見及び処分の状況に関する一連の情報について、山口県から、周防灘海域における毒ガス弾の発見、対応状況等について、それぞれ回答を受けたものである。

二の1について

 平成八年五月に屈斜路湖で発見された二十六発の旧軍の化学弾の種類は、旧日本陸軍百式五十キログラム投下きい弾と認められ、発見場所は屈斜路湖湖底である。
 発見に至る経緯については、平成七年六月、旧陸軍関係者が北海道に対し、終戦直後、屈斜路湖に化学兵器を投棄した旨述べたことを踏まえ、北海道において屈斜路湖の湖底調査及び潜水調査を実施したところ、湖底に遺棄された化学兵器の可能性のある物体があることが確認され、平成八年十月に自衛隊によりこれらの引揚げが行われ、旧軍の化学弾であることが判明した。
 これらについては、内閣官房において、関係省庁による連絡会議を開催し、関係省庁の連携の下、化学兵器禁止条約に基づき、総理府が中心となって廃棄を行ったところである。その経過については、平成九年五月、外務省において、化学兵器禁止機関技術事務局(以下「技術事務局」という。)に対し、当該化学弾が老朽化した化学兵器(化学兵器禁止条約第二条5に規定する老朽化した化学兵器をいう。以下同じ。)である旨の申告を行い、同年十二月及び平成十一年六月に技術事務局の査察を受け、当該化学弾が老朽化した化学兵器であることの確認を受けた後、総理府において、平成十二年九月から同年十一月にかけて無害化処理を行った。その後、技術事務局による廃棄完了の確認の査察を受けるとともに、同年十二月、総理府において、無害化処理に係る環境調査の結果、化学剤の漏えい等による環境汚染は認められなかった旨を公表したものである。
 お尋ねの「神奈川県寒川町で発見されたビール瓶等から流れ出た有毒ガス」の事案(以下「寒川町の事案」という。)については、国土交通省関東地方整備局横浜国道工事事務所(以下「横浜国道工事事務所」という。)が発注した道路工事に係る神奈川県高座郡寒川町一之宮六丁目地先の橋脚工事現場(以下「橋脚工事現場」という。)及び同町田端地先の掘削残土仮置場(以下「掘削残土仮置場」という。)において、平成十四年九月から現在までに計十一本のビール瓶が発見されており、その内訳は、マスタードが入ったもの八本、ルイサイト一、ルイサイト二及び微量のマスタードが入ったもの一本、微量のマスタードが検出された固形物が入ったもの一本並びにクロロアセトフェノンが入ったもの一本である。
 また、これら以外のビール瓶で破損したもの等から流れ出た内容物については特定できないが、橋脚工事現場及び掘削残土の表面土壌調査の結果、マスタード及びその関連化合物、ルイサイト類、クロロアセトフェノンの関連化合物並びにジフェニルクロロアルシン及びその関連化合物が検出されている。
 マスタード、ルイサイト一及びルイサイト二が確認された計十本のビール瓶については、老朽化した化学兵器に該当する可能性があるため、平成十四年十二月十二日、技術事務局に関連情報を申告した。これらが老朽化した化学兵器に該当すると確認された場合には、化学兵器禁止条約の関連諸規定に従い、適切に処理してまいりたい。
 横浜国道工事事務所においては、橋脚工事現場及び掘削残土仮置場周辺地域において、平成十四年十一月二十二日に、十三か所の水質調査及び十八か所の表面土壌調査を行い、同日に採取した試料について財団法人化学物質評価研究機構に依頼して分析したところ、掘削残土仮置場周辺の表面土壌調査実施箇所のうち一か所から、ジフェニルクロロアルシン及びその関連化合物が検出されたものの、これまでにマスタード、ルイサイト類及びクロロアセトフェノンは検出されていない。検出のあった当該箇所については既に仮囲いで周囲が囲われており、周辺への影響はないと考えている。
 お尋ねの「残土の処理」については、国土交通省関東地方整備局において、平成十四年十二月十二日に「さがみ縦貫危険物処理に関する有識者委員会」を設置し、当該掘削残土を含む道路工事現場内の危険物の処理方法の検討を行っているところであり、関係地方公共団体とも連携しつつ、適切に処理してまいりたい。

