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平成十九年六月五日提出
質問第三二八号

自治体病院の改善及び充実に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




自治体病院の改善及び充実に関する質問主意書


 自治体病院は、住民のために地域における基幹病院・中核病院として高度の医療機器を備え、医療水準の向上等に重要な役割を果たしている。
 しかるに、全国の自治体病院の多くは、国の「三位一体改革」「医療費抑制策」、そして「医療制度改革」の名による診療報酬の引き下げをはじめ入院期間の短縮、療養型病棟の削減、患者負担増、自宅介護の「強制」などの締め付けによって、医師確保の困難さに加えて苦しい経営を余儀なくされている。
 地方自治体の中には、財政難等のために赤字病院を支えきれず、地方独立行政法人化をはじめ運営主体を民間の医療法人に移す「民営化」、「縮小・廃止」への動きがあるなど、「地域医療の崩壊」が懸念されている。
 地方自治体においては、こうした厳しい医療環境の中で、良質な公的医療を提供していくために、地域の実状や住民のニーズに応じた医療の質の向上と経営等の改善が喫緊の課題であるとして、病院経営のあり方について本格的に検討するところが出始めている。住民は、民間医療機関では担うことのできない医療を提供している自治体病院の存続と改善・充実を強く要望している。
 自治体病院の現状を打開するためには、国が、「医療費抑制策」、「医療制度改革」を根本的に見直すとともに、抜本的な改善の方策及び財政措置を含めた支援策を講じて地方自治体と連携して取り組むべきである。
 従って、以下質問する。

