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平成十九年十一月三十日提出
質問第二八三号

サロベツ川流域など農地の水害補償施策に関する質問主意書

提出者  松木謙公




サロベツ川流域など農地の水害補償施策に関する質問主意書


 「利尻・礼文・サロベツ国立公園」に隣接する北海道豊富町及び稚内市の酪農地帯では、サロベツ川流域などにおいて河川勾配がきわめて緩く、海水面との比高が僅かしかない地勢的な条件にあり、治水対策の遅れもあって長年にわたり水害に悩まされてきた。融雪期には数千ヘクタールにおよぶ牧草地の冠水被害が頻発し、夏場においては数十ミリ程度の降雨で水害が繰り返されている。その結果、牧草の死滅や腐敗、付着した泥水による牧草の嗜好性の低下、農業機械の作業効率の低下などの被害が発生しており、酪農経営に対する経済的影響は多大なものがある。
 当該地域の住民からは、泥炭・低湿地に位置する農地の冠水被害に対し、基幹産業である酪農とラムサール条約登録湿地のサロベツ湿原の保全とが両立できる、政府による直接支払いなど各種支援策を求める動きが具体化してきた。農業者の経営の安定、地域社会の維持と活性化などによる農業の多面的機能の確保のためには、住民らが求める水害補償施策の実現は喫緊の課題である。
 そこで、以下質問する。

一 サロベツ川流域の治水対策について
 戦後、泥炭地湿原を流れる河川特有の水害を軽減させる対策は、その多くが国土交通省(旧北海道開発庁)北海道開発局による農業土木事業の一環として行なわれてきた。最大の工事は昭和四十一年完成のサロベツ川放水路(延長三・七キロ)であるが、掘削個所付近の水害を軽減させる効果はあったものの、サロベツ川上流部や支流の被害は未だ解消されていない。
 その後、道開発局はサロベツ川下流部に新たな放水路を掘削し、洪水時に日本海へ直接放流する構想を立てたが、国立公園の指定(昭和四十九年)や漁業団体の反発もあり、実現しなかった。平成十二年には、河川管理者の北海道によって、築堤や高水敷のカット、ポンプによる強制排水などの対策案が示されたが何ら実行されず、現在に至っている。
 1 湿原や河川に隣接し、頻繁に洪水被害に遭っている全国各地の農業地域において、水害による営農の困難性を解決する手段として、農地や施設・住宅の移転補償を行なった事例はあるか。また、農作物被害に対して補償措置を講じた事例について、その地域名、被害面積と作目、補償額、法令上の根拠などを示されたい。
 2 治水対策の立ち遅れに加え、数千ヘクタールに上る国営農業開発事業によって湿原を草地化したことで遊水機能が低下し、水害を助長してきた面は否めない。サロベツ湿原を開発することにより、いたずらに洪水被害面積を拡大させてきた国の責任があると考えるが、政府としての基本認識を示されたい。
 3 前記の経緯を踏まえ、サロベツ川流域の治水対策について、河川管理者の北海道と協力し、今後どのように対応するのか、政府としての基本認識と具体策を示されたい。
二 水害農地に対する補償対策について
 1 本年三月五日、当該被害住民の代表八人による「サロベツ川流域などの農地の水害補償に関する要望書」が農林水産・環境・国土交通の三省に提出されている。この要請を受けて、各省において如何なる検討・協議がなされたのか。その経緯を示されたい。
 2 EUでは、農村社会の存続・維持や田園地域の保全などを目的に、一九七〇年代から各種の「条件不利地域支払い」が行なわれてきた。日本でも、平地との条件格差に着目した「中山間地域等直接支払制度」が創設され、ここ数年、所得補償が行なわれている。
  しかし現行制度の下では、急傾斜地や草地化率の高い地域の草地など五項目が給付対象にすぎない。これでは、水害常襲地帯のサロベツ湿原周辺のような、営農条件が厳しく、環境保全上の制約がある農地に対する直接支払いとしては不十分である。
  例えば、自然環境を保全し営農を維持することを目的に、農業利用面積の一〇%を限度に「環境制約地域」を定め、条件不利地域支払いを行なっているフランスに倣い、類似のシステムを現行制度に加える意思はないか。政府の見解を示されたい。
 3 日本型の環境支払いとして、「環境にやさしい農業」の取りくみや「環境保全技術の導入」に対する経費を支援していく、『農地・水・環境保全向上対策』が本年度から始まっている。
  欧米諸国の環境支払いは多様で、対象農地の比率も大きい。アメリカでは、@農地として使わないことで環境保全を図る制度、A土地転用を防ぐ制度、B農地における環境保全的行為を促進する制度の三つの柱で環境支払いを行なってきた。@には、湿原保全を目的に農地を休耕し、連邦政府が地役権を買い取る「湿地保全プログラム」も含まれる。フランスやイギリスなどでは、野生生物の生息地づくりを始め、圃場内の沼地や小河川、湿地などの維持に対する環境支払い制度もある。
  これら欧米諸国の事例に学び、湿地および周辺農地での環境保全型農業に取りくむ農家に対する環境支払いを、政府としてどう推進するのか。『農地・水・環境保全向上対策』との関連も含めて、政府の見解を示されたい。
三 国立公園に隣接する水害常襲農地の買収について
 現在、国立公園に指定されている民有地の買収制度として「特定民有地買上事業」があるが、農地などは対象にならない(本年八月七日付け、環境省の説明資料)というが、これでは、国立公園の環境保全にとって不十分である。今後、希少動植物の生息地の拡大や湿原・沼地・小河川の維持・再生などを目的に、同事業のなかに農地の買収も含めるべく検討していく意思はないか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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