二の2について

 寒川町の事案に関しては、被災したとして病院で診察を受けた者は十二名であると承知している。このうち九名に対しては、業務上の疾病として、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号。以下「労災保険法」という。)に基づく保険給付が支給されている。さらに、当該工事を発注した横浜国道工事事務所において、工事請負業者と損害について協議を進めているところである。
 現地の安全対策については、住民等の安全確保を最優先に考え、横浜国道工事事務所において、橋脚工事現場及び掘削残土仮置場における仮囲いの設置、二十四時間体制の現場管理、化学剤検知器による大気のモニタリング等を実施しており、新たな被災者が生じないよう万全を尽くしているところである。万が一、今後更に被災者が生じた場合には、例えば、民間企業の従業員については労災保険法、公務員については国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)等により、被害を補償するものとされており、これらの制度に基づき、被害状況、被害内容等を調査・把握した上で、個々の事案に即して適切に対処してまいりたい。

二の3について

 国内において旧軍の化学兵器等が発見された場合には、発見された場所や状況等によって関連する行政事務が様々であることもあり、その都度、必要に応じ内閣官房を中心に関係省庁連絡会議を開催するなど、関係省庁間で連携して適切な対応を行ってきているところであり、今後とも適切に対応していくこととしている。

三の1について

 御指摘の十八発については、国土交通省による航路泊地浚渫工事(以下「浚渫工事」という。)の一環として行われた磁気探査により発見され、海上自衛隊佐世保地方隊隷下の下関基地隊により海中から引き揚げられた後、同地方隊隷下の佐世保警備隊において保管されているものであり、外務省において、平成十三年五月、技術事務局に対し、老朽化した化学兵器である旨の申告を行ったところである。また、御指摘の三十九発については、国土交通省による磁気探査により発見されたものであり、今後、海上自衛隊の部隊により海中から引き揚げることとしている。これらの合計五十七発については、今後、防衛庁において民間の事業者に廃棄の実施を委託することとしているが、その具体的な時期については、現在、防衛庁において民間の研究機関に対し無害化処理の技術、作業態勢等に関する調査研究を委託していることから、お答えできる段階にない。また、このような一連の事務の処理に当たっては、平成十三年十二月に発足した防衛庁、国土交通省、福岡県、苅田町等の担当者から成る「苅田港化学弾現地連絡協議会」等の場において今後とも関係省庁間の密接な連携を図っていくこととしている。
 これらの事務に係る所要経費については、平成十四年度予算に約二十三億円が計上され、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十四条の三の規定に基づき繰越明許費とされたことから、平成十五年度予算には計上していない。

三の2について

 御指摘の五十七発のうち引揚げ未了のものが存在する水域については、船舶交通の安全を確保するため、苅田港内においては、港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)第三十七条第一項及び第三十七条の三の規定に基づき、門司海上保安部長が当該水域に一定の区域を指定し、一般の船舶の航行及び停泊を禁止しており、新門司沖土砂処分場三工区においては、門司海上保安部長等が工事関係者に対し、注意喚起を行っている。

三の3について

 苅田港本港地区岸壁(水深十三メートル)供用のために浚渫を計画している面積約八十万平方メートルの水域のうち、岸壁前面の面積約十二万平方メートルの水域内の海底面付近に帯状に散在して五十六発が、また、新門司沖土砂処分場三工区の面積約七十万平方メートルの水域内の海底で一発が、それぞれ発見されたものである。

三の4について

 お尋ねの十八発のうち、六発は旧日本陸軍十五キログラム爆弾(くしゃみ剤)、十二発は旧日本陸軍五十キログラム爆弾(びらん剤、窒息剤又は血液剤)の可能性があると考えている。これらについては、平成十三年五月、技術事務局に対し、老朽化した化学兵器である旨の申告を行ったところであり、今後とも、関係地方公共団体とも連携しつつ、化学兵器禁止条約の関連諸規定に従い、早期かつ安全に廃棄等を行ってまいりたい。

三の5について

 お尋ねの三十九発の引揚げ及び廃棄については、漁業に対する影響を含め処理場所(一時保管庫を含む。以下同じ。)周辺の環境に与える影響を可能な限り防止するとの方針の下、化学兵器禁止条約の関連諸規定に従い、早期かつ安全に行ってまいりたい。なお、三の1についてで述べた調査研究においては、無害化処理の技術の安全性や処理場所周辺の環境に与える影響についても評価・検討を行っているところである。