一 自治体病院の役割について
 1 公的医療とはなにか、ということについて政府の基本認識を伺いたい。
 2 自治体病院の責務と役割に対する国の方針を伺いたい。
 3 自治体病院が、地域における基幹病院・中核病院として果たしている役割を具体的に明らかにされたい。また、その役割について政府はどのように考えているのか、見解を伺いたい。
 4 自治体病院は、開設の経緯、立地条件、規模、診療内容により、その役割、使命も一様ではないが、民間医療機関では取り組みにくい高度・先進・特殊医療やへき地医療、救急、精神、リハビリーテーションなど不採算部門といわれる分野を担うなど、住民の命と健康を守るために大きな役割を果たしており、今後も、不採算分野を含めて良質の公的医療を継続的に提供していくことは、ますます重要と考えるが、政府の見解を伺いたい。
 5 地域医療が崩壊し、救急医療など不採算医療の提供が行われない事態に陥った場合、地域住民の健康に大きな影響を及ぼすと考える。国民が最低限の健康状態を維持するために必要な医療提供体制を定め、国の義務として実施すべきと考えるが、最低限の医療提供保障をどのように考えるか。
二 自治体病院の現状について
 1 自治体病院の経営等ついて、それぞれの地域の事情や医療提供体制等により実状は異なると思うが、全国的に自治体病院がどのような現状にあるか、例えば、最新の決算ベースではどうなのか、五年前、一〇年前はどうであったのか明確にされたい。
 2 自治体病院の経営等の現状について政府の所見を伺いたい。
三 自治体病院の経営悪化の要因について
 1 自治体病院経営を悪化させている要因について政府の見解を具体的に伺いたい。
 2 全国病院事業管理者等協議会・川崎市病院事業管理者の武弘道氏は、これまで鹿児島市、埼玉県、川崎市の自治体で病院事業管理者として八つの病院の経営にたずさわり、患者本位の医療を目標に改革を進められ、収支の改善、医療の質の向上、住民の信頼性の向上を成し遂げた方と承知している。
  同氏は、自治体病院の経営悪化の要因について@薬価差益が無くなったA国の医療費抑制政策B病院職員の高齢化に伴う人件費負担増C地方自治体の財政力低下D医療機関の競争激化を挙げている。この五つの要因の中でも、国の医療費抑制策が大きいとしながら、これらの要因がからみあって経営内容が悪くなってきているという趣旨のことを述べている。この指摘について政府はどう考えるのか。
 3 国の「医療費抑制政策」が、自治体病院の経営を悪化させる根本的な要因であると考えるがどうか、政府の見解を伺いたい。
 4 平成一九年版の「厚生労働行政年次報告」の骨子案は、「医療構造改革」をテーマに掲げて、少子高齢化の進展に伴い、ベット数の抑制や患者の自己負担の引き上げなど「従来の医療費抑制策は限界に達している」と記述している旨、報道がある。
  骨子案が記述する「従来の医療費抑制策は限界に達している」との理由及び「医療費抑制策」による現状の問題点について、政府の見解を伺いたい。
四 自治体病院の再編・ネットワーク化について
 1 二〇〇四年五月、総務省は「地域医療の確保と自治体病院のあり方等に関する検討会」を設置し、同年一一月に報告書をまとめた。同報告書は「自治体病院の再編・ネットワーク化」の必要性を強調している。自治体病院の「再編・ネットワーク化」が何故必要なのか。
 2 自治体病院の「再編・ネットワーク化」は、地域において良質の公的医療を継続的に提供することができるのか、政府の見解を伺いたい。
 3 自治体病院の「再編・ネットワーク化」は、広域医療圏(二次医療圏)の基幹・中核となる病院に医師や医療スタッフなどを集約化し医療機能を充実させ、一方で周辺の他の病院は規模・医療機能を縮小する、あるいは病院から診療所にして配置するという構想である。あわせて、急性期医療は、基幹・中核病院で行い、慢性期・回復期医療は、その他の病院や診療所で行うという機能分担を図るということである。
  「再編・ネットワーク化」は、基幹・中核病院の近隣の住民には恩恵を与えるものと考えるが、機能を縮小された医療機関の周辺住民は、医療水準の後退を招き不利益を被ることになる。
  その地域内のすべての住民が一定水準の医療を享受できるという機会を失することになり、地域医療のバランスを崩し、医療格差を助長することになりはしないか、政府の見解を伺いたい。
 4 総務省は、山形県置賜地域での自治体病院の「再編・ネットワーク化」をモデルケースとして紹介している。「再編・ネットワーク化」して機能分担したが、現実には、拠点病院として高度機能を備えた新しい中核病院には、受診者・患者が集中し、医療機能を縮小し診療科の少ない既存病院や診療所(サテライト)は、受診者・患者が減少して経営難に拍車をかける事態に直面している。病院関係者は、「サテライトには、診療科に必要な医師が配置されていないために患者が拠点病院に集まる」と指摘している。地域全体の公的医療の質の維持や医師不足が解消されたとは言いがたい状況になっている模様である。
  診療所と病院の役割が明確化されていないことが病院医師の過度の労働環境を生みだしていると考える。診療所と病院の役割をどのように考えるか。
 5 山形県置賜地域の「再編・ネットワーク化」の効果及び課題と問題点について、政府の所見を伺いたい。
 6 総務省は、「再編・ネットワーク化」に類似する取組事例として、高知県と高知市が、一部事務組合「高知県・高知市病院組合」を設立し、PFIにより、新たな病院を整備するにあたり、高知県立中央病院と高知市立市民病院を統合して新たな基幹病院を整備することについて、この取組を注目し、「住民にとって、あるべき適切なサービスという観点から、こうした再編が進むことも期待される」と紹介している。
  高知市の高知医療センターは、県立、市立の基幹病院を統合して二年前に新たな基幹病院として開設した高度・先進医療等の機関である。病院経営の厳しい状況から経営効率化等のために、病院建設から運営までを民間委託するPFIを全国に先駆けて導入したということである。しかし、現実には、経営状況だけをみれば経常収支は、二〇〇五年度約一七億五千万円、二〇〇六年度二二億三千万円、二〇〇七年度も一六億以上の赤字が見込まれる模様である。
  再編・統合をした高知医療センターがPFIを導入したことに対して、政府はどのように考えているのか、また、経営状況は赤字が続き厳しい状況にあるが、同センターの再編・統合の効果及び課題と問題点について政府の見解を伺いたい。
 7 自治体病院の「再編・ネットワーク化」計画が、地域医療の後退や崩壊につながるものであり、住民不在で推進されるようなことがあってはならない。計画は、住民、病院・医療関係者、地方自治体が英知を結集し、病院経営の現状分析とともに医療の目指すべき方向やビジョンについては慎重かつ十分な検討を重ね、住民の理解と合意を得ることが必要と考えるが、政府の見解を伺いたい。
五 地方独立行政法人化等について
 1 現在、地方公営企業法が適用されている自治体病院数はどのくらいか、都道府県別・市町村別及び経営主体別(県立等)に明らかにされたい。また、病院全体の何割を占めているのか。
 2 地方自治体においては、自治体病院の経営の悪化や医師不足等のために厳しい状況に直面している下で、病院の「再編・統廃合」の動きに加えて経営形態等の見直しが検討されている。こうした背景には政府の方針がある。
  総務省は、二〇〇四年四月、自治体に対して「地方公営企業の経営の総点検について」の通知を発出し、病院等の地方公営企業について、その必要性の是非を見直して、民間移譲、民営化、廃止などを進める旨、指示している。また、二〇〇五年三月の「新地方行革指針」では、PFI、地方独立行政法人、指定管理制度などのツールの活用により、「経営の合理化・効率化」を求めている。
  さらに二〇〇五年一一月、経済財政諮問会議の「総人件費改革基本指針」では、「民間でできることは民間で」の原則で、「地方公務員の定員の縮減・地方独立行政法人化(非公務員型)、民営化等を進める」としている。
  病院経営が厳しい状況にあるからといって、「効率化・合理化」のために民営化等することになれば、自治体病院が果たしてきた良質の公的医療をどのように確保するのか、政府の見解を伺いたい。
 3 自治体病院の経営形態等について、@指定管理制度APFIB社会医療法人制度C民間移譲(民設民営)D地方独立行政法人(非公務員型及び公務員型)E地方公営企業の全部適用F地方公営企業の一部適用のそれぞれについて概要を明らかにされたい。
 4 二〇〇五年度以降、自治体病院が、民間移譲、指定管理制度、地方独立行政法人等に移譲、移行した実態について、各都道府県、市町村毎に、3で挙げた@−Fの経営形態別にその数を明らかにされたい。
 5 現在、地方独立行政法人等を検討中の地方自治体について、4と同様に明らかにされたい。
六 自治体病院の改善策等について
 1 自治体病院の医療の質の向上や経営等を改善・充実するために、政府はどのような緊急対策及び中長期の抜本的対策及び方針を持っているのか明らかにされたい。
 2 自治体病院の「再編・ネットワーク化」による役割と機能の分担、地方独立行政法人化や民営化などの経営形態等の移譲、移行では、不採算医療という重要な役割を担っている病院の状況を打開できないものと考える。また、良質な公的医療の提供は困難となり、さらに医療の格差を生じさせ地域医療の崩壊につながりかねないと考える。併せて政府の見解を問う。
 3 自治体病院の経営悪化、医師不足の根本的要因である「医療費抑制」「医療制度改革」を根本的に見直すように検討すべきと考えるが、政府の見解を伺いたい。

 右質問する。



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