質問本文情報
平成十八年十月三十一日提出質問第一二七号
諸外国における著作権等の保護期間及び孤児作品(著作権者等不明作品)に関する質問主意書
提出者 川内博史
諸外国における著作権等の保護期間及び孤児作品(著作権者等不明作品)に関する質問主意書
一 本年九月二十八日提出の質問第一四号(以下「質問第一四号」という。)に引き続き、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(昭和五十年三月六日条約第四号。以下「ベルヌ条約」という。)第七条六項の規定について質問する。
1) 政府は、本項は加盟国が国内の著作物の一部又は全部について著作権の保護期間に上限を設けず「無期限」とすることを認めていると解釈しているのか。詳細かつ明確な答弁を求める。
2) ベルヌ条約加盟国中、国内の著作物の一部又は全部について、著作権の保護期間を「無期限」とする立法を行っている国は存在するのか。存在する場合、当該国の著作権法等における規定について詳細な説明を求める。
二 ベルヌ条約第七条八項及び万国著作権条約パリ改正条約(昭和五十二年八月三日条約第五号)第四条において規定され、我が国においては著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)第五十八条に規定されている相互主義について質問する。
1) アメリカ合衆国(以下「米国」という。)が相互主義を採用していない理由は何か。答弁を求める。
2) メキシコ、コートジボワール、コロンビア、グアテマラ、ホンジュラス及びサモア独立国の六か国の内、米国と同様に相互主義を採用していない国は存在するのか。答弁を求める。
三 本年九月二十八日提出の質問第一三号(以下「質問第一三号」という。)において指摘した本年一月に米国議会図書館著作権局が同国議会に提出した「Report on Orphan Works」と題する報告書(以下「報告書」という。)の内容について、本年十月六日の政府答弁書(内閣衆質一六五第一三号)における答弁では「権利者の許諾が得られない『孤児作品』の利用は、著作権侵害責任を問われる危険があるため、これらの作品の生産的かつ有益な利用が滞るところ、このような事態は公益に反する懸念がある旨が記載されている」とのことであるが、報告書には何故「権利者の許諾が得られない『孤児作品』」が米国内において「公益に反する懸念がある」規模で発生したと書かれているのか、その理由について明確な答弁を求める。
四 本年十月六日の政府答弁書(内閣衆質一六五第一四号。以下「先の答弁」という。)の「六の1)について」では、欧州委員会(以下「EC」という。)が二〇〇四年七月に公表した「著作権及び関連する権利の分野におけるECの法的枠組みのレビューに関するスタッフ・ワーキングペーパー」(以下「ペーパー」という。)において、著作隣接権の保護期間延長を断念した理由について「域内には保護期間延長について賛成意見も反対意見もあり、現時点では変更のための期が熟していないと考えられ、更に市場の動向を監視・研究すべきであるためである旨が記載されている」とのことであるが、ペーパーでは賛成意見・反対意見の双方についてどのような意見が列挙されているのか、具体的な答弁を求める。また、それぞれの意見を述べている者はどのような立場の者であると記載されているのか。詳細かつ明確な答弁を求める。
五 質問第一四号「四の二」に続き、二〇〇三年六月に米国下院へ提出されたが廃案となった法案番号HR2601 IH、通称「エルドレッド法案」について質問する。
1) エルドレッド法案の立法趣旨について、法案提出者はどのように説明しているのか。詳細かつ明確な答弁を求める。
2) 先の答弁「四の二について」では「同法案と同様の制度がベルヌ条約又はTRIPs協定に違反するか否かについてお答えすることは困難である」とのことであるが、仮に当該法案がベルヌ条約又は知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(平成六年十二月二十八日条約第十五号)その他の国際条約等に違反しないと認められる場合、我が国において同趣旨の立法を行うことは立法技術上、可能であるか不可能であるか明確な答弁を求める。
六 欧州連合(以下「EU」という。)加盟各国の国立中央図書館が合同で計画している「European Digital Library」(以下「欧州デジタル図書館」という。)と題する電子アーカイブ構築計画について、ECは本年八月二十四日に「欧州デジタル図書館計画の促進に向けた勧告」(以下「勧告」という。)を実施したが、二〇〇八年度までに二百万点、二〇一〇年度までに六百万点の文献を収録するとした目標の達成が極めて困難な状況であると報じられている。
以下、当該計画の現状とEU加盟国の著作権法等に起因する問題について質問する。
1) 勧告では、孤児作品(著作権者等不明作品)の問題や、その状態に在る著作物の取り扱いの方針についてどのように記載しているのか。詳細かつ明確な答弁を求める。
2) 前記の報道では、特にドイツ国立図書館の蔵書は同国に特有の著作権法上の問題からその大多数がアーカイブに収録不可能な状態に在るとされる。ドイツが他のEU加盟国に比して特に国立図書館の蔵書をアーカイブに収録し、公開することが著しく困難とされる理由は何か。詳細かつ明確な答弁を求める。
3) 欧州デジタル図書館計画の現状は、本年九月二十八日提出の質問第一五号三 3)において指摘した米国及びオーストラリアの民間アーカイブ事業が著作権の強化により阻害された事例と同根の問題であると考えられるか否か、政府の見解を問う。
4) こうした問題は質問第一三号においても指摘したように我が国でも既に小規模ながら発生しており、将来の情勢如何によっては米国やEUと同様、さらに大規模かつ深刻な問題が発生し得る恐れが大きいと考えられる。前述の通り、欧米各国において孤児作品問題が公益に反する深刻な問題であると認識され始めている事実は、この問題が我が国においても決して「対岸の火事」ではないことを意味しているものと思料されるが、文化審議会著作権分科会において早急かつ真摯に孤児作品問題の対応を議論すべきではないか。政府の明確な答弁を求める。
右質問する。