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平成二十年三月十七日提出
質問第一八四号

有明海の浄化と漁業環境の改善に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




有明海の浄化と漁業環境の改善に関する質問主意書


 有明海は、「宝の海」と言われ、豊かな自然条件に恵まれていたが、諫早湾干拓事業、とりわけ潮受け堤防の閉め切りによって、「有明海異変」と呼ばれる環境破壊と漁業被害を発生させている。このままでは、「宝の海」である有明海が「死の海」になりかねない深刻な事態をまねくことになる。有明海の浄化と漁業環境の改善、そして有明海の真の再生が緊急に求められている。
 従って以下質問したい。

一 タイラギ漁業について
 1 長崎県小長井漁協では一九九三年以降、十五年間タイラギ漁は行われていない。その原因をどのように考えているのか伺いたい。
 2 二〇〇三年から二〇〇五年の水産庁の調査結果を見ると、諫早湾では湾奥のみならず湾口近くまで底質が細粒化しているが、その原因をどのように考えているか伺いたい。
 3 長崎県による、一九九七年、二〇〇三年、二〇〇四年及び二〇〇五年の諫早湾内の底質の粒度調査によれば、一九九七年に比べて潮受け堤防の閉め切り以後、底質は細粒化している。また小長井漁場の底質も細粒化している。有明海・八代海総合調査評価委員会の資料によれば、二〇〇七年八月に諫早湾口周辺に高濃度のタイラギ幼生が分布したが、着底した稚貝は有明海湾奥部の福岡県側にしか分布していなかった旨、述べられている。タイラギは一般に細粒化した底質にはあまり分布しないものである。
  諫早湾のタイラギが消滅した原因はタイラギ漁場の底質が細粒化したためと考えられるが、どのように考えているのか伺いたい。
 4 佐賀県水産振興センターの調査によれば、一九八九年に比べて二〇〇〇年の佐賀県沖の底質は細粒化して、それとともに佐賀県側のタイラギ漁業は衰退している。この不漁も、佐賀県沖の底質の細粒化がひとつの原因と考えるが、どのように考えているのか伺いたい。
二 二〇〇七年八月の諫早湾のアサリのへい死について
 諫早湾では、二〇〇七年八月二十二日からアサリのへい死の報告があり、同月二十六日の調査では潮受け堤防に近いほど被害が大きかった。新聞は、「小長井漁協の被害総額は約三億円、養殖アサリの七割にあたる千二百トンが死んだ。八月二十六日の長崎県の調査では、被害は諫早湾干拓の潮受け堤防付近で、特に深刻だった。県は、八月上旬から続いた赤潮と海中に発生した貧酸素水塊が原因と見ているが、漁協の組合員からは、『北部水門から排出される調整池の汚れた淡水が原因』との声もあがっている」旨、報じている。
 1 長崎県は、アサリのへい死の原因が赤潮と貧酸素水塊と考えているようであるが、農林水産省はどのように考えているのか、赤潮と貧酸素水塊が原因と考えているのであれば、赤潮の場合及び貧酸素の場合それぞれについて根拠と理由を示されたい。
 2 北部水門前のS1地点の溶存酸素の記録を見ると、二〇〇七年八月二十五日二十三時から八月二十六日十三時頃まで表層の溶存酸素がほとんどゼロになっている。この表層の無酸素水がアサリ漁場に影響してアサリがへい死したと考えられるが、どう考えているか伺いたい。
 3 二〇〇七年八月二十六日に大量のアサリのへい死が確認されている。その前日八月二十五日正午頃、北部排水門から四百六十万m3の調整池水が排水されたが、この排水と二十六日のアサリのへい死との関連をどのように考えているのか伺いたい。
三 再生事業について
 1 国は、いわゆる「有明海・八代海特別措置法」に基づき、有明海沿岸の長崎、佐賀、福岡、熊本四県における、いわゆる「再生」事業を実施している。再生事業の内容、進捗状況、事業評価及び事業の実効性と成果について詳細に伺いたい。
 2 農林水産省が、同事業の一環として行っている漁場改善事業の内容について明らかにされたい。また、事業の進捗状況とその実効性と成果とともに、事業の評価は誰がどのように行っているのかについても伺いたい。
 3 農林水産省の漁場改善事業では、浚渫・覆砂が主たるものと聞いている。漁民は、「覆砂した箇所は、一時的にアサリが獲れるものの、二、三年経過するとヘドロに覆われて意味がなくなる。また、浚渫のための海底耕運は、海底のヘドロを拡散するだけでむしろ逆効果だ」と言っている。同事業が、漁場改善に繋がっていると言えるのかどうか、考えを伺いたい。
四 開門について
 農林水産省は、有明海ノリ不作等第三者委員会が提案した開門調査のうち、短期開門調査を実施して、中・長期開門調査を実施していない。二〇〇四年五月に農林水産大臣は漁民に対して「中・長期開門調査を実施するとノリ漁を含めた漁業環境に影響を及ぼす可能性があり、被害防止のための措置を執らないまま調査を行うことはできない」と述べている。
 1 「ノリ漁を含めた漁業環境に影響を及ぼす」とは具体的に、濁りが諫早湾内だけでなく、有明海の漁業に影響するということなのか、答えられたい。
 2 有明海は濁った海として有名である。有明海における、干拓事業以前の濁りと、開門により予測される濁りの分布を示し、その上で漁業被害の根拠と理由を明確にされたい。
 3 農林水産大臣は「被害防止のための措置を執らないまま調整を行うことはできない」旨、述べている。しかし、学者からは被害を防止できる開門方法が提案されており、被害防止のための措置は可能と考えるが、考えを伺いたい。
五 調整池の水質について
 調整池の水質は、一九九七年の潮受け堤防の閉め切り以後、多額な予算を使ってさまざまな対策を講じてきたが、十年以上を経てもいまだに目標を達成していない。
 1 このように長期にわたって水質が改善しない原因をどのように考えているのか伺いたい。
 2 COD(化学的酸素要求量)濃度が高い主な原因は、調整池内に発生する濃密な赤潮と考えられるが、考えを伺いたい。
 3 赤潮を抑制するには、@開門して海域との混合を進める、A短期開門調査で実証されたように、海水を導入して水質を改善する、B窒素とリンの濃度を減少させるの三つが考えられる。農林水産省は、このうちBだけで調整池の水質を改善できると考えているのか、考えているとするならば、その根拠と理由を示されたい。
 4 調整池と類似したものとして、岡山県の児島湖がある。児島湖の水質は五千から六千億円かけても浄化に成功していない。このままでは調整池も巨額の税金を投入することになる可能性が大きい。児島湖と比較して調整池の水質を改善できるという根拠と理由を示されたい。

 右質問する。



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