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平成十九年十月五日提出
質問第九五号

国立大学法人・名古屋工業大学二部(夜間部)における大幅な定員削減問題に関する質問主意書

提出者  佐々木憲昭




国立大学法人・名古屋工業大学二部(夜間部)における大幅な定員削減問題に関する質問主意書


 国立大学法人・名古屋工業大学(以下、名工大)が来年度、二部(夜間部)の定員を現行の百四十名から二十名へ大幅に削減する計画を進めており、在学生をはじめ、来年度に大学受験を控えた生徒や高校関係者の間でも大きな不安を呼び起こしている。また、同大学学生自治会のアンケートや在学生に対する説明会においても、多くの疑問や反対の声が表明されている。
 大学当局は、二部縮小の理由を「勤労学生の減少」とし、当該計画を文部科学省の了解のうえで進めていると説明、同大学ホームページ上での突然の発表以降、来年度からの実施に向けての手続きを実行しつつある。しかし、当該計画の立案と発表の経緯、学生・関係者に対する説明の行われ方、文部科学省との関わり等、この間の一連の事態について、関係者からの疑問と不安の声はいっそう高まるばかりである。
 今回の夜間部定員数大幅削減は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」(憲法第二十六条)と、国民の教育権を保障した憲法の基本原則に関わるものである。同時に、働きながら勉学を志す若い世代の現在と将来を左右する緊急切実な問題でもある。こうした性格をもつ大幅削減計画が、大学の重要な構成員である学生・教職員をはじめとする関係者の間で十分な説明と合意がなされないまま、一部の大学執行部と行政機関によって強行されることは許されるものではない。
 以下、質問する。

