質問本文情報
平成十七年四月十四日提出質問第五〇号
在外被爆者保健医療助成事業に関する質問主意書
提出者 赤嶺政賢
在外被爆者保健医療助成事業に関する質問主意書
在外被爆者への支援について、国は、二〇〇四年度から、在外被爆者保健医療助成事業を開始することとした。この事業は、外国に居住する被爆者の医療費等に対して一部助成を行なうというもので、原爆投下から六十年を迎えて被爆者の高齢化が進む中で、在外被爆者の方々や関係者の切実な要求がようやく実施されることになった。
緊急の課題であったにもかかわらず、国が、これまで対策を講じてこなかった責任は厳しく問われなければならない。
現在、在外被爆者保健医療助成事業を実施するにあたり、国は、関係地方自治体が事業の実施主体となることとしているが、在外被爆者に対する支援は、国が自ら責任を持って果たすべき事業であると考える。
従って、次の事項について質問する。
二 在外被爆者保健医療助成事業を始めるに至った契機と理由はなにか。また、保健医療費(入院・通院等)一人の年間の助成額(上限)など、その内容について伺いたい。
三 在外被爆者は、国別に何名おられるのか明らかにされたい。
四 在外被爆者が、在外被爆者保健医療助成の対象となるための要件はあるのか。
例えば、被爆者でありながら被爆者健康手帳を持っていない方で、病気等の理由で渡日できない場合には、どのような手立てを講ずるのか。
五 在外被爆者が居住する当該国の医療保険制度の概要を明らかにされたい。
南米の場合には、公的医療保険制度は存在しないので、民間保険に加入していなければ医療機関の診療は受けられないと聞いているが、この場合の保健医療費の助成はどのように行なうのか。
六 「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(以下「被爆者援護法」という。)に基づく被爆者に対する援護事業は、地方自治法上の法定受託事務として、国が本来果たすべき役割としている事業ではないのか。
七 在外被爆者保健医療助成事業については、在外被爆者渡日支援等事業の一環としての事業とした理由及び予算措置に基づく事業としたのは何故か。
八 在外被爆者保健医療助成事業は、被爆者援護法の枠外の事業であるとしても、被爆者に対する援護事業と密接に関連した事業である。本事業は、地方自治法上の法定受託事務なのか、それとも自治事務なのか。もしこの事業を自治事務というならその理由と根拠を明確にされたい。また、自治事務であるならば事業実施の有無は地方自治体の判断となる。国の責任において在外被爆者に対する援護策を行なっているのであれば、そもそも自治事務の中で、この事業を位置づけることは矛盾しているのではないのか。
九 在外被爆者保健医療助成事業の実施主体が、関係自治体でなければならない理由と根拠はなにか。
十 関係地方自治体が、在外被爆者保健医療助成事業の実施主体になることに対して、本事業の医療費の助成等をめぐり在外被爆者との間で訴訟が提起されることも想定され、その場合には、国の責務である被爆者援護対策で、地方自治体の責任が問われかねない。また、自治体は訴訟に係る対応、費用等の負担が生じることになる。このことについてどのように考えているのか。
仮に、訴訟が提起された場合には、この事業が地方自治法上の法定受託事務か自治事務かで、責任等どのような差異がでてくるのか。
十一 在外被爆者保健医療助成事業は、被爆者援護法に基づく事業でないとはいえ、国が本来果たすべき役割とする事業であり、国がその適正な処理を特に確保する必要があるとされる事業ではないのか。
しかも、在外被爆者は外国に居住していることを考えあわせれば、国が責任を持ち実施主体として事業を行なうのは当然のことではないのか。
十二 被爆者援護法に基づく援護事業は、法改正がなされない限り、今後とも安定して事業運営がなされ、健康管理手当など各種手当の支給については制度として定着したものと考えるが、この在外被爆者保健医療助成事業は、予算措置に基づく事業であり、今後五年、十年後の事業運営が保障されているわけではない。
1 在外被爆者は十分な額ではないにしろ、保健医療費の助成であり、各種手当のように生涯にわたる支給を期待していると思うが、国は、この保健医療助成事業の今後の展開をどのように考えているのか。
2 この事業が、二年ないし三年ではなく、長期にわたる事業になると認識しているのであれば、法律に基づく事業ではなく、なにゆえに不安定な予算措置事業で実施することとしたのか。
3 地方自治体は、保健医療助成事業の先行きを懸念している中で、この事業について、国の補助率を十分の十としているが、将来にわたって変更がないことを保証できるのか、すなわち全額国庫負担ということを確約できるのか、見解を伺いたい。
右質問する。