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平成十九年七月三日提出
質問第四五四号

予備試験制度の具体化に関する質問主意書

提出者  保坂展人




予備試験制度の具体化に関する質問主意書


一 司法試験関連事項の決定権について
 司法試験委員会において、いくつかの事項が審議されており、新旧司法試験の合格者数の在り方については相当の審議が進んでいる一方、予備試験制度の内容詳細については審議がなされていない。そこでまず、これらの審議事項について、誰が最終判断権を持つかを明らかにしたい。
 よって質問する。
 (一) 司法試験委員会の審議によれば、平成二十二年度における合格者総予定数や新旧司法試験の合格者予定数の内訳などで意見の一致をみているようにうかがえる。予備試験の合格者予定数を含めて、司法試験委員会の審議内容が最終判断となるのか。
 (二) 司法試験委員会は、平成十六年からその所掌事務が変更され、審議会の性格を強め、法務大臣に試験範囲や省令案等の提言・勧告を行う役割がその中心的任務になった。とすれば、新旧司法試験の合格者数やその推移など、司法試験に関する一切の決定は法務大臣に委ねられると考えるか。
 (三) 司法試験において出題する選択科目を何にするか、各科目の出題範囲をどこまでとするか、また司法試験・予備試験において誰を合格者とするかは、専門技術的判断が求められる事項であることから、司法試験委員会に決定権限が与えられている(司法試験法第六条、同八条)。このことから、ある事項について最終判断を行うべき機関がどこかは、判断事項ごとに検討するべきであると考える。
  司法試験に関する判断事項のうち、国民生活に重大な影響を与える事項は、法務大臣ではなく国会の専権的判断に委ねられるべきである。憲法が国会を「国の唯一の立法機関」である(憲法第四十一条)としているのは、国民の権利を制限し、また義務を課する内容のルールは、民主的過程を経た国会でしか定め得ないとする趣旨である。その趣旨に照らせば、新旧司法試験や予備試験の合格者数のように、国民の生活に重要な影響を与える問題は、国会での専権的判断事項とするか、少なくとも国会での議論を適正に反映したものでなければならないと考えるがどうか。
 (四) とりわけ、予備試験制度をはじめて実施する際に、その合格者を何人とするかは、法曹志望者である国民の職業選択に関わる重要事項であり、国会の判断に委ねるか、少なくとも国会による議論を積むべきと考えるがどうか。
二 予備試験について
 予備試験は平成二十三年から行われる。この予備試験は、法科大学院修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行われ、筆記と口述の試験科目として何を課するか等が司法試験法第五条で定められている。
 しかし、それ以上の内容詳細は、関係機関から公表されていない。
 よって質問する。
 (一) 予備試験合格者数をはじめ、一般教養科目や法律実務基礎科目等の内容、またサンプル問題発表の有無、プレテストの実施の有無など、司法試験法に定める以上の予備試験の内容詳細に関する進捗状況について、現時点でどの程度決定しているか。また、何をいつまでに決定し、公表する予定でいるか。
 (二)後述@Aに紹介した司法試験委員会のヒアリングから、法科大学院ルートを通じた法曹養成制度は、従来なみに法曹の質を維持できる段階には達していないと考えられる。その原因は法科大学院における人的な教育スキルが十分でないこと、公平性・公開性・多様性を旨としながらも、社会人や他学部からの法曹志望者が減少していること、優秀な人材が経済的理由で他分野へ流出していることにある。このまま、平成二十二年に旧司法試験が実質上終了し、新司法試験一本になるとすると、法曹の質の低下が国民生活に重大な影響を与える。このような状況で予備試験合格者人数を何人とするのが適切であると考えるか。
  @ 司法修習生への導入教育からみた法科大学院教育の現状
  第三十四回司法試験委員会ヒアリングによれば、新六十期の司法修習生への導入研修が、新司法試験初年度(平成十八年度)の合格者に対して、平成十八年十一月末から四週間行われた。その印象が第三十四回司法試験委員会ヒアリング概要に掲載されている。新司法試験合格者の特徴として、多くの教官が指摘しているのは以下の点である。
  ア 口頭での表現能力については、やり取りにはかなりなれているものの、発言内容が的を射ているかというと必ずしもそうではない。
  イ 全般的に実体法の理解が不足している。知識不足ではなく理解不足であり、実体法を事案にあてはめて法的な思考をする能力が足りない。そういう意味での実体法の理解不足が目立つ。
  ウ これらの問題について、委員会に出席した関係者によれば、実務との架橋を意識した教育を具体的にどう進めるかはまだスタンダードな考え方は確立されたり、認識が共通されていない部分があるが、長期的に克服していけるだろうとしている。
  A 社会人入学者数からみた法科大学院の現状
  社会人の法科大学院入学者が減少傾向にある。各法科大学院では、多様なバックグラウンドを有する人材、また優秀な人材を法曹の世界に受け入れる目的で、社会人入学を推進してきているが、その人数比は、初年度(平成十六年度)では四十八・四パーセントであったのが、徐々に減ってきており、平成十八年度には三十三・三パーセント、約三分の一になっている。
  ア 委員会に出席した法科大学院関係者によれば、新司法試験の合格者数を三千人とすることが、法科大学院に対する社会人の受け入れ策になるとする意見もある。しかし、社会人が法曹を目指す際の最大の障害は、法科大学院の学費と生活費の問題であり、合格者数を三千人としてもあまり変わりはないのではないかという委員長の指摘が的を射ている。
