質問本文情報
平成十六年十一月三十日提出質問第六〇号
三宅島の火山活動による住民の健康被害を防止することに関する質問主意書
提出者
山口富男 高橋千鶴子
三宅島の火山活動による住民の健康被害を防止することに関する質問主意書
三宅島の噴火災害の発生と全島民の島外避難から四年が経ち、来年二月には全島避難指示が解除される方向である。
この四年の間、三宅村村民は、予想しなかった長期にわたる避難生活を強いられてきた。三宅島の災害復旧は鋭意進められてきたとはいえ、いまだに降灰と泥流に覆われ、道路や家屋などの損壊は深刻で、農業や漁業、観光など基幹産業の再建も目途が立たない現状にある。こうした厳しい現実に直面しながら、来年二月以降の帰島に備えて、島の復興と生活の再建にふみだすべく準備が始まっている。
帰島を妨げてきた最大の原因は、三宅島の噴火活動にともなう有害な火山ガスの大量放出である。
国、東京都、三宅村の三者による「三宅島火山ガスに関する検討会」の報告書(平成十五年三月)では、火山噴火の場合の有害な二酸化硫黄の濃度は比較的短時間の間に変化するもので、従来の人為的な発生源を想定した環境基準を設定する際には考慮できなかったものであること、有害な火山ガスに長期的にさらされる影響(慢性影響)と、瞬間的あるいは短時間に高濃度の二酸化硫黄ガスを吸った場合の短期的影響(急性影響)の両方について同時に考慮する必要があること、急性的な影響を与えるガス濃度は、低濃度でも影響を受けやすい高感受性者と迅速な避難が困難な幼児・児童、高齢者などの要援護者、それ以外の一般の人の場合のそれぞれについて段階的に設定することとした。
そして、すべての島民の日常生活において、ガスの濃度情報や気象情報を確認し、外出先を周囲に知らせておく、ガスマスクの常時携帯、診療所や避難所の確認、高濃度になりやすい場所には近づかないなどの注意が必要だとしている。
以上のように、来年二月以降、噴火災害と「共存」して生活する三宅島島民にとって、火山ガスによる健康被害を最小限にする施策の実施は、緊急を要するものである。
わが党は十月に現地調査を行ったが、それも踏まえて、以下の事項について質問する。
住民へのガス被害を長期間、しかも急性的な影響も懸念される三宅島の噴火災害は、従来の防災対策では想定されていない新しい火山災害だと考えるがどうか。
2 従来想定されていない噴火災害であればなおさら、住民の安全確保を地元まかせにするのでなく、地元自治体の安全施策への助言と協力、財政支援などを積極的に行うことはもちろん、国自らが防災施策に責任を持つことが求められる。
火山ガス排出のリアルタイムでの常時監視・観測体制、住民への迅速な情報の伝達、避難場所の確保と脱硫装置の整備、救急医療も含めた呼吸器疾患への対応、健康診断と火山ガスの長期的影響調査を、それぞれ所管する省庁はどこか。
3 緊急の場合の避難場所は、現在、何ヶ所あり、どのように配置されているのか。それで十分と考えているのか。
4 平成十六年九月の「三宅島噴火災害 三宅村帰島計画」などによれば、小中学校、高校、中央診療所には、脱硫装置を設置することになる。十月二十七日の衆議院厚生労働委員会の答弁でも、保育園への設置も明らかになった。しかし、公民館や体育館、役場本庁舎や臨時庁舎、出張所、歯科診療所(中央診療所併設)、老人会館などに脱硫装置を設置することについては、明確にしていない。当然、設置すべきと考えるが、検討されていないとするなら、その理由は何か。
さらに、島民が多く利用する郵便局や金融機関、三宅島空港への脱硫装置の設置についても、計画的に設置されるべきではないか。
5 特別養護老人ホーム「あじさいの里」の再開にあたっては、「十分な安全対策を講ずる」とされているが、要援護者の施設であり、脱硫装置の設置は当然と考えるが、どうか。
6 火山ガスの健康被害は高感受性者だけでなく、すべての島民を巻き込むことは明らかである。昼夜を問わず、いつ起こるか予測できない火山ガスの急性的被害から、避難が遅れた場合でも、個人宅に脱硫装置が設置されていれば、被害を防ぐ有効な対策となるものである。ところが、脱硫装置の個人宅への設置について国からの援助はなく、村からの一部本人負担付き助成があるだけである。しかも高感受性者の世帯に限られている。
脱硫装置の設置について、高感受性者はもちろんのこと、希望するすべての個人住宅に対して、国が適切な援助を行うことは島民の火山ガス被害を最小限に防止するうえで必要かつ、きわめて重要な対策であると考える。どのように検討されているか。
右質問する。