一 国立大学法人の夜間部の位置づけと「勤労学生」の定義について
 戦後教育改革のなかで「学校教育法」(一九四七年)が「大学には、夜間において授業を行う学部を置くことができる」(第五十四条)と規定し、勤労青年に大学教育を広く開放するため、旧制の大学、専門学校で法令上の規定のないまま実施が認められていた夜間制教育について法制化した。以来、国においては、夜間大学の意義を認め、その充実に努力を払ってきた経過がある。
 一九八九年六月十三日、日本共産党の佐藤昭夫参議院議員(当時)が質問主意書を提出し、「今後も、大学夜間部を憲法、教育基本法の理念、制度に従って、一層充実させるべきであると考えるが、どうか」と問うたことに対する政府の答弁書(平成元年六月二十三日)では、大学夜間部について、「勤労青年に対し高等教育を受ける機会を拡大する等の観点から、従来から大学の夜間部の充実に意を用いてきており、今後とも十分配慮してまいりたい」と述べている。
 先般、大きな議論を経て改定された教育基本法においても、第三条、第四条のなかで、「すべての国民が、生涯にわたり学習し、教育を受ける機会を与えられ、経済的地位を含めいかなる理由によっても教育上差別されない」との趣旨が引き続き堅持されている。
 これらのことを踏まえ、まず以下の基本問題について政府の見解を問う。
 (一) 国民の教育権保障、勤労青年の高等教育の機会拡大という従来とってきた政府の基本的な立場に今日、変更はないか明確にされたい。
 (二) 文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会は、「大学等における社会人受入れの推進方策について」(「答申」)のなかで、「我が国の大学等は、幅広い年齢層の人々に積極的に開かれ、これらの人々に多様で柔軟な学習機会を提供していくことが求められている」と、その「基本的考え方」を示している(〇二年二月二十一日)。
  @ この「答申」で示された「大学等における社会人受入れ」についての「基本的考え方」は、今日の大学教育において引き続き継承されているか。継承されていないのならその理由を明らかにされたい。
  A また、「幅広い年齢層の人々に多様で柔軟な学習機会を提供」するという趣旨は、「正社員」に限らず非正規労働者をも含めた広く社会人一般をも対象とすると理解して相違ないか。見解を求める。
 (三) 名工大当局は、二部縮小の根拠として「勤労学生が八人(六%)と大幅に減少している」ことをあげ、「勤労者に大学教育の機会を提供するという社会的意義は失われた」ことを強調している(「中日新聞」〇七年七月四日)。ここでいわれている「勤労学生」とは、大学当局によると「正規の職員・社員」のことである。
  今日、若い世代の半数が不安定就労者であり、高校卒業の資格しか有しない青年のなかに占める「非正規」の割合はますます高くなっている。さらに、仕事の内容、労働時間をみても正社員と大差がないか、正社員以上に働く非正規雇用者が存在する。こうした非正規雇用者の現実に目を向けずに、「正規の職員・社員」のみを「勤労学生」と扱うことは、あまりにも実態にそぐわない対応といえる。
  実際、名工大二部においても、学生自治会が全学生の二七%にあたる学生から回収したアンケートによると、週に五日以上就労している学生が七五%を占め、大半の学生がフルタイムに近い仕事をしながら学生生活を送っているのである。
  そこで、以下質問をする。
  @ 就労しながら学ぶ意欲を持った青年・社会人に、広く高等教育を受ける機会を保障するという点で、「勤労学生」とみなす対象を「正社員」だけに限定することは妥当といえるか。「妥当」とするならその根拠は何か、明らかにされたい。
  A また、名工大当局が強調している「勤労者に大学教育の機会を提供する社会的意義が失われた」との主張を、政府は容認しているのか、見解を求める。
二 就労しながら学ぶ意欲を持つ青年の勉学条件の確保について
 仕事に就きながら勉学に励もうとする青年にとって、経営者や職場における同僚たちの理解、協力は不可欠な条件である。前掲の日本共産党・佐藤昭夫参議院議員(当時)の質問主意書に対する「答弁書」でも、政府は、「大学に通う勤労学生を変形労働時間制により労働させる場合には、労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第十二条の六において、使用者は、これらの者が『必要な時間を確保できるような配慮をするように努めなければならない』こととされており、労働省としては、集団指導等の機会を通じてその周知徹底を図っているところである」と述べている。
 当時に比しても労働時間の変形や不規則化がいっそう進み、違法な長時間労働の実態が指摘されている今日、勤労青年の勉学条件を確保するための事業者の適切な対応は重要な問題であるといわなければならない。
 さらに、今日の貧困と格差の広がりのもとで、世界で最も高い学費の負担は、特に低所得層の家計を大きく圧迫している。低所得層をはじめ国民世帯には大学の学費等の負担はきわめて大きいものがある。名工大二部ではこれまで、授業料が半額に抑えられてきており、過日、私どもが行った同大学二部に在学する学生たちとの懇談でも、「昼間部の学費は払えないので、ここに来た」「親が定年退職して、二部の学費しか出せない」「五人兄弟のため、学費は自分で稼がなければならない。二部だから学ぶことができる」など切実な声が寄せられた。
 以下、見解を求める。
 (一) 就労しつつ系統的に大学で学ぼうとする勤労学生が、不意の残業や変形労働時間のため通学が困難になる、さらに高校生が、夜間大学への進学を前提に受け入れてくれる就職先を探すことが困難になるなど、企業の姿勢が勉学の障害となる事態が生まれている。こうした問題を解決するための政府の施策ならびに見解を示されたい。
 (二) 世界で最も高い水準にあるとされる学費負担の重さが要因で高等教育を断念したり、夜間への進学を余儀なくされるなど、就学の形態が制約されざるを得ない青年の現状を、どう認識しているか。また、このような就学困難な条件にある青年を援助する制度、政府としての諸施策を示されたい。
 (三) 学費負担が軽減できることを大きな理由に進学者が集まっている大学が、大幅に定員を減らし、門戸を狭めることについて、政府はどのような見解をもっているか。
三 定数削減計画の立案、実行に関わる手続きの問題について
 名工大では今回の定員大幅縮小について、文部科学省への来年度概算要求を行ったあとに初めて教授会に報告され、大学自治の重要な構成員であるべき学生が知ることになったのは、事実上マスコミの報道を通じてであった。しかし、それまでの間、相当以前から二部に関する議論が行われ、文部科学省とも前年の早い時期から話し合った結果、了承を得て、来年度の概算要求に至ったものと説明している。
 これは、学内の意志決定としてきわめて非民主的であるだけではなく、大学本来の社会的使命という観点からも、看過できない問題を含んでいるといわざるを得ない。
 近年さまざまな事情で夜間大学の閉鎖等があいつぎ、現在では名工大二部は東海四県下で唯一の技術系夜間大学となっている。ものづくりの拠点と称される愛知県をはじめとした東海圏は、大手企業とともに生産の広大な裾野をなす中小企業群が立地し、それらに多くの青年が従事するという特色をもっている。それだけに、この大学の存在意義は、地域全体にとってきわめて貴重というべきである。
 そこで質問する。
 (一) このたびの名工大二部の大幅定員削減について、その検討経過を文部科学省との関わりにおいて明らかにされたい。その際、大学当局による計画の発表、学生への説明等の経緯を含め、時系列的に経過を明らかにされたい。
 (二) 大学当局は学生への説明会で「二部をなくすということは一度も言っていない」と述べたと聞いているが、実際には当初、廃止を申請しようとしていたことを聞き及んでいる。廃止について文部科学省への打診があったことは事実か。その真相はどのようなものか、明らかにされたい。
 (三) 前記(二)のように廃止を指向することはもちろん、二部の定数を七分の一にまで削減する現計画も、名工大二部の存在意義を大きく変容させるものといわざるを得ない。政府はどのように考えているか、見解を求める。

 右質問する。



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