  イ 同じく法科大学院関係者の意見として、専門職大学院で社会人に門戸を開いたとき、運用の最初の年に数的にも質的にも優秀な社会人の方が来る傾向にあるが、最近の社会人入学生の減り方は、それだけでは説明がつかない部分があるように感じている、という指摘がある。
 (三) 予備試験合格人数の具体的な数値として、以下の理由から五百人を提案したいがどうか。
  @ 旧司法試験では従来から五百人程度の合格者を輩出してきており、この数値は門戸を広く開放していることの目安として社会的な理解を得やすいこと。旧司法試験では、昭和三十九年に五百八人の合格者を出して以降、昭和五十年代後半に四百五十人前後に減らしながら、平成二年まで、五百人前後の合格者を輩出してきている。この間、経済的に恵まれなかったり、あるいは仕事を続けながら、苦学のすえ受験勉強を進めて最終合格を勝ち取って活躍している法曹は数多くいる。法科大学院に進学できない環境にある人に相当のチャンスを確保する目安として五百人程度の合格者が望ましい。
  A 法科大学院の新修了生数との対比で、合格率に十倍以上の開きが生じることは公平ではないこと。すなわち、法科大学院からは、毎年約五千人前後の新修了生が生まれていく一方で、仮に予備試験ルートからの受験者が五百人を割るならば、法科大学院ルートは予備試験ルートの十倍以上に構成比が開く。経済的理由に基づき、このような格差を生むことは、職業選択や平等的取扱いの観点からも適切ではない。
  ※ 伊藤塾で実施したアンケートによれば、法曹を志望しながら経済的理由から法科大学院に進学できない人の割合は六百二十九人中百二十八人、二十パーセントに達している。これらの人々を救済する各種の支援制度が現時点で十分に整っていないのならば、予備試験合格者として五百人程度を輩出することが必要である。
 (四) 新司法試験考査委員による問題漏洩疑惑によって、新司法試験制度の信用性が揺らいでいる。(九)で後述するように、予備試験合格者数と関連付けて解決すべき問題と考えるべきであるが、そもそもなぜ、このような不正ないし不正と疑われる行為が起きたと考えるか。
 ○ 平成十九年六月二十三日讀賣新聞朝刊によれば、司法試験考査委員である慶応大学法科大学院の植村栄治教授(行政法)が、今年二〜三月に答案練習会を七回開き、毎回、百五十〜百七十人の学生に対し、「行政処分の執行停止」などの論点を説明したほか、「試験の参考になるよう送ります」と記述した上で、「外国人の退去強制処分」などに関する六本の判例を学生に一斉メールで紹介したほか、「論文を再現して送ってくれれば、採点してあげる」との内容の一斉メールも送信していた。五月中旬に実施された新司法試験の論文式試験では、行政法分野で、外国人の退去強制処分の事例をもとに処分の執行停止などについて論じる問題が出された。
 (五) このような不正が行われれば、プロセスによる法曹養成制度の信頼性が根本的に失われる。そうなれば何らかの抜本的な改革をしないと優秀な人材が制度を信頼して集まってこなくなる。これは、法曹の質を維持し、国民に良質の法的サービスを与える意味で、日本の司法制度の根本にかかわる問題であると考えるがどうか。
 (六) このような不正を防止し、新司法試験の公正を担保するための具体的施策の進捗についてどう考えるか。
 (七) この問題は、所属する法科大学院の合格者数を増やそうとする大学院教授の立場と、公正であるべき考査委員の立場とを兼務することが、問題の漏洩等、不正の温床となっていることに原因があり、それを防ぐルールを明確にすべきであると考えるがどうか。
 (八)この件を解決するルールとして、考査委員はその在任中に、法科大学院教員を兼任することができないと考えるべきであるがどうか。
 (九) 規制緩和論に基づいて初年度六十八大学に法科大学院の設置が認められ、各法科大学院では、合格者数、合格者率において激しい競争がなされている。法科大学院における教育スキルが人的に未だ成熟段階に達していない中で競争に晒されたことに、この問題の構造的な原因があると考えるがどうか。
 (十) そのような構造的問題を解決しない状態では、優秀な人材が制度を信頼して集まってこなくなり、法曹の質を維持することはできなくなる。そこで当面は、予備試験ルートをある程度、広いバイパスとして運用することが、法曹の質を維持することにつながると考えるがどうか。
三 新旧司法試験の合格者内訳に関する審議内容の妥当性
 司法試験委員会の審議によれば、平成二十二年度における新旧司法試験の合格者総数を三千人とし、そのうち旧試験合格者数を五十から六十人とすることで意見の一致をみているように見受けられ、新試験合格者の増やし方が今後の議論とされている(第三十四回司法試験委員会ヒアリング)。
 これについて質問する。
 (一) 新旧試験合格者数を、いつまでに、どの割合で増減させるかは、司法制度改革における法曹養成の理念である公平性、開放性、多様性を旨としながら、一方で、法曹の質を維持し、国民が質の高い法的サービスをうけることができるか否かに関わる意味で、国民生活に重大な影響を与える事項であり、国会での議論を適正に反映して決定すべきであると考えるがどうか。
 (二) 先に述べたような法科大学院教育の現状に鑑みれば、旧司法試験の合格者数を平成二十二年に五十から六十人に減らすことは適切ではなく、法科大学院ルートでの法曹養成教育システムが一定の成熟段階に達するまでは、旧試験の合格者数について、当面の間は、最低、今年度(平成十九年度)レベルの三百人は維持すべきと考えるがどうか。

 右質問する。



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