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平成十六年三月五日提出
質問第三〇号

奈良県大滝ダムの「基本計画変更」に関する質問主意書

 提出者
 穀田恵二    石井郁子    吉井英勝




奈良県大滝ダムの「基本計画変更」に関する質問主意書


 国土交通省が奈良県に建設中の多目的ダム・大滝ダムは、これまでに三,二一〇億円の膨大な費用を投入し、二〇〇二年度末を事業完了としていた。ところが、二〇〇三年四月に、川上村白屋地区で地すべり現象が発生した。
 地区住民は、白屋地区は地すべり多発地域であることから、ダム計画時から専門家による地質調査など総合的に検証し、「ダムにより、地すべりは拡大され、防止する方法はない」として、水没地域と同様に地域全体の移転を含めた対策を要求してきた。そして、試験湛水でその危険性が現実のものとなり、十分な対策をとらないまま建設をすすめた国の責任を指摘し、改めて、全戸移転を要求した。
 石原伸晃国土交通大臣は、平成一六年二月四日付で、「大滝ダムの基本計画第五回変更」として、約二七〇億円の事業費追加と工期を平成二一年度まで延長することをダム使用権者に通知した。
 この「追加事業費」には、白屋地区の全戸移転費用が計上されている。移転費用は当然の予算である。もともと、地区住民が主張してきたとおり、当初工事費に計上すべきものであった。
 同時に、「追加事業費」には、白屋地区の地すべり対策、工事延期によるダム現状維持費などの費用が含まれている。この追加事業費を発生させた国土交通省の責任はきわめて大きいものがある。にもかかわらず、自らの責任を明確にしないまま、国土交通省は、多目的ダム法にもとづく使用権を設定する奈良県、和歌山県、和歌山市、橋本市に対して九〇億円余の追加事業費を通知している。
 関係自治体の関係者から「これまでもたびたびの追加があったが、これ以上の負担には耐えられない」との強い意見や、関係する県民から「国土交通省の地すべり対策の失敗の原因、責任を棚上げして、一律の住民負担をすべきでない」との怒りも表明されている。
 国土交通省は、地元住民と地方自治体に対し、誠実に応える責任がある。
 よって、次の事項について質問する。

一 ダム建設によって、長年暮らしてきた土地を離れざるを得ない白屋地区住民の複雑な想いに、国土交通省は真摯に応えるべきである。「ダム建設によって追い立てられた」とも言うべき被害者に対して、居住地の確保、移転補償などについて、住民と十分な話し合いを行い、住民の納得と合意が得られるよう、誠意を尽くすべきではないか。
二 白屋地区の地すべり対策について、一九八〇年三月の衆院予算委員会で、日本共産党の辻第一議員の質問に対して、国土交通省(旧建設省)は、「ダム貯水によって地すべりをおこさない、必要な十分の対策、長年月に耐えうる工法などを考え対処する」としてきた。
 さらに、試験湛水後の地すべり問題をとりあげた二〇〇三年五月にも衆院国土交通委員会において大森猛議員が「工事は万全であったのか」と質問したのに対し、「白屋地区に対する地すべり対策として鋼管杭、アンカー、盛り土、集水井などの工法を実施」と答弁し、地すべり対策は万全としてきた。
 今回の計画変更は、これまでの対策工事が、「十分の対策、長年月に耐えうる工法」とした答弁が間違っていたことを実証した。まず、この間違いを認めるべきではないか。そして、なぜ、このような見通しを誤ったのか、説明されたい。
三 当初、白屋地区住民が依頼した専門家の調査では、地層は「流れ盤」であり深い層での地すべりが危惧されると指摘していた。ところが、国土交通省は、十分な検討をせず、浅い層への対策のみに限定して、大丈夫とした。そもそも、この判断が、根本的に間違っていたのではないか。
 また、これまでの対策工事は、地層の深さ何メートルまでの対策であったのか。もっと深い層の対策が必要ではなかったのか。こうした、基本的対策の誤りはどうして生まれたのか。
四 今回の事態を生んだ責任は、すべて国土交通省にある。今後七年間も供用できないダムの維持費を、「追加」工事費の名目で、一律に県と市に費用分担を求めることは、自治体と住民の納得は得られない。「工事の瑕疵」によるものについては、国土交通省の特別の予算措置を考えるべきではないか。
五 関係地方自治体および、住民から、「今度の工事で地すべりは起こりえないという保障があるのか。財政負担だけがのしかかり、使えないダムではないのか」との意見もある。そこで、「第五回変更」工事で、地すべりは防ぎえる万全の工事であることを科学的に証明すべきは当然である。そのために、工事内容・工法などについて情報を公開し、広く専門家の意見をあつめるなど万全の調査、準備が必要である。今後どのように措置していくのか明確にされたい。

 右質問する。



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