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平成十六年十二月二日提出
質問第六八号

子どもの人身売買に関する質問主意書

提出者  佐藤謙一郎




子どもの人身売買に関する質問主意書


 今臨時国会で成立した改正児童福祉法は、人身売買に関連する「子どもの人身売買」の被害者保護および加害者処罰を実現する上で、さらになお問題が残ると考える。ついては、以下の通り質問する。

1 政府は、人身売買の被害者保護に関し、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、特に女性及び児童の取引を防止し、抑止し、及び処罰するための議定書(以下、「人の取引に関する議定書」)」における被害者保護規定(六条)には留保条項があることを理由として、現行法制度の弾力的運用を内容とする国内行動計画の策定で十分であるという立場を取っている。しかし、「子どもの売買(取引)、子ども売買春および子どもポルノグラフィーに関する『子どもの権利条約』の選択議定書(以下、「子どもの権利条約の選択議定書」)」の被害者保護規定(八条及び九条)には、そのような留保条項はない。この被害者保護規定(八条及び九条)が、わが国の現行国内法制度においてどのように担保されるのか、政府は明らかにされたい。また、「子どもの権利条約の選択議定書」批准のためには、この被害者保護規定(八条及び九条)を実効的に担保する法制度の整備も不可欠であると考えるが、政府のご認識をお伺いしたい。
2 現在進められている「人身売買禁止法案」に関する議論を通じ明らかになったことは、実効的な被害者保護無くして加害者処罰を実現することは困難ということである。わが国における人身売買被害者の大半は外国人であり、しかも、その多くは非正規滞在外国人であると言われている。既に非正規滞在者となり、国際犯罪組織関係者より、「政府に助けを求めれば、直ちに退去強制処分を受け、帰国させられる」と脅迫されている被害者が、一時保護を目的とする短期滞在すら政府の裁量事項とされるような状況下で、保護を求めて自発的に出頭するとは想像し難い。したがって、最も必要とされている被害者保護措置の一つは、人身売買の被害者を入管法違反、売春防止法違反等を根拠として、直ちに退去強制処分の対象とするのではなく、国籍、在留資格の有無にかかわらず一時保護・救済の対象として取り扱うことであると考えるが、政府のご認識をお伺いしたい。また、人身売買被害者として出頭した者ないし被害者である疑いのある者については、当人が本当に人身売買被害者でないことが明らかになるまでは、自動的に入管法による退去強制処分の執行停止、売春防止法違反による刑事責任の一時免除が保障される必要があると考えるが、この点についても政府のご認識をお伺いしたい。
3 改正児童福祉法に規定される「子どもの人身売買」関連の規定は、「子どもの権利条約の選択議定書」および「国際組織犯罪条約の人の取引に関する議定書」に定められている「人身売買」の定義、目的、手段を正確には反映していないと考えるが、この点に関する政府のご認識をお伺いしたい。
4 「子どもの権利条約の選択議定書」は、第二条(a)において「子どもの売買とは、子どもが、いずれかの者または集団により、報酬または他の何らかの見返りと引換えに他の者に譲渡されるあらゆる行為または取引を意味する」と定め、その具体的な内容を、同第三条(a)において定めている。改正児童福祉法では、性的搾取を目的とする子どもの人身売買に関する規定および児童労働を目的とする人身売買の一部は含まれると思われるが、強制労働および臓器摘出についての明文の規定はない。改正児童福祉法に強制労働および臓器摘出は含まれるか、政府のご認識をお伺いしたい。
5 「人の取引に関する議定書」第三条(a)によると、人身売買とは、「他人の売春からの搾取、その他の形態の性的搾取、強制労働や強制奉仕、奴隷状態あるいは奴隷類似状態、苦役、臓器摘出」を目的として、「人の募集、搬送、移送、住居提供、受け取りを行うこと」であり、その手段としては、「力の行使またはその威嚇、あるいはその他の形態の強制、誘拐、詐欺、欺瞞、権力の濫用、あるいは弱みにつけ込むこと、またはある者に対して支配力をもつ人物の同意を得るための金銭や利益の授受」が含まれると定義されている。これらの規定が、改正児童福祉法のどの個所に対応するか、政府のご認識をお伺いしたい。
6 「人の取引に関する議定書」第三条(b)には「(a)に規定する手段が用いられた場合には、人身取引の被害者が(a)に規定する搾取についての同意をしているか否かを問わない。」と定め、さらに同(c)では、「搾取の目的で児童を採用し、運搬し、移送し、蔵匿し又は収受することは、(a)に規定するいずれの手段が用いられない場合であっても、人身取引とみなされる。」とある。したがって、人身売買の対象者が一八歳未満の場合には、不法な手段が使われず、また本人が同意した場合でも、性的搾取、強制労働、臓器摘出などの搾取を目的とする取引は、「人身売買」とみなされることになる。これら規定は、今回の改正児童福祉法では全く反映されていないと考えるが、政府のご認識をお伺いしたい。
7 今回の改正児童福祉法は、一八歳未満であることが明らかではない「子ども」に対する取り扱いについて規定していない。人身売買の犠牲となっている子どもは、一般には偽造旅券を利用したり、あるいは入国を容易にするために年齢を偽って成人として入国してくることが多いと言われ、また、思春期の女子は、一八歳未満かどうか区別がつかないことが多いということも一般に言われている。ユニセフ(国際連合児童基金)が最近完成した「南東欧における子どもの人身売買に関するガイドライン」では、被害者の子どもの年齢が不明で、かつ、その被害者が子ども(一八歳未満)であると信じる理由がある場合には、被害者は子どもとみなされ、年齢がはっきりするまで、子どもとして扱われなければならないと定めている。したがって、一八歳未満かどうかはっきりしないが、被害者が子どもと思われる場合、例えば旅券に一六歳と記載してある場合には、その旅券の記載年齢が虚偽であり、実年齢は一八歳以上であることが本国からの正式の出生登録証明書などによって明らかにされない限り、その被害者は子どもとして扱われるべきと考えるが、政府のご認識をお伺いしたい。さらに、特に性的搾取を目的として日本に送り込まれてくる一八歳未満の、いわゆる思春期の女の子ないし男の子について、その子どもが一八歳未満であるかどうか確定する証拠がない場合について改正児童福祉法に全く規定がないことは、実効性の観点から大きな問題であると考えるが、政府のご認識をお伺いしたい。

 右質問する。



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