三の6について

 防衛庁において民間の研究機関と契約を締結し、無害化処理の技術、作業態勢等に関する調査研究(処理場所として浮体構造物を使用することについての調査研究を含む。)を委託したところであり、本年三月末日までにその結果が得られる見込みである。

三の7について

 お尋ねの十八発については、これらが引き揚げられた当時においては、付着物及び老朽化のため形状が判然としないものの、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第九十九条に規定する「機雷その他の爆発性の危険物」であると思料されたことから、下関基地隊が引き揚げ、佐世保警備隊に移送したものである。その後、同警備隊等において付着物を除去するなどして形状の確認等の調査を行ったところ、これらは、形状から見て老朽化した化学兵器であると判断し、同警備隊において保管しているものである。

三の8及び9について

 御指摘の「メガフロート案が検討されることになった」とは、三の6についてで述べた調査研究において、処理場所として浮体構造物を使用することが検討されていることを指すものと解されるが、これは、平成十四年七月、福岡県及び苅田町から防衛庁に対し、今後処理場所の選定に際して関係住民の理解を得るためには、処理場所を陸上ではなく海上の浮体構造物とする方が良いと考えられるので浮体構造物の使用可能性について検討されたい旨の要望があったことを受けたものであり、陸上において廃棄する場合は安全上問題があるという理由から検討しているわけではない。また、お尋ねの「安全上の問題、環境、漁業資源などへの影響」及び「無害化の処理方法」については、現在、右に述べた調査研究を実施中であることから、お答えできる段階にない。

三の10について

 お尋ねの十八発及び三十九発の処理の具体的時期については、三の6についてで述べた調査研究の結果等を踏まえて採用される無害化処理の技術の内容、浮体構造物の使用の有無によって異なると考えられることから、お答えできる段階にない。

三の11について

 三の1についてで述べた磁気探査の結果、苅田港の浚渫工事に係る区域には、なお多数の磁気異常点の存在が確認されていることから、今後、潜水探査を行った場合に更に旧軍の化学弾が発見される可能性は否定できないと認識している。
 苅田港の陸上部(臨港地区内)に化学弾が存在する可能性を示す情報は得ていない。

三の12について

 磁気探査等による調査については、御指摘の三十九発の引揚げ時期にかかわらず、浚渫が予定されている水域においては、その一環として引き続き実施することとなるが、浚渫工事が予定されていない水域については、今後、実施の必要性を含め関係省庁等の間で連携を密にして検討してまいりたい。

三の13について

 国土交通省においては、化学弾を完全に除去したことを確認するまでは、苅田港の浚渫工事を実施しないこととしている。

四の1について

 旧軍の化学兵器等が発見された場合には、従来から、現状と今後の処理の見通しを含め、関係地方公共団体及び関係住民に必要な説明を行ってきているところであり、今後とも適切な説明を行うよう努めてまいりたい。

四の2について

 国内において旧軍の化学兵器等が発見された場合には、発見された場所や状況等によって関連する行政事務が様々であることもあり、あらかじめ処理の実施官庁等を決めて対応することは困難である。このため、これまでも、その都度、必要に応じ内閣官房を中心に関係省庁連絡会議を開催するなど、関係省庁間で連携して対応してきたところである。今後、国内において旧軍の化学兵器等が発見された場合には、内閣官房において、その処理に係る事務のうち所掌が明らかでないものについて関係省庁間の調整を行った上でこれを明らかにするなど必要な総合調整を行い、関係省庁間で連携を密にして、適切に対応してまいりたい。

四の3について

 旧軍の化学兵器等については、それが老朽化した化学兵器に該当する場合には、化学兵器禁止条約の関連諸規定に従い必要な措置をとるとともに、当該化学兵器の発見状況、廃棄の進行状況や見通し等について、可能な限り国民等に対して情報を公表してまいりたい。
 なお、既に廃棄を完了した大久野島で回収された旧軍の大赤筒(くしゃみ剤)及び屈斜路湖で発見された旧軍の化学弾については、処理作業の進行計画につき、適宜情報を公表したところである。また、苅田港内で発見された旧軍の化学弾等及び寒川町で発見されたマスタード等の入ったビール瓶の処理計画については、二の1について及び三の1についてで述べたとおりである。



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