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平成十九年九月十三日提出
質問第一八号

難民認定制度に関する質問主意書

提出者  保坂展人




難民認定制度に関する質問主意書


 二〇〇五年五月より改正「出入国管理及び難民認定法」が施行され、難民審査参与員制度をはじめ、新たな難民認定制度が始まった。この改正案議決にあたり、衆議院、参議院はそれぞれ附帯決議を付し、手続きの「適正性」、「迅速性」、「客観性」、「透明性」を確保、参与員の人選にあたって「専門性」を確保するよう難民調査当局に対し要請している。また、そのために「国連難民高等弁務官事務所の解釈や勧告等を十分尊重する」ことを当局に要請している。
 また、「仮滞在許可制度、難民認定における不服申立制度等、難民認定に関する各種制度について、その運用状況を勘案しつつ三年後を目途に検討を行うこと」との附帯決議を付し、実施状況を検証するよう要請している。
 難民保護という最も重要な国際貢献に寄与する趣旨から、以下のとおり質問する。

一 難民認定実務の実績について
 1 二〇〇三年から二〇〇六年までの難民申請件数と難民認定件数を示されたい。
 2 二〇〇六年に難民申請者の異議申立てにもとづいて行われた審査件数と、それにもとづいて参与員の前で意見陳述が行われた件数と、意見陳述に付されなかった件数を示されたい。
 3 二〇〇六年一月一日以前に難民申請を受付けて二〇〇六年十二月三十一日時点で一次処分の告知を行っていない件数を示されたい。このうち二〇〇五年一月一日以前に受付けた件数も示されたい。
 4 二〇〇六年一月一日以前に提出された難民不認定処分異議申立てのうち二〇〇六年十二月三十一日時点で裁決の告知を行っていない件数を示されたい。
 5 「出入国管理及び難民認定法施行規則」には、「法務大臣は、前項の規定にかかわらず、適当と認めるときは、異議申立て人又は参加人の意見陳述及び審尋を録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録することができる物を含む。)に記録し、これをもつて調書の記載に代えることができる」(第五十八条の六第二項)との規定が新設され、調査プロセスの透明化に期待が寄せられているが、前記二〇〇六年中に録音テープ又はビデオテープに記録した件数は何件か示されたい。
二 実務について
 1 出身国情報の収集について
  1)先の法務省の回答では、二〇〇五年に外部に委託して翻訳した出身国情報は以下の三点であった。
  バングラデシュ、英国内務省報告(二〇〇五年、全訳)
  パキスタン、英国内務省報告(二〇〇五年、全訳)
  イラン、英国内務省報告(二〇〇五年、全訳)
  二〇〇六年に提出された難民申請の審査に供するために外部に委託して翻訳した出身国情報を明らかにされたい。
  2)またそれらは、難民調査官および参与員に、当該難民申請者の供述調書作成または審尋問までに配布されたか。
  3)難民申請者は、自身の個別事情について、母国語などで陳述書や関連資料を提出していると思われる。正確性を期すためそれらの翻訳は外注され、各地方入国管理局または本省入国管理局において発注書が記録として保管されている。この翻訳発注の総件数と総費用を回答されたい。
 2 参与員による審尋後「意見陳述及び審尋の要旨を記載した書面」が作成されるが、その書面は要旨のみであるため、審尋時の問答の正確性が保証されておらず、また代理人に開示する際に複写させないという制限的な開示である。なぜ要旨のみが開示され複写不可能なのか、その理由を示されたい。
 3 参与員による審尋当日に提出した証拠は受付けられない。これはなぜか理由を示されたい。
 4 一次審査で作成された供述調書が参与員の審尋前にもその場でも、またその後も開示されず、もっぱら、申請者の主張の変遷を跡付けるための弾劾目的で使用されている。このような慣行は「手続の客観性及び透明性」という国会の附帯決議の要請に反している。保有する証拠を審尋前に申請者およびその代理人に開示すべきであると考えるがいかがか。
三 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からの助言について
 参議院は、「入管法に定める諸手続に携わる際の運用や解釈に当たっては、難民関連の諸条約に関する国連難民高等弁務官事務所の解釈や勧告等を十分尊重する」よう求めている。国際社会の付託を受けたUNHCRの助言を尊重、履行することが難民行政を担当する機関に対する要請であると考える。
