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平成十五年二月十四日提出
質問第二〇号

奄美大島住用村戸玉地区における採石場被害に関する質問主意書

 提出者
 赤嶺政賢    小沢和秋




奄美大島住用村戸玉地区における採石場被害に関する質問主意書


 奄美大島住用村戸玉地区はわずか三十所帯余の集落であるが、二十年以上前より次々に開始された四カ所もの採石場の操業により、騒音、振動、粉塵による多大な被害を受けてきた。住民地域より一番近いところでわずか三十メートル以内に位置する採石場は、現在二つの業者によって運営され、ダイナマイトや大型の削岩機を使った大々的な採石作業とダンプカーによる積み出しが展開されている。また、集落に隣接した船着場には砂利や岩石が野積みされ、着岸する砂利運搬船への積み込み作業で、その都度住民と住居に耐えがたい騒音と粉塵を浴びせている。
 現状でも住民は採石場によって多大の苦痛を強いられているのに、昨年十月、鹿児島県に対して戸玉地区の住居地域よりわずかな距離しか隔てない山林に新たな採石場設置の認可申請が事業者より提出された。これに対して、戸玉地区の住民全員の署名による認可反対の意見書が住用村長に提出され、村長も県大島支庁長に対して「戸玉集落から強硬な反対意見が寄せられており村としては、戸玉集落の意見を尊重しなければならず許可については好ましくない」との意見書を上げている。
 また、村長は同じ意見書の中で「(岩石採取場の区域に)文化財保護法においては、アマミノクロウサギやルリカケス、アカヒゲ、カラスバト等が確認されており、自然環境に影響を与えることが懸念される」と述べている。住用村では、過去にアマミノクロウサギの生息地にゴルフ場開発の話が持ち上がり、裁判の末、開発が取り止められた経過があるので、村長の懸念は当然のものと思われる。
 そこで、次の事項について聞く。

(一) 戸玉地区住民は、既存の採石場の作業や住居地区に隣接する船着場での積み出し作業、集落内の道路を通行するダンプカーによる騒音、振動、粉塵の被害を長年にわたり受けている。騒音や振動の被害については、住用村に測定機器や要員が存在せず、客観的な被害調査が妨げられているが、この場合、被害の調査はどのように実施されるべきなのか。
(二) 戸玉地区の住居・建物の多くは、採石場の発破や集落内道路を通行するダンプカーの振動で内外の壁のヒビ割れ、柱の歪み等の傷みが生じている。また、降雨の度に採石場からの残土が堆積した河川から水があふれ、家屋が床下浸水する等、土地の嵩上げが必要な場所も出ているが、住民から要求があっても何らの調査や補償の措置がとられない。被害の調査及び補償は、どのようになされるべきか。具体的なあり方を示されたい。
(三) 採石法は、その目的に「災害の防止」をうたっているが、既に戸玉地区では粉塵、強風で飛び散る小石による被害を受けている。窓を二重にしても家屋内に入り込む細かい粒子状の粉塵や絶え間ない騒音、振動で住民の中に喘息等の呼吸器疾患、難聴等の健康と人身を損なう事態も生じている。既存の採石場による被害については、黙過されたまま長年にわたる申請の更新が県によって行われてきているが、指摘したような被害を防止する措置が二十年以上にわたって十分にとられていない場合、認可権者においては事業者に対してどのような措置をとる権限を有するのか。
(四) 既存の採石場の認可の更新に際しても、今回のような新規の認可申請にあたっても認可権者は当該採石場の操業によって最大の影響を受ける戸玉地区住民の意見を直接聴取したことがない。手続き上の問題として、地区の住環境、生活条件を大きく左右するのであるから、認可権者は戸玉地区住民の意見を直接聴取するのが望ましいと考えるが、どうか。
(五) 戸玉地区では、既存の採石場の操業で山林はもとより、長年にわたり漁港として良好な条件を形成していた太平洋側に張り出した岬の全体も削り取られ、土砂の流出、台風時の強風によって飛散する小石が住居の雨戸を貫通する等の想像を絶する被害を与えている。地区の漁港前面の湾内も、旧来は珊瑚礁によって良好な漁礁をなしていることから近場の好漁場として利用されてきたが、採石場が操業して以後、集湾内に流入する土砂により珊瑚が死滅し、魚類の棲息が全く認められない状況になったと住用村漁協は説明している。採石法においては、事業終了後の現状回復を規定していると承知しているが、当該地区のように二十年以上にわたる破壊的な開発行為で環境条件の根本的な変化を経た後、どのような現状回復措置がとられるべきなのか。
(六) 住用村教育委員会は申請が出された当該地域について、天然記念物ケナガネズミの死骸が平成十三年十二月十日に発見され、これを文化庁に報告した事実を指摘している他、特別天然記念物アマミノクロウサギや鳥類の天然記念物ルリカケス、アカヒゲ、カラスバトが確認され「貴重動物の生息地または、繁殖地の可能性が高い」と述べている。また、当該地域を流れる河川には、絶滅危惧種のリュウキュウアユの稚魚が確認されている。村当局が指摘するこれらの問題は、誰がどのような調査を行うのか。結果は誰に報告され、報告を受けた者はどのような措置をとるのか。また、国としてもこれらを保護するための措置をとっていくべきと考えるが、どうか。

 右質問する。



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