 1
  1)法務省が二〇〇六年においてUNHCRに難民認定および補完的保護の付与について助言を求めた件数を示されたい。
  2)前記の難民申請から一年以上経過して処分を決定していない事案について助言を求めた件数を示されたい。
 2
  1)二〇〇六年にUNHCRより提供を受けた文書、UNHCRの見解書の表題をすべて列挙されたい。
  2)そのうち翻訳した文書があれば、その概要を説明されたい。
 3 二〇〇六年のUNHCRの担当者を招いた難民調査官、難民審査参与員を対象とするセミナーなどの実施状況(開催日、参加者の肩書きと人数、テーマ)を明らかにされたい。
 4 アフガニスタンではタリバン勢力が南東部を中心に勢力を拡大し、首都でも自爆テロが頻発する状況となっている。二〇〇六年五月二十二日郡和子衆議院議員に対し石崎課長補佐が「UNHCRに助言を求める」と回答したが、その後、UNHCRに助言を求めたか。求めた場合はその求めた日と求めた文書の内容、UNHCRからの回答の内容を明らかにされたい。また求めなかった場合は求めない理由を明らかにされたい。
 5 二〇〇六年には、多くのビルマ人、とりわけ少数民族であるロヒンギャ族出身者が多数入国し、難民申請した。現在多くのビルマ人が収容されている。このような不測の事態においては、法務省はUNHCRに助言を求めたか。またUNHCRからこれとは別にビルマ難民に対して助言を受けたことがあるか。それぞれ助言を求めた日と助言があった日を示し、助言の内容を明らかにされたい。
四 冊子「難民認定行政−二十五年間の軌跡−」について
 法務省は、二〇〇六年十一月「難民認定行政−二十五年間の軌跡−」を発刊した。この中に、「難民不認定理由の説明状況」として、「決定書中に記載された処分理由」例が複数開示されている。この公表にあたって、「個人情報保護等の関係上,一部固有名詞を記号化した」全文が掲載されている。それらは出身国、日本の入出国日、刑事事件で係属した裁判所名も記載した詳細なものである。これについて以下の点を質問する。
 1 同冊子には「個人情報保護等の関係上,一部固有名詞を記号化した」と記されているが、ここでいう「個人情報」は、いわゆる個人情報保護法の「個人情報」定義「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう」に準じると解釈される。同冊子の発刊にあたり、個人情報保護法にある「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなる」情報に該当する可能性を排除するため、「他の情報」の存否をどのように確認したか明らかにされたい。
 2 特に、外国人の犯罪はマスコミの関心を引き、しばしば実名報道されていることに照らし、刑事事件で実刑を受けた者の過去の新聞報道、テレビ報道などの検索、照合により、難民申請者個人を特定ないし、ほぼ特定できる可能性を検討されたか、明らかにされたい。
 3 この中の一名は、「処分理由」例に記されている二語を検索語として使用することにより、インターネット上で提供されている過去の新聞記事検索サービスを通じて、その者の名前に到達することができる。インターネットの検索性能から、個人情報保護法にいう「他の情報」を容易に入手できると思われる。また「処分理由」例に記されている二語だけの検索語で申請者本人の名前が表示されることからも容易に照合できるといわざるを得ないと思われるがいかがか。
 4 このような詳細な情報を冊子として不特定の人々に配布し、またインターネット上で無制限にアクセスできるようにすることで、自国政府の迫害を恐れる難民申請者が、自身の個人情報が入国管理局によって保護されないとの危惧を抱く可能性について事前に検討されたか明らかにされたい。
 5 特に開示されている理由書の事案に関与した参与員を含め、同冊子の公表にあたって参与員に事前に回覧し、開示について意見を求めたか。求めた場合は、どのような見解が寄せられたか、明らかにされたい。
 6 同冊子の作成に要した費用(制作費、印刷費、運送費、原稿料)、発行部数、冊子体の配布先を明らかにされたい。

 右質問する。



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